- 生成AI本格活用と課題/レノボ・ジャパン
生成AIはなぜ使われないのか
成果を生む企業に共通するAI活用の条件
生成AIの導入は企業の現場で急速に進んでいる。一方で、導入したものの期待したほど成果が上がらないという声も少なくない。背景には、ユースケースの整理不足や業務プロセスの可視化、データ管理といった基盤的な課題がある。生成AIを「高級検索エンジン」で終わらせず、実際の業務改革につなげるには何が必要なのか。レノボ・ジャパンの元嶋亮太氏に、企業AI活用の実践的なアプローチについて尋ねた。(聞き手:日経BP 総合研究所 フェロー 桔梗原 富夫)
生成AIの導入率上昇、その一方で成果に伸び悩む現場
エバンジェリスト / 製品企画本部
プロダクトマーケティング部 部長
元嶋 亮太 氏
桔梗原 企業や組織の生成AI活用の現状を教えてください。
元嶋 レノボ・ジャパンが2025年10月に実施した日本における生成AI活用の調査結果があります。注目してもらいたいのは「生成AIの業務利用を一律で禁止している」という回答が約10%に減ったことです。3年ほど前は「禁止」が過半数でしたから、禁止の割合は急減しています。生成AIというテクノロジーが社会に浸透していくスピードを感じます。
桔梗原 一方で、生成AIは期待したほど効果が上がらないという声も聞きます。
元嶋 AIというキーワードの議論は、ユースケースが混在したまま進んでいることが多いようです。実は、企業や組織で生成AIを活用するユースケースは、3つに分けて考える必要があります。1つ目は個人の生産性の向上、2つ目はチームの生産性の向上、3つ目はビジネスモデルの変革です。この整理ができていないと、生成AIは高級な検索エンジンで終わってしまいます。そうしないためには、ベースラインとしてのプロセスの可視化が必要です。
プロセスの可視化とデータの管理が不可欠
桔梗原 ここでいうプロセスの可視化とはどのようなことですか。
元嶋 現在の業務がきちんと可視化されているかどうかということです。部門をまたぐ複雑な業務フローや形式知化されていない業務が、棚卸なしで急にAIによって置き換えるためには、引き続き大きなハードルが存在しています。例えば業績を報告する仕組みがあったとして、そこには現場のインプットがあって、作業や加工が行われて、分析した数字が経理や経営層に届きます。そのプロセスを可視化し、どのステップがAI活用に適しているのか、人が判断すべき箇所はどこなのか、明確化することが大切です。
桔梗原 チームの生産性向上の観点から、押さえるべきポイントはありますか。
元嶋 AI活用について、先程はプロセスの話をしましたが、データの観点も必要です。生成AIを人間に置き換えて考えるとよく分かるポイントです。教育を受けない新社員は、すぐには仕事ができません。実は生成AIも、参照できるデータがなければ新社員と同じで、仕事ができないのです。生成AIがしっかりデータを参照できる環境があることが大切です。しかし、現在すぐにデータをAIが活用できる状態になっている企業や組織はまだ少ないと思います。AIが生成したアウトプットの根拠となるデータが、最新のものかどうかを判断できなければなりません。
桔梗原 業務は、かなり暗黙知で回っている気がします。
元嶋 暗黙知と言われるものも、本来の意味での暗黙知とデータとして整理可能なものに分けられます。AIを企業や組織の実業務で有効活用するためには、プロセスレベルで書き出した上で、参照元となるデータを整備、この状態ではじめて人間が本質的に集中するところにフォーカスできるようになるのではないでしょうか。
多彩なハードウエアと成功の法則の提供が価値に
桔梗原 生成AIのメリットを享受するためのクライアントデバイスのあり方を教えてください。
元嶋 スマートフォンやタブレットが登場しても、パソコンがなぜ残っているかというと、クラウドや生成AIへの窓として機能し続けているからでしょう。そこで求められることが2つあります。1つは場所を問わずにクラウドやデータセンター上のAIとつながり続けること。もう1つはローカルで実行可能な基盤モデル(SLM)の活用を見据えた性能を担保することです。
桔梗原 サーバー側に目を向けたとき、パブリッククラウドではなくオンプレミスやプライベートクラウドでAI基盤を構築、運用する考え方もあるようです。
元嶋 はい。1つはコストの視点です。クラウドが必要なケースもあれば、そうでないケースもあります。ROI(投資対効果)の観点をもってアーキテクチャを設計することが重要です。もう1つはプライバシーの観点です。日本の会社にも、外に出すべきではない情報はたくさんあります。それではクラウドが使えないからAIの活用を諦めるのかというと、他のアプローチを検討する余地はあるはずです。クラウド以外でAIを活用する選択肢もかなり広がってきています。
桔梗原 レノボ・ジャパンとAI活用の関係を教えてください。
元嶋 レノボ・ジャパンでは、ポケットからクラウドまで、必要な場所でさまざまなコンピューティングパワーを利用できる幅広いラインアップを用意しています。特にAIの文脈ではそうした多彩なハードウエアが不可欠です。成功や失敗の事例を蓄積し、その知見を提供できることも価値になると思います。
桔梗原 AIを活用しようとする企業などに、アドバイスをもらえますか。
元嶋 AIをうまく活用できている先進的な企業や組織では、従業員が理解しやすい活用ガイドラインの整備が進んでいます。また、日進月歩でAIには新しいソリューションやモデルが登場していますが、その中から必要なものを取り入れるためにも、シャドーAIにならないようにオンボーディングプロセスを明確化することも重要です。シンプルな利用ルールとシャドーAIを防ぐ明確な導入プロセス、この2点はぜひ意識いただければと思います。
