まず、M&Fはどんな事業を手掛けている会社か教えてください。
守屋 弊社は、建築の施工図をつくっている会社です。私は中堅ゼネコンに勤めており、その後、退社して図面屋として独立しました。施工図を手掛けて20年以上たちますが、その経験の中でBIM(ビルディングインフォメーションモデリング)と出会いまして、現在は、施工に特化したBIMの入力を行っています。やはり施工が強い会社として今後もBIMの展開をしていきたいと思っている。そういった会社です。
株式会社M&F 代表取締役社長兼COO 守屋 正規 氏
株式会社M&F 東京副本店長 鈴木 敦子 氏
施工図はどんな領域のものを手掛けていますか。
守屋 建築に携わる施工図はいろいろありますが、元請けが使う施工図が弊社が手掛ける主な領域でして、躯体図、それから仕上げ、平面詳細図とかですね。外構図、それから仮設計画図ということで外部足場から根切り(建物の基礎や地下階をつくるために地盤を掘削する土工事)計画、鉄骨建方、そういった仮設の計画図も作成しています。
扱っているものの規模や構造種別はどんな感じですか。
守屋 木造住宅は基本的には行っておりません。いわゆる中規模構造物が多いですね。構造体で言うと、コンクリート造が主なところです。最近は鉄骨造も増えてきまして、大規模なものになれば、物流倉庫といったものが多く、あとデータセンターですね。そういったものを手掛けています。
体制として何人ぐらいで施工図を作成していますか。
守屋 弊社は東京、私の故郷である宮崎に支店がございまして東京と宮崎合わせて約80名の社員で仕事をしています。
守屋さんは建築の中でデジタルに力を入れてきました。BIMもずいぶん前から活用し、施工図づくりから始めていろんな領域に仕事を広げていく中で、特にご自身や、中小の事業者にとって、デジタルを導入することは、どんなメリットがあるか。具体的なエピソードを交えて、教えてください。
守屋 デジタル化、いわゆるDXはいろんなところで言われていて、私が偉そうに言うのはちょっとはばかられますが、私の経験上は、やはり業務効率化にどれだけ真剣に取り組むか、まずそこがスタート地点かと思います。従来のやり方で業務を進めていくことで今まで何ら問題なくできていたというふうにおっしゃる方が非常に多いのですが、やはり残業規制なども含めて、いろいろと世の中の情勢も変わっており、自分の仕事を1人の力ではなかなかできなくなってきている。
そういった中で、やはりデジタルデータをどのように扱うかによって、業務効率が大きく変わってくると私は思っています。
例えばですけども、弊社は施工図を作成する会社ですので、BIMモデルでもやはり施工図をつくるといった研究をずっと続けています。デジタルデータはどのようにその働き方に対して寄与するのか。データの扱い方が重要ですね。例えば、BIMモデルを使うことによって、コンクリートの数量拾いは、私がゼネコンに勤務していた20年前は3~4時間かかっていたものが、今は3~4分で終わる。これも立派な業務効率化だろうと私自身は思っています。そういったものをしっかり発信して、デジタル化のよいところを今の中小企業の経営層に実感していただき、その積み重ねで、「デジタルをやってよかったな」と思っていただけるようにしたいと思っています。
数量拾いの業務効率化は具体的で説得力がありますが、それ以外の効果も今後は期待できますよね?
