PRIMERGY CDI V2 開発メンバー

エフサステクノロジーズ株式会社
サーバ&ストレージ事業本部
先端技術開発統括部 マネージャー
阿部 真樹 氏

エフサステクノロジーズ株式会社
サーバ&ストレージ事業本部
先端技術開発統括部
劉 杰 氏

エフサステクノロジーズ株式会社
サーバ&ストレージ事業本部
先端技術開発統括部
岩間 大和 氏

エフサステクノロジーズ株式会社
サーバ&ストレージ事業本部
先端技術開発統括部
酒井 洋輔 氏
AI活用が抱える柔軟性の課題を、
先進的な技術で解決
現在のサーバは、メモリやGPU、ストレージが筐体内に固定されているため、性能要件が変わるたびにデバイスを物理的に変更する必要がある。特にAI活用をテーマとした場合、機械学習時のようにGPUを大量に必要とする時期と、推論や一般業務のように相対的に小さくなる時期の差が大きい。ピーク需要に合わせて構成すると、初期投資は大きくなる一方、平常時には余剰が発生する。「必要なときに必要なだけGPUやメモリを使いたい」という要望は以前からあったが、従来型のアーキテクチャでは実現が難しかった。
この課題を解決するのが、エフサステクノロジーズの「PRIMERGY CDI」だ。CDI(Composable Disaggregated Infrastructure)は、GPUやSSDなどのデバイスをサーバ筐体から切り離し、外部の専用ボックスにまとめて共有できる仕組みだ。各サーバと高速回線でつなぎ、サーバごとの需要に応じて必要な量のリソースを動的に割り当てられる。物理的な交換なしに構成を変えられるため、運用の自由度とスピードが大きく向上する。例えば、機械学習では全GPUを1台に集約し、推論時には複数台へ分散するといった運用を、ソフトウェアの操作だけで実現できる。
CPUのプーリングは2027年以降を予定しております
さらに、2026年1月発売の最新モデル「PRIMERGY CDI V2」には、3つの機能が追加された。1つ目は、新たに実装された「CXLメモリプーリング機能」だ。ストレージやGPUだけでなく、メモリも動的に割り当てられるようになった。世界的なメモリ価格の高騰や供給不足が続く中、メモリを効率よく使えることは大きなコスト削減につながり、ビジネス面での価値が高い。小規模な構成から始め、必要に応じて段階的に増やす柔軟な運用も可能になる。
2つ目は、「光ケーブル接続によるスケーリング距離の延長」だ。旧モデルのV1.1はメタルケーブルを使っていたため、ボックスとサーバの距離を2m以内に抑える必要があり、ラック内でのリソース共有に限られていた。一方で、V2は光ケーブルに変更したことで、最長30mまで離せる。ラックを飛び出し、フロア単位での効率化が可能になった。
3つ目は「未使用デバイスの電源オフ機能」だ。V1.1では、プールされたGPUやSSDの非稼働分がアイドル状態になって電力を消費していたが、V2ではスロット単位で電源をオンオフできる。省エネと運用コストの削減に効果的なだけでなく、稼働中のシステムを止めずに故障デバイスを交換できるため、可用性を大きく向上させる。
こうしてPRIMERGY CDIはV2となり、オンプレミスでもクラウドと同様な「必要なときに必要なリソースを必要な場所へ」の実現に近づく画期的なプラットフォームへ進化した。
業界に先駆けて実現した製品だからこそ、
使いやすさにこだわった
「30TBほどのメモリプールを40台以上のサーバで共有でき、さらには高速ストレージとしても使えるようになります」と話すのは、エフサステクノロジーズ 先端技術開発統括部の阿部真樹氏だ。課題となっていたリソースの無駄を解消し、少ない台数で従前と同等のパフォーマンスを実現できる。仮想マシンの収容力も向上する。
製品企画を担当した先端技術開発統括部の劉杰氏は「ピーク時の需要に合わせてリソースを確保すると、平常時はその6~7割が使われず、初期投資が膨らみます。PRIMERGY CDIなら、ワークロードに応じて、メモリプールから必要な容量をサーバに再割り当てできるほか、デバイス単位の電源管理にも対応。限られた資源を効率化し、電力と運用コストを同時に削減できます」と語る。
CXLメモリプーリングは新たな試みで、技術的な経験値もエコシステムも十分ではなかった。そのため、米Liqid Inc.、米Intel Corporation、米Advanced Micro Devices, Inc.(AMD)、米Red Hat、独SUSEなどと連携し、PoC(概念実証)を重ね、国際イベントや展示会で成果を発信しながら賛同者を増やし、エコシステムを構築した。
