◆住宅の品質確保の促進等に関する
法律施行25周年記念シンポジウム

欠陥住宅問題等を背景に制定された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(住宅品確法)」の施行から25年が経過した。その後、住宅瑕疵担保履行法や長期優良住宅法も制定され、住宅政策は広がりを見せている。法施行25年の節目に当たる昨年10月に開催された記念シンポジウムの模様を紹介する。
主催
住宅の品質確保の促進等に関する法律施行25周年
記念事業実行委員会
後援
国土交通省
協力
日経BP 総合研究所/
日本経済新聞社イベント・企画ユニット
実行委員会
構成団体
独立行政法人 国民生活センター
一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会
一般社団法人 住宅生産団体連合会
一般社団法人 住宅性能評価・表示協会
公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター
主婦連合会
全国建設労働組合総連合
公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会
一般社団法人 日本建設業連合会
公益社団法人 日本建築家協会
公益社団法人 日本建築士会連合会
一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会
一般財団法人 日本建築センター
日本弁護士連合会
一般社団法人 不動産協会
一般財団法人 ベターリビング
住宅品確法の施行25周年記念シンポジウムは2025年10月23日、東京・大手町の日経ホールで開催された。主催者は、住宅の品質確保の促進等に関する法律施行25周年記念事業実行委員会(会長は神戸芸術工科大学 学長・松村秀一、京橋法律事務所 弁護士 ・犬塚浩の両氏)。

実行委員会会長
神戸芸術工科大学
学長
松村 秀一氏
まず実行委員会会長として開会挨拶に立った松村氏は「法施行25年の節目に、制度創設時の精神を振り返り、それを次世代に引き継ぐとともに、将来を展望し、制度のさらなる発展を期するため、25周年記念事業の一環としてこのシンポジウムを開催します」と高らかに宣言した。
続いて来賓の金子恭之国土交通大臣のメッセージを、国交省 住宅局長の宿本尚吾氏が代読。また日本弁護士連合会を代表して副会長の武本夕香子氏が挨拶を述べた後、開催に当たり祝辞を寄せた関係団体が紹介された。


国土交通大臣功労者表彰式を挟んで記念講演に立ったのは、東京大学特任教授で元内閣総理大臣補佐官の和泉洋人氏である。
和泉氏はまず、住宅市場全体を対象とする類例のない法律として住宅品確法が産官学の連携によって制定された点を強調した上で、法制定の背景には欠陥住宅問題があることを説明した。1995年の阪神・淡路大震災で倒壊した住宅の中には欠陥が原因だったものが多数あることが分かり、建築基準法には中間検査が盛り込まれた。「しかし、それだけではトラブルを根絶できないことから、新たな法制度として本法が必要になったのです」。

東京大学 特任教授
元内閣総理大臣補佐官
和泉 洋人氏
次に制度の骨格として、①住宅性能表示制度の創設 ②住宅紛争処理体制の整備 ③瑕疵担保責任の強化、という三本柱を紹介した。
性能表示制度は、住宅性能に関する共通のルールを定め、それを基に第三者機関が評価した結果を表示するもの。検査の形で現場確認を行う建設評価を含む。「ポイントは、性能評価書を添付した契約は、評価書通りのものを引き渡すことを約束した、とみなすことでした」と、和泉氏は解説する。
また紛争処理体制では、全国の弁護士会に設置した住宅紛争審査会が主体となる。「日本弁護士連合会は独立性の高い機関ですが、再三議論を重ね、国土交通大臣による指定や紛争処理業務に関する監督を受け入れてもらいました」と和泉氏は苦労を明かす。

制度の実績として、和泉氏は3つの数字を紹介した。まず設計評価。新築住宅件数の3割超を占め、累計493万戸に上る。次に性能評価を受けた住宅の紛争処理申請受付件数で累計574件。最後は同じく性能評価を受けた住宅の専門家相談実施件数が累計2258件となっている。「これらの実績から、本法は十分に機能しています」とみる。
法制定後、2007年には住宅瑕疵担保履行法が、翌08年には長期優良住宅法が制定され、さらに16年には宅地建物取引業法に定める建物状況調査(インスペクション)にもつながった。和泉氏は「住宅政策がウイングを広げる中、本法は一つのマイルストーンの役割を果たしました」と意義付ける。