鈴木 業界の一番の課題って、人材不足なのかなと思っています。その中でやはり品質とか他社との差別化、事業承継の問題も解決していくことが特に中小企業、地場のゼネコンもそうですね、今後の生き残りの鍵なのかなと思います。それを解決する1つのツールとしてBIMの導入があると思います。人材不足だけではなくて、やはり協力業者が確保できなくて、物件が受注できなかったという話を聞いています。今後、安定した受注をしていくためには、やはり人材不足を解決したり、協力業者をきちんと確保したりしていくことも1つの命題なのかなと考えています。
守屋 これは未来の話かもしれませんが、あとは例えば鉄筋のモデルを入力することによって、そのデータが最終的にはロボット施工までつながるのではないかとか、AI(人工知能)までつながるのではないかとか、いろいろな使い方が今後は当たり前のようになってくると思っています。データをどのように扱うかは、データを扱うプロがいるとは思うんですけども、我々建築生産に携わる者にとって、データの入力についてはですね、やはりBIMデータに入れ込むことによってメリットが出てくる。そういうふうに思っています。
今までの工事現場では、手戻りが発生することが多く、それは非効率ですね。そのあたりをデジタル化によってどういうふうに変えられるのかという点を守屋さんの今までの経験やイメージも交えてお話しいただけますか。
守屋 建築工事の着工前にどれだけ不具合を見つけられるかとか、施工をする上でちょっと手間がかかりそうだなというところをどれだけ洗い出せるかというのを「フロントローディング」と言います。
実際、地盤のレベルから下の部分をBIMで全てモデル化することによって、設備から躯体、そしてその掘削工事の計画ですね。それに加えて鉄筋の配筋です。そういったことを入れることによって、まずは視覚化の価値っていうことで、3Dモデルで確認ができます。これを今までは2次元の図面で行っていました。熟練の方が見て、3次元的にここが当たるよっていうことを、勘ではないですけど、図面を見る力によって確認していました。今後はそれをコンピューターに任せる。
どういうことかと言いますと、設備と躯体そしてそこに鉄筋が入っています。そういったデータで確認することによって鉄筋と設備が重なった場合はコンピューターが「当たっているよ」というふうに、きちんとエラーを出してくれます。干渉チェックというような言い方をしますが、BIMにおいてはそういったところから始まり、それから施工手順において、例えば掘削工事において、山留工事をするときに、
鉄筋が当たってしまうからこれは後にしなくちゃいけないといった施工ステップ、そういったシミュレーションにおいても役立ちます。まずは手戻りの影響の大きな地盤から下のフロントローディングをとにかくやった方がいいというふうに言っています。
これまでは、現場の責任者が図面を見て初めて検討をし始める。とても忙しいなかで行う作業です。そういったものが前倒しでできれば、図面をもらった時点で多くの部分が解決されていれば、手戻りがなくなるし、さらには適正な工程算出や歩掛かりの計算までデータがつなげられる。そういうふうに思っています。
発注者側でもBIMとかデジタル化のメリットを理解して、設計に取り入れたり、コストを見込んだりという動きが出てきていると聞きます。守屋さんが経験している中では具体的にどんな動きが既にありますか。
守屋 実例としまして、設計契約といいますか、建物の建設計画においてBIMの予算がしっかりと確保されて、発注者と契約がなされたというお話を実例として聞いています。
それはM&Fさんのお仕事として、そういう事例がある?
守屋 はいそうですね。
発注者側がBIMを取り入れたり、その予算をしっかり見込んだりする理由や根拠はどんなところにあるのでしょうか。
守屋 まず1つは建物のデジタル化の価値を発注者がしっかりと理解して提案を受け入れつつあるところにあると思います。デジタルのBIMの価値を、例えばですが、工程がしっかりと進む、計画通りに進む。そんなメリットを理解し始めているのだと思います。
BIMの施工シミュレーションを行って、しっかりと仕事のやりやすいデータを専門工事会社まで到達させる。協力会社とも連携する形でBIMを活用したり、もしくは維持管理をデジタル化する。オーナー側が建物のライフサイクルを含めてデジタル化して、維持管理していこうと、そういったことが認識され始めていると思います。さらに最近、関心が高まっているのは建物を建てたり運営する上においての脱炭素化への対応、GXですね。省エネ計算など、設計段階においてそういったものまで対応できる。そういったGXの価値も評価されて、しっかりと予算を見ていただいたのではないか、そういうふうに想像しているところです。
こういった動きは今まさに始まったばかりだと思いますが、今後はどんなふうに広がっていくと思いますか。
守屋 特に最近問題になっているのは、協力会社さん、専門工事会社さんが人手不足によってなかなか対応できない。人材の不足の問題を解消するために、いかに仕事をしやすくするような検討をして、専門工事会社につくってもらうか、そういったところが今後の元請けの鍵ともなるのではないかなと思っていまして、BIMデータを効率化や仕事のやりやすさ、シミュレーションまで活用していくことが、もうすぐ当たり前になっていくと思っています。