ソフトウェアの開発を担当した先端技術開発統括部の岩間大和氏は「ハードウェアの仕様が固まらない中で、ソフトウェア開発を一から進めました」と振り返る。世界標準の動向を追いながら使い方を推測して開発を進め、ハードウェアが更新されるたびに調整を加える複雑な開発となった。「OSへの対応に加え、既存のCLIバージョンのエンハンス開発と並行して、ユーザーが操作するランチャー(GUI)の新規開発にも注力しました」と岩間氏は説明する。新技術を搭載した製品だからこそ、「触りづらい」という印象をなくし、誰にでも扱いやすい環境にすることを目指した。
そのため、動作の検証環境もゼロから構築した。先端技術開発統括部の酒井洋輔氏は「これまで以上に、お客様の実際の使用環境を意識して作りました」と語る。開発が進むにつれてソフトウェアの規模が拡大していくため、人手を増やさずに管理、運用、開発、テストを回すことが課題となった。ハードウェアの準備や設定を自動化し、テストはCI/CD※1で自動的かつ継続的に実行できるようにした。「最新の開発手法を取り入れ、環境をコードで管理することで、誰が実行しても同じ結果が得られるようにしました」と酒井氏は話す。属人的な管理を徹底的に排し、限られたリソースを開発に最大限に生かせる体制を構築した。
※1:ソフトウェアのビルドやテスト、配布などの開発工程を自動化し、継続的に実行する仕組み
CDIは企業の競争力を支える
中核的な技術になる
PRIMERGY CDIはPRIMERGYシリーズの重要な製品だ。開発陣は、最先端技術の実装に挑戦しながらも安心、安全、高品質というブランドイメージを損なわないことにも細心の注意を払った。
「PRIMERGYとしての使い勝手や安定性、信頼性を確保するため、検証基準は既存のPRIMERGYサーバと同じにしています」と阿部氏は語る。お客様はPRIMERGYシリーズに「国産サーバ」としての安定性と可用性を期待している。スロット単位で電源を管理し、システムを止めずにデバイスを交換できる仕様も、そうした要求に応える大きなポイントになっている。
品質へのこだわりは、パートナー企業との協業でも発揮された。CXLメモリプーリングを実現するには、Liqid Inc.との連携が重要な課題となった。劉氏は「Liqid Inc.には、最先端の技術をいち早く取り入れるカルチャーがあります。私たちはパフォーマンスと高可用性が同時に求められる環境を前提に安定性と品質を重視し、毎週のように『ここまで実現してほしい』『国産サーバとしての高信頼を実現したい』などと訴え、品質を作り込んでもらいました」と振り返る。PRIMERGYのブランドを守るため、Liqid Inc.との技術仕様や品質要件の擦り合わせに力を注いだ。
その姿勢は、機能の継承にも及ぶ。岩間氏は「V1.1のユーザーがV2へ移行しても、全ての機能とAPIをそのまま使える一貫性にこだわりました。全ての機能と仕様を継承できるよう、Liqid Inc.と丁寧に協調しました」と話す。ブランドの信頼性を損なわずに新しい機能を提供するための体制を作った。
PRIMERGY CDIの進化は止まらない。
「次は、複数のサーバが同じメモリ領域を直接共有できる『メモリシェアリング』を目指します」(劉氏)。
これが実現すれば、高速メモリをストレージのように使い、大規模なデータベースで高速なアクセスと処理が可能になる。従来はサーバ間でデータを渡す際、必ずCPU経由のコピーが必要だった。複数のサーバが同じメモリに直接アクセスできるようになれば、そのコピーが不要になり、レイテンシーが低減し、スループットが大幅に向上する。複数サーバが同じデータを重複して保持する必要もない。
「お客様に実際に使っていただくことで、私たちだけでは気づけない課題や、より使いやすくするための要件が見えてきます。そうした声を取り入れ、開発をさらに高度化していきます」(阿部氏)。
Platform Solution Lab(東京都大田区)には、PRIMERGY CDI V2の実機が展示されている。実機を使った動作検証も可能だ。2026年度からは機材の貸し出しもスタートし、顧客環境でテストできるようになる。
PRIMERGY CDI V2は、強固なエコシステムの構築、最新の開発環境、そして開発陣の努力から生まれた。世界に先駆けた製品化は、日本の技術力の優位性を改めて示す事例でもある。AI活用の重要性が増す中で、同製品は企業の課題解決を支える基盤として、社会課題の解決にもつながる可能性を秘めている。
