生成AIの本格的なビジネス活用や、激化するサイバー攻撃、そして「データ主権」を意識した「クラウドファースト」からの揺り戻しなど、企業ITは大きな転換期に入っている。こうした潮流に伴い、その根幹をなすストレージの役割もこれまでとは大きく変化しつつある。
それではストレージへのニーズはどのように変わり、それに対してベンダーやディストリビューターはどのような取り組みを進めているのか。ストレージ市場をけん引するデル・テクノロジーズと有力ディストリビューターであるネットワールドのキーパーソンに話を聞いた。
【この記事でわかること】
・ストレージ市場の主軸は、プライベートクラウド・AI・サイバーレジリエンスの3領域に移行している
・クラウドファーストからの揺り戻しの背景には、データ主権やソブリンAIへの関心の高まりがある
・デル・テクノロジーズのストレージは「ポートフォリオの広さ」「アライアンスの信頼性」「課金体系の柔軟性」「強靭なサプライチェーン」が強み
<目次>
01 大きく変化したストレージの技術と使われ方 02 従来の「ニッチ市場」が新たなメイン市場に 03 「クラウドファースト」からの揺り戻し 04 デル・テクノロジーズが注力する3本柱 05 「VAD」として付加価値を提供するネットワールド 06 パートナーへの多岐にわたる支援プログラム 07 ネットワールドから見たデル・テクノロジーズの魅力 08 地に足をつけた活動でパートナーの価値向上を支援 09 よくある質問
Chapter 1
大きく変化したストレージの技術と使われ方
――エンタープライズITのあり方が見直される中で、ストレージに対するニーズや市場環境も変化しつつあるようです。まずはこの変化について、多くの製品を取り扱うディストリビューターの視点から教えてください。
高田氏(ネットワールド) ストレージ製品は20~30年の間に、何度かパラダイムシフトを遂げてきました。まず初期のエンタープライズ用途では、何よりもシステムの「信頼性」や、稼働を止めないという「可用性」が、至上命題として求められていました。ストレージが止まればトランザクションも止まり、事業が継続できないからです。
その後、徐々に汎用的なエリアが広がり、単なる「データ保存のプラットフォーム」にとどまらず、ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)のような統合された形態が登場しました。またメディアの進化に伴い「オールフラッシュ」が台頭し、非構造化データを扱うための「オブジェクトストレージ」といった概念も普及していきました。
株式会社ネットワールド
執行役員
マーケティング本部 副本部長
高田 悟氏
――そう考えるとストレージはこれまで、目まぐるしく技術が移り変わってきたわけですね。
高田氏 そうです。そして近年ではクラウドの利用が一般的になり、さらには「AIで有効活用したい」というニーズも爆発的に高まっています。またランサムウエアに代表されるサイバー攻撃の激化によって、強固なセキュリティーの担保も必須条件になっています。このような「AIによるデータ活用の本格化」と「セキュリティー要件の高まり」という背景の中で、システム全体におけるストレージの役割は、かつてなかったほどに大きくなっていると感じています。
株式会社ネットワールド
執行役員
マーケティング本部 副本部長
高田 悟氏
これらに加えて現在のエンタープライズ市場では、今後の仮想基盤をどうするのか、という課題も持ち上がっています。将来を見据えた仮想化プラットフォームの見直しが求められているのです。
Chapter 2
従来の「ニッチ市場」が新たなメイン市場に
デル・テクノロジーズ株式会社
執行役員
インフラストラクチャー・ソリューションズSE統括本部
統括本部長
森山 輝彦氏
――このような変化について、ストレージベンダーとしてはどのようにとらえていますか。
森山氏(デル・テクノロジーズ) 高田さんがお話しされたように、ストレージ市場は大きな変化を遂げました。以前のストレージ市場の中心に鎮座していたのは、何よりも安定性を最優先する、いわゆる「ミッションクリティカル」な製品でした。その巨大な中心領域の周辺に、ハイスピードに特化したものや仮想環境に特化したものなど、用途を限定した「ニッチな」製品が存在する、という構図だったのです。
デル・テクノロジーズ株式会社
執行役員
インフラストラクチャー・ソリューションズSE統括本部
統括本部長
森山 輝彦氏
しかし現在は、AIをはじめとする新たなワークロードが急速に普及したことで、これまで「ニッチ」と呼ばれていた特殊な要件が標準的なものに変わり、市場における新たな柱をいくつも形成するに至っています。ミッションクリティカルな領域も依然として重要なのですが、これに加えてAIでのデータ活用や、柔軟なプライベートクラウド、コンテナ環境といった新たな領域が、現在のストレージ市場をけん引しているのです。
Chapter 3
「クラウドファースト」からの揺り戻し
