IoTプラットフォーム BizStack活用事例/
ニチレイロジグループ

全国の冷凍倉庫のデータをクラウドに集約し
設備監視業務
「利便性」「質」
大幅
向上させた
仕組
みとは

低温エンジニアリングサービスを提供するニチレイ・ロジスティクスエンジニアリング。同社では、全国各地の冷凍倉庫で運用される冷凍機の稼働状況を監視している。しかし以前は、システムが拠点ごとに個別に構築されていたため、一元管理をすることができずにいた。その課題を解消するべく構築したのが、MODE(モード)のソリューションを用いた遠隔監視システムだ。ここでは監視業務を飛躍的に効率化させたニチレイロジグループによるIoTプラットフォームの活用法について見ていきたい。

グループを挙げてDXを
力強く推進するニチレイ

 労働力不足が深刻化している。その代表格として挙げられるのが物流業界だ。事業の持続性を確立するため、企業規模を問わずビジネスモデルを変革する必要性が以前から強く叫ばれてきた。

 その解決に向けて物流DXを積極的に推進するのが、低温物流を担うニチレイロジグループだ。ちなみにグループを統括するニチレイも「DX銘柄2024」に選定されており、まさに全グループを挙げてDXに取り組んでいる。

 ニチレイロジグループの施策は、ユニークかつ多岐にわたる。その1つがドライバーの時間外労働規制に伴う「物流の2024年問題」への対応だ。同社では「SULS(サルス)」と呼ばれる、次世代の輸配送システムを開発。このシステムでは、トレーラーの荷台部分を切り離して効率的に荷積み・荷下ろしを行うことで、運行時間を短縮し、物流の効率化に成功している。

 もちろん、同社が推進するのはドライバー不足への対応だけではない。「冷蔵・冷凍倉庫内での業務をタブレット端末の活用などで平準化する『誰でもできる化』や、FAXによる受発注をサーバーに集約するなどしてリモートでの事務作業を可能にする『どこでもできる化』の実践によって、物流拠点における生産性向上も図っています」と話すのは、ニチレイロジグループ本社の勝亦 充氏だ。
株式会社ニチレイロジグループ本社 業務統括部 シニアア部長ドバイザー 勝亦 充氏
株式会社ニチレイロジグループ本社
業務統括部
部長
勝亦 充
 ニチレイロジグループの1社で、冷凍設備の設計・施工や設備管理などの低温エンジニアリングサービスを提供するニチレイ・ロジスティクスエンジニアリングもまた、「誰でもできる化」や「どこでもできる化」を推進している。その施策の1つが、全国に展開する物流センターの冷凍機の遠隔監視だ。新しいシステムによって、拠点外から冷凍機の稼働状況を一元的にモニタリングできるようにしたのである。

ユーザーのニーズに応じて
プラットフォームを最適化

 同社では、これまでも商品の品質を維持するため、冷凍機の吸入、吐出圧力や庫内温度を厳格に管理してきた。しかしセンサーの種類は冷凍機メーカーによって異なり、運転を制御するソフトウエアの仕様もまちまちだったことから、拠点ごとの監視しかできていなかったという。

