産業ガスの老舗が挑む
データドリブン企業への変革

適切な人が適切な情報にアクセスし課題を解決できるデータ民主化。実現に向けて陥りやすいのが、すべてのデータを統合しなければならないという思い込みだ。時間、工数、コストには限りがある。データドリブン企業文化の醸成に取り組む日本酸素は、サプライチェーンに対し、課題解決という“目的ありき”でデータを統合し可視化を進める。パートナーには、データ活用分野をリードするウイングアークを採用。データ統合からダッシュボード、データマネジメントまで伴走型で成功に導いていく。

※2026年4月に「大陽日酸株式会社」は「日本酸素株式会社」へ社名が変わります。本ページでは新社名で統一表記しています。部署名・役職名は取材当時のものです。

データドリブン企業文化の醸成
ベースとなるデータ民主化

データドリブン企業文化の醸成に取り組む日本酸素。1910年創業、110年以上の歴史を持つ産業ガスのリーディングカンパニーだ。豊富な経験と独自の技術開発力を背景に、鉄鋼、化学、エレクトロニクス、自動車、食品など様々な分野に事業を展開。2020年10月より日本酸素ホールディングスの事業会社として、すべての国内事業を担っている。グループ理念「進取と共創。ガスで未来を拓く。」のもと、企業価値向上とともに社会課題解決に力を注ぐ。

日本酸素株式会社
経営企画・ICTユニット DXセンター所長
赤井 康昭氏

2022年4月、同社はグループ理念実現に向けてDXセンターを設立。デジタルを活用しデータを軸とする企業風土・文化への変革を目指す。重点戦略について、同社 DXセンター所長の赤井 康昭氏は話す。「当社のDX戦略は、ビジネスドメインと連携し、ガス生産工場のリモート・オペレーションと、SCM(サプライチェーンマネジメント)の最適化の2本柱で進めています。社内には従来から、Excel文化が根付いており、様々なシステムにデータが散在している状況でした。また、経験や勘に頼る業務オペレーションもありました。この課題を解決し、データに基づき意思決定を行う意識変革を実現するために、ベースとなるのが『データ民主化』です」

適切な人が適切な情報にアクセスし課題を解決できるデータ民主化。その基盤として着目したのが、データ活用分野をけん引するウイングアークのデータ分析基盤「Dr.Sum」とBIツール「MotionBoard」だ。

日本酸素は「適切なタイミングで適切なデータを提供できる環境を構築し、データ活用の実践範囲を拡大すること」を目的とし、データドリブン企業文化の醸成に向けた環境整備と実践を行っている

目的ありきのデータ統合
サプライチェーンを可視化

日本酸素株式会社
経営企画・ICTユニット DXセンター デジタルビジネス推進部
プロジェクト企画課長
峯 竜二氏

日本酸素株式会社
経営企画・ICTユニット DXセンター デジタルビジネス推進部
佐藤 優成氏

日本酸素株式会社
経営企画・ICTユニット DXセンター デジタルビジネス推進部長
松島 洋輔氏

2019年、同社はコスト抑制の観点から他社DWH(データウエアハウス)を、Dr.SumとMotionBoardにリプレースした。しかし、全社のデータ活用基盤として有効活用には至っていなかった。2023年10月、Dr.SumとMotionBoardを基盤とする、データ民主化プロジェクトがスタート。最初に取り組んだのは、「目的ありきのデータ統合」だ。すべてのデータを統合するのではなく、必要なデータを基盤に集約し利用する。同社 DXセンター デジタルビジネス推進部 プロジェクト企画課長の峯 竜二氏は「ウイングアークにも協力してもらい、各ユニットや事業部門に対し、データ活用に関するアンケートを実施しニーズを調査しました。目的を定めて、必要なデータをDr.Sumに集約し、MotionBoardによりダッシュボードで可視化するという流れです」と振り返る。

日本酸素株式会社
経営企画・ICTユニット DXセンター デジタルビジネス推進部
プロジェクト企画課長
峯 竜二氏

データ民主化プロジェクトは、DXセンター、ICT部門、ウイングアークに加え、当初から事業部門も参画。ダッシュボードの活用促進は、ユーザー部門の現場目線が欠かせない。同社 DXセンター デジタルビジネス推進部の佐藤 優成氏は「現場で使えるものに仕上げないと意味がありません。ウイングアークにモックアップを作ってもらい、ダッシュボードを実際に見て議論することで、課題や改善点を明確化できました」と語る。

日本酸素株式会社
経営企画・ICTユニット DXセンター デジタルビジネス推進部
佐藤 優成氏

同社 DXセンター デジタルビジネス推進部長の松島 洋輔氏は「ウイングアークは、モックアップを本番に近いイメージで丁寧に作っていました。ユーザー部門も、ダッシュボードを実際にどう使い、課題を解決するのか、理解しやすかったと思います」と話す。

日本酸素株式会社
経営企画・ICTユニット DXセンター デジタルビジネス推進部長
松島 洋輔氏

ダッシュボードのポイントについて、ウイングアークの大塚 健太郎氏は「グラフの表現方法や機能追加により、一目で気づきを得られることが大切」と指摘する。赤井氏も「視覚化の工夫で見え方が変わる」と高く評価。同社におけるMotionBoardの活用は、マーケティング、営業から調達、生産、顧客管理まで、サプライチェーンの可視化を目的とする。例えば、収益可視化ボードでは、部門・支社、ガス種の切り口で収益を可視化し、把握できる。

データ民主化を支える
データマネジメントも支援

同社はウイングアークの支援のもと、サプライチェーンのデータ統合・可視化と合わせ、データマネジメントにも取り組んでいる。「適切な人がデータを利用できるデータ民主化は、ガバナンスやセキュリティがあってこそ実現できます」と赤井氏。ウイングアークの地主 哲平氏は、「1年かけて、セキュリティルール、責任の明確化、保存・閲覧権限管理など基本方針づくりをお手伝いしました」と話す。システムによるデータ管理の観点から、今後はデータカタログも整備していく予定だ。データカタログが整備されれば、統合したデータに対し、データの場所、種類、内容などを管理できるようになる。

データ民主化は、技術と業務の一体化がポイントとなる。「ウイングアークは、産業ガス業界という特殊なビジネスモデルに対し理解を深めることにも力を入れていました。その姿勢があったから、データ統合・可視化からデータマネジメントまで一気通貫で支援してもらえたと感じています」(峯氏)

2025年6月、データ民主化プロジェクトは一区切りをつけた。同プロジェクトで作成したデータマネジメント基本方針を、同社情報セキュリティ担当部門のチェックを受け、全社方針として展開する。また、ダッシュボード利活用状況のモニタリング、成功事例をまとめたノウハウ共有も図っていく。

今後について赤井氏は話す。「データドリブン企業文化の醸成に向け、データマネジメントを含め、データ民主化を支える基盤を構築できました。それを利用するDX人財育成も行っています。今後、サプライチェーンのデータ統合・可視化をさらに進めていくことが重要なテーマです。事業部門に対しアンケートに加え、ヒアリングを実施しダッシュボードも増やしていきます。ウイングアークには、これからも当社に寄り添った伴走支援をお願いしたいですね」