デル・テクノロジーズ株式会社
上席執行役員
パートナー事業統括本部
パートナー事業本部長
倉橋 秀則氏
――ここ10年余りの「クラウド一辺倒」の流れも、変化しつつあると感じますが、これについてはいかがですか。
高田氏 一時期の「無条件に何でもクラウドファースト」という流れからは、明らかに変わってきています。その大きな要因として挙げられるのが、「データ主権」や「ソブリンAI」への関心の高まりです。地政学的なリスクの高まりや、実際に発生している様々なセキュリティーインシデントを背景に、データを自分たちのコントロール下に置き、確実に守るという「データガバナンス」の重要性が叫ばれるようになりました。
デル・テクノロジーズ株式会社
上席執行役員
パートナー事業統括本部
パートナー事業本部長
倉橋 秀則氏
森山氏 実際にお客様やパートナー様からも、オンプレミス環境の見直しが進んでいるというお話をお聞きすることが増えています。とはいえ、クラウドの利用が止まっているわけではありません。お客様はクラウドの「圧倒的な使いやすさ」「運用負荷の低減」「柔軟な課金体系」といったメリットを深く理解しています。そのため、現在のオンプレミスのインフラ機器には、クラウドと同等の体験を提供できることが強く求められており、それが製品選択の大きな基準になっています。
倉橋氏(デル・テクノロジーズ) パートナーを支援する私の立場から見ても、ストレージソリューションのテーマは非常に細分化・多様化していると感じています。当社はすべてのポートフォリオをワンストップで提供できる強みがありますが、そのすべてを網羅して取り扱うのは現実的には困難です。お客様の課題に対して最適なソリューションを提案し、ギャップを埋めるためには、パートナーごとの「スペシャリティ(専門性)」が、これまで以上に必要不可欠になっています。
Chapter 4
デル・テクノロジーズが注力する3本柱
――市場環境の変化に対して、デル・テクノロジーズはストレージベンダーとして、どのような戦略を掲げていますか。
「プライベートクラウド」「AIストレージ」「サイバーレジリエンス」によって、ユーザー企業の新たなニーズに応えている
森山氏 大きく3つの柱に注力しています。第1の柱は「プライベートクラウド」です。これは先程申し上げたような「クラウド体験をオンプレミスでも」という要望に応えるもの。従来型の仮想環境やプライベートクラウド環境をより使いやすく、柔軟にするため、様々なハイパーバイザーやミドルウエアをエコシステムとして幅広くサポートしています。直近でも、IaaS環境を極めて簡単に立ち上げることができる「Dell Private Cloud(DPC)」などのソリューションを発表しており、お客様がクラウドライクにオンプレミスを運用できるアプローチを強化しています。
これによってオンプレミス環境を、クラウドライクに運用することが可能になる
森山氏 第2の柱は「AIストレージ」です。これまではGPU搭載サーバーへの投資が先行していましたが、その波が一定の落ち着きを見せ、現在は「蓄積されたデータを使って実際のビジネス価値を創出する」という、新たなフェーズに入りつつあります。それに向け、デル・テクノロジーズは新たなAIストレージ製品群を市場投入しています。
強力な製品群の展開によって、「蓄積されたデータを使って実際のビジネス価値を創出する」という、AI活用の新たなフェーズへのシフトを加速している
森山氏 そして第3の柱が「サイバーレジリエンス」です。ここ数年は、従来の自然災害を想定したディザスタリカバリよりも、ランサムウエアなどを見据えたサイバーレジリエンスの文脈で、製品を導入されるケースが圧倒的に増えています。単に防御のためのツールをアドオンで追加するのではなく、将来の災害対策とサイバーレジリエンスを融合させ、いかに迅速にシステムを回復させるかという「レジリエンス性」を、アーキテクチャの根本からデザインしていくことが重要になっています。
Chapter 5
「VAD」として付加価値を提供するネットワールド
――デル・テクノロジーズが掲げる3つの注力領域に対して、ネットワールドはどのような戦略で臨んでいるのでしょうか。
高田氏 当社はエンドユーザー様への直販ではなく、全国に約3000社の販売パートナー様を通じてビジネスを展開しています。ディストリビューターのビジネスの基本は、製品を国外から調達して日本仕様にし、スピーディにお届けする「ボリュームビジネス」です。しかし、ただモノを流すだけでは付加価値は生まれません。
当社が目指しているのは、「バリュー・アデッド・ディストリビューター(VAD)」として、パートナー様が売りやすく、かつ独自の強みを発揮できるような「バリュー(付加価値)」を、徹底的に追求・提供していくことです。
特に重要視しているのが、「マルチベンダーでのエコシステム構築」です。現代のシステムは単一のベンダーだけでは完結しません。デル・テクノロジーズは世界最高峰のハードウエアポートフォリオを持っていますが、当社はそこに独自の味付けを加えているのです。