 「省エネ対策のために複数拠点の稼働状況を比較対照したいときなどは、それぞれの設備管理担当者からデータを提供してもらわなければなりません。担当者が常駐しない小規模な物流センターについては、近隣の拠点の担当者が定期的にデータの確認に赴くといった手間もかかっており、遠隔での監視や一元管理をできるようにすることが以前からの課題でした」とニチレイ・ロジスティクスエンジニアリングの高橋 一郎氏は振り返る。
株式会社ニチレイ・ロジスティクスエンジニアリング 執行役員 プラントエンジニアリング事業本部 副本部長 企画開発部長 高橋 一郎氏
株式会社ニチレイ・ロジスティクスエンジニアリング
執行役員
プラントエンジニアリング事業本部 副本部長
企画開発部長
高橋 一郎
 そこで企図されたのが、IoTソリューションを用いた遠隔監視システムの構築である。同社では慎重に、複数のベンダーによる提案を検討。最終的に選出したのが、MODEの「BizStack(ビズスタック)」だった。
フレキシブルに設計できるUI
(デモ画面)
フレキシブルに設計できるUI(デモ画面) BizStackは複数の現場から個別に得たデータを一元的に見られるようにし、スマートな業務遂行を支援。
そのUI(ユーザーインタフェース)は表示したい項目の配置を自在にカスタマイズできる
 「他社が勧めるパッケージ製品とは違いプラットフォーム自体をユーザーの要望に応じてアレンジできる柔軟性があったので、より使い勝手のよいシステムになると期待しました」とニチレイ・ロジスティクスエンジニアリングの吉田 有花氏は語る。
株式会社ニチレイ・ロジスティクスエンジニアリング 企画開発部 吉田 有花氏
株式会社ニチレイ・ロジスティクスエンジニアリング
企画開発部
吉田 有花
 導入を決めた2020年当時のMODEは広く知られる存在ではなかったが、高度なIoTゲートウェイ技術を活用したソリューションには定評があり、大手企業による採用実績もあった。また、ベンダーの選定段階からエンジニアがプロジェクトマネージャーに同行して現場の倉庫の状況を子細にリサーチした機動性や、コストパフォーマンスが他社と比較して優れている点など、むしろスタートアップならではの魅力を感じたという。

 「各フロアだけではなく拠点全体のマップも一緒に表示できるようにしたいと望めば応じてくれましたし、画面遷移の遅さを指摘すれば直ちに改善されるなど、開発途中で改めて対応力の高さを実感しました」(吉田氏)

 とりわけ吉田氏にとって印象深かったのが、あるリクエストをしたときのこと。冷凍機の運用を効率化するため、「任意の拠点のリアルタイムの温度とともに、過去の一定期間の温度のトレンドデータも表示して対比できるようにしたい」と伝えたのだ。できれば生データを見られるようにしたかったが、データ量が膨大でその機能を実装するのは容易ではない。そこでMODEは同一画面で表示するトレンドデータの範囲が1週間未満なら生データ、それを超える期間については平均化したデータを表示することを次善策として提案したという。
トレンドデータも併せて可視化
(デモ画面)
トレンドデータも併せて可視化(デモ画面) 庫内温度のリアルタイムデータとともに、過去のトレンドデータを表示する機能を追加。
両データを比較対照することは、設備をより効率的に運用するためのナレッジを得るのに役立つ
 「平均化されたトレンドデータでも効果的だと感じたので承諾しました。難しいオーダーに『できません』ではなく、可能な限りユーザーのニーズを具現化しようとする姿勢に感銘を受けました」と吉田氏は振り返る。

監視業務の「利便性」と
「質」が大幅に向上

 およそ半年の開発期間を経て構築された遠隔監視システムは、すべての冷凍機の稼働データをクラウド上に集約している。そのため各拠点の設備管理担当者に加え、複数の拠点を束ねて管理するエリアマネージャーや本部の管理者が、どこからでも任意の拠点のリアルタイムの状況やトレンドデータを見られるようになった。それを可能にしたのは、ベンダーフリーでどんなデータも取得できるゲートウェイ技術と、データを構造化してユーザーが見やすいように表示する技術である。

 以前、冷凍機の異常が発生した際は、詳しい状況までは把握できず、担当者はアラートを受けるたびに現場へ急行して機器を確認しなければならなかった。一例では、ある拠点は平均して毎月数回、アラートが発報されていた時期もあったという。

 「熟練者でなければアラートの緊急度がメールだけでは判断できず現場に出向くしかなかったのですが、今では遠隔監視システムにアクセスし、過去のデータと照らすなどして現場へ行くべきかどうかを判断できるようになりました。とくに夜間にアラートを受けて自宅から現場へ出向く回数が減ったことは、働きやすい環境づくりにも寄与しています」と吉田氏は語る。

 また、設備管理の担当者が他拠点のデータを参考にすることで、自拠点の運用改善のヒントを得られるようになったことも大きい。加えて、アラートの発出状況を一覧できる画面も作成され、エリアマネージャーや本社の管理者が重大なトラブルに素早く気付けるようになったのも成果の1つだ。

