
Windows Server 2016やVMware環境のEOSLを契機に、多くの企業がサーバーや仮想化基盤の更改を検討している。しかし実際には、「何を選べばよいのか分からない」「自社に必要な構成を判断できない」「予算や納期の見通しが立てにくい」といった課題に直面するケースも少なくない。特に専任のIT担当者が限られる中堅・中小企業では、製品選定そのものが大きな負担になりがちだ。有力ベンダーは、限られた人員でも更改を進められるよう、どのような解決策を用意しているのか。IT基盤刷新を阻む「選定負担」の正体と、その乗り越え方を探ってみたい。
<目次>
・ソフトウエアの更新だけでは終わらない。更改プロジェクトの実態 ・更改の必要性は分かっていても、多くの企業が動き出せない ・選定の負担を減らすデル・テクノロジーズのアプローチ ・サーバー更改と併せて見直したいストレージとデータ保護 ・足元の課題解決が、将来のデータ・AI活用の土台になる ・すべてを一度に決めず、まず優先順位を整理する
Windows Server 2016の延長サポートは2027年1月12日に終了する予定だ。さらに、VMware vSphere(ESXi)では、8.0が2027年10月11日に一般サポート終了を迎える予定となっている。
デル・テクノロジーズ株式会社
プロダクトマーケティング本部
インフラストラクチャー・ソリューションズ・グループ
マーチャンダイザー
小林 宙洋 氏
本来、OSやハイパーバイザーの更新はソフトウエアだけの問題ではない。多くの企業では、数年にわたって利用してきたサーバー環境が稼働しており、その間に性能要件やデータ量、セキュリティー要件も変化している。更新を機にハードウエアやストレージまで含めて見直すことで、運用負荷やセキュリティーリスクの低減につなげられる可能性がある。
こうした更改相談の実態について、デル・テクノロジーズの小林 宙洋氏は、OSや仮想化基盤の更新だけで完結するケースは少ないと説明する。「Windows Serverのサポート終了やVMware環境の見直しが相談のきっかけになることは多いのですが、実際には、サーバーだけでなくストレージやバックアップ環境、データの保管方法まで含めて検討されるお客様が増えています」。
こうして検討範囲が広がる一方で、更改計画をさらに難しくしているのが価格と納期の変化だ。数年前と現在では、部材価格や供給状況が大きく異なる。以前の感覚で予算や導入スケジュールを見積もると、納期や価格の差に戸惑うケースもあるという。「サポート終了日だけを見て準備を始めるのではなく、本番稼働から逆算して早めに計画を立てることが重要です」。

もっとも、更改の必要性を認識していても、プロジェクトがスムーズに進むとは限らない。特に中堅・中小企業では、IT担当者が複数の業務を兼任しているケースも多く、更改計画そのものに十分な時間を割くことが難しいからだ。
特に悩みの種になるのが構成選定だ。CPUはどの程度必要なのか。メモリー容量は十分なのか。ストレージはどこまで増強すべきなのか。今後の事業拡大やシステム増強をどの程度見込むべきなのか。さらに予算や納期も考慮しなければならない。
「お客様からは『何を選べばいいか分からない』『今の環境に対して何が適切なのか判断できない』といったご相談をよくいただきます」と小林氏は語る。
実際、数年前に導入したシステムと現在の製品を比較するだけでも容易ではない。性能は大幅に向上している一方で、選択肢は増え続けている。将来の拡張性まで踏まえて構成を選定するとなれば、なおさらだ。
さらに、検討の長期化は新たな問題も生む。せっかく取得した見積もりも、検討が長期化すれば条件の見直しが必要になる場合がある。だからこそ重要になるのが、構成選定そのものの負担を減らすアプローチなのである。

