カーボンニュートラル実現のカギとなる
次世代EV用電池の開発を支援
~ LIMSをハブに分析製品との連携で
研究開発を加速する ~
カーボンニュートラル
実現のカギとなる

次世代EV用電池の
開発を支援
~ LIMSをハブに
分析製品との連携で
研究開発を加速する ~
 カーボンニュートラル実現のカギを握る電気自動車(EV)の一層の普及には、高性能かつ価格競争力の高い車載電池の開発が不可欠だ。サーモフィッシャーサイエンティフィック(以下、サーモフィッシャー)のラボ情報管理システム(LIMS)はEV用電池開発ワークフローにまたがる分析情報管理システムとして機能し、車載電池の開発の加速・高度化に貢献する。LIMSとサーモフィッシャーの分析機器の連携がもたらしうる価値などについて、サーモフィッシャーのラボ情報管理システムソリューションを担当する、デジタルサイエンス&オートメーションソリューション シニアマネージャーの片山翔太氏に聞いた。

EV普及のカギは
高性能で低原価の
リチウムイオン電池の開発

 温室効果ガス排出を2050年までにゼロにするカーボンニュートラルの実現には、EVの普及が大きな役割を果たす。しかしEVの需要は足元では鈍化傾向にあり、その背景にはエンジン車と比べた航続距離の伸び悩みや車体価格の高止まりなどがある。

 EV需要を再び成長軌道に乗せるには、航続距離などの走行性能を左右し、車体コストの約3割を占めるともいわれる車載電池の性能向上とコスト削減が欠かせない。すでに多くのバッテリーメーカーが電池性能の向上に向け、激しい開発競争をグローバルに展開している。その中でも日本メーカーは、海外メーカーによる低価格攻勢や原料価格の高騰リスクにも直面しており、高性能化の追求と同時に価格競争力の一層の強化を迫られている。加えて、バッテリーメーカーの開発現場では、より高性能で低原価のリチウムイオン電池を短いサイクルで開発し、市場に迅速に投入するためのニーズが高まっている。さらに、充電1回あたりの航続距離が長く、充電時間も大幅に短縮できるEV向け全固体電池をはじめとする次世代電池を見据えた中長期の開発競争も本格化するなど、電池の開発を取り巻く環境は大きく変わりつつある。

分析情報統合管理
システムとして
電池開発を
加速・高度化するLIMS

 リチウムイオン電池の開発では、何通りもの原料や製法を組み合わせた試作品を、安全性や耐久性、エネルギー密度、電圧など複数の観点で検証し、最適な原料・製法の組み合わせを特定していく。高性能かつ価格競争力の高い電池を迅速に開発するためには、試作品の検証サイクルを高速で回した上で、少ない試作回数で最適な原料・製法の組み合わせの特定につながる深いインサイトを得る必要がある。サーモフィッシャーのLIMSは、EV用電池の開発ワークフローにまたがる分析情報管理システムとして機能し、複数機器の統合管理・連携による検証サイクルの高速化や、複数の機器データの統合を通じた深いインサイトの導出に貢献する。

 LIMSの最も重要な機能は、電子顕微鏡やクロマトグラフィー・質量分析機器など複数の分析機器から出力されるデータを自動で統合・整形し、さらにはそれらを活用したビジネスインテリジェンス(BI)やAIなどによる高度な分析を可能にすることだ。これらの機能により、開発サイクルの省人化・高速化を図ると共に、複数機器のデータの統合分析を通した、単一もしくは少数機器からのデータのみでは得られない深いインサイトを導き出すことができる。

LIMSは、ラボのなかのあらゆる情報、データやワークフローを一元管理するためのシステムである。

 従来、分析データの記録・処理はスプレッドシートなどへの手作業での入力や手書きによって行われることが非常に多く、開発ワークフロー効率化のボトルネックや、データの記録ミスやデータ間の対応関係の齟齬の原因となってきた。

 「日本ではバッテリーメーカーの場合、分析データをスタッフがノートに手書きしたり、Excelに入力して管理したりしているケースが多いようです。機器類は装備しないと分析作業ができませんが、LIMSを導入しなくてもデータの記録はできます。そのため、国内メーカーではLIMS導入が後回しになっていました。ただ、LIMSを導入した欧米の自動車・化学メーカーでは記録ミスが格段に減るだけでなく、統合分析によるインサイトも得られるようになっていることから、日本でもLIMS導入の機運が急速に高まっています」とサーモフィッシャーの片山翔太氏は語る。

サーモフィッシャーサイエンティフィック ジャパングループ
デジタルサイエンス&オートメーションソリューション
シニアマネージャー
片山 翔太 氏

LIMSを基軸に幅広い
分析機器データを一元管理、
一気通貫の電池開発
ワークフローも視野に

 開発の現場では、研究テーマごとのワークフローの組み替えや人員の配置換え、分析機器や試薬などの必要リソースの割り当てが随時発生する。その度にリソース配分を最適化するのが理想であるが、実際にはリアルタイムでの最適化は困難で、オペレーションにムリやムラが発生し、開発品質の低下やリソース浪費の原因になってしまう。これに対して、LIMSのBI機能を活用してリソースや稼働状況を可視化することで、タイムリーにリソース配分を最適化でき、結果として高品質の研究を最小限のリソースで迅速に実行できるようになる。

