ファラデー・テクノロジー日本株式会社
代表取締役社長
加藤 祐一 氏
ファラデー・テクノロジー日本株式会社
代表取締役社長
加藤 祐一 氏
自社工場を保有しないASICベンダーである台湾ファラデー・テクノロジーが、事業戦略を大転換。開発受託可能なプロセスノードを拡大し、これまで以上に多様な形態の業務受託を開始した。インテルやサムスン電子の高度な製造技術と、2.5Dや3Dの先進的パッケージの活用が可能になり、エッジAIを搭載した先端ASICなど、より価値あるチップの開発を支える体制が整った。
競争力の高いビジネスを展開するためには、自社製品への独自開発した半導体チップの搭載が必須。世界中のICT産業や自動車産業で、こうした認識が広まりつつある。米国や中国のビッグテック、世界中の主要自動車メーカーは、例外なく独自チップ開発に乗り出している状況で、産業機器や民生機器など多くの領域にも拡大している。
ASIC(独自仕様のカスタムチップ)の開発では、高度化と多様化が進んでいる(図1)。こうした動きは、これから日本においても顕在化してくることだろう。
図1 高度化と多様化が進むASIC開発、
提供技術の引き出しを増やして柔軟・適切な開発支援サービスを提供するファラデー
ASIC開発のニーズが、より高度、より多様な方向へと変貌しつつある。レガシーからアドバンスドまで、広範なプロセスノードのASICの開発が求められるようになった。さらに、チップレットの活用など、後工程でも、新技術導入が進められている。ファラデーは、こうしたASIC開発のニーズの変化に対応すべく、事業戦略の大転換に踏み切った。
ファラデー・テクノロジー(以下、ファラデー)は、台湾の半導体ファウンドリーであるUMCのIP事業部からスピンアウトして生まれた、自社工場を持たないASICベンダーである。約30年間にわたって設計受託サービスを提供し、世界中の先進的半導体ユーザーのビジネスを支えてきた。
同社は設計受託したASICを、2023年だけで約1億7800万個(チップ換算)出荷。さらに、民生や産業、通信、医療、エネルギー、自動車など、さまざまな応用分野で利用されるASICの設計を毎年平均40〜50件、新規受注しているという。ASIC設計での同社の実力が広く認知されている様子が窺える。
「日本においても、世界市場での高い競争力を持つプリンターや複合機などの領域で当社が設計したASICが広く利用されています」と同社日本法人 代表取締役社長の加藤祐一氏は語る。
他のASICベンダーと比べた際のファラデーの最大の特徴は、ASIC設計の効率化に欠かせない部品であるIP(検証済みの再利用可能な設計資産)を自社開発できる点にある。USBなどのインターフェースIPや民生応用向け汎用IPなどをはじめとする4000件以上もの自社開発IPを保有。レガシープロセス(成熟した製造プロセス)で製造するチップの設計ならば、顧客要件を満たすIPの約9割が既に揃っている状況だ。自社開発していないIPに関しても、サードパーティーから確実に調達し、チップ開発に必要なものはほぼ網羅した品揃えを整えている。このため、ユーザーは自らがIPを調達する必要性がなくなり、ライセンス費用を抑えて独自仕様のASICを開発することができる。
これまでファラデーは、製造はもっぱらUMCで製造することを前提としたチップの設計受託に注力していた。対応可能なプロセスノードは、0.5μmから14nmまでのいわゆるレガシープロセスにフォーカス。加えて、ビジネスモデルも、チップ設計を請け負うだけではなく、マスク作成、製造、組み立て、テストまでの工程を一貫管理する“フルターンキー”での受託を強みにしていた。
ところが近年、設計対象となるプロセスノード拡大とビジネスモデルの拡張を軸とした、事業戦略の大転換を推し進めている(図2)。
図2 対応プロセスノードを拡大し、
ビジネスモデルを拡張した新生ファラデー・テクノロジーの強み
新生ファラデーのASIC開発支援サービスの強みは、大きく3つ。まず、従来同様の独自開発IPの提供。次に、アドバンスドを含む広範なプロセスノードへの対応。そして、2.5Dや3Dといった先進的パッケージ技術への対応である。とくにプロセスノードに関しては、0.5μm~18Å(オングストローム)まで、広範な領域をカバーしている。