こうした課題に対するデル・テクノロジーズの取り組みが「Smart Selection(スマートセレクション、以下スマセレ)」だ。
スマセレは、需要の高い構成と供給状況を踏まえて選定された推奨構成プログラム。顧客は膨大な選択肢の中からゼロベースで構成を組み立てるのではなく、実績のある構成を出発点として、自社に適したシステムを検討できる(図1)。
需要の高い構成をベースにしながら、カスタマイズ性や価格競争力、供給状況への配慮を両立する導入支援プログラム。構成選定の負担軽減に加え、調達リスクの低減にもつながる
その価値は大きく4つに整理できる。まず1つ目は「選びやすさ」だ。一般的なサーバーやストレージ製品では、CPUやメモリー、ストレージ構成、RAID、保守サービスなど、多くの項目を検討する必要がある。その点、スマセレでは、需要の高い構成をあらかじめ用意しているため、顧客はゼロから構成を考える必要がない。
2つ目は「柔軟性」である。スマセレは固定構成ではない。標準構成をベースとしながら、CPUやメモリー、ストレージ容量などを要件に応じて調整できる。「選択肢を減らすことが目的ではありません。一般的な用途で必要な自由度は十分に残しながら、選びやすくすることを目指しています」(小林氏)。
3つ目は「価格競争力」だ。需要の高い構成をベースにすることで価格を最適化し、導入しやすい価格設定を実現している。小林氏によると、サーバー製品では一般的な構成と比較して5〜7%程度の価格優位性を持たせるケースもあるという。
そして4つ目が、「納期の確実性」である。スマセレは単に売れ筋構成を集めたものではない。現在の在庫だけではなく、今後の供給予定も考慮しながら構成が選定されている。長納期になりやすい部材や調達リスクの高いパーツは継続的に見直され、状況によっては対象から外される。
「スマセレは、単に売れ筋の構成を集めたものではありません。供給状況も考慮し、納期の見通しを立てやすい構成をあらかじめ整えています。見積もり後の構成変更リスクを抑え、検討から導入までの不確実性を低減することを目指しています」(小林氏)

IT基盤の更改では、とかくサーバーの性能や構成に目が向きがちだ。しかし、業務で扱うデータが増え続ける現在、ストレージやバックアップ、障害時の復旧方法まで切り離して考えることは難しい。
中堅・中小企業で特に多いのが、社内に散在しているデータを集約したいという相談だという。長年のシステム運用によって、ファイルサーバーや業務システム、部門ごとのストレージなどにデータが分散し、全体像を把握しにくくなっている企業も少なくない。
さらに、ランサムウエアをはじめとするサイバー攻撃が相次ぐ中、バックアップと復旧の実効性も重要なテーマになっている。バックアップを取得していても、障害や攻撃を受けた際にどの程度の時間で復旧できるのか、実際に業務を再開できるのかまで検証できていなければ、十分な備えとは言い切れない。
「実際、サーバーの更改をきっかけに、ストレージやバックアップ環境も併せて見直したいというご相談を多くいただいています。これまでバックアップから復旧した経験がなく、必要な時間や手順まで確認できていないお客様もいらっしゃいます。そのため更改時には、データの保存場所だけでなく、障害が起きたときにどのように復旧するのかまで改めて整理することが重要です」(小林氏)
そこでデル・テクノロジーズでは、PowerEdgeサーバーだけでなく、外付けストレージの「PowerVault」や「PowerStore」、データ保護製品の「PowerProtect Data Domain」といった製品群にもスマセレを展開しているという(図2)。
Smart SelectionはPowerEdgeサーバーだけでなく、PowerVault、PowerStore、PowerProtect Data Domainなどにも展開されている。サーバー更改を契機に、ストレージやデータ保護まで含めた基盤全体の見直しを進められる
ただし、スマセレにサーバーとストレージ、データ保護製品をまとめた単一のパッケージが用意されているわけではない。各製品について、需要や供給状況を考慮した構成を用意しており、企業は自社の課題に合わせて、それぞれの構成を検討できることも大きな特徴だ。
ストレージ製品についても、スマセレの考え方は基本的に同じだ。導入しやすい製品や構成を軸としながら、納期が長期化しやすいディスクなどを選択肢から外すことで、見積もり後に構成を変更する負担を抑えている。
すべてのデータを同じ方法で保存する必要はない。利用頻度や機密性、復旧の優先順位などを踏まえ、オンプレミスに置くデータとクラウドに置くデータを整理することで、限られた予算を有効に活用しやすくなる。
Windows ServerやVMware vSphere環境の見直しは、単に新しいサーバーへ置き換えるだけの機会ではない。データをどこに保持し、どのように保護し、必要なときにどう戻すのかを含め、IT基盤全体を再点検する好機とも言える。

