サイバー攻撃を受けた際に、事業を継続できるかどうかを左右するのが「確実に戻せるデータ」を持っているかどうかだ。前編では、デル・テクノロジーズが提供するサイバーリカバリーソリューション(Cyber Recovery)を中心に、その考え方と全体像を整理した(前編参照)。それでは、そうした環境を、実際にはどのような手順で整えていけばよいのか。
後編では、インフラ構築から運用までを幅広く支援するSCSKグループのネットワンパートナーズのキーパーソンに、データ保護・データ隔離・復旧を段階的に実装していくための具体的なステップや、現場視点で重視すべきポイントについて話を聞いた。
【この記事でわかること】
・ランサムウエア対策にはソフトウエアだけでなく、物理的に隔離するストレージアプライアンスが有効
・Data Domainのエアギャップは、物理レベルでネットワークを遮断する高い安全性を持つ仕組み
・2026年4月にData Domainの保護機能を継承し、最小8TBから導入可能なDD3410が発表された
<目次>
01 市場全体で高まっているデータ保護への関心 02 段階導入で整えるストレージ環境 03 現場が語るData Domain導入の経緯と実力 04 DD Boostと仮想環境でストレージを検証 05 インフラからセキュリティー運用までトータル提案 06 新製品で広がるサイバーレジリエンスの選択肢 07 よくある質問
Chapter 1
市場全体で高まっているデータ保護への関心
ネットワンパートナーズ株式会社
プロダクト第1事業本部サーバストレージ部
技術チーム
小川 和准氏
デル・テクノロジーズ株式会社
インフラストラクチャー・ソリューションズ営業統括本部
SRP 営業本部 事業推進担当部長
エグゼクティブ ビジネス ディベロップメント マネージャー
西頼 大樹氏
西頼氏(デル・テクノロジーズ) サイバーレジリエンスの重要性があらゆる業界で語られるようになってきましたが、最近、お客様のデータ保護や復旧に対する課題意識の変化をどのように感じていますか。
小川氏(ネットワンパートナーズ) ここ数年で大きく変化してきています。ネットワンパートナーズではお客様のITインフラを整えるために、各社のサーバーやストレージ製品を取り扱っています。製品を取り扱う際には「お客様のご要望をしっかり満たせるのか」を踏まえ、事前に技術的な検証や評価を行っているのですが、様々な接点でお客様とお話しする中で、ITインフラにバックアップやセキュリティーをどう組み込むかというお話が急速に増えています。そうした潮流の中でデータ保護領域に関しても、技術者育成の強化など注力しています。
ネットワンパートナーズ株式会社
プロダクト第1事業本部サーバストレージ部
技術チーム
小川 和准氏
西頼氏 そのきっかけは、具体的なインシデントがあったからでしょうか。
デル・テクノロジーズ株式会社
インフラストラクチャー・ソリューションズ営業統括本部
SRP 営業本部 事業推進担当部長
エグゼクティブ ビジネス ディベロップメント マネージャー
西頼 大樹氏
小川氏 具体的なインシデントがあったというよりも、市場全体としてセキュリティーへの注目が高まっているからです。このようなニーズは業種を問いません。
西頼氏 そのようなニーズを満たすために、Dell PowerProtect Data Domain(以下、Data Domain)への投資をここ最近、かなり積極的に行ってくださっている背景にあるのですね。
Chapter 2
段階導入で整えるストレージ環境
西頼氏 バックアップソフトウエアだけでなく、Data Domainのようなハードウエアのアプライアンスに注目した理由は何でしょうか。
小川氏 数年前からランサムウエアの被害が増加しており、ソフトウエアで実現可能な防御策に加えた対策追加の必要性を痛感していました。そこで防御に特化した専用アプライアンスで、本当に守るべきところを更に厚くハードウエアでも守る、というアプローチに注目したのです。
バックアップストレージとなるData Domainの背後に、隔離された「Cyber Recovery Vault」を構築することで、外部からの不正アクセスから保護されたデータの確保が可能になる
西頼氏 データ保護領域にはほかにも数多くの製品やベンダーがありますが、その中で弊社のソリューションに注目したのはなぜですか。
小川氏 バックアップ環境のセキュリティーを、段階的に強化していける点を評価しました。実際に「一気にすべてを整える」のではなく「スピード感を持って段階的に導入したい」というお客様も少なくありません。その点、デル・テクノロジーズのソリューションであれば、まずはバックアップストレージとしてData Domainを導入し、次にCyber Recovery Vaultを構築してバックアップの隔離保管を実現、その後CyberSenseで脅威分析を行う、といった導入が可能です。
