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国産の樹脂流動解析ソフトウエアが「3つのコンセプト」で大幅リニューアル

金型の修正回数の削減には、金型設計の早期段階で樹脂流動解析ソフトウエアを利用して不良発生要因を洗い出し、適切な対策を施す必要がある。東レエンジニアリングDソリューションズ(以下、TRENGD)は、樹脂流動解析ソフトウエア「3D TIMON」を、約10年ぶりに刷新。使い勝手と性能を大幅向上させた「XTIMON」(クロスタイモン)を投入する。

 例えば自動車用部品では、通常7~8回もの金型修正が発生し、完成までに12週間から16週間もの期間を要している。しかも修正1回当たりのコストは数十万から数百万円に上ることがある。金型の修正回数を減らすためには、設計の早期段階で金型中の樹脂の流れや固化、製品の反りなどをコンピュータ上でシミュレーションし、成形不良につながる問題を事前に洗い出す樹脂流動解析ソフトウエアの活用が欠かせない。

現業部門の担当者でも
高度なCAE活用が可能に

 現時点において、製造業では複数の樹脂流動解析ソフトウエアが利用されている。その中で、TRENGDの「3D TIMON」は、樹脂素材を熟知する東レグループの知見を注いで開発された、解析のプロ好みのツールとして知られていた。その性能は高く評価され、現在までに約600社、1000ライセンスが利用されてきた。

山川 耕志郎氏
東レエンジニアリングDソリューションズ株式会社
常務理事
システム技術本部 CAE技術部長
山川 耕志郎

 近年、樹脂の射出成形で顕在化する要求のさらなる高度化を背景にして、3D TIMONが、CAE専任者だけではなく、設計や生産準備などを担う現業部門の担当者でも利用されるようになってきた。ただし、これまでの3D TIMONは、高精度化に向けて多様なパラメーターを細かく自在に設定できる特徴が、逆にユーザーの敷居を高めていた。「より多様なユーザーが活用できるようにするため、大幅刷新の必要性を感じていました」とTRENGDの山川耕志郎氏は話す。

 そこでTRENGDは、約10年ぶりの大幅刷新を決断。2025年秋に満を持して市場投入する最新版が「XTIMON」である(図1)。

図1 XTIMONの解析対象の作成画面

高度な解析の敷居を下げる
3つのコンセプト

 樹脂流動解析を行うユーザー層を拡大し、なおかつ近年ますます高度化する解析ニーズに対応するため、TRENGDはXTIMONを開発するに当たり以下の3つのコンセプトを掲げた(図2)。

CONCEPT1 誰でも解析熟練者と同じ解析が可能に CONCEPT2 迷わず少ない手数での操作が可能に CONCEPT3 圧倒的な解析精度を実現
図2 XTIMONの3つの開発コンセプト

 1つめは、誰でも解析熟練者と同じ解析を可能にすること。具体的には、熟練者が解析の対象や目的に合わせてツールの潜在能力を最大限まで引き出す解析パラメーターを設定する際のノウハウをテンプレート化し、チーム内での共有を可能にした。この新たな機能は、今後、さらに進化していく。2026年には、解析対象となる設計データの形状に応じて、最適なテンプレートを提案する機能を追加する計画だ。

百済 彰氏
東レエンジニアリングDソリューションズ株式会社
システム技術本部 CAE技術部
開発課 技師
百済 彰

 2つめは、迷わず少ない手数で操作できるようにすることだ。解析プロセスと操作の動線を一致させることによって、直感的に使えるようにした。UI改善を担当した百済彰氏は、「従来ツールのお客様をヒアリングし、社内で議論を重ねてUIを開発しました」と説明する。形状を読み込み、メッシュを切って、条件設定し、解析するという一連の流れを崩さないことに注力したという。「リボン型のメニューの導入やアイコンの配置を最適化することで、迷わないUIができました」と百済氏は説明する。その他にも、操作を自動化できるしくみも導入し、その結果、1製品当たりの解析作業のクリック数は、従来比で90%削減した。

新田 浩之氏
東レエンジニアリングDソリューションズ株式会社
システム技術本部 CAE技術部
開発課
新田 浩之

 3つめは、圧倒的な解析精度を実現することだ。いかに使いやすいツールであっても、計算速度や精度が損なわれては意味がない。モデルを処理する際の計算式を抜本的に見直し、細かいメッシュを切っても解析後の出力ファイルを小さなサイズに収める技術をはじめ、デフォルトのパラメーター設定の見直しなど、様々な改良を加えた。加えて、処理の最適化と並列化も実施し、さらなる高速化も実現した。「これらの施策によって、基本性能をむしろ底上げしました」とソルバーの開発を担当した新田浩之氏は胸を張る。

 さらに、AI(人工知能)が適切パラメーター設定を提案する機能を盛り込み、精度をさらに引き上げた。過去の解析モデルと実測結果から、高精度のチューニングを実現するための情報をAIに学習させて、使えば使うほど精度が高まるようにした。既に熟練者が2年間チューニングして到達した精度を、AIによる1回の設定で凌駕する適用例も出てきている。

 上記の3つのコンセプトに沿った新機能以外に、従来困難だった解析にも対応した。その一つが、樹脂成形時に金属端子などを事前に挿入しておき、その周りに樹脂を流す際、樹脂圧で金属が変形し、さらにその変形で流路が変化する現象をシミュレーションする機能「インサート変形機能」である。適用シーンは、EV(電気自動車)車両内部の多数のケーブル端子をひとまとめにするモジュール化などが想定されている。

CAEユーザーが拡大する時代
AIによる利用支援は
東レの武器に

 樹脂製品の生産性や品質のさらなる向上を目指して、設計部門や生産部門の担当者が、当たり前のように高性能CAEを駆使する時代が到来しつつある。XTIMONに導入されたような、CAEツールが持つ潜在能力を最大限まで引き出す技術は、今後さらに進化し、より多くのユーザーを支えていくことだろう。CAEそのものの基本性能に優れていることは当然のこと、AIなどの支援によって熟練者をも上回る利用条件を見つけ出す機能を持つツールが新たなトレンドとなる可能性がある。こうした中、樹脂材料とその加工に関する豊富な知見とデータを保有し、AI技術の活用にも積極的なTRENGDは優位なポジションを築いていると言える。

 XTIMONの登場によって、高速・高精度の樹脂流動解析が、解析の専門家以外でも手軽に利用可能になった。「XTIMONは、解析部門を持たない中小企業でも利用可能であり、さらには難易度の高い解析や高精度の解析を求める解析のプロの要求にも応える、より広範なユーザーが満足するツールに仕上がったと自負しています」と山川氏は言う。樹脂の射出成形において、XTIMONは、製造業にとってなくてはならないツールになりそうだ。

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