企業の仮想基盤を取り巻く環境が大きく変化している。主要ハイパーバイザーのライセンス体系変更をきっかけに、HCIを継続すべきか、それとも3Tier構成へ移行すべきかを改めて検討する企業が増えている。また、メモリやSSDの価格上昇、AI活用への対応なども、インフラ見直しを後押しする要因となっている。こうした状況の中で、企業は何を基準に次のITインフラを選ぶべきなのだろうか。ストレージから仮想基盤まで幅広い導入経験を持つ図研ネットウエイブとデル・テクノロジーズのキーパーソンに、これからのITインフラの在り方を聞いた。
<目次>
01 企業が仮想基盤の再設計を迫られる構造的背景 02 重要なのはコストとサイズをどう最適化するか 03 陳腐化せず進化を続ける「PowerStore」の魅力 04 HCIのシンプルさと3Tierの柔軟性を融合するDPC 05 自社検証環境と一貫体制が支える一社完結型SI 06 パブリッククラウド依存リスクを解消できる選択肢 07 パートナーシップで築く妥協なき次世代インフラ
Chapter 1
企業が仮想基盤の再設計を迫られる構造的背景
――仮想化基盤を取り巻く環境が激変しています。実際の提案現場では、どのような課題に直面しているのでしょうか。
図研ネットウエイブ株式会社
営業本部 第二営業部
マネージャー
黒田 大介氏
黒田氏(図研ネットウエイブ) 最も大きな課題は、主要ハイパーバイザーライセンスの高騰です。そこで最近では、別の選択肢を模索されるお客様が非常に増えています。
それと同時に、ハードウエアの構成そのものを見直す動きも活発化しています。当社はこれまで約10年にわたり、HCIを中心とした提案を行ってきましたが、現在の状況下では「必ずしもHCIがベストとは言えない」というケースが増えています。実際に「HCIを継続すべきか、従来の3Tier構成に戻すべきか」というご相談をいただく機会も増えています。
――HCI全盛の時代から、なぜ3Tierへの回帰が検討されているのでしょうか。
デル・テクノロジーズ株式会社
Storage CTO
執行役員 インフラストラクチャー・ソリューションズSE統括本部
統括本部長
森山 輝彦氏
森山氏(デル・テクノロジーズ) HCIは計算資源とストレージを1ノードとしてパッケージ化し、運用をシンプルにする優れた技術です。しかし、リソース拡張時には「CPU、メモリ、ストレージがセットされた状態」で増やす必要があります。ディスク容量やメモリだけを拡張したい場合でも、HCIでは不要なCPUライセンスやノード全体の追加購入が発生し、コストが跳ね上がってしまいます。
これに対し、外部ストレージとサーバーを独立させる「3Tier構成」であれば、必要なリソース(例えばストレージ容量)だけをピンポイントで追加できるため、コストのコントロールが容易になります。このため、3Tierが「現実的なコスト削減手段」として改めて高く評価されているのです。
黒田氏 パブリッククラウド移行との比較でも、コストが強く意識されるようになってきました。3年、5年、あるいは6年の長期スパンでTCOを試算すると、オンプレミスの方がコストパフォーマンスは高く、安定した性能を担保できるのです。そのため、オンプレミスでの最適なインフラ再設計のご相談をいただくことが増えています。
Chapter 2
重要なのはコストとサイズをどう最適化するか
――既存構成をそのまま踏襲してリプレースするのではなく、いかにコストを抑え、適正なサイズで構築するかがカギなのですね。
図研ネットウエイブ株式会社
技術本部 技術第二部
システムインテグレーション課
山田 夏輝氏
山田氏(図研ネットウエイブ) その通りです。既存構成を丸ごと踏襲して見積もると、全体のコストが数年前の数倍から10倍近くに跳ね上がるケースも珍しくありません。そこで当社では、お客様の既存環境にアセスメントツール「Dell Live Optics」を活用し、実際のIOPSやレイテンシー、CPU/メモリの稼働率といったパフォーマンスデータを、詳細に可視化・分析することから始めます。
――実測データを分析することで、どのような設計が可能になるのでしょうか。
飯塚氏(図研ネットウエイブ) 分析の結果、実はすべての仮想マシンで最高性能のSSDが必要なわけではない、という実態が見えてきます。3Tierであれば、データベースなど極めて高いランダムアクセス性能を求めるVMはSSD採用し、それ以外の一般的な業務システムやログ保管などはHDDを採用するという、「柔軟なストレージ設計」が容易になります。高価なSSD容量を最小限に抑えつつ要件を満たせるため、コストを劇的に削減できます。
山田氏 このようなストレージ設計では、デル・テクノロジーズ様のエントリー向けストレージ「PowerVault ME」シリーズが有効な選択肢となります。PowerVault MEはエントリークラスでありながら堅牢で安価のため、要件と予算のミスマッチを解決し、コストパフォーマンスを最大化させるために、これを提案に組み込むケースが増えています。
Chapter 3
