ハノーバーメッセで示す、
日本産業の新たな連携モデル
見るだけでは終わらせない。
世界と日本をつなぐ
「共創のハブ」となる

世界の製造業は、データスペース、サーキュラーエコノミー、AI(人工知能)活用を軸に、新たな産業構造へと移行している。その潮流を象徴する場が、世界最大級の産業展示会「ハノーバーメッセ」だ。こうした変化の中、日本企業はどのように世界と競争し、共創していくべきなのか。個社ごとの取り組みでは競争に埋もれかねない中、アビームコンサルティングは企業や公的機関・団体と共に「Japan Industrial Park」という共同出展を行う。当企画の責任者であるアビームコンサルティング執行役員 Principalの橘 知志氏に、その狙いと見どころを聞いた。

速報!

1000人を超える来場者
熱気あふれる共同出展ブース

 ハノーバーメッセ2026会期中、当共同出展ブースには、のべ1000人を超える来場者にお立ち寄りいただきました。

 日本の製造・デジタル領域における最新の取り組みや、国・企業・スタートアップが連携する「共創」の姿に対し、国内外から高い関心が寄せられ、ブースは連日にぎわいを見せるなど、盛況のうちに会期を終えました。ご来場いただいた皆さまに、心より御礼申し上げます。

  • 共同出展ブースで開催されたトークセッション

  • セッションでは「日本企業が取るべき方向性」について議論が交わされた

  • 来場者でにぎわう共同出展ブース

 本展示や会期中の議論を通じて、アビームコンサルティングでは、多くの示唆や実践的なインサイトを得ることができました。これらの内容や、ブースで紹介した取り組みについては、当社の特設サイトにて、今後レポートや関連記事の形で順次発信していく予定です。

日本の存在感を
「面」で示すための
共同出展という選択

――アビームコンサルティングが旗振り役となり、ハノーバーメッセで「共同出展」を行うその背景と意義を教えてください。

 世界規模で産業の変化が加速する中で、日本の産業が個社の枠を超えた形で存在感を示す場が必要だと考えました。ハノーバーメッセは世界最大級の産業展示会ですが、主要な工業国の中で日本だけが国としてのパビリオンを持っていませんでした。日本企業は優れた技術を持っていますが、企業単独での出展では「未来の製造業」という大きな流れの中で埋もれてしまいかねません。

 そこで私たちは、「日本」をテーマに、企業や公的機関・団体が集まり共同で出展する「Japan Industrial Park」を企画しました。国内では経済産業省主導の「ウラノス・エコシステム」など、多様な産業データ連携の試みが始まっていますが、海外からはその実態が見えづらい状態です。だからこそ今、日本の産業が一丸となって国際社会にメッセージを発信する必要があると感じています。

橘 知志 氏

Satoshi Tachibana

アビームコンサルティング株式会社
執行役員 Principal
Head of Intelligence & Research Institute
橘 知志

――アビームコンサルティングとしては、どんな狙いがあるのでしょうか。

 当社自身にとっても、この共同出展は戦略的な意義があります。主催者として全体を指揮することで、例えば「インダストリー4.0に関する要人をブースに招いてフリーディスカッションを行う」「欧州のパートナーとの連携を深める」など、機動的な取り組みが可能となります。展示会を通じて世界と日本をつなぐハブとなることも目指しています。

――昨年のハノーバーメッセ2025でも共同出展を実施しました。現地での反響や手応えはいかがでしたか。

 非常に大きな手応えを感じました。昨年初めて「Japan」を冠した共同出展を行い、ブースへの来場者は単独出展時代から倍増しています。5日間を通じて延べ約600人の方々にご来場いただき、日本からの視察者や在欧の方を含め、その約半数が日本人でした。