一方で同氏は課題も指摘する。既存住宅の維持保全の状況を含めた評価や、評価住宅の性能維持状況の確認などである。「住宅の質をさらに向上させるための支援や流通市場の環境整備は、住宅品確法施行25年を経た現在もなお、課題です」。和泉氏はこう結んだ。
記念シンポジウムの締めくくりは、パネルディスカッションだ。壇上には、実行委員会会長の松村氏、リクルートSUUMO編集長の池本洋一氏、住宅性能評価・表示協会会長の中澤芳樹氏、弁護士の髙木佳子氏、東京建築士会前理事の青木清美氏の計5人が並んだ。モデレーター役は、実行委員会会長で弁護士の犬塚浩氏が務めた。
まず、松村氏は性能表示制度創設時の検討に関わってきたことを明かし、制度誕生の背景を住宅建築の歴史からひもといた。発端は1970年代に公共住宅で性能発注の例が出始めたこと。その後、性能表示制度の検討が始まったのは必然との見方を示した。
池本氏は「週刊住宅情報」(当時)の編集者として住宅建築における情報の非対称性を是正する立場で仕事に取り組んできた。また戸建て住宅の建築主として、性能表示の建設評価を取得。現場検査で施工品質を担保できたことを実感したという。

リクルート SUUMO
編集長
SUUMOリサーチセンター
センター長
池本 洋一氏
中澤氏は銀行勤務時代に住宅品確法と出会い、その後、住宅性能評価業務への展開も視野に入れていた建築確認検査機関に転じた経緯を紹介。そこには住宅品確法が持つ社会的な意義への共感があると明かした。
髙木氏は日本弁護士連合会事務次長就任直後の1998年に、建設省(当時)から住宅紛争処理体制の構築について協力依頼を受け、全国52の弁護士会に意向確認を行い、調整に尽力した結果、多くの会が賛意を示し、法案化にこぎ着けた経緯があるという。
青木氏は東京建築士会で建築相談に取り組む中で、不具合に関する相談が次第に増えてきたタイミングで住宅品確法の解説書を相談の場に携帯するようになったという。現在も様々な立場で住宅紛争処理に携わっている。
続くディスカッションでは、これら各分野の専門家が住宅品確法の役割や現状評価を述べた。
松村氏は、性能表示制度の導入前は性能以外の観点がないがしろにされる懸念があったことを明かした上で、結果的には、「性能以外の観点にも注意を払う市場に発展した」と導入の効果を評価。住宅の消費者と事業者の間で性能表示制度が共通言語の役割を果たしているという見方を示した。
中澤氏は、住宅品確法の施行を契機に、住宅が社会的な財産として扱われ、消費者と事業者の契約が適正化されるようになったことを評価する一方で、性能表示制度における「2つの30%」を課題に挙げた。一つは新設着工住宅における設計評価利用率、もう一つは設計評価を利用しても建設評価は利用しない住宅の比率だ。「この課題を克服する必要があります」と結んだ。



髙木氏は松村氏同様、性能表示制度によって住宅の取得者と供給者に共通の尺度が生まれ、健全な市場の形成に役立った、と評価する。また住宅紛争処理体制を整備する一環で作成された紛争処理委員向けの技術関連資料集にも言及。「裁判所でも活用され、建築紛争解決全般に好影響を及ぼしました」。

T&Tパートナーズ
法律事務所
弁護士
髙木 佳子氏
青木氏は消費者保護の観点で、瑕疵担保責任の強化や紛争処理体制の整備を「画期的」と評価。課題には、引き渡しから10年超で不具合が生じる例があるにもかかわらず責任強化の範囲が限定的な点、工事中における事業者の倒産リスクへの備えが不十分な点、建築士の資格を持つ紛争処理委員のなり手が少ない点を挙げた。

東京建築士会 前理事
(青木工業 代表)
一級建築士
青木 清美氏
池本氏は、不動産情報サイト「SUUMO」の掲載物件から性能表示制度の効果を説明した。性能評価書付きの物件数が、新築・中古戸建て共に2018~24年度にかけて伸び続ける中、「問い合わせ率は評価書付き物件の方が高い傾向にあります」。そこに、制度の効果が表れているという。
最後は、パネリスト全員が住宅品確法への期待や今後の展望を語った。
青木氏は、建築士の資格を持つ住宅紛争処理委員を確保するための研修の実施と適任者を選ぶための基準の整備の必要性を訴えた。また施工現場での理解促進の必要性も指摘。「教育・研修の強化、制度の簡素化、制度活用事業者の優遇などを進める必要があるでしょう」と今後に向けて提言した。
髙木氏は、住宅の質の確保・向上や紛争の抑制という観点から、「法制度の柱である性能評価住宅をより一層普及させることが重要」と強調した。その上で、中澤氏が挙げた「2つの30%」という壁を突破できるように「消費者による活用をさらに促したい」という思いを明らかにした。
中澤氏は、建築基準法の改正で性能表示制度は新たな時代を迎えていると指摘。中間検査・完了検査の義務化や4号特例の縮小で制度創設当時、普及の制約となっていた手続き負担の問題は改善されているとみる。その後押しを受け、「2つの30%」の壁を越えられれば、「建設評価が大きな力を発揮し、既存ストックの活用にも結び付くはずです」と今後を展望する。