IT基盤の刷新を考える上で、AIは無視できないテーマになりつつある。ただし、すべての企業が直ちにAI活用を本格化させるわけではない。中堅・中小企業にとって、まず解決すべきなのは、既存システムの性能不足や複雑化した運用、増加するデータの管理、セキュリティー、バックアップといった足元の課題である。
実際、Aberdeen Strategy & Researchの調査によると、中堅企業の31%が、サーバーの演算能力やCPU能力の制限を課題としている。業務システムの高度化やデータ量の増加が続く中、処理性能の不足はAI以前に、多くの企業が直面している現実的な問題になっている。さらに、既にAIを導入している企業では、43%がデータ管理を主要な障壁として挙げ、40%が物理または仮想ストレージの容量を大きな課題としている。
こうした課題の解決に向け、デル・テクノロジーズでは、必要に応じて無償のLive Opticsなどのアセスメントツールを活用し、現在のサーバーやストレージがどの程度のリソースを使用しているかを可視化した上で、構成を提案することも可能だという。現行環境の実態を把握できれば、単に既存サーバーと同等のスペックへ置き換えるのではなく、現在の利用状況に即した構成を検討しやすくなる。
「お客様の環境によって、必要な構成は異なります。実際のリソース使用状況を確認できれば、何を根拠にその構成を選んだのかも説明しやすくなります。現在どれだけ利用しているのかを把握した上で、必要な性能や容量、将来の拡張性を検討することが重要です」(小林氏)
AI活用を更改の直接的な目的にする必要はない。まずは現在の業務とデータを安全かつ効率的に扱える環境を整える。その取り組みが、結果として将来のAI活用に必要なデータ基盤と演算基盤の準備につながるのである。

それでは、Windows Server 2016の延長サポート終了や、VMware vSphere環境の一般サポート終了を控えた企業は、何から着手すればよいのだろうか。小林氏は、すべてを一度に実施しようとするのではなく、必要な取り組みを整理し、優先順位を付けることが第一歩だ、と説く。
「OSや仮想化基盤の更新に加え、現在のリソース利用状況、データの保管場所、バックアップ、セキュリティー、移行に必要な作業を一度整理してください。すべてを同時に実行するのではなく、何を優先するのかを決めることが重要です。その内容を具体的な機器構成と見積もりへ落とし込む際に、スマセレを活用していただければと思います」(小林氏)
更改の検討では、選択肢が多いことが必ずしもメリットになるとは限らない。検討に使える時間と人員が限られていれば、選択肢が増えるほど比較や判断の負担も大きくなるからだ。
必要なのは、自社に適した構成へたどり着くための、現実的な出発点である。需要の高い構成をベースに、必要な部分を調整でき、価格と供給状況にも配慮されているスマセレは、その役割を担う仕組みと言える。
Windows ServerやVMware vSphere環境のサポート終了が迫ってから慌てて機器を探すのではなく、移行、検証、本番稼働までを逆算し、できるだけ早く現状整理を始めること。スマセレは、更改の必要性を認識しながらも製品選定で立ち止まっている企業にとって、次の行動へ進むための有力な選択肢になるだろう。
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