LevelBlueとの統合で生まれるサイバーリーズンの戦略とは

国内EDR(Endpoint Detection & Response)市場において7年間にわたってトップシェアを獲得し続けるなど、この分野のリーディング・カンパニーとして知られるサイバーリーズン。2025年には世界的なマネージドセキュリティーサービス専門プロバイダーであるLevelBlueとの合併も行い、総合サイバーセキュリティー企業への変革を目指すとしている。その同社の今後について、日本法人の代表を務める桜田 仁隆氏に話を聞いた。

※出典:
デロイト トーマツ ミック経済研究所「外部脅威対策ソリューション市場の現状と将来展望 2024年度 サイバーセキュリティソリューション市場20版目」
https://mic-r.co.jp/mr/03380/

顧客企業の厚い信頼をバネに
日本のEDR市場をリード

サイバーリーズンが日本法人を設立されてから10年が経ちました。この間のセキュリティーについて、どのような変化を感じていますか。

桜田氏:かつてのセキュリティー対策では、ネットワークなどの境界防御やマルウエアの侵入をいかに水際で防ぐかという点に主眼が置かれていました。しかし、サイバー攻撃の巧妙化・悪質化が進んだことで、現在では侵入を前提とした対策が主流になっています。

これに伴って大きく伸びたのが、当社も手掛けているEDRの分野です。当初はその必要性をご理解いただくのに苦労することもありましたが、今では当たり前のように活用されています。また、お客様の意識も大きく様変わりしましたね。日本の大手企業でも重大なインシデントが相次いだことで、企業経営そのものに関わるリスクとして捉えられるようになっています。

サイバーリーズン合同会社 アジア太平洋地域統括 日本法人 代表執行役員社長 桜田 仁隆氏サイバーリーズン合同会社 アジア太平洋地域統括 日本法人 代表執行役員社長 桜田 仁隆氏

そうした中、サイバーリーズンでは、過去数年間にわたり日本のEDR市場でトップシェアを獲得し続けています。その要因はどこにあるのでしょう。

桜田氏:いろいろな理由が考えられますが、1つにはサービスを重視したことだと考えています。セキュリティー対策には高度な知見が必要であり、運用にかかる負荷も重い。しかし、専任のセキュリティー担当者を抱えている日本企業は限られます。特にEDRの分野においては、製品だけを渡されても困るというお客様も多い。そこで当社では、分かりやすく使いやすい監視サービスも早い段階からご提供してきました。

また、これと並行して、日本語対応などのローカライズや機能改善にも継続的に取り組んできました。こうした姿勢をお客様からご評価いただけたことが、市場での評価にもつながったのではないかと考えます。ちなみに、社員に対しては、トップシェア自体を誇るのではなく、そのための努力を積み重ねてきたことを誇りにしてほしいと伝えています。

LevelBlueとの合併で
総合サイバーセキュリティー企業へ

さらに今回、「総合サイバーセキュリティー企業への変革」を打ち出しました。「EDR企業からの卒業」とまで表現されたその裏側には、どのような課題意識があったのですか。

桜田氏:これは私の個人的な経験からも言えることですが、セキュリティー対策では「高いレイヤーで検知した脅威を低いレイヤーで止める」ことが基本となります。後段のレイヤーに移るに連れて、対策にかかるリソースがより多く必要になるからです。

これを踏まえて、サイバー攻撃の代表的なパターンを見てみましょう。まずはネットワーク機器の脆弱性を突いて侵入し、IDやパスワードを盗んでネットワーク内を動き回ります。そして目的のサーバーに到達し、重要な情報を窃取します。この一連のプロセスを考えると、最初のネットワーク機器のところからきちんと管理できていないと、安全を守れないことが分かります。ネットワーク機器の脆弱性やパッチに問題はないか、IDやユーザーの状態は正常か、ネットワーク内の通信に不審な動きはないか、こうしたことを全部把握した上でないと、低いレイヤーで脅威を止めることができないのです。

EDRを核としつつ、事前の予防策(EPP)やID管理なども統合することで、隙のない包括的な防御システムを実現できるというわけですね。

桜田氏:お客様の環境には、既にファイアウオールやアンチウイルス、IPS/IDS装置など、様々なセキュリティー製品が導入されています。これらを個別に買い足していくのではなく、監視や情報の収集・分析、運用管理が1つの仕組みとして行えるようなプラットフォームを提供していきたい。そうしたビジョンがもともと当社にはありました。

このようなプラットフォームがあれば、お客様も自社内での運用負荷を下げられます。また、脅威への対応もよりスピーディーに行えるようになります。とはいえ、当社の社員数もそれほど多くはないため、これまではなかなかそこまで手が回りませんでした。これを変える大きなきっかけとなったのが、世界最大級のマネージドセキュリティーサービス専門プロバイダーであるLevelBlueとの合併です。

サイバーリーズン合同会社 アジア太平洋地域統括 日本法人 代表執行役員社長 桜田 仁隆氏

LevelBlueとの合併により、どのような新たな価値を提供できるようになるのでしょうか。

桜田氏:LevelBlueは、米AT&Tのセキュリティー部門から生まれた企業であり、過去数十年にわたってお客様のセキュリティー対策を支援してきた実績があります。また、当社以外にも、様々な先進セキュリティー企業を買収しています。これら各社のソリューションや強みを組み合わせることで、ケイパビリティーを大きく広げることが可能になります。脅威の監視から検知・分析、脅威インテリジェンス、デジタルフォレンジックやインシデント対応、マネージドサービスなど、セキュリティーに必要な要素を一気通貫でカバーできるようになるのです。

