2026年5月、デル・テクノロジーズは「Dell Technologies World 2026」において、新たなストレージプラットフォーム「Dell PowerStore Elite(PowerStore Gen 3/PowerStoreOS 5.0)」を発表した。第3世代となる本製品では、ハードウエアとソフトウエアの両面が大きく進化し、性能向上に加えて運用効率や将来的な拡張性の強化も図られている。ただし、ストレージ製品の価値はスペックだけでは測れない。企業にとって重要なのは、自社のシステム運用や将来のIT投資にどのような影響をもたらすかだ。本記事ではPowerStore Eliteの特徴を俯瞰するとともに、多くの企業のインフラ導入・運用を支援してきたデジタルテクノロジーの視点から、その実用性や導入価値について話を聞いた。
Chapter 1
Dell PowerStore Eliteの4つの特徴とは
PowerStore Eliteでは、ハードウエアからソフトウエアまで幅広い刷新が行われた。主な特徴は以下の4点に集約できる。
・最新ハードウエアによるパフォーマンス
・動的リソース共有とデータ効率の最大化
・AIによる自律運用とサイバーレジリエンス
・継続的なモダナイゼーション
※各機能の詳細は記事後半のコラムを参照
それでは、こうした進化は実際の導入現場からどのように見えているのだろうか。今回は、長年にわたりデル・テクノロジーズのサーバー・ストレージ製品の導入支援や運用サポートを手掛け、多様な企業のIT基盤構築を支援してきたデジタルテクノロジーと、デル・テクノロジーズのキーパーソンに話を聞いた。
Chapter 2
将来の変化を前提に設計された第3世代PowerStore
――PowerStoreは登場から6年が経過し、全世界で2万社以上に導入された実績を誇ります。今回、「PowerStore Elite(第3世代)」が発表されましたが、まずは開発のコンセプトと主要なアップデートについて教えてください。
デル・テクノロジーズ株式会社
インフラストラクチャー・ソリューションズ SE統括本部
クラウドプラットフォーム ソリューションズ
アドバイザリ システムズ エンジニア
市川 基夫氏
市川氏(デル・テクノロジーズ) 今回の開発の最大のコンセプトは、今後の予測不可能な変化に対応するための「将来を見据えた設計(Future-Proof)」です。今後起こりうるCPUテクノロジーの進化や、それに伴うメモリやI/O帯域の要求、発熱量や消費電力の増加を見据え、10年、15年と使い続けられる、投資保護を重視したアーキテクチャを採用しています。
まずハードウエア面では、従来の2Uから3U設計へと変更し、冷却効率を大幅に高めました。これにより、業界標準のコンパクトな「E3.S NVMe SSD」を単一シャーシに最大40本搭載できるようになり、実効容量は最大5.8PBとなりました。また、ノード間(コントローラー間)のデータ通信帯域を、これまでの10Gbpsから、その20倍に相当する200Gbpsへと拡張しています。これにより、メタデータやリアルタイムなデータ削減判定といったトラフィックが、将来のボトルネックになるのを防いでいます。
今後の予測不可能な変化に対応するため、「将来を見据えた設計(Future-Proof)」になっている点が、最も重要なポイントになっている
――ノード間通信の帯域強化は、将来的なボトルネックを避ける上で重要な要素になりそうです。ソフトウエア面ではどのような進化がありますか。
市川氏 今回の大きな進化の1つが「完全なユニファイドストレージ」となった点です。これまでは導入時にブロックかユニファイドかを選択し、リソースを固定的に割り当てる必要がありましたが、今回から導入された「動的リソース共有(Dynamic Core Allocation)」により、入ってくるトラフィックに応じてCPUリソースがブロックとファイルの間で動的に割り当てられます。これにより、将来どのようなワークロードの要求に対する変化があっても構成変更なしで効率よく使い続けられます。
