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生成AIの学習と推論、動画配信、クラウドサービスによるトラフィック需要は年々加速し、データセンター間接続(DCI)に求められるスペックは様変わりした。100Gbpsや400Gbpsの帯域はもはや十分ではなく、大容量と低遅延の両立が急務となっている。また、今起こっているのは単なる速度競争にとどまらない。お客様ごとのネットワーク環境に最適化された通信サービスを柔軟に提供できるかが事業継続や競争力を左右する時代への転換だ。その最前線に立つBB Backboneの佐藤靖彦氏と加藤大貴氏に話を聞く。

基盤の安定とベンチャーの
機動力を併せ持つ

光伝送の世界では、スペック表に書かれた数字だけで速度性能は決まらない。実環境では、光ファイバーごとの品質差や経路の違いなど、様々な要素が伝送品質に影響する。実証実験やラボの中では成立した構成が、現場では同じように動かないこともある。だからこそ重要なのは、理論上の最速ではなく、商用ネットワークで安定して使える最速である。

こうした課題に対して、独自の立ち位置を築いてきたのがBB Backboneだ。同社は2002年、ソフトバンクにバックボーン回線を提供するため、日本初の光ファイバー卸会社として設立された。ソフトバンクという安定した基盤を持ちながら、日々進化を続ける広帯域領域に特化した専門集団として、機動力と柔軟性を磨いてきた点に特徴がある。そして、基地局向け光ファイバー提供で蓄積した知見を生かし、2019年にはDCI市場へ本格参入した。

※2002年当時

BB Backboneが提供する光ファイバーサービス

BB Backbone Corp.
取締役兼CTOプロダクト統括部長
佐藤 靖彦

同社の特徴は、基盤の安定とベンチャーのような機動力を併せ持つ点にある。プロダクト統括部長の佐藤氏は「1つの技術分野に特化した会社だからこそ、最先端の技術を常に注視して、最新の変化にも柔軟に対応できます」と語る。さらに、営業と技術が一体となって顧客に向き合う体制を備えており、「単に通信回線を売るのではなく、お客様の要望や将来像を聞きながら、最適な構成を一緒に考えていくことができます」と強調する。

BB Backbone Corp.
取締役兼CTOプロダクト統括部長
佐藤 靖彦

ここに、同社の存在意義がある。大企業のような安定感を持ちながら、意思決定が速く、最新技術の検証にも積極的だ。電気信号と光信号の相互変換を行うトランスポンダーについても、マルチベンダーで運用しているため接続の自由度が高く、「最先端テクノロジーのロードマップを見ながら、積極的に検証に取り組んでいます」(佐藤氏)。この柔軟性こそが、広帯域で低遅延なネットワークインフラをいち早くサービス化できる原動力となっている。

カタログスペックでは
終わらせない泥臭い検証力

真価が最もよく表れているのが、新技術を実運用レベルまで磨き上げる検証プロセスである。400ZRや800ZRといった最先端の光トランシーバー規格は、標準化が進んでいるとはいえ商用ネットワークでそのまま安定して使える保証はない。また、光信号の分岐・挿入を行うROADM(Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer)を使ったネットワーク環境では、区間ごとの特性や光ファイバー品質のばらつきが大きく、現場での確認なしにサービス化することはできない。

BB Backbone Corp.
プロダクト統括部 プロダクト技術開発部
ネットワークソリューション課
加藤 大貴

プロダクト技術開発部の加藤氏は「検証においてはまず波形を1つずつ確認し、送信から受信まで劣化していないかを見極めている」と語る。実際にROADMネットワークへ接続した際、どこまで安定して動作するかは、机上では判断できない。ラボと実構成では値の出方が想定以上に異なることも多く、加藤氏は「時間をかけて、一つ一つ手探りで確認してきました」と振り返る。

具体的には、波形が崩れていないか、OSNR(光信号対雑音比)はどこまで確保できるか、ビット誤り率の悪化はどの条件で起こるのか。そうした項目を一つ一つ洗い出し、どのような条件なら現実的にサービスできるかを値で判断していく。必要なところと省略できるところを見極めながら知見を積み上げてきた、この姿勢こそがBB Backboneの成長の礎となっているのだ。

BB Backbone Corp.
プロダクト統括部 プロダクト技術開発部
ネットワークソリューション課
加藤 大貴

ここで重要なのは、限定的な条件でしか成立しない結果を良しとしない姿勢である。「どのお客様でも一律に使えるような、公正でしっかりした検証を心がけています」(加藤氏)。まさに、ラボだけで完結するのではなく、実際の光ファイバーや商用に近い構成を使って評価することが重視されている。

限界に直面した時
最初に相談される存在へ

こうした努力の積み重ねによって成功させたのが、2026年2月に発表した「商用ネットワークを用いた1.6Tbpsの長距離伝送」である。顧客のネットワークをエンド・ツー・エンドでオール光接続(APN)するもので、世界最新レベルの取り組みである。しかも特定区間だけの実証ではなく、同社のネットワークが接続できる範囲であれば、起点と終点を限定せず提供できるサービスとして形にしている点に大きな意味がある。

その成功を導き出した裏側にも、地道な努力の跡が見られる。例えば、光ファイバーが10芯あれば10通りの特性があり得る。距離だけでなく、どのような経路かなどによっても条件は変わる。さらに、必要に応じて光アンプを調整し、マージンを確保し、顧客ごとに最適な構成を作る。まさに地道で泥臭い仕事の積み重ねだ。しかし、その泥臭さを引き受けるからこそ、カタログスペックではない「使える最速」が実現するのである。

BB Backboneの波長貸しサービス「B³ Spectrum」を使用した1.6Tbpsの長距離伝送の試験構成

こうした現場主導の最適化こそが、爆発的な進化を遂げるAI時代の次世代ネットワーク基盤には欠かせない。あらゆる処理が光のまま伝送されるAPNは、膨大なデータを学習・推論し続けるAIのパフォーマンスを左右する極めて重要な要素となる。BB Backboneにとって、1.6Tbpsの実用化は到達点ではなく、AI時代を踏まえた次世代ネットワーク基盤のための通過点に過ぎない。

この方向性は、NTTが提唱するオール光による次世代通信基盤構想「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」の世界観や、AI時代の低遅延ニーズとも重なる。帯域が広いだけでは足りない。レスポンスの速さ、遅延の少なさ、そして必要な時に必要な構成へ進化できることが重要である。同社は、そうした未来を支える光インフラの担い手になろうとしている。目指すのは、単なる回線ベンダーではなく、ネットワークの限界に直面した時、最初に相談されるパートナーである。

佐藤氏は「本当に困った時に、一番最初に相談を受けられる会社になりたい」と語り、加藤氏も「お客様の選択肢をもっと広げ、いろいろなネットワークのソリューションに対応できるようにしたい」と目指す姿を述べる。2025年に開設したオープンラボも、その思想を具体化したものだ。技術を見せ、顧客と議論し、一緒に次のネットワークを考える。その対話こそが、次のサービス開発と技術導入につながっていくだろう。

AIやクラウド、コンテンツ配信、自動運転など、これからの社会は広帯域かつ低遅延なネットワークなしには成り立たない。BB Backboneは、その変化を受け身で待つのではなく、先回りして試し、検証し、実装し、社会で使える形に仕上げようとしている。光インフラの限界に挑み続けること。その挑戦の先にこそ、日本のデジタル基盤の未来があるといえるだろう。

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