西頼氏 当社も提唱している「フェーズドアプローチ」ですね。最終的なゴールを見据えつつ、投資や時間の都合に合わせて一歩一歩、並走しながら進められる点に魅力を感じていただけたのですね。
Chapter 3
現場が語るData Domain導入の経緯と実力
西頼氏 実際にサイバー復旧を含めて一緒にご提案する案件も出始めていると伺っていますが、どのような経緯だったのでしょうか。
小川氏 元々バックアップ環境をお持ちのお客様で、拠点の統合に伴ってバックアップ環境のセキュリティーをより強化したいというご要望がありました。このお客様は私たちが以前からサーバーやストレージを担当させていただいており、バックアップも一緒に進めていくことになりました。近年はランサムウエアなどのニュースが増えており、お客様の危機感も非常に高くなっています。そこで、セキュリティー強化対策としてのData Domainに、関心を持っていただきました。
西頼氏 ネットワンパートナーズではData Domainの技術者育成も、急ピッチで進めていらっしゃると伺っています。どのような活動をしているのでしょうか。
小川氏 デル・テクノロジーズさんがパートナー支援の観点で様々なデモ/検証環境を用意してくれますし、Data Domainは仮想版(Data Domain Virtual Edition『DDVE』)を、自由に検証や操作確認するための評価目的で無償提供してくれる仕組みがあるので、それらを活用して実践力を日々鍛錬していたりします。また、社内向けにセミナーを開催し、ランサムウエア被害の危険性やData Domainの魅力を紹介しています。
そこではセキュリティーのフレームワークに照らし合わせ、単にバックアップを取るだけでなく、どのような点が重要なのか、Data Domainがそこをどうカバーしているのか、といったことを説明しています。このような活動を通じて社内の理解は深まっており、Data Domainを提案するケースも増えています。
西頼氏 Data Domainの機能について、技術者の観点からはどのように評価していますか。
小川氏 最も評価しているのは「物理的な隔離(エアギャップ)」の仕組みです。これを知ったときには衝撃を受けました。データ転送のときだけネットワークのポートを有効化し、それ以外は完全に無効化することで、外部からの不正アクセスから「意地でも隔離する」という仕様に、ギリギリまで攻めているなと感じました。ソフトウエア製品の機能ベースの論理的な隔離では侵入されるリスクを排除しきることはできないので、物理的に隔離してしまうところに「ここまでやれば安全だろう」という安心感を持ちました。
西頼氏 SCSKグループはシステム全体の構築を行う一方で、データセンターの運用も行っています。その中でData Domainの活用は、どのような意義を持つのでしょうか。
小川氏 私たちはインフラ領域の知識を持っていますが、そこに「データ保護を確実に担保できる」という基盤が加わることで、より大きな安心感が得られます。今後もほかのセキュリティー製品と組み合わせながら、データ保護を推進していきたいですね。
Chapter 4
DD Boostと仮想環境でストレージを検証
西頼氏 孫の手のような点ではありますが、セキュリティー強度を高めるという意味でData Domainの独自転送プロトコルであるDD Boostの重要性も増してきています。昨今はNAS(ネットワークアタッチドストレージ)を悪用する攻撃も増えており、標準のSMB(サーバーメッセージブロック)やNFS(ネットワークファイルシステム)を利用した攻撃に対し、独自のプロトコルを利用すること自体で回避することができます。また、クロックタンパリング用に、改ざん防止期間を解除するためにシステムクロックをいじる、すなわち機器の正常動作を悪用する攻撃に対しても防御壁を設ける仕組みなども備えたり、防御力自体を日々向上させています。
小川氏 それも重要な特長だと評価しています。これに加えて個人的には、DDVEのトライアル版が提供されているのが非常に助かりました。インストールしては試し、壊してはやり直すということを繰り返して、マニュアルだけでは分からない実践的な知識を身につけることができたからです。ハードウエアをいきなり購入して検証するのは難しいので、制限なく試せる仮想環境は本当にありがたい存在です。もちろんそれだけではなく、オールフラッシュストレージのPowerStoreも導入し、PowerStoreストレージからData Domainへ直接データ転送を行い、バックアップを取れるStorage Direct機能も検証しています。
Chapter 5
インフラからセキュリティー運用までトータル提案
西頼氏 SCSKグループのように、自社でデータセンターを持ち、24時間365日の運用チームを抱えている企業が、このような検証を行いながらデータ保護分野までカバーすることの意義は、大変大きいと感じています。