 「サーモフィッシャーのLIMSは、設計思想としてノーコードでフローを構築する仕組みを採用しています。研究現場ではしばしばプロセスの変更が発生します。それに対して、私たちはSIerのようにシステムを構築して費用を受け取るのではなく、プロセスが変わっていくことを前提にユーザー自身が自分たちで構築して、育てていくことができるように仕組みにしています」(片山氏)。

 電池開発において行われる分析には様々な種類があり、分析機器のデータ出力形式も数値から、画像、グラフまで多岐にわたる。サーモフィッシャーのLIMSは、科学データ管理システム(SDMS)を搭載しており、多様なデータ形式に対応し、分析生データを一元管理できるため、電池開発ワークフロー上の幅広い分析機器と連携することが可能だ。そのため、電池材料の開発においてLIMSを基軸とした一気通貫のワークフローも考えられる。

サーモフィッシャーのLIMSはSDMSを搭載。
分析機器のデータを生データとして保管・管理することで、データの二次活用や規制対応が可能

LIMSと多様な分析
ソリューションの連携で
データトレーサビリティを
強化し、生産性を向上

 新規の電池材料開発においては、多種の材料配合パターンを作成した上で、ラマンなどの分光分析機器や誘導結合プラズマ質量分析/発光分光分析(ICP-MS/OES)装置などの化学分析機器による特性評価を行うことがある。また、それらの材料を用いた電池プロトタイプの不良解析においてはガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)による副生ガス成分分析や、電子顕微鏡による電極/電解質界面(SEI)観察など複数の分析が行われるケースもある。LIMSは各種分析のデータを統合し、深いインサイトを得るためのデータ基盤としても活用できる。

 LIMSの活用方法について、片山氏は「他社の分析機器との連携も可能ですが、親和性の高いサーモフィッシャーの製品と組み合わせて使うことで、開発の高速化と、統合分析による深いインサイトの獲得に特に大きな効果を発揮できます。またサードパーティーのAI解析ツールとも連携することで、データ取得から分析実行までのワークフロー全体をシステム内で完結することが可能です」と説明する。

 LIMSと分析機器の連携は電池の開発においてデータトレーサビリティの強化や、データプロセシング工数の削減にも貢献しうる。LIMS上で実験に紐づくサンプルのバーコードラベルを活用したID管理を行うことで、個々のサンプルに対してのデータ取得履歴といったメタデータと実験結果データが関連付けられて保管できるため、データの入れ違いや改ざんを防止できる。加えてLIMS上でデータ取得・処理プロトコルをあらかじめ定義することで、分析結果値に加え画像やグラフなど、関連するデータ同士を自動で紐づけすることができ、煩雑なデータプロセシングの工数が削減される。

 また、クロマトグラフィー分析においては、LIMSとクロマトグラフィーデータシステム(CDS)を連携することで、分析生産性が向上する。クロマトグラフィー分析では大量のサンプルを一つのシーケンスで分析することが多く、サンプル登録や、サンプルごとの分析プロトコル設定に多くの工数が発生する。LIMSとCDSを直接連携することによって、サンプルやプロトコルの自動登録が可能となり、煩雑な工数を削減し、電池開発のイノベーションを加速することが期待される。

 この点について、片山氏は「開発サイクルの高速化ではLIMSとロボットの連携も大きな効果を生みます。ラボでは物理的な作業が必要になるプロセスがあります。今まで人手で作業していたのですが、LIMSからロボットに指示して作業を行うようにすれば、分析が自動化され、開発サイクルのスピードアップと省人化が可能になります」と述べ、続けて「転記ミスをはじめとするヒューマンエラーに対応するために多くの現場で行われている複数のスタッフによる確認作業もLIMSで自動化することで排除することができます」とその効果を強調する。

日本のバッテリーメーカーによる
開発の加速を支援

 日本のバッテリーメーカーの技術水準は世界をリードしている。その一方で、製薬をはじめとする他業界や海外と比べ、日本のバッテリー業界はデジタル化のさらなる推進が求められており、開発の効率化・高度化を推し進める余地が大きく存在する。

 「サーモフィッシャーは、日本のバッテリー業界のお客様との接点をより増やし、LIMSやLIMSをハブとしたトータルソリューションで、グローバルでの展開も含めて、電池開発の加速を支援していきます」(片山氏)。

 サーモフィッシャーは、クリーンエナジー、とりわけバッテリー分野のイノベーションへの貢献を重点領域の一つに据えて、組織を横断する形で取り組みを進めている。日本のバッテリーメーカーや材料メーカーのイノベーションに貢献していくことで、カーボンニュートラル実現に一層貢献していく考えだ。

お問い合わせ先
サーモフィッシャーサイエンティフィック
ジャパングループ
https://www.thermofisher.com