AI時代の企業システムを支える3つの要素

多くの企業が陥る“PoC止まり” AI活用を推進する「クラウド基盤」とは

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AIがビジネスに不可欠な技術となった「AI時代」においては、システム基盤にも新たな考え方が必要になる。それを3つのキーワードで読み解いていく本連載。第1回では、偏在するシステムやデータを一括して取り扱えるようにする「統合業務プラットフォーム」について解説した。しかし、業務やシステムの統合だけではAI活用には不十分である。第2回では、AI活用が実際にはクラウド上で行われることに着目し、AI活用を推進するために「クラウド基盤」をどのように整備していくかを解説する。その際には、AI活用に伴うガバナンスやセキュリティ面にも留意する必要がある。

進まないAI活用と
その要因となる3つの「壁」

ビジネスを進める上で、AI活用が重要なテーマとなっている。この1〜2年の間に、生成AIを活用した業務効率化の取り組みが急速に広がってきたが、現在ではデータに基づいて各種業務タスクを自律的に遂行するAIエージェントの実用化に取り組む企業も増えている。

AI技術は加速度的な進化を遂げているが、その一方で、市場に投入されたツールの導入検討を進めるためのPoC(概念実証)には積極的に取り組んでいるものの、実際のビジネスの現場で有効な成果を生み出せていない、いわば「PoC止まり」の状態に終止してしまっている企業も少なくない。

DTSの植草 康之氏は、このように企業内でAI活用が思うように浸透し切らない要因を「3つの壁」として端的に整理する。

株式会社 DTS テクノロジー&ソリューションセグメント デジタルソリューション事業本部 クラウド・インフラインテグレーション事業部 クラウド活用推進担当 担当部長 植草 康之氏

1つ目が「活用定着の壁」である。これは、AI環境を用意しても現場で利用が広がらない、あるいは活用のための知見が個人に閉じてしまって、組織全体で共有されないという問題だ。

2つ目は「品質・生産性の壁」。AIで生成したコンテンツの品質が不十分な結果、人手による手直しに多大な工数がかかってしまったり、ユーザーの出す指示によって、生成された内容の精度に大きなバラつきが生じたりする問題である。

そして3つ目が、「運用リスクの壁」だ。これにはAI活用でたびたび指摘される情報漏えいなどセキュリティ上の懸念や、システムの運用に要する膨大な初期投資や維持のためのコスト、さらには「誰にどこまで権限を委譲するか」というガバナンス上の問題も絡んでくる。


個人依存から脱却し
組織全体で活用を推進

まず1つ目の活用定着の壁の打開に向けて植草氏は、「活用が現場や個人に依存していることが、一番の問題だと考えます。まずはAIをどのように使いたいのか、ユースケースを明らかにして、それを推進するための組織を適切に構築することです。その上で、活用推進の責任者を明確にして、組織全体での着実な活用を進め、培われた知見やノウハウを組織全体で共有していく体制づくりが重要です」と、解決策を述べる。

品質・生産性の壁についても同様、AIの使い方を個人に委ねるのではなく、組織として統一した形で効率的な活用法を明示することが求められる。「例えば、現在ではチームでの活動が基本となるシステム開発にAIを用いるケースが増えていますが、そこで生産性を上げていこうとすれば、チームの全員が踏襲すべきルールがないとAI駆動開発にたどり着くことはできません」と植草氏は説明する。

運用リスクの壁についても、組織的に運用改善を図ることが重要だ。組織として統一したルールを策定し、誰がいつどのようなコンテンツを作成したかを把握した上で、それらがセキュリティ上のルールに則っているか、など適切な運用を行っていかなければならない。

運用リスクの問題に関しては、組織・プロセスの対応だけでなく、それに合ったシステム基盤をどのように整備するかも重要になる。AI活用に必要なデータをどこにどのように集め、その利用をしっかり管理して、ガバナンスを効かせ、必要なセキュリティ対策を施した形にしておくことが欠かせない。

この「システム基盤」の問題についてもう少し掘り下げてみたい。機密性の高い情報を扱う一部の業種を除けば、AI活用ではクラウドサービスを利用するケースが増えている。クラウドのメリットとして以前から言われてきた、「スモールスタートで初期投資を抑えながら、利用拡大に合わせて拡張できる」という特性はAI活用で威力を発揮する。AI活用では大規模で複雑な処理が可能なGPUサーバーが使われるが、GPUは高価なことに加えて、その管理・運用では高度な技術が求められる。処理に必要なハードウエアを所有するのではなく、その機能だけを利用する形態のクラウドは、AI活用にはうってつけともいえるだろう。クラウドは最新技術への追随も容易だ。クラウド事業者が提供する広範な最新機能を手軽に利用できる。

ただし、だからと言って「クラウドを使えばすぐにAI活用が推進できる」と考えるのは早計だ。様々に提供されている機能をどう組み合わせて、さらにそれらをどのように運用していくかが重要だ。