さらに、追加されるNASのモビリティ機能により、NASサーバーのワークロードをクラスター内の別のアプライアンスへシームレスに移動できるようになります。またメディアに関してもTLCとQLCの両方をサポートし、インテリジェントなI/O最適化によって、QLCを利用してもTLCと同等のパフォーマンスが出せるよう設計されています。
ユーザー企業にとっては、ファイルとブロックを完全に統合した「ユニファイドストレージ」になった点が、最も重要な進化だといえる
――パフォーマンスやデータ効率については、どのような改善が図られているのでしょうか。
市川氏 最新のCPUやDDR5メモリ、PCIe Gen 5の採用とソフトウエアの最適化が相まって、旧世代の同等モデルと比較してIOPSは2倍、スループットは最大3倍、レイテンシーは30%以上低減と、飛躍的に性能が向上しました。 また、データ削減保証をこれまでの5:1から、業界最高水準である「6:1」へと引き上げられています。これは、データブロックの境界が揃っていないデータブロック跨ぎで重複排除を行う「アンアラインドデデュープ」への対応や、Intel QATによる圧縮オフロード機能の強化によって実現しています。
Chapter 3
運用負荷を抑えながら幅広い用途に対応
――ここからは現場を知るデジタルテクノロジー(DTC)からも話を聞いていきます。PowerStore Eliteの様々な変更点の中で、実際の導入・運用支援の現場から見て、特に意味が大きいと感じる点はどこでしょうか。
デジタルテクノロジー株式会社
テクノロジー本部
プロフェッショナルサービス1部
部長
中村 雄司氏
中村氏(DTC) 私が最もメリットを感じたのは、やはりユニファイドストレージとしてNAS機能が強化され、アプライアンス間でNASのワークロードを移動(モビリティ)できるようになる点です。当社は中堅・中小規模のお客様が多く、NASのニーズが非常に高いのですが、以前はPowerStoreのNAS機能について、用途によっては他社製品と比較しながら慎重に検討する場面がありました。今回のアップデートにより、ブロックとファイルを1つの基盤で扱う構成を提案しやすくなった点は、現場として評価しています。
デジタルテクノロジー株式会社
テクノロジー本部
プロフェッショナルサービス1部
部長
中村 雄司氏
堀口氏(DTC) 「6:1のデータ削減保証」は、コストを重視するお客様にとって判断材料の1つになります。特に中堅・中小企業では、初期費用だけでなく、実際にどれだけの容量を使えるのかが稟議上の重要なポイントになります。保証値を下回った場合に追加SSDが提供される仕組みがあることで、導入後の容量不足に対する不安を抑えやすくなります。
実際の運用で保証値を下回った場合には、無償で追加のSSDが提供される
廣瀬氏(DTC) プリセールスの立場では、「データインプレースアップグレード」に注目しています。オンプレミス環境の機器リプレースでは、データ移行の作業負担やダウンタイムの調整が、大きな課題となっています。その点、コントローラーの差し替えによってデータを移行せずに次世代へアップグレードできる仕組みは、リプレース計画の負担を下げる上で有効だと見ています。
――中堅・中小企業のお客様にとっては、シンプルに運用できることが重要になるのでしょうか。
中村氏 その通りです。少人数でIT環境を運用しているお客様にとっては、導入時の設計や運用後の変更が複雑になりすぎないことが重要です。ブロックとファイルを同じ基盤で扱え、用途の変化にも対応しやすい点は、PowerStoreを提案する上で分かりやすいポイントになります。
Chapter 4
企業の成熟度に応じて選べるセキュリティー対策
――近年、ランサムウエア被害が深刻化していますが、セキュリティー対策の面ではどのようなアップデートがあるのでしょうか。
市川氏 PowerStoreは、Dell AIOpsとの密な連携により、グローバルから集めたテレメトリーデータを基にアクセスパターンやデータ削減率の異常な低下から、ランサムウエアの兆候を検知する機能が備わっています。さらにこの度、AIを活用した「Dell Cyber Detect」との連携で、スナップショットボリュームをマウントしてフルスキャンをかけることが可能になりました。これにより、メタデータだけでなくバイトレベルでデータをAIがコンテンツ検査し、99.99%の精度でランサムウエア被害の特定と迅速なリカバリー判断が可能となります。