住宅性能評価・表示協会
会長(日本ERI 名誉会長)
中澤 芳樹氏
池本氏も、建設評価の活用促進を呼びかける。そのために「不動産情報サイト運営者として施工段階での現場検査のメリットを訴求したい」と意気込んだ。さらに既存住宅の流通市場で性能表示制度が果たすべき役割にも着目。「制度の利用が流通価格に反映されるようになることが重要です」と語る。
松村氏は、性能表示制度の最終形を、コストとの見合いで性能を決められるようになることという。「ただそれを実現するには、『等級』がどのような価値を持つのか、判断できる材料をもっとそろえる必要があります」と指摘。コストとの見合いで性能を考える習慣が住宅市場で生まれることに期待を寄せた。
その後、パネルディスカッションの総括として、モデレーター役を務めた犬塚氏がこれまで交わされた議論の内容を端的にまとめた。
同氏はまず、性能表示制度の一層の普及はパネリスト共通の認識と指摘。ただ普及に当たっては、住宅市場で当たり前のように浸透させるべきという意見の一方、建設評価についてはまず利点を説明すべきという意見もあった、と整理した。また、松村氏が最終形と表現した活用法にも言及した上で、紛争処理については、青木氏からの指摘を受け、委員の確保や研修の必要性を改めて認識した、と述べた。
![[モデレーター]実行委員会会長 京橋法律事務所 弁護士 犬塚 浩 氏](photo_9.png)
[モデレーター]
実行委員会会長
京橋法律事務所
弁護士
犬塚 浩氏
最後に、「住宅品確法はまだ25歳。建築基準法に比べて若いだけに、今後のポテンシャルが見込めます」という機知に富んだ一言で、記念シンポジウムの終了を告げた。
記念シンポジウムでは、住宅品確法の制定・施行に関して功績を残した個人等を国土交通大臣が表彰する功労者表彰の受賞者が発表された。対象は、①住宅品確法の検討及び施行に当たり、顕著な功績があった個人等、②住宅品確法に規定する各制度の運用等に当たり、顕著な功績があった個人等、③その他、住宅の品質確保の促進等に関し顕著な功績があった個人等――の3部門。この基準に基づき、右の17人が表彰された。会場の日経ホールでは、受賞者代表として東洋大学名誉教授の上杉啓氏が登壇し、プレゼンター役を務めた国交省住宅局長の宿本尚吾氏から表彰状を授与された。

(五十音順)
| 伊藤 滋夫氏 | 弁護士・法科大学院要件事実教育研究所 顧問 |
|---|---|
| 犬塚 浩氏 | 第二東京弁護士会 弁護士 |
| 上杉 啓氏 | 東洋大学 名誉教授 |
| 鈴木 崇英氏 | 一般社団法人住宅性能評価・表示協会 前会長 |
| 髙岡 信男氏 | 東京弁護士会 弁護士 |
| 髙木 佳子氏 | 第二東京弁護士会 弁護士 |
| 高谷 進氏 | 第二東京弁護士会 弁護士 |
| 竹川 忠芳氏 | 第一東京弁護士会 弁護士 |
| 中澤 芳樹氏 | 一般社団法人住宅性能評価・表示協会 会長 |
| 野村 歡氏 | 元国際医療福祉大学大学院 教授 |
| 深尾 精一氏 | 首都大学東京(現東京都立大学) 名誉教授 |
| 松村 秀一氏 | 神戸芸術工科大学 学長 |
| 三橋 博三氏 | 東北大学 名誉教授 |
| 安岡 正人氏 | 東京大学 名誉教授 |
| 山田 勝利氏 | 第二東京弁護士会 弁護士 |
| 山本 卓也氏 | 第一東京弁護士会 弁護士 |
| 吉田 倬郎氏 | 工学院大学 名誉教授 |

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