実装が始まるデジタルツインとフィジカルAI

「導入の壁」を乗り越えるために

必要なこととは?

~技術と現場知見をつなぐ、

デル・テクノロジーズ×マクニカの協働モデル~

現実の設備やプロセスを仮想空間に再現する「デジタルツイン」と、AIが物理世界で知覚・行動する「フィジカルAI」。これらは2026年における極めて重要な技術領域として注目を集めている。世界最大級のテックイベント「CES 2026」でも、主要テーマとして取り上げられ、その重要性が広く認識されつつある。しかし実際に導入・活用するには、大きな壁があることも確かだ。では具体的にどのような壁があり、それをいかにして乗り越えるべきなのか。この領域をリードする2社のキーパーソンに話を聞いた。

<この記事でわかること>

・デジタルツインとフィジカルAIの市場規模は、2031年に1,400億ドル超に拡大すると予測されている

・Dell AI Factory with NVIDIAは3,000社以上に導入され、導入後4年間で1,225%のROIを実証している

・企業がAI実装で直面する2大障壁を、デル・テクノロジーズのインフラ基盤×マクニカの技術力により解決できる

拡大するAI市場—日本でも1兆円投資が始動

デル・テクノロジーズ株式会社
AIプラットフォーム・ソリューションズ本部(AIP)
本部長/Country Leader
堀田 鋭二郎氏

今後急速に拡大すると期待されているデジタルツインとフィジカルAIの市場。2023~2031年のCAGR(年平均成長率)は約38.7%になると見込まれており、2031年の市場規模は1,400億ドルを超えると予測されている。これまでのAIは、テキストや画像、音楽などを生成する「デジタル空間の知能」だったが、AIを取り巻く様々な技術の進化によって、現実世界を高い忠実度で再現するデジタルツインと自律的に行動するフィジカルAIへとシフトする、新たな局面を迎えているのだ。

「日本国内でも2025年12月に閣議決定した『人工知能基本計画』において、5年間で1兆円の投資が予定されています」と語るのは、デル・テクノロジーズの堀田 鋭二郎氏だ。日本の産業の強みである「ロボティクス」分野との融合に、大きな期待が寄せられていると述べる。「デル・テクノロジーズはこの潮流を重視しており、国内のNVIDIAビジネスをけん引するマクニカと協業しながら、デジタルツインとフィジカルAIのビジネスを日本市場でさらに強力に推進しようとしています」。

高いROIを実現する「Dell AI Factory with NVIDIA」

そのドライバーの1つが、デル・テクノロジーズがNVIDIAとともに提供している「Dell AI Factory with NVIDIA」である。これは企業のAI導入を、計画段階から運用段階までワンストップで支援する、包括的なAIプラットフォーム。データ、インフラストラクチャー、ソフトウエア、サービスをパッケージ化し、安全かつ効率的に生成AIや機械学習を活用できる「デジタル・インテリジェンスの生産ライン」を提供するとともに、AIをどのように活用するのかという具体的なユースケースの実現まで視野に入れたものだ。

データ、インフラストラクチャー、ソフトウエア、サービスをパッケージ化するとともに、AIをどのように活用するのかという具体的なユースケースの実現まで視野に入れている

「Dell AI Factory with NVIDIAは、既にグローバルで3,000社以上のお客様にご導入いただいており、導入後1年間で269%、4年間で1,225%という、非常に高いROI(投資効果)が得られることが実証されています。デジタルツインとフィジカルAIの領域では、ユースケースの部分でマクニカとの協業を進めているのです」(堀田氏)

デル・テクノロジーズ×マクニカの協業が生まれた理由

株式会社マクニカ
クラビス カンパニー
ビジネスソリューション第2統括部
営業第1部長
森 裕介氏

それではなぜ協業相手としてマクニカを選んだのか。その大きな理由は、同社がNVIDIAの国内ディストリビューターであると同時に、デル・テクノロジーズのパートナーであるためだ。デジタルツインやフィジカルAIで高いROIを実現するにはDell AI Factory with NVIDIAの効果的な導入が1つのカギになるが、NVIDIAとデル・テクノロジーズをつなぐ国内のパイプ役を果たせるマクニカであればこれが容易になる。

これに対し、マクニカの森 裕介氏は、次のように語る。「これまでのAIやGPUビジネスは、主に一部の研究機関(R&D)やハイテク企業向けが中心でした。しかし2026年からは本格的に、一般的な民間企業の現場やIT部門、いわゆるエンタープライズ領域での導入が進んでいくでしょう。特にデジタルツインやフィジカルAIは、日本の基幹産業である製造業が直面している人手不足などの課題を解決する手段として、重要性が高まっていきます。これによって工場などの自動化を推し進めることで、日本企業の成長力をさらに強化することが可能になるはずです」。