そこでは、サイバーリーズンがこれまで培ってきた技術や経験も重要な役割を果たすことになりそうです。

桜田氏:EDRはもちろんのこと、各種のセキュリティー情報を統合監視するプラットフォームであるXDR(eXtended Detection and Response)もかなりの進化を遂げています。吸収合併した各社のサービスやデータベース、分析手法などの統合はこれからが本番ですが、その基盤として当社の技術が貢献できる部分は多いことと自負しています。また、これとは逆に、LevelBlueのもともと持っている強みを取り入れられることへの期待も大きいですね。例えば、LevelBlueのセキュリティーエキスパートチームであるLevelBlue SpiderLabsでは、世界でも屈指の脅威インテリジェンスを有しています。これを当社のリサーチチームと融合することで、脅威インテリジェンスの強化やDFIR(Digital Forensics and Incident Response)の精度をさらに向上させ、お客様により強力な脅威対処能力を提供できるようになります。

最近では、生成AIを悪用した攻撃なども多発しています。それだけに、対処能力がより強化されるのはユーザー企業にとっても大きな安心材料になりますね。

桜田氏:AIに関しては、我々も以前から、様々な形で活用してきました。また、AIエージェントの活用をはじめとした新たな取り組みもいろいろと進めています。特にフィッシングをはじめとするソーシャルエンジニアリング(人間の心理的な隙やミスを突いて情報を盗み出す手法)の分野では、AIによる対策がかなり有効ですので、今後も機能の強化・拡充を図っていきます。ちなみに、AIにも間違いはありますので、当社ではあえて熟練アナリストによる分析も組み合わせています。このように「AI+人」の二段構えの体制を敷くことで、誤検知の削減と精度向上を図っているのです。

世界レベルのサービスや情報を
日本市場へ展開

日本ではセキュリティー人材不足が深刻な課題になっています。この点では、どのような貢献が果たせるとお考えですか。

桜田氏:当社では世界中にセキュリティー人材を抱えています。このため監視サービスについても、世界中の拠点が交代しながら24時間・365日体制での監視を行っています。このグローバルネットワークが、日本のセキュリティー人材不足への対応にも大きく寄与できるものと考えています。それは人的リソースの豊富さという面でもそうですし、知見の多さという面でもそうです。例えば当社には、まだ日本で起きていないインシデントの情報も入ってきますので、こうしたものにもいち早く対処できます。

近年のセキュリティー対策では、膨大な量のデータを分析する必要があります。テイラーメイド型のSOCを自前で運用できる大企業ならともかく、一般の企業ではなかなかそこまで手が出ません。こうした点でも、サイバーリーズンが提供できる価値は大きそうです。

桜田氏:セキュリティー対策は、どれだけ多くのデータを集められるか、どこまで深く分析できるかにかかっています。その点、今回の合併によって、世界最大規模のデータ収集・分析環境が整いました。これに加えて、個々のお客様のご要望に応じたカスタムサービスもご提供できます。テイラーメイド型SOCを自前で運用することが難しいお客様に対しても、それに勝るとも劣らないサービスをご提供できるものと考えています。

今後の日本市場に向けた具体的な戦略についても伺えますか。

桜田氏:LevelBlueとの合併によって得た世界的なバックボーンを、日本のお客様のために使っていくことが、これからのミッションです。もともと当社は、セキュリティー企業の中では比較的手厚い体制を敷いているほうですが、これまでは製品が主体でしたので、サービス分野への取り組みもより強化していきたい。実際LevelBlueは、米国で既に100種類以上もの商品パッケージを展開しており、お客様の多種多様なニーズに応えています。この中には、日本のお客様に役立つものも数多くありますので、優先順位を考えながら展開していきます。

サイバーリーズンの製品ロードマップ

サイバーリーズンの製品ロードマップ

今後は日本でもトップシェアを誇るEDR/XDR製品の機能強化を図っていくと同時に、LevelBlueのマネージドサービスやDFIRサービス、脅威インテリジェンスなども有機的に融合。人材不足に悩む日本企業のセキュリティー対策強化に貢献していく考えだ

[画像のクリックで拡大表示]

日本のパートナー企業との協業も進めていくお考えですか。

桜田氏:もちろんです。EDRはある意味で完成品ですが、今後は我々がパートナー様の黒子として動くようなケースも増えてくると考えます。前述の通り、LevelBlueでは幅広い領域のサービスを全世界で展開しています。これをパートナー様のサービスと組み合わせれば、新たな付加価値を生むこともできるようになります。また、既存のコンポーネントを我々のサービスと置き換えることで、コストを大幅に下げたりできるかもしれません。こうした選択肢を提供できることが、我々にとっての価値にもつながると考えます。

10年間にわたり事業を続けてこられたのも、日本のお客様、パートナー様のご支持があればこそ。世界中で蓄積した知見や情報、サービスを日本市場に適した形で展開することで、今後も皆様の期待にお応えしていきたいと思います。

問い合わせ

サイバーリーズン合同会社
https://www.cybereason.co.jp/contact/