Digital Back Office Summit REVIEW

トレードシフトジャパン

DX実現のカギ:3つのステップで進化を遂げる
まずPDFをやめ、デジタル化へ進もう

日本の労働生産性を高めるためには、画期的なアイデアを求めるだけでなく、論理的で整合性のある業務プロセスの導入が肝心だ。トレードシフトジャパンの菊池孝明氏は、「電子化」と「デジタル化」の違いを解説し、前者から後者へと段階を踏んだ上で初めてデジタルトランスフォーメーション(DX)が成立すると話す。菊池氏は日本の商取引における“脱PDF”も強く訴え、PDFをなくすことこそ業務プロセスの改革につながるとの持論を展開する。

紙のPDF化はデジタル化なのか? 真のデジタル化の意味とは

菊池 孝明氏

トレードシフトジャパン株式会社 代表取締役社長 菊池 孝明

菊池氏は講演の冒頭で、「53」という数字を示した。この数字は公益財団法人日本生産性本部が発表した「労働生産性の国際比較 2023」から引用したデータで、主要先進7カ国中、日本が時間当たりの労働生産性において53年連続最下位という記録を表している。OECD(経済協力開発機構)加盟38カ国の中で30位に下がったと報じられ、菊池氏は「日本は相対的にどんどん非効率になっている」と語る。

労働生産性を向上するには、常態化している無駄な業務を削減していかなければならない。菊池氏はそもそもどのような無駄があるのか、紙ベースでやり取りしている書類のPDF化を例に挙げた。

「PDF化した書類をメール添付で送ることで『デジタル化をしている』と思われている企業もありますが、これはあくまでも“置き換え”です。紙をPDFに、郵便をメールに置き換え、ある程度の手間の削減と業務スピードの向上はできたかも知れませんが、基本的な業務フローは変化していません」。

菊池氏は置き換えとは電子化、すなわち「デジタイゼーション」を指し、真のデジタル化とは「デジタライゼーション」であると解説する。デジタライゼーションとはデジタル技術を駆使して業務プロセスそのものを再編すること、そして既存の作業を「削る」のではなく、作業そのものを「なくす」ことだという。

PCで作成した文書を、紙やPDFに出力する作業工程は、本当に必要なのか。そのまま数値や内容を文字データとしてセキュアに共有すれば、受け手はそのデータを、人を介さず社内の基幹システムに直接反映できる。送り手のプロセスだけでなく受け手も読み取りなどの作業がなくなり、システム処理が可能となり、プロセスが大きく変わる。菊池氏は、これこそがデジタル化だと話す。

電子化からデジタル化の流れを組んで、初めてDXが実現する

続いて菊池氏は、総務省による令和3年版の「情報通信白書」を引用しながら商取引のデジタル化とDX施策のフローについて言及した。

商取引のデジタル化とは「電子取引」から始まるプロセス改革を指す。そして、電子取引の先にDXがある。菊池氏は「デジタル化はあくまでもDXの前段階」だと述べた。

「DXに至る過程は、まず物質的な情報をデジタルに置き換える電子化が最初のステップとなります。次に、業務プロセスをデジタル技術によって再編するデジタル化を進め、ようやくDXが実現できます。この段階を踏み、DXがもたらす新しい価値の創出や競争優位性の確立などが実現でき、ビジネスインパクトを生み出せるようになります」。

電子化とデジタル化は混同されやすいが、現状の紙ベースのプロセスを単にPDFなどのデジタル媒体に置き換えるだけではなく、デジタル化によってプロセス自体をゼロベースで見直す。この考え方こそが、低い労働生産性から脱却する唯一の方法だろう。

菊池氏は混同されがちな電子化とデジタル化の違いについて、電子化とは媒体の置き換えであるのに対しデジタル化はプロセスそのものを「なくす」ことだと強調する

菊池氏は混同されがちな電子化とデジタル化の違いについて、電子化とは媒体の置き換えであるのに対しデジタル化はプロセスそのものを「なくす」ことだと強調する

菊池氏は、このステップを通じてDXを成立させた例として、Amazonの取り組みを引き合いに出して説明した。通販カタログをWebカタログに置き換えた電子化に始まり、受注からピッキングまでのデジタル化によるプロセス再編を経て、配送リードタイムの短縮や在庫の集約、さらには配信サービス、ビジネスツールの提供など、単なる効率化ではなく、DXによる新しい価値創出や競争優位の獲得を実現している。

いまだにPDF頼みの日本、世界に後れを取る可能性も

電子取引に関連し、現在大きなトピックとなっているのがデジタルインボイスだ。デジタルインボイスは「構造化および標準化された請求データをデジタルデータとして送受信する文書、プロセス、仕組み」と定義される。PDFなどの画像データは「構造化および標準化」されておらず、すべての企業が同一の請求データ・意味を共有できるデジタルインボイスとは区別される。

デジタル庁はデジタルインボイスの標準仕様として、国際標準の「Peppol(ペポル)」を採用しているが、菊池氏は「早くPDFから脱却しないと、諸外国からさらに後れを取ってしまいます」と警鐘を鳴らす。事実、紙やPDFは認められず、デジタルインボイスを義務化している国が増えており、この流れはグローバルの潮流となっているという。

デジタルインボイスを含め、エンド・ツー・エンドでデジタル処理できる電子取引を進めるには、ツールが不可欠である。ただし、その導入にはコストや操作性の考慮だけでなく、取引先にも対応してもらうといった点でハードルも高い。菊池氏は、トレードシフトジャパンが提供する「Tradeshift」は国内においては無料で使うことができる上、マニュアルがなくても使えるシンプルなシステムであるため、初心者でも簡単に操作できると説明する。取引先に負担をかけることがないため何千という取引先を持つ大企業でも、デジタル化を進めることができる。これが他のサービスと差別化できる大きなポイントだと話す。

「弊社のサービスは200万社が参加する世界最大級のビジネスネットワークです。操作はスマートフォンアプリのように容易です。SNSの友だち検索機能のように取引先企業を探し、友だちリクエストを送信する感覚でつながることが可能です。お取引先に電子取引へ参加していただくハードルは極めて低いと言えます」。

取引したい企業のプロフィールから「つながる」ボタンを押すと、メッセージアプリでいう「友だちリクエスト」が送信される。相手企業がそれを承諾すると企業同士が接続され、電子取引が可能になる仕組みだ

取引したい企業のプロフィールから「つながる」ボタンを押すと、メッセージアプリでいう「友だちリクエスト」が送信される。相手企業がそれを承諾すると企業同士が接続され、電子取引が可能になる仕組みだ

電子化からデジタル化、そしてDXへ。合理的なステップを経て業務プロセスを刷新し、新たな価値創造に向かうため、トレードシフトのようなツールが頼れる存在となるはずだ。

トレードシフトジャパン株式会社