 特に好評だったのは、単にソリューションを紹介するだけでなく、現地で交流する機会を提供した点です。例えば、「Platform Industry 4.0(PI4.0)」の最新トレンドを有識者が解説する「ツアー」や、来場者同士がおすすめブースや展示会で得た情報を交換できる「デジタル掲示板」などは、多くの日本人来場者から「こういう場が欲しかった」という声をいただきました。デジタル掲示板の更新を確認するために毎日ブースに立ち寄ってくださる方もいました。

 また、「Japan」という看板を掲げたことへの好意的な反応も多く、「日本の製造業をもっと巻き込み、海外での存在感を高めてほしい」という応援のメッセージもいただきました。世界の舞台で日本企業が個社で戦うのではなく、一丸となってまとまることで、海外企業やキーパーソンからの注目度が格段に高まったと感じています。

「Japan Industrial Park」が
目指す共創のハブ

――そのコンセプトを引き継ぎ、さらに発展させた今回の「Japan Industrial Park」の概要を教えてください。

 今回は「Co-Creating the Future of Industry - From Japan's Technology and Dataspace Initiative」をテーマに掲げ、日本の産業界における先進的な技術とソリューション、産官学連携によるデータスペース構築・データ活用の最新動向を紹介します。日本国内外及び官民、来場者と出展者が交流する共創のハブとなることを目指しています。

 なお、今回はドイツ国家戦略ブース「PI4.0」に隣接して出展する運びとなりました。ご来場の皆様には、世界の潮流を直接体感していただいた後、さらに日本独自のアプローチを体感し、その知見を自社の活動へ応用する一助としていただければ幸いです。

橘 知志 氏

――共同出展各社の展示の見どころもぜひご紹介ください。

 今回の共同出展者は、情報処理推進機構(IPA)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、ロボット革命・産業IoT イニシアティブ協議会(RRI)、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)、日本貿易振興機構(JETRO)、iCAD、NTTデータグループの7社/団体です。

 IPAとNEDOは、企業・業界・国境を横断するデータ連携基盤の構築を目指し、経済産業省が主導する産業イニシアティブ「ウラノス・エコシステム」を背景に、それぞれの立場から取り組みを紹介します。

 IPAは、技術仕様の策定およびアーキテクチャ設計を統括する立場からOpen Data Spaces(ODS)※の全体像を提示します。一方、NEDOはODSの社会実装を見据え、日本におけるユースケース創造に向けた研究開発・実証事例を発信します。NEDOからはもう1点、量子コンピューティングに関する新たな懸賞金事業(賞金付き公募型チャレンジプログラム)も紹介される予定です。

※国や組織ごとの多様性を尊重する、オープンでスケーラブルな分散データマネジメントの技術コンセプト

 NTTデータグループも、これに関連したデータスペースの基盤構築・運用並びにデータ連携を加速するトラスト・相互運用性の仕組みを実現すべく、国内外で進めている開発・実証・普及促進の取り組みを紹介するとともに、そのビジョンについて発信します。

 そのほか、IVIは、従来の製品中心のPLM(製品ライフサイクル管理)を製造業全体に拡張したコンセプト「製造業PLM」を、RRIは、日本の製造業におけるデータ連携や、その国際協調に関する取り組みを、iCADは、3Dデータ活用に関する考え方や技術を展示します。そしてJETROからは、製造業6分野(機械、農機、航空、船舶、医療、建築)をカバーする国際ビジネスマッチングプラットフォーム(VirtualExpo)を紹介します。

――ブースではどのような企画を用意していますか。

 前述の「ツアー」と「デジタル掲示板」に加え、会期中は毎日複数回にわたり、各出展社による「プレゼンテーションセッション」を行うほか、特定のテーマについて有識者が議論を交わす「トークセッション」、来場者と出展社がカジュアルに交流できる「ネットワーキングイベント」などを多数用意しています。開催日時など各イベントの詳細は当社のホームページにてご確認いただけます。

