
電動化と燃費・電費向上が進むモビリティ社会は、今、サステナビリティを設計思想に取り込み始めている。高性能タイヤにおいても、サステナビリティとの両立へ、素材選定や性能設計に新たな挑戦を促す。2025年8月に開催された「2025 Bridgestone World Solar Challenge(以下、BWSC)」に向けて、Teijin Aramidのサーキュラー原料を使用したパラ系アラミド繊維「トワロンネクスト」がブリヂストン製タイヤの補強素材として初めて採用された。

株式会社ブリヂストン
補強材技術戦略・開発部長
千足 英之 氏
ブリヂストンと帝人グループでアラミド事業を展開するオランダ現地法人Teijin Aramidの両社が目指したのは、高い物性や性能を保持したまま持続可能性を実現すること。タイヤの補強素材には高い機械的特性が求められ、従来製品と同等の物性をサーキュラー原料を含む製品で実現する難易度は高く、タイヤメーカーと素材メーカー、双方の本気が問われる共同開発となった。
ブリヂストンの千足英之氏は「ブリヂストンとTeijin Aramidの共創は、ただ新たな素材を採用しただけではありません。製品の性能や品質、そして生産プロセスや製品取り扱いに追加負担をかけず、サステナビリティを導入できるか、という点にもこだわりました」と話す。またTeijin AramidのTony Mathew氏は「トワロンネクストはブリヂストンの期待に応えるソリューションとなりました。サーキュラー原料を含みながら、従来のトワロンと同等の強度、耐久性、耐熱性を実現します。さらに、この素材を採用するにあたって生産プロセスへの変更は不要であり、お客様の現場での設備や取り扱い、品質管理は従来どおりのままご使用いただけます。今回のプロジェクトは、高性能タイヤで「トワロンネクスト」が使用される初めての事例となりました」と話す。
トワロンネクストは、バリューチェーン全体から求められる性能を特定し、実際に使用されるアプリケーションを念頭においた開発を経て誕生した。ユーザーの「物性における信頼性や製造プロセスにおける効率性を損なうことなく、持続可能な製品を材料に導入したい」といった課題に対応できる。

株式会社ブリヂストン
グローバルモータースポーツ推進課長
中原 啓成 氏
2024年3月、トワロンネクストは、環境責任を果たしつつ高性能を追求する次世代のタイヤ開発への貢献が認められ、タイヤ業界における国際的な展示会「Tire Technology Expo 2024」内で開催された「Tire Technology International Awards for Innovation and Excellence」において、「Materials Innovation of the Year」を受賞した。
一方、ブリヂストンでは、同社として初めて、タイヤを原材料に「戻す」リサイクル技術の共創活動を通じて開発・生産された再生資源である再生カーボンブラックおよび再生スチールも採用。再生資源※1 ・再生可能資源※2 比率を 65%以上に向上させた「ENLITEN」※3技術搭載タイヤが、世界最高峰のソーラーカーレース 「BWSC」において、17カ国・地域から参加する32チームに使用された。
BWSCは、太陽光による限られた電力でオーストラリア大陸を約3000km縦断する過酷なソーラーカーレースだ。ブリヂストンにとっては、技術を磨く場でもある。
「ブリヂストンでは、タイヤを『創って売る』『使う』、原材料に『戻す』というバリューチェーン全体でカーボンニュートラル化、サーキュラーエコノミーの実現を目指しています。この度のBWSCでは、パートナーとの共創により、ソーラーカーに求められる性能を確保しながらサステナビリティをさらに進化させた最新のタイヤで32チームの挑戦を支えるとともに、使用タイヤ本数の削減や低炭素なタイヤ輸送などを通じて、バリューチェーン全体で環境負荷の低減に努めました」と、ブリヂストンの中原啓成氏は語る。

Teijin Aramid
Global Market Manager Tires
Tony Mathew 氏
オランダのデルフト工科大学のブルネル・ソーラーチームも、2025年度のBWSCに参加。彼らのソーラーカー「Nuna13」には、ブリヂストンが提供するタイヤが装着される。スピード、エネルギー効率、耐久性を追求し、1年におよぶ設計を重ねて導き出された集大成であるNuna13のパフォーマンスは、新しい素材における実際の使用環境下での有効性を裏付ける。
ブルネル・ソーラーチームにとって、Nuna13の開発は試行錯誤や取捨選択の判断の連続であり、イノベーションには信頼性とのバランスが求められ、限られたリソースの中、プレッシャーにさらされながら進められた。
Teijin Aramidは、この開発過程を描いた、3部作のドキュメンタリー動画「Building Nuna」を制作。若きエンジニアたちがアイデアを試し、困難に直面しながら、高性能と持続可能性を両立する設計の実現にどう向き合っていくかが描かれる。さらに、「Building Nuna」では、次世代のエンジニアたちが、協働・技術への真摯な姿勢・実践的な創造力を通じて、未来のモビリティの課題にどう向き合っているかを伝え、新たな素材が実際にどのように活用されていくかが見て取れる。
「トワロンネクストは、強度や耐熱性および加工性能を損なうことなく、サーキュラー原料を補強材料に使用できることを過酷なBWSCの環境下で証明しました。今回のプロジェクトは、素材の技術革新と実環境での実装がともに実施されたことによって実現したものです。ブリヂストンや学生チームは私たちの重要なパートナーであり、“共創”によって私たちの大志は実現します」(Tony Mathew氏)

ENLITEN技術搭載タイヤを装着したNuna13

サーキュラー原料を使用したトワロンネクスト
今回の共創は、新しいタイヤ設計の実現だけにとどまらず、新しい素材をどのように実用化していくか、というモデルケースにもなった。真剣な技術陣同士の対話や共同開発により、高い機械物性と持続可能性の両立の実現が可能になる。これからも、ブリヂストンとTeijin Aramidは、より持続可能なモビリティの未来への貢献を目指し取り組む。