AI時代、GPUインフラ早期導入
長期安定運用両立するには

AlmaLinuxのCUDA対応がもたらす恩恵と日本企業でのローカルAI環境最適解

情報流出を防ぐため、AIをローカル環境で整備する企業・組織が増えている。
だがそこでは、大きな課題が立ちはだかる。
それは脆弱性に対処するためのOSアップデートが
稼働中のサービスを停止させてしまうという「セキュリティーと可用性のジレンマ」だ。
とりわけAI環境では、CUDAを含むGPUスタックとOSの依存関係が密であり、
OS更新がシステム全体の再検証につながりやすい。
重要な機密情報を適切に保護しつつ、AIやOT環境を止めずに運用するにはどうすればよいのだろうか。
2026年2月、AlmaLinuxはNVIDIA CUDAの公式サポートOSの1つとして選ばれた。
セキュリティーに定評のあるAlmaLinuxとNVIDIA CUDAの組み合わせで何が起きるのだろうか?
AlmaLinux OS Foundationとサイバートラストのキーパーソンにこの最新アプローチについて話を聞いた。

アップデートが
AI運用の大きな課題に

 AIが企業競争力の浮沈を決めるようになった現在、クラウドAIからのデータ流出リスクを避けるため、ローカル環境でAIを活用する企業・組織が増えている。だが、そこにも大きなハードルがある。特に配慮すべきなのがセキュリティーだ。ローカル環境そのものもサイバー攻撃の標的となるリスクを抱えているからだ。

 2025年以降、RaaS(Ransomware as a Service)などの犯罪エコシステムがAIツールを活用して、ローカル環境の脆弱性を突く攻撃が増えている。先鋭化する攻撃の前には、これまで看過されてきたサーバー内部の脆弱性が事業継続の致命的なリスクになる。

サイバートラスト株式会社
オープンプラットフォーム事業本部
執行役員ビジネス統括担当

鈴木 庸陛

 脆弱性に対処するには、最終的にOSアップデートが不可欠だ。しかし、アップデートはしばしば、稼働中のサービスに“止めるリスク”を持ち込む。

 例えば、Linuxでは世代交代のメジャーバージョンアップだけでなく、同一世代内のマイナーバージョンアップでも、不具合の修正や新機能の追加などが含まれることがある。このためアップデート前の環境との非互換により、システムがそのまま動作しない可能性がある。商用では事前テストが必須となるが、おおむね半年ごとの更新に毎回追従するのは運用に慣れていない現場にとっては重い負担となる。

 さらに、NVIDIAのCUDAに代表されるAIフレームワークでは、GPUドライバー、カーネル、ユーザー空間ライブラリ、コンテナなどの依存関係が密に結び付くため、どれか1つを動かすと全部の再確認が必要になるケースが多い。

 このため日本では、“動いているなら触らない”が作法になりがちだと、サイバートラストの鈴木 庸陛氏は指摘する。

サイバートラスト株式会社
オープンプラットフォーム事業本部
執行役員ビジネス統括担当

鈴木 庸陛

 「日本では、システムを止めたら責任問題になってしまうケースが少なくありません。『アップデートのためシステムを止めました』、『どういうことだ、報告しろ』と、セキュリティーのためなのに止めた方が犯人扱いを受けてしまう。すぐに止める欧米とは逆で、可用性とセキュリティーを天秤にかけると日本は可用性を選んでしまうケースが多いのです」

 RaaSによる攻撃が加速度的に増えている中、日本はOSの脆弱性を放置することがいかに危ないかを今一度、認識する必要があるといえるだろう。

セキュリティーと可用性のジレンマが
AI活用を阻害する

サイバートラスト株式会社
オープンプラットフォーム事業本部
執行役員本部長

青山 雄一

 アップデートを止めれば脆弱性が残る――この板挟みが多くの現場で起きている。 AIをローカル環境で動かす場合、自社の機密データを扱うことが少なくない。つまり、機密情報を扱いながらアップデートしないというリスキーな状況が生まれているのだ。

 そうした状況を理解している攻撃側は、生成AIを悪用した“AI駆動型攻撃”を仕掛けてくる。例えば、初期の探索から脆弱性の特定、感染、暗号化までのプロセスを自動化したり、生成AIで極めて自然な日本語のフィッシングメールを送りつけたりするのである。このため2025年上半期には、全世界の新種メール攻撃のうち日本を標的とした攻撃が84%にも急増しているという
米セキュリティー企業Proofpoint(プルーフポイント)社が発表した2025年の調査データによる

 「OSのメンテナンスを怠った結果、ランサムウエアの被害に遭いましたとなったら、それは企業にとって致命的です。これを防ぐには、OSレイヤーから脆弱性を塞ぐことが一番の対策となります」とサイバートラストの青山 雄一氏は警鐘をならす。

 鈴木氏も、「“OSの更新は怖いから触らない”では、もう守れません。発想を転換して“止めないで更新する”仕組みが必要になります」と付け加える。

AlmaLinuxが
ジレンマ解決の切り札に

 こうした観点から注目を集めているのがAlmaLinuxだ。

 AlmaLinuxは、Red Hat Enterprise Linux(以下、RHEL)の代表的なクローンOSであるCentOS Linuxのサポート終了にともない、企業や研究機関のAI基盤として急速に導入が進んでいる。RHELと高い互換性を保ちつつ、完全無料で導入しやすい。安定性と迅速な脆弱性対策にも定評がある。

AlmaLinux OS Foundation
Chair,Board of Directors

benny Vasquez

 また、AlmaLinuxにはMicrosoft Azure、Amazon Web Services、Googleなどのクラウドベンダーをはじめ多くの支援企業が参画しており、継続性が非常に高い。