特に見逃してはいけないのは、自社の活用内容に合わせたシステム基盤、この場合はクラウド基盤の設計をしっかり行っているかどうかという点である。まず、AI活用で使用するデータをどこから持ってくるかという問題が発生する。他のクラウドサービスやオンプレミス環境のシステムであれば、それらとどうセキュアに連携するかが重要になる。クラウドセキュリティの観点から、アイデンティティ管理の側面も欠かせない。

以上の観点に立って、
・複数のクラウドサービスやオンプレミスとセキュアに接続し
・それらと様々なAIサービスを柔軟に組み合わせ
・ガバナンスとセキュリティを効かせた形で運用
が可能になるようなクラウド基盤の構築が、クラウドでのAI活用には欠かせないのである。

クラウドサービスでは、運用面やセキュリティ面でも様々な機能が提供されている。しかし、それらが本当に自社の利用に適合しているのか、オーバースペックになっていないか、といった検証も必要だ。


ビジネスへの価値提供を
最重要視したサービス

しかし、そうした基盤設計を企業が独力で行うには、大きな困難が伴う。クラウドサービスでは数多くの機能が提供されており、自社が目指すビジネスを実現するためにどの機能を組み合わせて基盤を構築すればよいのか、的確な判断を下すのは難しい。AIに限らず技術の進化に合わせて新機能が続々リリースされるため、そのキャッチアップも必要になる。IT人材不足は多くの企業に共通する悩みだが、AIにも精通した人材を揃えて自社だけで行う、というのはあまりに非現実的だ。そこで推奨されるのが、クラウドやAIについて知見やノウハウを備えた信頼できるパートナーの支援を得ることだ。

パートナー選定に当たっては、クラウドやAIの知見だけでなく、企業のシステム活用の経緯やビジネス上の特性などにまで深い理解を持っていれば申し分ない。そのようなパートナーとしての要件を満たしているのがDTSである。同社は1972年の創業以来、多くの日本企業のIT活用を支援してきており、導入から運用まで一貫してサポートできる強みがある。単なるIT導入だけでなく、それに合わせた業務再設計も手掛けてきており、業務・基盤・運用を横断して支援できる。クラウド基盤に関して同社は、顧客のニーズに応じた各種サービスをメニュー化。AI活用を踏まえたクラウド基盤の構築から運用までをトータルに支援している(図1)。

図1 DTSが提供するクラウド活用支援サービス

図1 DTSが提供するクラウド活用支援サービス

顧客ビジネスの視点に立って、クラウド戦略の策定とシステムの移行&モダナイゼーションを伴走型で支援する

「クラウド戦略策定支援」では、顧客企業におけるビジネスの成長を支えるクラウド活用の戦略策定を伴走型で支援する。システムやビジネスの現状把握からTCO分析、クラウドへの移行戦略の策定までを顧客のビジネスニーズに応じて行う。

「移行&モダナイゼーション伴走支援」では、顧客企業のシステム移行やモダナイゼーションを、「アセスメント」「モビリティ」「マイグレーション&モダナイゼーション」「オペレーション」という4つのフェーズで伴走支援する。

「高付加価値クラウドマネージドサービス」では、単純なシステム監視にとどまらず、頻繁に発生するアップデートやメンテナンス対応に加え、クラウドの技術変化や市場変化、さらには顧客ビジネスニーズの変化にも合わせる形で、DTSがプロアクティブに最適化提案を行う(図2)。

図2 「高付加価値クラウドマネージドサービス」の概要

図2 「高付加価値クラウドマネージドサービス」の概要

単にシステムの監視・運用だけでなく、顧客のビジネスに新規技術を活用した新たな価値をもたらす「継続的改善」に関係する提案を行い、プロアクティブな支援を提供する

DTSは、パートナー認定制度であるAWS パートナーネットワーク(APN)のAWSコンピテンシーパートナープログラムにおいて、「AWS 移行とモダナイゼーションコンピテンシー」認定を2025年3月に取得した。AWSへの移行において、調査から計画、移行、運用までのすべてのフェーズで専門的な知識と豊富な実績を有し、モダナイゼーションに関しても優れた技術と実績を持つパートナーに授与される認定であり、DTSがそうした要請に応えていることをオーソライズするものである。

「クラウドに基盤を移行したお客様の中で、『運用コストや人的負荷が思ったほど軽減されない』と頭を悩ませているという話をよく聞きます。その根源的な原因は、お客様の運用に対する考え方が従来のオンプレミスのときと変わっていないということ。当社は、そのマインドセットから支援させていただきます」と植草氏は強調する。

こうしたサービスを提供するDTSには、クラウドやAI活用の戦略策定に関する様々な相談が寄せられている。例えば、クラウドの生成AIサービスを社内に展開した企業からの、「社内の業務効率化に確実につなげていくためにはどうすべきか」といったものだ。こうした相談に対してDTSは、専任チームによる体制での支援を開始し、顧客へのより高度な付加価値の提供に努めている。

最後に植草氏は、「AIに限らず、技術を利用する事自体は目的ではなく手段です。技術を使ってお客様が自社のビジネスをどう成長させていくかということこそが重要なテーマなのです。当社は、それに向けたお客様への価値提供を最重要視し、全社をあげて新規ソリューションやサービスの創出に注力しています」と自社のスタンスを力強く語った。

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