陳腐化せず進化を続ける「PowerStore」の魅力
――こうした仮想基盤見直しの流れの中で、ストレージに求められる役割も変わっているように思います。図研ネットウエイブでは、どのようなストレージを提案するケースが増えているのでしょうか。
黒田氏 当社は長年にわたり「Dell PowerScale(旧Isilon)」を取り扱い、多くの導入実績を積み重ねてきました。最近は、仮想基盤向けストレージとして「Dell PowerStore」を積極的に提案しております。その理由は、この製品が持つ「圧倒的な信頼性」と、時代に合わせて「陳腐化せず、先進的に進化し続けるアーキテクチャ」を、高く評価しているからです。
ハードウエア面ではさらなるパフォーマンスと高密度、ソフトウエア面では運用のシンプルさなどを追求する一方で、ダウンタイムなく新世代に対応できる設計や、業界最高のデータ削減機能といった特徴も併せ持っている
図研ネットウエイブ株式会社
技術本部 技術第二部
システムインテグレーション課
飯塚 裕也氏
飯塚氏 特に技術的に評価しているのは、非常に優れた「データ削減機能(重複排除と圧縮)」を標準搭載している点です。SSD価格が上昇する中、必要な物理容量を抑えながら運用できるため、ストレージ導入コストの最適化につながります。
特にこの強みが生きるのが「VDI(デスクトップ仮想化)環境」です。VDIは構成やOS構造が類似したデスクトップが数百台、数千台規模で並ぶため、内部データの大部分が重複しています。PowerStoreの優れた重複排除によって物理容量を大幅にスリム化でき、コスト効率の向上が期待できます。さらにPowerStoreは、SANとNASを同時に高いパフォーマンスで処理できる「ユニファイドストレージ」であるため、サイロ化しがちなデータ基盤を1つに統合でき、管理者の運用負担を軽減できるという魅力もあります。
Chapter 4
HCIのシンプルさと3Tierの柔軟性を融合するDPC
――PowerStoreは単なるストレージ製品というより、仮想基盤全体を支える役割を担っているように感じます。では、このPowerStoreを含め、デル・テクノロジーズは現在どのようなインフラの方向性を描いているのでしょうか。
森山氏 AIを中心とする新しいデータ集約型のワークロードの台頭により、現在ではリソースを個別・柔軟にスケールできる3Tier構成が改めて見直されています。そこでデル・テクノロジーズが今提唱しているのが、「HCIの極めてシンプルな運用管理性や自動ライフサイクル管理の思想をそのまま継承しながら、3Tierの柔軟性と高性能を融合させる」というアプローチです。これを具現化したのが、「Dell Automation Platform(DAP)」をベースとした「Dell Private Cloud(DPC)」という、次世代プラットフォームです。そしてこの中核を担うのが「PowerStore」です。
HCIの運用管理性と3Tierの柔軟性を融合。VxRailのエンジニアが開発を担当することで、このようなアプローチが可能になったという
――HCIと3Tierの長所を組み合わせるという考え方は、どのような背景から生まれたのでしょうか。
森山氏 この自動化の仕組みを開発しているのは、かつて「VxRail(HCI)」を開発した精鋭のエンジニアチームと同じメンバーです。だからこそ、サーバー(PowerEdge)やストレージ(PowerStore)、そして各種ハイパーバイザーを、HCIのようなシームレスさで一元管理することが可能になったのです。
さらに、その中核であるPowerStoreは、稼働中のシステムやデータを一切停止・移行させることなく、最新世代のコントローラーへスムーズにアップグレードできる「Lifetime Extension」プログラムを提供しています。使いやすさと信頼性という強固な土台の上に、常に最新のテクノロジーを吸収し続けられる「先進性」を備えているからこそ、PowerStoreは多くの企業で仮想基盤や業務システム基盤を支える有力な選択肢となっているのです。
Chapter 5
自社検証環境と一貫体制が支える一社完結型SI
――HCI、3Tier、Azure Localなど複数の選択肢がある中で、自社に最適な構成を選ぶのは容易ではありません。図研ネットウエイブがお客様に提案する際は、どのようなアプローチを取っているのでしょうか。
黒田氏 営業とSEが一体となり、インフラ全体の設計から構築・移行までを一貫して支援できる体制を築き、最適なソリューションを提案しています。
顧客のニーズや重視するポイントを踏まえた上で、最適なソリューションを提案している
山田氏 当社ではPowerStoreやAX System for Azure Local、PowerScale、PowerSwitchといった、検証用の主要プロダクトを常時保有しています。他社ハイパーバイザー環境への移行などを検討される際、お客様の最大の懸念は「自社の重要なシステムが、本当に問題なく新しい基盤で動くのか」という点です。そこで当社では、実際の自社検証機をお客様のテスト環境にお貸し出しし、当社のSEがお客様と一緒になって、移行前の実稼働テストを徹底的に実施します。