――アビームコンサルティング自身は、どのような展示や発信を行う予定ですか。

 製造業におけるデータ活用の未来と、サーキュラーエコシステムやスマートファクトリーをメインテーマとした取り組みを紹介します。脱炭素、エネルギー、サプライチェーン、データ連携といった、近年、産業界で重要性が高まっているテーマはいずれも密接に関係しており、個社だけで解決できるものではありません。そのため、産業や企業の枠を超えて連携する「共創型」の取り組みが不可欠です。

 しかし、こうした共創は単に企業同士をつなぐだけでは実現しません。ビジョンの共有や役割分担、データ連携のルール、ビジネスモデルの設計などを統合的に考える必要があります。私たちはこれまで国内外の企業や公共機関とのプロジェクトを通じて、こうした共創の枠組みづくりを支援してきました。協調と競争のバランスのとれた「共創型プロジェクトのデザイン」こそ、当社が価値を発揮できる領域だと考えています。

 また、先の共同出展者には挙げませんでしたが、当社のグローバル戦略パートナーであるBearingPointとの連携展示も行い、工場スマート化の最前線と製造業が取り組むべき課題を発信します。私たちのブースでの対話から、来場者の皆様が新たな出会いや気付きを得ていただくことを最大の目標としています。

一時的な盛り上がりで
終わらせない、
アフターイベントも計画

――ハノーバーメッセ後にも、継続的な交流の場のようなものを計画されていますか。

 昨今のトレンドを踏まえ、日本の製造業の皆様がどのようなアクションを構想すべきかを共に考えるアフターイベントやメッセージ発信を計画しています。ハノーバーメッセは現地では大いに盛り上がります。しかし帰国後に「見てきました」という報告だけにとどまり、自社の変革に適用するための論点整理や意思決定、能動的なアクションに転換されない、という可能性もあります。これは毎年感じる「もったいなさ」です。

 先にも述べたとおり、製造業の未来はどこかの企業が単独で構想・実現できるものではなくなっており、「共創」はトレンドではなく前提条件となっています。従って、現地で得た気付きを各社が個別に持ち帰って終えるのではなく、多角的な知見を掛け合わせて未来を再解釈し、将来価値を共に設計する場が必要です。

 アフターイベントでは、ハノーバーメッセで体感した変化を日本企業の現場目線で整理した上で、「意思決定に役立つ知識」や「関係者と共有できる目標」、すぐ取り組める「実行アクション」へと段階的につなげていきます。継続的な場づくりにより、一時的な盛り上がりで終わらせないことを目指します。

――最後に、来場を検討されている方へメッセージをお願いします。

 ハノーバーメッセにはデジタル化やサステナビリティ、データ連携、AI活用、そして企業や国境を越えた共創など、世界の製造業の未来像が凝縮されています。欧州ではデータスペース構想やサーキュラーエコノミーを軸に、産業の競争力をエコシステム単位で高めていく動きが加速しており、その最前線を体感できる場でもあります。

 一方で、展示会場は広大で、そこから発信される情報量も膨大です。漫然とブースを眺めているだけでは、巨大な潮流を十分に理解することはできません。重要なのは、そこで見聞きした変化を、自社の戦略や意思決定にどう結びつけるかです。

 単に最新技術を見て学ぶだけでなく、「この変化に自社はどう向き合うべきか」「どのパートナーと新しい取り組みを始められるか」といった視点を持ち、自社ビジネスを変革するための「共創のきっかけ」をぜひ持ち帰っていただきたいと思います。大切なのは、対話を重ねることで、「これなら自社でもできる」「このパートナーとなら新しいことが始められる」という具体的な手応えと、次の一歩を踏み出すためのきっかけをつかむことです。それこそが、ドイツまで足を運んでいただく最大の意義だと考えています。

 そんな出会いや気付きの場として、私たちの共同出展ブースがお役に立てればと思います。国内外の出展者や来場者と議論する場として、ここから日本の製造業を共に盛り上げていきましょう。ぜひ現地で皆様とお目にかかれることを楽しみにしています。

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