バイト単位でフルスキャンすることで、99.99%以上の精度でデータ破損を検出できる
廣瀬氏 これはプリセールスの立場から見ると、段階的に提案しやすい点に意味があると感じています。まずはOSに内蔵されたAI検知機能などの標準機能から始め、より厳しいセキュリティー要件を持つお客様には、後から「Cyber Detect」によるフルスキャン連携を追加する。そうした形で、お客様の要件や予算に合わせて対策を広げられる点は提案しやすいところです。
――VMware以外の選択肢も含めて仮想化基盤を見直す企業が増える中で、PowerStoreの位置付けはどう変わりますか。
市川氏 PowerStoreは、「Dell Private Cloud(DPC)」を支えるコアストレージとして深く連携しています。Dell Automation Platform のブループリント駆動型ワークフローにより、導入、拡張、ライフサイクル運用までを自動化できる「プラットフォーム統合型ストレージ」として、現在PowerStoreが先行して対応しています。今回のアップデートで、従来のVMwareやRed Hat OpenShift環境に加えて、MicrosoftのAzure LocalやNutanix(AHV)環境にも新たに対応しました。これにより、特定のハイパーバイザーにロックインされることなく、お客様の変化する仮想化戦略に柔軟に対応できる基盤を提供します。
Dell PowerStoreはこれを支えるコアストレージとして、重要な役割を果たしている
Chapter 5
導入から運用までを支える体制づくりを推進
――PowerStore Eliteの提供に向けて、デジタルテクノロジーではどのような提案・サポート体制を整えていますか。
堀口氏 当社はITインフラのシステム構築からデータ移行、バックアップ、保守までを一気通貫で支援できることを強みとしています。PowerStore Eliteは幅広いワークロードを1つの基盤で扱えるため、インフラ刷新を検討するお客様に対して、現実的な選択肢として提案しやすい製品だと見ています。今後は専任メンバーを中心に、案件ごとの要件整理から導入後の運用までをより丁寧に支援していく方針です。
デジタルテクノロジー株式会社
セールス本部
ソリューションセールス2部
副部長
堀口 聖太氏
中村氏 技術者の育成にも注力しています。具体的には、デル・テクノロジーズ製品のデプロイ(導入)認定資格を取得したエンジニアの増員や、若手営業向け教育の強化に取り組んでいます。さらに、新しい自社の検証設備「D-Lab」を活用し、実機を用いた実践的な提案も推進していく計画です。
廣瀬氏 「D-Lab」は今年の4月から稼働を開始しており、ラック2つ分のインフラ環境を、社内ネットワークから完全に独立した形で構築しています。私自身が構築と運用をリードしているのですが、ここは単なる技術検証の場にとどまりません。お客様との商談やイベントの際にリモートで接続し、実際の管理画面や運用時の動きをリアルタイムでお見せする「デモ基盤」として、大いに活用しています。カタログスペックだけでは分かりにくい管理画面の使い勝手や運用時の流れを確認できるため、お客様が導入後のイメージを持ちやすくなります。今後はこのD-LabにPowerStore Eliteを導入し、従来モデルとの性能比較はもちろん、管理性やアップグレード、障害時の対応なども含めて検証・紹介できる環境にしていきたいと考えています。
デジタルテクノロジー株式会社
セールス本部
ソリューションセールス2部
副部長
堀口 聖太氏
――最後に今後の展開について期待をお聞かせください。
デジタルテクノロジー株式会社
ソリューション&マーケティング部
プリセールスエンジニアグループ
廣瀬 航希氏