 一方、非営利団体である“The AlmaLinux OS Foundation”が運営するコミュニティ主体で開発・提供されており、その中立姿勢が特定企業の意向に左右されない永続的なOSとして、多くのユーザーやベンダーから支持を集めている。

 さらに注目したいのは2026年3月、AlmaLinuxはNVIDIAの公式サポートを受けてCUDAやドライバーの配布を大幅に効率化し、AI時代のグローバルスタンダードOSとしての地位を確立した点だ。

 「私たちはOSを所有することなく、あくまで中立的な立場からコミュニティの声に応え続けてきました。その透明性あるガバナンスに加え、世界中のユーザーによって開発・サポートされているからこそ可能な、アジャイルな対応力もNVIDIAに評価された要因だと思います」と話すのは、AlmaLinux OS Foundationのチェアを務めるbenny Vasquez氏だ。

AlmaLinux OS Foundation
Chair,Board of Directors

benny Vasquez

AlmaLinux OS Foundation
Architect and Release Engineering Lead

Andrew Lukoshko

 ユーザー企業からの多数の要望もNVIDIAの公式サポートを後押しした。結果的にAlmaLinuxは、AI用途の本番採用が加速し、以前なら想像しにくかった規模のデプロイも現実のものとなっている。

AlmaLinux OS Foundation
Architect and Release Engineering Lead

Andrew Lukoshko

 AlmaLinux OS Foundationで、OS開発の技術リーダーを務めるAndrew Lukoshko氏は、「AlmaLinuxのコミュニティには世界中から様々なリクエストや提案が届きます。それに対して必要とされる対応を素早く実行できる技術力がAlmaLinuxの大きな強みとなっています。その際に私たちが最優先にしているのが互換性の維持です。それを常に徹底しているからこそAlmaLinuxは多くのユーザーに選ばれ続けているのです」と説明する。

 こうした高いポテンシャルが、AlmaLinuxの高セキュリティー性を担保している。最新のセキュリティーアップデートが定期的にリリースされ、常に安全・安心に使用できる環境にある。

 また、コードベースの構成要素リストである「SBOM(Software Bill of Materials)」が配布されていることも、セキュリティー対策を重視する企業や組織から信頼を獲得しているポイントだ。

サイバートラストが提供する
「日本企業向け長期安定運用モデル」

 このAlmaLinuxを日本の企業や組織が利用する際に、パートナーとなっているのがサイバートラストである。

 同社は2023年からAlmaLinux OS Foundationへの支援とエンジニア参画を公表しており、国内ではAlmaLinuxの普及・啓蒙、コミュニティイベントの開催支援などにもかかわっている。

 サイバートラストは、ローカル環境でAIを整備する企業や組織が直面している“セキュリティーと可用性のジレンマ”を解決するため、「マイナーバージョン固定」と「無停止パッチ」を組み合わせたソリューションを提示している。

 マイナーバージョン固定とは、AlmaLinuxベースのLinux OS(バージョン9.2および9.6)について、構成するソフトウエアのバージョンを維持したまま、脆弱性に対する修正のアップデートパッケージを7年間提供するサービス。これにより、互換性を損なう恐れのある新機能の追加は取り入れず、脆弱性の修正のみに対応できる。具体的には、AlmaLinuxの長期稼働を支援する日本語の技術サポート、セキュリティーアップデート、SBOM管理などをワンストップで提供する「Enterprise Pack for AlmaLinux」を契約した上で、「Enterprise Pack for AlmaLinux Extended Security Update オプション」(以下、EPA ESUオプション)を導入する形となる。

 安定稼働しているAlmaLinux 9.2/9.6に対して新機能を追加することがないため、アップデートによる機能差分を生むことがない。従来と同じ再現性を保ったまま、安全性だけを引き上げることができる。検証や再設計にかかる負担を最小化できるわけだ。
 「バージョンは固定、セキュリティーだけ積み増すことで、長く安定して使えるのが最大のメリットです。最長7年、同じシステム環境を運用できれば、テスト工数やトラブルを最小化することができます。その間、お客様はAIのレイヤーだけに集中して企業価値を高めていただけます」と青山氏は言う。

 EPA ESUオプションを導入すれば、変更を加えることが困難なミッションクリティカルシステムや産業用PC、アプライアンス機器などを、長期間セキュアかつ安定的に運用できる。社内システムなど幅広い用途のサーバーにおいても、バージョンアップの工数を削減でき、IT人材不足やコスト削減の課題を解決する。  もう1つの「無停止パッチ」は、OSの再起動なしに重大な脆弱性に対応できるソリューションだ。

 「我々が提供する『Linuxライブパッチサービス』は、OSを再起動せずに、カーネルの脆弱性をその場で修正することができます。稼働中のシステムに影響を与えることなく、脆弱性の修正が1秒未満で完了します。自動適用にも対応しており、脆弱性対策に係るコストと手間を大幅に削減することが可能です」と、鈴木氏は説明する。  「“アップデート=止まる”という考え方は過去のものとなりました。これからは“アップデート=止めずに塞ぐ”が標準になると考えてください」(鈴木氏)

 このように、サイバートラストをAlmaLinuxによるAI活用のパートナーとすることで、これまで懸念されていた“セキュリティーと可用性のジレンマ”は大幅に緩和できる。

 セキュリティーを削らず、可用性も譲らない。グローバルで強みを持つAlmaLinuxに、日本の現場が求めていた「止めないソリューション」を重ねることで、その実現は夢ではなくなった。AIやOTを止めない基盤は、もう手の届くところにある。
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サイバートラスト株式会社 URL:https://www.cybertrust.co.jp/almalinux-ep/esu.html#contact