
リカーリングモデルへのシフトを目指す製造業の企業に対し、タレスが実際に提供できる支援について、ブロット氏は次のように解説する。
「我々が提供できる最大の支援は、ソフトウエアマネタイゼーション(ソフトウエア収益化)です。顧客のCRMやERPといったバックオフィスのシステムと完全な連携ができるため、提供するパッケージ(製品構成)と価格設定の柔軟な変更が可能となり、サブスクリプション型や従量制などのあらゆるモデルを導入できるようになります。
ソフトウエアマネタイゼーションは、DX(デジタルトランスフォーメーション)の領域において『Low-hanging fruit』、つまり簡単に手に取りやすい果実だと言われています。リカーリングはDXの一種ですが、改革の最初にこの果実を手にすることで、各ソフトウエアを最大限に活かし、収益の増加につなげやすくなるのです」
加えて、ブロット氏はセキュリティの万全性についても、自信を持って語る。
「セキュリティはタレスのDNA(遺伝子)として深く根付いています。我々はIPを守るためにソフトウエア自体にプロテクションをかけている上に、データ保護やサイバーセキュリティ保護など、さまざまなサイバーセキュリティ関連の製品を取りそろえています。これらを組み合わせることにより、さらなるセキュリティ体制の強化が実現します」
タレスのサイバーセキュリティソリューションは、アプリケーションのセキュリティ、データセキュリティ、IDおよびアクセス管理、ソフトウエアの収益化の4つの主要分野から成る。それぞれを組み合わせることによって強固な防御基盤が築かれ、万全なセキュリティ体制の下、リカーリングモデルへ移行できる。
モデレーターの桔梗原氏によると、「近年は『DX with Cybersecurity』の重要性が認識されつつあり、両者を両輪で進める企業が増えている」という。こうした状況において、盤石なセキュリティ体制を備えたタレスからは心強い支援が期待できるだろう。
同社の支援を通じて、実際にリカーリングモデルへの転換を実現した事例が豊富にあると、ブロット氏は続ける。
「私たちの顧客である世界的な医療機器メーカーであるフィリップスは、MRIを実際に使用した分だけ費用が発生する従量制を取り入れたことで、高額な設備投資が難しい小規模なクリニックにも市場を拡大しました。またドイツの農業機械メーカーのクラースは、トラクターの最新機能を実際に使用した時間に応じて課金する仕組みを導入し、継続的な収入を得ています」
青嶋氏によると、日本国内でも既にリカーリングモデルへの転換に成功している企業は多数あるという。
「例えばコマツは、建機の販売によって収益を得ていましたが、デジタルツインの技術を用いて建設プロセス全体の生産性を高めるソリューションを提供するビジネスモデルによって売り上げを伸ばしています。また、日立製作所は鉄道や発電設備の開発における強みを活かして、近年はHMAXというAIソリューションを立ち上げ、設備から収集される膨大なデータを分析し顧客に提供しています。どちらも顧客との継続的な関係性を構築しながら安定的に収益を獲得しており、国内におけるリカーリングモデルの先駆的な成功事例と言えるでしょう」

桔梗原氏は「お二人が提示した事例はCXによる新たな価値創造であり、『モノづくりの競争』が『価値づくりへの競争』へと変わりつつあるのを感じます」と語る。同氏の「成功している企業の共通点は?」という問いかけに対して、2人は「トップのイニシアティブ」だと声をそろえた。
日経BP 総合研究所
フェロー
桔梗原 富夫 氏
「リカーリングモデル導入のためのIT投資は非常に高額です。顧客数が臨界点を超えると売り上げは指数関数的に伸びますが、その点に達するまでには時間を要するため、事前に一定の予算や時間を確保しておく必要があります。またビジネスモデルを変える際には事業部横断的な取り組みが必須になりますから、この点からも経営トップの旗振りは欠かせません」(青嶋氏)
「私も青嶋さんに同感です。加えて、成功する企業には、自社製品や技術のイノベーションに注力しているという共通点があります。顧客にバリューを感じ続けてもらうためには、イノベーションの継続が不可欠です。英語ではこれを『Flywheel(フライホイール)』と言い、バリューの提供とイノベーションの実現が交互に発生し、ビジネスの成長が加速していくリカーリングモデルの理想的な状態を表しています。
このFlywheelの状態を1社で作るのは困難です。当社のようなパートナーの力を使って新たなビジネスモデルの基礎となるシステムを築き、自分たちはイノベーションの創出に注力するという切り分けが大切なのです」(ブロット氏)
顧客との信頼関係の構築が鍵を握るリカーリングモデル。モノづくりから価値づくりという方向性の転換は容易ではないかもしれないが、それでも変革へ挑む企業に対し、2人はメッセージを送る。
「Flywheelの状態を実現するために重要なのは、スピードです。パートナーの存在なしに変革を進めようとすると、部門間の調整などに必要以上の時間を要してしまい、リカーリングモデル導入の効果が出にくくなってしまいます。
お客様に価値を提供し続けるためには、製品やサービスの機能を短期間でどんどん変化させていかなくてはなりません。その変化を助けるのが、我々の役割です。我々は企業が変革に必要な施策を的確に把握できるよう、細やかな支援を提供していきます」(ブロット氏)
「日本はAI単体ではまだ海外に勝てないかもしれませんが、実際にモノを作るフィジカルな部分は現在も大きな強みです。しかも転換のタイミングとしては今がラストチャンスでしょう。この強みを最大限に活かすためには、やはりリカーリングモデルへの転換は避けては通れません。ぜひタレスのような心強いパートナーの力を借りながら、変革を成功させて、グローバル市場で大きな存在感を発揮してもらいたいと思います」(青嶋氏)