デル・テクノロジーズの「世界最高峰のハードウエアポートフォリオ」に、ネットワールド独自の味付けを加えることで、パートナーが売りやすい顧客ニーズに対応したソリューションを提案している
――具体的にはどんな取り組みを行っているのでしょうか。
高田氏 まず仮想化基盤の領域では、昨今のVMwareのライセンス改定に伴い、多くの企業が代替となる選択肢を求めています。当社は2000年代からVMwareを取り扱い、10万社以上のお客様に販売してきた実績がありますが、現在の状況下ではマルチハイパーバイザーの選択肢を持つことが必須です。
デル・テクノロジーズ様のサーバーやストレージは、NutanixやMicrosoft Azure Localなど、事実上すべての主要なハイパーバイザーに対応しているため、当社ではオープンソースも含めた多様なハイパーバイザーとデル・テクノロジーズ様のハードウエアを組み合わせ、お客様の要件や予算に合わせた移行ソリューションを提供しています。
AI領域に関しても同様です。ただAIを導入するだけでなく、データ主権を守るためのソブリンクラウドやローカルインフラでのAI活用といったニーズに対し、最適なデータパイプラインを構築する必要があります。高速な処理が必要な領域にはオールフラッシュを、巨大なデータ保管にはオブジェクトストレージを配置するなど、デル・テクノロジーズ様の広範な製品群を活用したアーキテクチャの提案を行っています。
さらにサイバーレジリエンスにおいても、デル・テクノロジーズ様の製品を中核に据えつつ、他社のバックアップ製品やネットワークセキュリティー、エンドポイントセキュリティーと組み合わせた、包括的なデータ保護を訴求しています。
Chapter 6
パートナーへの多岐にわたる支援プログラム
――ネットワールドは販売パートナーに対して、様々な支援プログラムも提供していますね。
高田氏 まず設備面の支援として、自社内に2種類の検証施設を用意しています。1つは「ガレージ」と呼ばれる8ラック規模の施設で、固定機材を用いたエンジニア向けのハンズオントレーニングなどに活用されています。
もう1つは「PIC(プレインテグレーションセンター)」と呼ばれる、50ラック規模の大規模な施設です。お客様が本番環境を導入する前に、実機を使ったキッティングや、複数ベンダーの製品を組み合わせたPoCを行うなど、柔軟なプロジェクトスペースとして貸し出されています。
50ラック規模の大規模な施設であり、実機を使ったキッティングや複数ベンダーの製品を組み合わせたPoCなどを行うことが可能だ
高田氏 またコンテンツ面の支援としては、当社オリジナルの「はじめての」シリーズを提供しています。ストレージやバックアップといったエンタープライズ製品は、技術的に難解で職人的な知識が求められるため、新入社員や若手エンジニアにとって学習ハードルが非常に高いという課題があります。そこで、「なぜストレージが必要なのか」といった内容を、漫画などを交えて分かりやすく解説するコンテンツを制作しました。
倉橋氏 この「はじめての」シリーズは、私たちのようなメーカーの人間が見ても、感動するレベルの完成度です。
漫画などを交えながら、基礎から分かりやすく解説している。その完成度は多くの企業から高く評価されている
高田氏 ありがとうございます。最近ではこれに加えて「マルチハイパーバイザートレーニング」という体験セミナーも頻繁に開催しています。1日のセミナーの中で、VMware vSphereやMicrosoft Azure Localについては最新の市場動向や製品概要、運用・バックアップの考え方を整理しつつ、NutanixとProxmoxについては実機環境で実際に操作しながら、インタフェースの違いや運用イメージを比較体験していただく内容です。
こうした活動を通じて、パートナー様が自信を持ってお客様に最適な選択肢を提案できるよう、スキルアップとバリューアップを全面的に支援しています。
倉橋氏 当社でも、グローバルのパートナープログラムとして技術者向けの「HEROES(ヒーローズ)」、そして日本独自でパートナー様のニーズにきめ細かく対応する「徹底攻略塾」を提供しています。最近は「HEROES」にディストリビューター様向けのセッション枠を設け、参加しているSIパートナー様に対して、ネットワールド様をはじめとしたディストリビューター様の取り扱い製品やサービスをご紹介いただく取り組みも行っています。
これらは、日々デル・テクノロジーズのソリューションの最前線に立っているエンジニアの方向けのコミュニティで、実案件での導入事例や独自のノウハウ、ソリューションの最新アップデートを共有し、エンジニア同士が切磋琢磨できる場となっています。また販売店の営業担当者様向けには、多岐にわたるトピックスを凝縮して情報提供する「Partner Power Days」も開催しており、毎回満員御礼状態になっています。
当社のポートフォリオはかなり幅広いため、1社ですべてを扱うのは簡単ではありません。そのため各パートナー様の得意分野に特化していただけるよう、支援を強化しています。