小川氏 ありがとうございます。私たちもインフラの構築だけではなく、セキュリティー運用まで含めたトータルでのご提案ができることが、SCSKグループの大きな強みだと考えています。そのために、インフラだけ、セキュリティーだけを知っているのではなく、両方を理解してお客様に提案できる人材の育成にも、積極的に取り組んでいます。
西頼氏 なおデル・テクノロジーズは2026年4月に、データ保護をより手軽に実現できるよう、2つの新ソリューションを発表しました。その1つがData Domainの新たなエントリーモデルである「PowerProtect Data Domain DD3410」(以下、DD3410)です。DD3410は最小8TBからスタートし、価格もよりリーズナブルになっています。
小川氏 中小企業のお客様でも段階的なデータ保護やセキュリティーへの関心が高まっているので、エントリーモデルが出るのは非常にありがたいことです。ぜひそれらも活用しながら、提案の裾野を広げていきたいと思います。
Chapter 6
新製品で広がるサイバーレジリエンスの選択肢
対談の最後に言及されていた「DD3410」を含め、デル・テクノロジーズは2026年4月にサイバーレジリエンス関連のソリューションについてのアップデートを発表した。これらについて、もう少し詳しく説明しておきたい。
まず「Cyber Recovery Essentials」は、データ隔離環境(Cyber Vault環境)を構築するための標準パッケージソリューションだ。
隔離環境構築に必要なインフラ構成の「王道パターン」を、導入サービスとともに提供する
データ保護のために「隔離空間」を構築・運用するには、これまでは中核となるストレージアプライアンスであるData Domainの導入に加え、データの鮮度管理や周辺領域を含めた、システム全体での複雑な設定やインテグレーションが必要だった。このような手間や複雑さを解消するため、これまで約2,700社に上る豊富な導入実績で蓄積したノウハウから、隔離環境構築に必要なインフラ構成の「王道パターン」を抽出。
この推奨構成をベースにインフラ製品と導入サービスをまとめあげ、標準パッケージ化したのだ。これにより隔離環境の導入速度を速められるのはもちろんのこと、パートナー企業にとってもそのまま再販しやすい、実践的でシンプルなパッケージになっている。
一方のDD3410は、データ保護ストレージアプライアンスData Domainの、新しいエントリーモデル。主に中小規模の顧客や、支店・拠点といった分散された環境において、データをその場で保護することを目的としている。
Data Domainが備えている高度なデータ保護機能やサイバー復旧機能をそのまま継承しながら、最小で8TBの容量から利用可能だ
これまでも中小企業モデルとして最小容量12TBの「DD6410」があったが、DD3410では8TBからスタート可能。もちろんData Domainが備えている高度なデータ保護機能やサイバー復旧機能は、そのまま継承している。
小川氏が述べたように、これらの新ソリューション/新製品の登場は、データ隔離型のサイバーレジリエンスの裾野を広げる上で、重要な役割を果たすはずだ。
Chapter 7
よくある質問
PowerProtect Data Domainのエアギャップとは?
PowerProtect Data Domainに搭載されたエアギャップは、データ転送時のみネットワークポートを有効化し、それ以外は完全に無効化することで、外部からの不正アクセスを物理的に遮断する仕組みである。ソフトウエアによる隔離とは異なり、物理レベルで切り離すため高い安全性を実現している。
Cyber Recovery Essentialsとは?
Cyber Recovery Essentialsは、データ隔離環境(Cyber Vault環境)を構築するための標準パッケージソリューションである。約2,700社の導入実績から蓄積したノウハウをもとに、隔離環境構築に必要なインフラ構成の「王道パターン」を抽出し、インフラ製品と導入サービスをセットにして標準パッケージ化している。
PowerProtect Data Domain DD3410とは?
PowerProtect Data Domain DD3410は、データ保護ストレージアプライアンス「Data Domain」の新しいエントリーモデルである。最小8TBからの導入が可能で、Data Domainの高度なデータ保護機能やサイバー復旧機能をそのまま継承しており、価格も従来モデルよりリーズナブルになっている。
Related links
関連リンク
ネットワンパートナーズのデル・テクノロジーズ製品トップページ
デル・テクノロジーズ「PowerProtect Data Domain DD3410」アプライアンス リリースについてのプレスリリース (2026/3/26付け)
デル・テクノロジーズのストレージコミュニティ
デル・テクノロジーズのサイバーリカバリーソリューション
日経電子版 Dell AI Factory with NVIDIAトップページ