堀口氏 今回は「1500」「5500」「9500」という、ミッドレンジからハイエンドの3モデルが発表されましたが、中堅・中小企業のお客様では、性能や将来性だけでなく、初期投資のしやすさも重要です。今後、より導入しやすいエントリークラスのモデルが加われば、PowerStoreを検討できるお客様の層はさらに広がると見ています。
デジタルテクノロジー株式会社
ソリューション&マーケティング部
プリセールスエンジニアグループ
廣瀬 航希氏
市川氏 お客様やパートナー様からもそのようなご要望は多数いただいております。近い将来、そのようなレンジのモデルをリリースする予定で現在準備を進めておりますので、ぜひご期待ください。
――PowerStore Eliteは、性能向上だけでなく、運用のシンプル化や将来的なアップグレードのしやすさなど、企業がインフラ基盤に求める要件への対応を重視していることが分かりました。また、その価値を実際の導入現場で生かすには、デジタルテクノロジーのように設計から運用までを支援するパートナーの役割も重要になりそうです。本日は貴重なお話をありがとうございました。
Chapter 6
Dell PowerStore Eliteの4つの特徴とは
1.最新ハードウエアによるパフォーマンス
従来の2Uから3Uシャーシへと設計を変更し、冷却効率と将来の拡張性を大幅に向上。業界標準の「E3.S NVMe SSD」を採用し、単一の3Uシャーシに最大40台を搭載することで、最大5.8PBの実効容量と旧世代比で最大3倍の密度を実現している。さらに、コア数が最大50%増加したインテルの最新CPU、DDR5メモリ、PCIe Gen 5、および200Gb RDMAノード間接続を採用。キャッシュの保護領域としては従来の専用NVRAMを廃止してSoftware-Defined Persistent Memory(SDPM)テクノロジーを実装し、フロントの全スロットをユーザーデータの保存用に活用できる。これらの相乗効果により、IOPSとスループット性能は最大3倍へと飛躍的に向上した。
2.動的リソース共有とデータ効率の最大化
ソフトウエア面では「完全なユニファイドストレージ」として進化。新機能の「動的リソース共有(Dynamic Core Allocation)」により、ワークロードの変動に応じてCPUリソースがブロックとファイル間で動的に割り当てられるため、事前のリソースの固定割り当てが不要となった。加えて、データパスの効率化やアンアラインドデデュープへの対応、圧縮オフロードの強化により、データ削減保証は業界最高の「6:1」へと向上。QLCメディアを利用してもTLCと同等のパフォーマンスを発揮するよう最適化されているため、要件に応じた柔軟なメディア選択が可能だ。
3.AIによる自律運用とサイバーレジリエンス
運用管理の領域では、内蔵AIによる組み込みのインテリジェンスと自動化機能がパフォーマンスや負荷分散をリアルタイムで最適化し、ストレージ運用に伴う手作業を最大95%削減できる。セキュリティー面では、AI主導の高度なランサムウエア検出ソリューション「Dell Cyber Detect」に対応。メタデータだけでなくバイトレベルのフルコンテンツスキャンにより、99.99%の精度でランサムウエア感染やデータ破損を検出可能。攻撃を受けた際にも迅速で確実なリカバリーを支援する。
4.継続的なモダナイゼーション
システムやワークロードを停止せずに性能を拡張できる「データインプレースアップグレード」に対応。第3世代の上位モデルや次世代モデルへの無停止でのアップグレードが可能だ。既存の第1・第2世代環境に最新システムを追加し、異世代間でシームレスなクラスターを構築してデータを移行することも可能だ。また「Dell Private Cloud(DPC)」のストレージとして、VMware、Microsoft(Azure Local)、Nutanix(AHV)など、幅広いクラウドスタックやハイパーバイザーをサポート。特定のベンダーロックインを防ぎ、仮想化戦略が流動的な現代の市場環境においても、柔軟なインフラ基盤の構成と構築・運用の自動化が可能だ。
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