空調機器部 岐阜工場 生産管理課に、製造部門から市原将氏、営業部門から古賀雄一氏の2人が異動してきたのは、新型コロナウイルス感染症が季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行した2023年初春のことだった。当時、コロナ禍によるサプライチェーンの停滞などの影響で膨らむ一方だった在庫の削減指示が工場長からあり、生産管理課 課長の林友紀氏は「在庫金額30%削減を実現しなければいけませんでした」と話す。着任まもない市原氏、古賀氏は、すぐにこの難しい課題に対応しなければならなかった。
東プレ
空調機器部 岐阜工場
生産管理課 課長
林 友紀氏
多品種小ロットかつ生産変動の大きい空調機器
東プレが手掛ける空調機器関連製品には、高効率と低騒音を両立したシロッコファンやターボファンといった送風機、高気密・高断熱が求められる住宅用換気システム、半導体製造工場や病院施設などクリーンエアを必要とする事業所のファンフィルターユニットなどがある。
こうした機器用の部品は、長さや穴径の違いなどにより3万品目にも上り、実在庫も1万5,000品目を数えることがあった。製品の種類も多く、部品の管理も煩雑である。住宅用や事業所用の部品は、着工から納品のスケジュールが決まり、それを厳守する必要があるので、在庫をあらかじめ持っていなければならない。典型的な多品種小ロット生産であり、しかも年によって生産量の変動が大きい。
生産管理に役立てようと、古賀氏はExcelを使い、過去2年分のデータを入力して在庫数の推移をグラフ化するようにした。しかし、部品によっては1万個出ることもあれば、同じ時期に10個程度しか出ないこともある。発注から納期までのリードタイムも部品によって大きく異なる。その差を補正する計算式も立てたが、多くの時間を要した。
そのような中、2023年8月にウイングアークのセミナーで「在庫適正化テンプレート」の存在を知る。「自分が手間をかけてやっていたことを瞬時にやってくれる。その時間短縮の効果に驚きました」と、古賀氏は語る。
ウイングアークの「在庫適正化テンプレート」に注目した点について、市原氏は次のように話す。「ランニングコストの安さも魅力でしたが、何より自分たちのやりたかったことが明確に表示されていました。他社のソリューションと比べて、一番成果を出しやすいのではないかと感じたのです」
東プレ
空調機器部 岐阜工場
生産管理課 主事
市原 将氏
判断基準が担当者の経験から安全在庫の設定値に
東プレは、ウイングアークが提供するBIツール・MotionBoardを使った「在庫適正化テンプレート」を2024年4月に導入開始した。運用上のポイントはまず、「安全在庫の理論値」を算出することだった。在庫適正化テンプレートは、安全在庫の算出に必要なデータを保持している。在庫適正化テンプレートにプログラミング言語「Python」で記述したコードを埋め込むことで、品目別の滞留期間や出庫数の移動平均、ばらつきなどを日々移動平均で算出。夜間バッチで処理するため、多品種でも確実に処理でき、頻繁な見直しにも対応できる。
部品納期のリードタイムが長ければ、「安全在庫の理論値」の精度が悪化する傾向にある。東プレでは制御基板やモーターといった電気電子関連部品がそれに該当するという。しかし、「理論値とイメージした数値がかけ離れた場合、数量や季節性などを考慮しながら調整することによって、安全在庫の設定値の精度を少しずつ向上させていくことができます。安全在庫の設定値は従来、担当者の経験に依存してしまうことが少なくありませんでした。それに比べて、間違いなく信頼度は高まっています」と、古賀氏は話す。
東プレ
空調機器部 岐阜工場
生産管理課
古賀 雄一氏
「在庫適正化テンプレート」は、24年10月に本格稼働した。市原氏は「導入から稼働までの間、ウイングアークの担当者の方は、テンプレートに表示するグラフの種類やレイアウトについて、特に『安全在庫の設定』というテーマに沿って、こちらのリクエストに素早く対応してくれました。社内の説明にも同席していただき、大変心強かったです」という。
こうした「在庫適正化テンプレート」の運用のほかに、「安全在庫の調整、仕入れ先との納期の調整、長期滞留品の廃棄などを実施した結果、1年間で在庫金額を30%削減することに成功しました」と、林氏は語る。
機械学習で出荷数をパターン検知し、さらなる10%削減へ
目標を達成した東プレは、現在、新たな課題に挑んでいる。AIの機械学習モデルを活用して出荷数のパターン検知を行い、「注意リスト」をMotionBoardの画面上に表示することである。ある部品の使用数が著しく伸びた場合、現状の安全在庫の設定値では部品不足になってしまうことがある。特に季節性の部品についてはブレ幅が大きいため、対応が必要となる。
そこで、「部品不足に陥ってしまったケースの特徴を機械学習させ、それに似た動きをする部品をリストアップする機能を追加しようと思っています」と、古賀氏は説明する。
この狙いは、人手では時間がかかっていた作業の省力化にある。「これまで2人がかりで膨大な時間をかけて、気がかりな部品の動きをチェックしていました。このパターン検知を導入したことにより、2人分の作業を月間40時間削減できる見込みです」と市原氏。
ただし、現状では過去のデータからパターン検知を行っているので、予測をしているとは言いにくい。しかし、生産計画や販売計画のデータを使えば、在庫の適正量がどう推移するかをシミュレーションできる可能性もある。東プレはそうした「未来の予測」にも挑戦していこうとしている。
「今後は在庫金額のさらなる10%削減を目指しています。ハードルは決して低くはありませんが、在庫管理テンプレートを活用しながら進めていきます。そして、この取り組みを生産管理部門だけでなく、様々な部門に展開できればと考えています」と、林氏は未来に目を向ける。
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