2022年10月、同社は、半導体ファウンドリー事業(IFS)を強化している米インテルと提携。同社のアリゾナ工場で、ファラデーが設計したASICの12nmノードでの製造が2026年末から2027年に開始する予定である。また、既にIFSで提供する各製造技術に最適化したIPの整備も着実に進められている。加えて、現時点での最先端技術に相当する「Intel 18Aプロセス(2nmノードに相当)」での製造を想定した先端SoCの設計受託サービスの提供も開始した。
2nmノードチップへの対応に先駆けて、同社は近年着実にファウンドリー事業での存在感を高めている韓国サムスン電子の14nmノード対応の受託サービスも開始済みである。現在では5、4nmノードまでの同社技術に対応したASICを設計可能。UMC、サムスン電子、インテルとの連携体制を整備したことで、0.5μmのレガシープロセスから2nmノードのアドバンスドプロセスまで、広範なASIC設計のニーズを網羅的に対応できる体制を構築したことになる。「幅広いプロセス、あらゆるチャンスに対応できるようになりました」と加藤氏も体制強化の手応えを語る。
インテルのIFSでの製造を想定する際には、インテル公認の開発者支援アライアンスである、「Design Services Alliance(DSA)」と「Value Chain Alliance(VCA)」にファラデーが参画している点に注目したい。DSAとは、インテルと密に連携して、IFS対応の設計でより高度な支援サービスを提供できる企業群。VCAとは、設計から製造までのエンド・ツー・エンドの管理サービスを提供できる企業群のことである。「DSAとVCAの両方に参画している企業は当社だけであり、これはIFSのエコシステムの中で当社が極めて重要な役割を担っていることを意味します」と加藤氏は力説する。英国のArmホールディングスとも提携し、クラウドやAI、ネットワーキングなどの領域に向けた先端SoCを設計できる体制も整えている。
加えてファラデーは、フルターンキーだけではなく、「Modular Business Model」と呼ぶ、顧客の要求により柔軟に応えられるビジネスモデルへの拡張も行った。ASIC設計だけを委託する「Design Support」、ウエハー製造の管理のみ、もしくは設計と製造管理を委託する「Wafer Buy」、さらにはインターポーザの製造やインテルの「EMIB」、2.5Dもしくは3Dのパッケージングなど、後工程の管理のみを委託する「Package/Testing」といった、多様な委託形態が可能になった。
近年では、大規模チップをあえて個片化して後工程で1パッケージに集積するチップレット技術の活用が広がっている。高度化した後工程の管理には専門的知見が不可欠。管理の外部委託を行うASIC開発者が増えてくる見通しだ。
日本においても、ファクトリーオートメーション(FA)やロボットをはじめとする産業機器、民生機器などの領域において、12nm~8nmのプロセスノードでのASIC開発が進むことだろう。応用機器にAIを搭載して知能化・自律化を推し進める動きが加速しており、そこではこれまで以上に強力な情報処理能力が求められるからだ。これらの領域では、処理のリアルタイム性向上やセキュリティ・プライバシー保護などの観点から、機器中の半導体チップにAI処理機能を搭載する“エッジAI”の導入が不可欠になる。エッジAI向けチップでは低消費電力化が強く求められるため、標準仕様のチップではなく、用途に最適化した独自開発ASICの導入が圧倒的に有利だ。ファラデーの新たな事業戦略に沿ったASIC開発の受託サービスは、こうした時流を背景にした要求に合致する。
海外の半導体関連企業との連携には商習慣の違いなど難しさもあるが、加藤氏はファラデー日本法人ならばそこもクリアできると力強く話す。「技術商社であるマクニカと新光商事の2社と代理店契約を締結しています。日本の半導体商社は優れた技術サポート能力を保有しており、日本固有の商習慣への対応や在庫管理なども代行可能で、海外の半導体関連企業と連携する上で欠かせない存在となっています。私たちは、これら協力企業と共に、顧客企業に寄り添って、価値あるASICの開発を支えます」(加藤氏)
お問い合わせ
ファラデー・テクノロジー日本株式会社
https://www.faraday-tech.com/〒103-0026
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