



FastLabelが「高品質なデータ」で変えるロボット開発の現場

FastLabel
ロボティクスAI事業本部
先端AI基盤技術開発グループ
マネージャー/MLエンジニア
山田 直氏
FastLabel
執行役員COO
ロボティクスAI事業本部長
藤原 宏貴氏
ロボットなどの機械を人工知能(AI)で自律的に動かす「フィジカルAI」が製造業やサービス業の現場で大きな注目を集めている。AI開発に必要な「高品質なデータ」の作成・管理を支援するリーディングカンパニーのFastLabelは、これまでの自動運転と生成AIの開発に加え、2025年10月にロボティクスAI領域への事業拡張を実施。2026年5月には、AIロボティクス開発に必要なデータ収集の効率化や標準化、データ品質の担保が可能なアプリケーション「OpenLUTRA」を、オープンソースで公開した。
「データでAIに信頼を与え、世界変革の黒子になる。」をパーパスに掲げるFastLabelは、2020年1月の創業以来、AI開発におけるデータに関するあらゆる課題の解決策を提供しながら、300社以上の支援を通して国内外の社会課題解決に取り組んできた。
AIの基盤モデルに学習させるデータは、収集、前処理、アノテーション(属性情報の付与)などの準備が必要になる。こうしたデータの準備に必要な時間は、AI開発における全工程の80%を占めるともいわれる。データ準備を効率良く行い、信頼性の高いデータを収集することが大切で、FastLabelの強みはそこにある。
AIの精度を改善する主なアプローチとしては、アルゴリズムの変更とデータの品質向上の2つがあるが、アルゴリズムの前にデータを重要視する「データ中心(Data-centric)」の方がより効率的に精度改善ができることが分かっている。このため、FastLabelは一貫して「データの信頼性」を重視し、AIが安全かつ高精度に学習できる状態にデータを整える「AI-Ready化」に取り組んできた。
そして、2025年10月にロボティクスAI事業を正式リリース。きっかけは25年1月の米テクノロジー見本市「CES2025」で、米半導体大手エヌビディアのジェンスン・ファンCEOが「フィジカルAI」の到来を宣言したことだった。


「今後のAIのトレンドとして、AIロボティクスが来ることは明らかでした。その領域ではどのようなデータの課題解決が求められるかについて、社内のみならずクライアントと議論をしたほか、中国・北京のロボットメーカーを訪問し、ロボット制御のためのAIモデルを構築する上で重要となる、データの作り方などについて視察しました」。執行役員COOでロボティクスAI事業本部長の藤原宏貴氏はそう振り返る。
また、一般社団法人AIロボット協会(AIRoA)に加入して、モデル開発に必要なデータの収集・保管などに関するノウハウを習得。クライアントへのヒアリングも繰り返した。
こうした学びと準備を経て事業を立ち上げ、同時にロボットトレーニングセンターを開所した。同センターでは、セミヒューマノイド(AMRのように移動ができ人間のような双腕の上半身が付いたロボット)、4足歩行ロボット、産業用ロボットなどを使いながら、将来的にフィジカルAIの社会実装を実現するための様々なプロジェクトをクライアントと一緒に進めている。
「センターの強みは、ロボットデータ収集の専門人材が常駐していることに加え、複数台のロボットを同時に稼働できる十分なスペースを備えているので、データ収集期間を短縮できることです」と、ロボティクスAI事業本部で技術開発をリードする山田直氏は話す。
ロボティクスAI開発に必要な高品質データの収集・管理の支援をする中で見えてきた課題が2つあった。
1つ目は、データ収集時にコマンド操作、システムモニタリング、エラー対応など専門的な操作が必要なことで規模を拡大しにくいこと。2つ目は、カメラ映像の欠損、通信遅延、センサーの不具合などの問題がデータ収集時にすぐに検知できず、作業後に異常データだと判明することで無駄が増えてしまうことだ。
そこでFastLabelはロボットデータ収集を支援するアプリケーション「OpenLUTRA(ルトラ)」を開発、2026年5月28日にオープンソースとして正式リリースした。
OpenLUTRAの主な特徴は4つある。まず、誰でも容易に操作できるUIを備えていること。2つ目は、リアルタイムで監視し、異常発生時に素早くリカバリーに移行できること。3つ目は、保存データを自動解析し、品質基準の合否を即座にチェックできること。そして4つ目は、ロボット開発を効率化するためのフレームワークとして「ROS2」を採用しているため、様々なロボットやデバイスに対応でき、すぐに現場に導入できることだ。
「弊社は、お客様の現場に入り、システムの使い方やロボットの特性、実現したいタスクを深く理解した上で、現場課題の解決から高品質なデータ収集までを支援しています。OpenLUTRAを使っていただくことで、さらにデータ収集の品質と効率を向上させることが可能です」(山田氏)
OpenLUTRAをオープンソースにした理由について、藤原氏は次のように説明する。
「お客様の現場の課題は、1種類のロボットだけですべて解決ができるわけではありません。様々な種類のロボットから収集したデータを統合できるアプリケーションがないと、データの変換・統合に莫大なコストがかかってしまいます。オープンソースにしたのは、お客様自身が低コストでデータ収集できるようにという思想に基づいています」
展示会でOpenLUTRAを紹介したところ、「システムのリアルタイム監視ができ、データの自動品質判定ができる。まさにこんなツールが欲しかった」などの声が寄せられ、現場の課題解決に役立つツールであることに自信を深めたという。


「OpenLUTRAがグローバルで利用されるようになり、ロボティクスAI開発の前進を下支えする存在になってくれればと思います」と、山田氏はその未来像について語る。
フィジカルAIへの投資が今後予想されるが、ハードとソフト、両方の進化が著しいため、本格導入をした数年後にはすでに古くなっているといったことも起こりかねない。
「今固めておくべきは、どこから自動化すべきかという業務領域の特定と、現場で取り扱うことになるデータパイプラインの構築です。性能が高いロボット制御のためのAIモデルとロボットがそろった時、データを収集して学習すれば、すぐにフィジカルAIが実装できる状態に準備しておくことが大切です」(藤原氏)