 「冷凍機の中には、型式が古く特殊な配線工事をしなければ圧力センサーを接続できないものもあります。そうした冷凍機では温度データしか得ることができませんでしたが、無線通信機能を備えた圧力計があることを紹介してもらい、それを使うことで圧力データも集められるようになりました」と、MODEのきめ細かい支援体制を高橋氏と吉田氏は高く評価する。

 システム構築時には予定していなかった場所の温度を計ったり、機器の振動データを取ったりする必要に迫られたときに、新たなセンサーを簡単に追加できる拡張性を備えているのもBizStackのIoTプラットフォームの特長だ(コラム参照)。低温の冷凍庫内では計測機器が正常に機能しない場合や電源・ネットワーク配線が利用できないこともある。そこで、専用電源を必要としないアイテックのメンテナンスフリー無線CTセンサやフジトクのIoT機能付デジタル圧力計などニーズに合わせて追加導入した。「多数のセンサーメーカーをパートナーとしているMODEだったからこそ、そうした環境でも使えるツールを探してくれるといった面でも頼りになりました」と高橋氏は話す。
名古屋みなと物流センター
名古屋みなと物流センター

物流業界全体の生産性アップに
貢献したい

 さらに注目したいのは、今回改善されたのが設備の監視業務だけではないという点だ。各拠点の日々の冷凍機の稼働データは「運転日報」にまとめられるが、その運用も効率化された。

 「以前は紙に出力した日報を各拠点の複数の管理者・承認者で回覧していましたが、そのフローも併せてデジタル化しました」と吉田氏は話す。遠隔監視システムの管理コンソールから日報データを入力すると自動的に承認システムに取り込まれ、各承認者がクラウド上で迅速に承認できるようになった。その仕組みを実現するため、MODEは拠点ごとにバラバラだったフォーマットの統一もサポートしたという。

 ニチレイロジグループの保管型物流センターは全国に約80拠点あり、これまでに50拠点がこの遠隔監視システムを導入。今後も適宜展開を進めていく計画だ。最近は各拠点から集めたデータをWMS(倉庫管理システム)と連携させ、入出庫の頻度・在庫量などと冷凍機の稼働時間の関係を可視化して分析する試みも行われるようになった。

 CO2(二酸化炭素)の排出量削減は、あらゆる企業に共通した経営テーマだ。冷蔵・冷凍倉庫において大部分が冷凍機の運転によるもので、遠隔監視で得たデータに基づいて冷凍機の運転効率を高める対策をすることは極めて重要なテーマだ。「ニチレイロジグループ本社はDXによる業務革新の目的を単なる効率化ではなく『新たな価値創出』の手段と規定しています。この取り組みは、まさにそれを具体化したモデルケースとなるため、さらなる進展に期待しています」と勝亦氏は語る。

 ニチレイ・ロジスティクスエンジニアリングは、ニチレイグループ以外の多数の冷蔵倉庫会社や食品企業にも低温エンジニアリングを提供している。将来それらの顧客に向け、MODEと共創したこのシステムを付加価値サービスとして外販する構想もあるという。

 「かつての当社のように、冷凍機の稼働状況を遠隔監視できないことにお困りのお客様は少なくないはずです。私どもが培った『誰でもできる化』『どこでもできる化』の仕組みを活用していただくことで、業界全体の効率化を図れればと考えています」(高橋氏)

 多種多様なデータを可視化してインサイトをもたらすIoTプラットフォームは、物流や設備管理の領域に潜む困難な課題を解消に導く大きな力を秘めているようだ。
ニチレイロジグループが
活用するBizStackとは
BizStackは各種デバイスやセンサーから収集したデータを可視化し、多角的な分析を可能にするIoTプラットフォーム。開発・販売元のMODE,Inc.は、2014年に設立されたシリコンバレー発のスタートアップだ。共同設立者でCEOの上田 学は2001年に渡米し、GoogleやTwitter(現・X)などのテック企業で10年以上にわたりソフトウエア開発に従事。Googleでは日本人2人目のエンジニアとしてGoogleマップの開発に携わるなど貴重な経験を積んだ。エンジニアの自由な発想が尊重され、カオスの中から革新的な技術が生まれる環境に大きな刺激を受け、「企業がデータを最大限に活用できるよう支援したい」との思いを込めて開発したBizStackには、シリコンバレーで培われたクリエイティビティが結実している。
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