エンタープライズへのAI実装における2つの障壁 

とはいえ、エンタープライズへのAI実装には、2つの大きな障壁がある。1つは、デジタルツインやフィジカルAIは新しい領域であるため、実際にどのように活用できるのか具体的に思い描きにくいこと。もう1つは、エンタープライズが求める安定稼働を実現しなければならないことだ。

これらの障壁を乗り越えていくには、顧客を十分に理解した上で具体的なユースケースを提示できる能力と、安定した稼働を可能にする24時間365日のサポート体制が必要になる。その実現においてマクニカとデル・テクノロジーズの協業は、大きな力になるといえるだろう。

「デル・テクノロジーズは長年にわたり、ITインフラ市場での確固たる信頼と、エンタープライズレベルのサポート実績を築き上げてきました。このようなデル・テクノロジーズのプラットフォームやお客様との信頼関係を土台に、マクニカが持つ深いドメイン知識やサイバーセキュリティーの知見、ソフトウエアのインテグレーションをかけ合わせることで、顧客への最適な提案と伴走支援が可能になります。これこそがお客様から見た、両社協業の最大のメリットなのです」(森氏)

デジタルツイン・フィジカルAIを支えるNVIDIAソフトウエア群

株式会社マクニカ
クラビス カンパニー
第1技術統括部
技術第3部長
北島 佑樹氏

それでは両社の協業によりどのような支援が可能になるのか。もう少し詳しく見ていきたい。

「AIを活用するにはその基盤となるインフラ環境を整備する必要がありますが、これを用意するだけではお客様がすぐに使いこなすことは困難です」と語るのは、マクニカの北島 佑樹氏だ。ここでもう1つのカギになるのが「NVIDIA特有のソフトウエア」とインフラが密接に結びついた最適なインテグレーションだが、これには多くの知見が必要になる。これを可能にするのがマクニカのインテグレーションサービスなのだという。

既にマクニカには、デジタルツインの構築やロボットシミュレーションなど、様々な取り組み事例があると北島氏。それらをまとめたのが図2のチャートだ。

NVIDIAのソフトウエアを熟知したエンジニアが、多岐にわたるユースケースを成功させてきたことがわかる

その上で北島氏は、「デジタル空間の知能」から「現実世界を理解し制御するAI」への橋渡しをするため、NVIDIAは複数のソフトウエアを提供していると説明する。

まず中核となるのが、物理学に基づいた大規模な産業用デジタルツインを構築・運用するためのプラットフォーム「NVIDIA Omniverse™」。ここでは単なる視覚的な再現にとどまらず、素材の重さや摩擦といった物理特性を備えた「SimReady」なアセット(シミュレーション利用を前提に準備された高精度データ)を活用し、これらをロボットシミュレーションツールである「NVIDIA Isaac Sim」と組み合わせることで、現実世界に極めて近い挙動を仮想空間内で再現するという。

また、現実には取得困難なエッジケースを含む高品質な「合成データ(Synthetic Data)」を生成するために、「Omniverse Replicator」も提供されている。これによってAIモデルの精度を飛躍的に高めることができ、フィジカルAIの実装も最短距離で実現できる。

さらに最近では、「NVIDIA Cosmos™(世界モデル)」や「NVIDIA Isaac™ GR00T(汎用ロボット基盤モデル)」も提供。これらはロボットに「物理世界の常識」を教え込み、自律的な行動を可能にするものだ。

そしてもう1つ重要なのが、企業の知能を支える「NVIDIA AI Enterprise(NVAIE)」だ。「NVIDIA NIM™ (NVIDIA Inference Microservices)」による高速なデプロイ、「NVIDIA NeMo™フレームワーク」によるモデルのカスタマイズ、そして特定のユースケースに最適化された「NVIDIA AI Blueprints」を組み合わせることで、各種ユースケースに特化した開発・導入が可能になる。

「これらの強力なNVIDIAのソフトウエアプラットフォームは、脳と神経のようなものです」と北島氏。これらが最大限の成果を上げるにはそのための肉体が必要になるが、それこそがDell AI Factory with NVIDIAなのだと語る。「デジタルツインやフィジカルAIの構築には、膨大な計算リソースと、エッジからクラウドまでを一貫して管理するオーケストレーションが不可欠です。Dell AI Factory with NVIDIAであれば、NVIDIAのGPUやネットワーク、ソフトウエアなどが事前に検証・統合された形で提供されています」。

ただし、AIモデルの構築、適用、最適化にはそれぞれ必要となるインフラの特性が異なっているとも指摘。そこまで配慮した上で、インフラの導入からAIの学習、シミュレーション環境の構築、チューニングまで、専門部隊が顧客と伴走するのがマクニカのインテグレーションサービスなのだという。