飯塚氏 さらに、その事前検証を担当したSEがそのまま、設計や構築、データ移行、本稼働に至るまで、「一貫体制」でプロジェクトを主導する点も大きな特徴です。大手ベンダーによく見られる「検証SE」「構築SE」といった分業をあえて行わないことで、検証段階で明らかになったお客様の細かいご要望や設計の意図を、構築プロセスでそのまま反映させられるのです。
山田氏 また当社はストレージやサーバーだけでなく、複雑なネットワーク構築、Windows/Linux Serverの設計、Active Directory(AD)の連携、そして「FortiGate」をはじめとする強固なセキュリティー対策に至るまで、インフラ全般をワンストップでサポートできます。責任の所在を明確にし、一社完結でコーディネートできる点こそ、お客様に評価いただくことの多いポイントです。当社には「自分たちの手を積極的に動かして新しいことに挑戦する」という方針があり、このカルチャーによってマルチに対応できる、エンジニアリング力を育てています。
①複数アーキテクチャを扱えるSEが、②実測に基づく提案を行い、③自社保有の検証機で検証した上で、④プロジェクト全体を一社でカバーする。これによって責任の所在が明確になり、細かい要望にも柔軟に対応できるようになっている
Chapter 6
パブリッククラウド依存リスクを解消できる選択肢
――AI時代におけるインフラ設計で、特に重視しているポイントは何でしょうか。
山田氏 AI活用で重要性が高まっているのが、「パブリッククラウドAI一辺倒」といった依存リスクをどう回避するかです。すべてのデータをパブリッククラウド上のAPIへ転送する運用には、様々なリスクがあります。まず、データ転送量やトークン利用料が急激に跳ね上がるという「コストコントロールの難しさ」がある上、利用条件やサービス提供方針の変更など、外部要因の影響を受ける可能性もあります。
こうした課題への対応策の1つとして注目されているのがローカルAIです。自社内に強固なプライベートクラウド環境を確保し、機密データを安全にコントロールしながらAIを活用するのです。
――そのためにはクラウドの利便性とローカルの安全性を、両立できるプラットフォームが必要ですね。
森山氏 その1つとして挙げられるのが、Microsoft社のハイブリッドインフラ「Azure Local」です。これはAzure Portalからオンプレミスにある基盤の稼働状態を、ブラウザ上で完全に一元管理・可視化できるソリューションです。PowerStoreはAzure Localに完全対応しています。この2つの組み合わせは、今後お客様に極めて高い価値を提供できると確信しています。
山田氏 Azure Localはセキュリティー面でも極めて優秀です。推奨する標準構成で設計するだけで、OS領域やデータ領域の暗号化、高度なネットワークセキュリティー機能などが自動的に構築されるからです。また定期的にリリースされるバージョンやパッチを数クリックの簡単な操作で適用することにより、常に最新のセキュリティー状態を保てます。
Chapter 7
パートナーシップで築く妥協なき次世代インフラ
――最後に、今後の展望についてお聞かせください。
黒田氏 当社は今年で創立25周年となりますが、ここで新たに掲げているのが「クロスソリューション」の推進です。デル・テクノロジーズの幅広いインフラ製品群と、当社が長年培ってきたネットワーク、サーバー構築、そして高度なセキュリティー技術を融合させ、単一の製品売りにとどまらない総合的な価値を提供していきます。具体的には、「PowerScale+Superna(ランサムウエア対策)」に「FortiGate」を掛け合わせたソリューションなどを展開しています。
また営業的な観点からも、定型化されたメニューをただ売るのではなく、個別のご相談ベースでお客様ごとの課題に応じて柔軟に対応し、できる限り前向きな支援に努めるという姿勢を、今後も継続していきます。
山田氏 技術チームとしても、既にデル・テクノロジーズのSE陣と緊密に連携し、Azure Local導入時の「リミットテスト(限界性能検証)」や共同検証を行っていく予定です。この強固なアライアンスをベースに、全ライフサイクルにわたる手厚いサポートをお客様へ提供していきます。
森山氏 図研ネットウエイブは常にお客様に寄り添い、お客様の目線に立って真剣に、丁寧なご提案をしてくださるパートナーです。このお付き合いの長さや信頼の厚さは、我々メーカーから見ても非常に頼もしい存在です。長年のアライアンスを通じて築いてきた信頼関係と、図研ネットウエイブの卓越した実機検証体制があれば、次期インフラへの移行を検討されているお客様に、最適な解決策をご提示できると確信しています。
今後も両社で連携しながら、企業の未来のビジネスを支える強固なインフラ基盤をお届けしていきたいと思います。
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