Chapter 7
ネットワールドから見たデル・テクノロジーズの魅力とは
――ネットワールドはデル・テクノロジーズに限らず様々なベンダー製品を取り扱っていますが、その立場から見たとき、デル・テクノロジーズのストレージ製品が選ばれる理由はどこにあるとお考えですか。
高田氏 その理由は、大きく4つあると思います。1つ目は圧倒的なポートフォリオとラインアップの広さです。クライアントPCからサーバー、ストレージに至るまで、ITインフラに必要なすべてのハードウエアを自社で揃えられるベンダーは、業界内でもデル・テクノロジーズだけです。ストレージ領域だけを見ても、エントリーモデルからハイエンド、さらには特殊な用途まで、お客様のどのような要件にも適合する選択肢が用意されています。
2つ目はアライアンスの信頼性です。ストレージは単体で動くものではなく、他社のソフトウエアやシステムと連携して初めて価値を生みます。デル・テクノロジーズ様の製品は、サードパーティ製ソフトウエアとの連携実績や認定(サーティファイド)の数が群を抜いており、それがシステム全体の堅牢性や信頼性に直結しています。企業としての信頼感も含め、これは非常に大きな強みです。
3つ目が、Dell APEXに代表される課金体系の柔軟性です。企業のバランスシート上の課題を解決するためのサブスクリプションモデルや、消費ベースの課金モデルが用意されている点が、昨今の財務的ニーズに完璧に合致しています。
そして最後の4つ目が強靭なサプライチェーンです。最近ではグローバルでのサプライチェーン混乱による、納期遅れも大きな問題になっています。こうした厳しい状況下でもデル・テクノロジーズ様には、全力を尽くしてもらえます。その背景には、世界有数のコンピュータベンダーとしての圧倒的な「バイイングパワー(調達力)」があることは間違いありません。
ただ真の優位性は、単に「サプライチェーンが強くて在庫があるから」という物理的な理由だけではなく、「ラインアップの選択肢が広いため回避策を見出せる」点にあると考えています。仮に特定のモデルの納期が遅延したとしても、広範なラインアップの中から同等のパフォーマンスを発揮する、別の構成や製品を提案することができるのです。この「柔軟性」こそが、不確実性の高い現代において大きな強みになっていると感じています。
Chapter 8
地に足をつけた活動でパートナーの価値向上を支援
――最後に、マーケット拡大に向けた今後の取り組みについてお聞かせください。
高田氏 当社はディストリビューターとして、時代や市場のニーズに応じた訴求を継続していきます。派手なバズワードに踊らされるのではなく、地に足をつけた活動を通じて、これからもパートナーのビジネス価値(バリュー)をどんどん向上させていきたいですね。
森山氏 デル・テクノロジーズとしては、先ほど申し上げた「プライベートクラウド」「AI」「サイバーレジリエンス」という3本柱を引き続き強力に推進していきます。これらに加えて、未来を見据えた次世代テクノロジー、例えば量子コンピュータやDNAストレージといった領域の研究開発にもいち早く着手しています。業界団体の標準化メンバーとして参画し、新しいテクノロジーを迅速に自社製品へと実装できる準備を進めているのです。
そして何よりも、お客様やパートナー様が「真に欲しいもの」を実現できるよう、距離をさらに縮め、お客様の声に真摯に耳を傾け続けていきたいと考えています。
――両社の取り組みに期待しています。本日は、ありがとうございました。
Chapter 9
よくある質問
ストレージ市場のトレンドは?
ストレージ市場で現在注目されているトレンドは、以下の3つである。
・プライベートクラウド:オンプレミスのクラウド化
・AIストレージ:データからのビジネス価値創出
・サイバーレジリエンス:迅速な復旧を前提としたアーキテクチャ設計
オンプレミスへの回帰が進む理由は?
「クラウドファースト」からオンプレミス回帰が進む理由として、「データ主権・ソブリンAIへの関心の高まり」や「地政学的リスク・セキュリティーインシデントの増加」を背景に、データを自らのコントロール下に置くデータガバナンスの重要性が高まっていることが挙げられる。
デル・テクノロジーズのストレージ製品が選ばれる理由は?
デル・テクノロジーズのストレージ製品が選ばれる主な理由として、以下の4つが挙げられる。
1. 圧倒的なポートフォリオの広さ
2. サードパーティとのアライアンスの信頼性
3. Dell APEXに代表される課金体系の柔軟性
4. 強靭なサプライチェーン
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ネットワールドのデル・テクノロジーズストレージ製品トップページ
デル・テクノロジーズのストレージコミュニティ
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