「Dell AI Data Platform」があらゆるデータを資産に変える

デジタルツインやフィジカルAIを実現する上で、もう1つ忘れてはならないことがある。それは「AIが活用できるようにデータ基盤を整備する」ことだ。

「企業がデジタルツインやフィジカルAIを実装しようとする際、最初に直面する壁は『データが様々な場所にバラバラに保存されている』という問題です」と指摘するのは、デル・テクノロジーズの伊藤 史子氏。設計データや3Dモデル、マニュアル、動画など、膨大な非構造データが存在しているにもかかわらず、いまだに手作業でデータを探し回っている状態では、AI投資の真のリターンを得ることはできないという。

「この問題を解決するためにデル・テクノロジーズが提供しているのが『Dell AI Data Platform』です。これは企業内に散在するあらゆるデータを統合し、AIが活用できる状態に整えるための基盤であり、自然言語でのデータ資産検索を可能にします」

多様なデータソースからデータを抽出し、データエンジン、ストレージエンジン、ガバナンス/セキュリティーの3本柱によって、AIが活用できる「データ資産」へと昇華させる

このデータ基盤で特に画期的なのが、NVIDIAの「USD Search」と「Omniverse」、そしてデル・テクノロジーズの高性能ストレージ(PowerScale/ObjectScale)を組み合わせることで、エンタープライズ向けの強力な3D/メディア検索基盤を構築できる点だ。これにより、組織内の何十億もの3Dデータや画像に対して、「木製の椅子を探して」といった自然言語(日本語を含む)によるセマンティック検索が行えるようになる。

さらに伊藤氏は「これは経営層視点で3つのメリットをもたらします」と話す。

1つ目は「全社データをAI活用の資産に転換できること」。これまでサイロ化されて探すことができず「単なるコスト」になっていた非構造データが、再利用可能なナレッジへと昇華する。

2つ目は「ワークフローを崩すことなく生産性を高められること」だ。現場のユーザーは、欲しいパーツなどを自然言語で検索し、それをそのままOmniverse上のシミュレーションにインポート可能。そのため学習コストをかけることなく、設計・検証サイクルを大幅に短縮できる。

そして3つ目が「セキュアでスケーラブルな環境を実現できること」だ。デル・テクノロジーズのエンタープライズストレージとサイバーレジリエンス機能の上で稼働するため、ミッションクリティカルなデータであっても、ガバナンスを担保した状態で活用できるのである。

2026年、デジタルツイン・フィジカルAI移行が一気に進む

「デジタルツインとフィジカルAIの主要な導入先は、現在では日本の基幹産業である製造業ですが、これらの応用領域は、医療・物流・建設などにも広がりつつあります」と堀田氏。既にデル・テクノロジーズには、マクラーレン・レーシングにおける3Dデジタルツインを活用したパーツの高速開発とレース戦略の最適化や、テキサス・チルドレンズ病院における病室のレイアウト検証、患者の病状予測モデルの構築などの先行事例があるという。

その一方で日本国内に関しては「現在はまだ小規模なデジタルツイン環境をつくって検証を進めているフェーズです。しかし取り組む企業は増加しており、2026年後半からは実際の工場や現場の一部でロボティクスを導入するなど、本格的な社会実装フェーズへの移行が一気に進む可能性があります」と森氏は語る。

マクニカとデル・テクノロジーズの協業は、このような流れを強力に後押しするものだといえるだろう。その後押しをさらに強化するためマクニカでは「フィジカルAI検証センター」のアップデートを進め、これとデル・テクノロジーズの「AI Innovation Lab」を連携させることも視野に入っているという。

「私たちはこのように密に連携することで、日本企業のAIポテンシャルを最大限に引き出し、新たなビジネス価値の創出を力強く支援していきたいと考えています」と森氏は語った。

よくある質問

デジタルツインとは?

デジタルツインとは、現実の設備やプロセスを仮想空間に再現する技術のことである。単なる視覚的な再現にとどまらず、素材の重さや摩擦といった物理特性を備えたデータを活用し、現実世界に極めて近い挙動を仮想空間内で再現できる。

フィジカルAIとは?

フィジカルAIとは、AIが物理世界で知覚・行動する技術のことである。これまでのAIがテキストや画像、音楽などを生成する「デジタル空間の知能」だったのに対し、フィジカルAIは現実世界を理解し自律的に行動する。工場などの自動化を推し進める手段として、特に製造業での活用が期待されている。

デジタルツイン・フィジカルAIが導入される業界は?

デジタルツインとフィジカルAIは製造業だけでなく、医療・物流・建設などにも応用領域が広がりつつある。既に海外ではモータースポーツや医療分野での先行事例も生まれている。

日本でも、2026年後半からは工場や現場の一部にロボティクスを導入するなど、本格的な社会実装フェーズへの移行が一気に進む可能性があるのだ。

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