開発工程を劇的に効率化する
リアルタイムソリューション
近年の車は、ADAS(先進運転支援)や、インフォメーション(情報)とエンターテインメント(娯楽)の両方を提供するインフォテインメントシステムなど、多数の機能が搭載されるようになった。その結果、開発は複雑化し、部門間の情報連携も難しくなっている。加えてユーザー嗜好の多様化や技術の急速な進展により、開発サイクルの短期化も課題だ。
こうした環境に対応して生産性を高めるには、各プロセスの効率化が欠かせない。そのためのソリューションとして自動車業界で注目されているのが、Epic Gamesが提供するリアルタイム3D制作ツールUnreal Engineだ。
「もともとゲームエンジンとして開発されたものですが、高精細かつインタラクティブなビジュアル表現能力は、ほかの様々な領域にも応用できます。そこでノンゲーム分野への提供を強化しています」とEpic Games Japanの杉山 明氏は語る。

自動車業界での活用は2016年にさかのぼる。Epicが披露した最初の事例は、デモ用に制作されたマクラーレンのカーコンフィギュレーターだ。タッチパネル操作でボディーカラーを変更したり、ドアを開閉したりした状態をリアルタイム表示できる。同年、BMWは車両のインテリアをVR(仮想現実)で検証できるシステムをUnreal Engineで構築し、デザイン業務の円滑化に着手した。

「2020年にはGMCのEV(電気自動車)のデジタルダッシュボード開発に使われ、以降、多くのメーカーにHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)開発ツールとして採用されています」とEpic Games Japanの向井 秀哉氏はその経緯を説明する。
現在は、世界トップ20のOEMメーカーの約80%がUnreal Engineを導入。用途として特に増えているのがHMI開発だ。2025年時点でUnreal Engineで設計されたデジタルダッシュボードを搭載した車種は全35以上、累計200万台に達するという。

3Dデータの「ワンソース・マルチユース」を可能にする
Unreal Engineの活用は、コンフィギュレーターやVR、HMIにとどまらない。デザイン、ADASや自動運転向けの走行シミュレーション、さらにはマーケティングにも及んでいる。なぜここまで活用シーンが広がったのか。背景には多種多様な3Dデザインツールで作成されたアセットを迅速にインポートできるワークフロー機能を備えたことがある。これによって開発現場で利用できる幅が飛躍的に拡大した。
例えば、デザイン部門が新しい車種を社内にプレゼンする際、ボディーカラーや背景などに豊富なバリエーションを使いたいと考えたとしよう。しかしこれまではCADデータを基にデータの変換や軽量化を経て作成していたため、コストや期間がかかっていた。しかしUnreal Engineのワークフローなら、CADデータの取り込み、シーンの構築、ライティング/エフェクトまで高速に行え、高品質なビジュアルを低コスト・短時間に仕上げられる。
「デザイナーなどの非プログラマーでも、ノード(システム内の接続点)を順番に接続することでアプリケーションを作成できます。それにより、デザイナーの方でも実際動作するモックアップを制作することができ、後の正式実装や量産にもそのまま生かすことができます」(向井氏)
Unreal Engineで作成したデータの共有により、部門の枠を越えた連携も進む。これまでは、例えばVR制作などでフェーズごとにデータを各部門がつくり直していた。
「Unreal Engineは、静止画・動画・VR・HMI・シミュレーションへとワンソース・マルチユースで展開できる環境を提供し、部門間のデータ分断を解消します」と杉山氏は話す。
Unreal Engineで「リアルタイム3D統合プラットフォーム」を構築

Unreal Engineに取り込んだビジュアルデータは、各フェーズで再利用できる。
これにより部門間の連携が進み、開発全体のスピードが向上する
こうしてUnreal Engineに「リアルタイム3D統合プラットフォーム」の役割を担わせることで、設計・テスト・改善の一連の工程を素早く回す「イテレーション開発」も進めやすくなるだろう。
世界のメーカーが
多様な開発フェーズに活用
実際の開発現場で、Unreal Engineはどのように活用されているのだろうか。ここからは主な開発フェーズにおける事例を紹介したい。
新興電動ベンチャービークルメーカーのリビアンは、2021年の初号車からHMIの開発にUnreal Engineを採用。そのデジタルダッシュボードは、無線でソフト更新するOTA(オーバー・ジ・エアー)によって2024年に更新された。「イラストテイストのビジュアルや9つのドライブモードを瞬時に切り替えられるなどの刷新されたUI体験を、わずか6カ月で実現したと聞いています」(向井氏)
ジーリーの「Galaxy E8」には、45インチ・8K解像度の超大型スマートスクリーンが搭載されている。画面に表示されるイメージ映像は時間や天候などに応じ刻々と変化し、車内の雰囲気を豊かに演出する。Unreal Engineが8Kという高解像度の開発にも十分に対応できることを示す事例だ。
ソニー・ホンダモビリティが開発中の「AFEELA 1」のデジタルダッシュボードには、ADASが認識した周囲の車両や歩行者、車線などの情報をリアルタイムに車内スクリーンに表示する機能が盛り込まれている。

ADASや自動運転技術の開発には、膨大な学習データが必要だ。核となるのは実車の走行データだが、Unreal Engineの高いグラフィックス性能を生かせば、多様な天候や時間帯、道路状況をリアルに再現できる。「これにより車載センサーが実環境での挙動を予測できるようになることから、ADASや自動運転のためのシミュレーター開発にも利用されています」(杉山氏)。
このようにUnreal Engineは、UX(ユーザー体験)や安全性を高める機能を効率よく開発するためのツールとして、多くのメーカーにとって欠かせないものとなっている。
開発力の強化で
企業競争力をも高める
マーケティング領域でも幅広く活用されている。SUBARUは、北米でのリサーチで実物大クレイモデルをVRに置き換えた。Unreal EngineでCG化した車でも、調査結果は「従来と遜色なし」だった。日本でつくったクレイモデルを輸送する必要がなくなり、リードタイムは6週間から3日に短縮。コストは7分の1に圧縮されたという。

最近は、静止画・動画をUnreal Engineで内製し、宣伝の手間とコストを削減するメーカーが増えている。その1社がLotusだ。同社は、取り込んだCADデータを、VRでのデザイン検証、HMI、Webコンフィギュレーター、イベント/ディーラー向けPR動画まで活用。まさに「ワンソース・マルチユース」を実践している。



杉山氏は、「リアルタイム3D統合プラットフォームとして活用すれば、省力化とコスト圧縮の効果は極めて大きい」と語る。恩恵が開発全体に及ぶことを踏まえると、Unreal Engineは単なる3Dツールではなく、競争力を高める手段といえるだろう。
「自動運転が本格化すれば、車内体験の価値が一層重視されます。インフォテインメントの役割が拡大するほど、Unreal Engineの真価は高まるでしょう」と向井氏は語る。
技術と市場環境の変化が加速し、「100年に一度の大変革期」といわれる自動車業界。多様化するニーズに応えるデザインと体験価値を迅速に試行・改善することが求められる。Unreal Engineは、そうした現場を支える中核ツールとして、ますます価値を高めていくだろう。
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問い合わせ
Epic Games Japan合同会社
https://forms.unrealengine.com/s/lead
E-mail
akira.sugiyama@epicgames.com
shinsuke.fukamachi@epicgames.com



