下水道の未来を支える技術が集結! 下水道展’26東京

日本IBM

データをAIと組み合わせ、インフラを“最適化”する

8月の「下水道展'26」スペシャルセミナーに登壇する日本IBMの村澤賢一氏。社会インフラを支えてきた同社は、なぜ今、下水道インフラの維持管理に取り組むのか。その考えと展望を聞いた。

115年の「黒子」が下水道に向き合う理由

のののの氏

日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部 エコシステム共創本部長
村澤賢一

profile

PwCコンサルティングに新卒入社後、2002年のIBMによるPwCコンサルティング部門買収に伴いIBM入社。コンサルティング事業部門でERPの導入や業務効率化を手がけた後、2017年よりソフトウェア・製品統括部門に移り、サステナビリティ、IoT、AIを活用したソフトウェア事業を統括。現在はテクノロジー事業本部エコシステム共創本部長として、ビジネスパートナーとの連携による新たな付加価値創出を推進する。

 金融、電力、医療、航空――止めることが許されない社会インフラを、メインフレームの時代からAI、そして量子コンピューターへと世代を超えて支え続けてきた日本IBM。同社は自らの役割を「黒子」と位置付け、その知見を下水道インフラの維持管理にも生かそうとしている。

 「社会インフラが高齢化してきている中で、いかに効率よく、高い品質で次世代につないでいくのか。そこでのITやデジタル技術のあり方も、根本的に変わってきています」と日本IBMの村澤賢一氏は語る。

 セミナーで共に登壇するインフロニア・ホールディングスは、私たちのお客様であり、ビジネス・パートナー様だ。共創のきっかけは、愛知県の道路コンセッション事業へのシステム提供から始まった。コンセッション対象資産の管理から保守・保全の計画立案・実行まで、事業のコアを支えるシステムとして採用されたのが同社のアセット管理製品「IBM Maximo Application Suite(以下、Maximo、マキシモ)」だ。

「Maximo」が解くバラバラ情報の呪縛

 IBMが提供するMaximoは、資産情報の管理、点検・保全の履歴、作業計画から実行履歴まで、これまでバラバラに存在していた情報を一元管理するシステムだ。元々は原子力発電所の保守管理のために生まれたソフトウェアだが、現在は日本の大手電力会社をはじめ、石油・ガス、製造業、さらにはテーマパークや今年はNASA(アメリカ航空宇宙局)にまでその適用が広がっている。水道・下水道分野では、今回連携するインフロニアが日本のトップランナーだという。

 下水道インフラの維持管理において、このシステムを導入する意義は、単に紙の台帳を電子化することではない。「集約された情報を使って、より効率的なメンテナンスを考えられるようになる。さらに、リスクの高いところを先手で増強していくという判断にも使える」と村澤氏。埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故のような事例に備えるためにも、周辺の道路や地下埋設物の工事などの情報をインフラの維持管理情報と紐づけることで、リスク査定の精度を上げることができる。

 種々のデータを集めてAIと組み合わせることによって、下水道インフラを“最適化”できる可能性もあるという。近年はゲリラ豪雨が頻発しており、下水道管内の圧力上昇によってマンホールのふたが飛ぶといった事故も起きている。「下水インフラ全体を都市圏・地域単位で捉え、どこにキャパシティ上の破綻が起きるかをセンサーデータと組み合わせて未然に予測し、設備増強を図るといった、AIを活用したインフラの“最適化”も可能だと考えています」と村澤氏は話す。

村澤賢一氏

 だが、そこには大きな壁がある。「自治体の多くはいまだに紙やExcelで業務をされています。AIを活用しようにも、肝心のデータが蓄積されていないという状況です」。AIが学習するためのデータがなければ、AIファーストの未来は絵に描いた餅で終わる。Maximoの導入はそのデータ蓄積の「器」をつくることでもある。

AIファーストへの「つなぎ」をどう設計するか

 IBMが今年から推進するコンセプトが「AI+(AIファースト)」だ。従来のAIが「人が主体の業務をAIが支援する」ものだったとすれば、AIファーストは「AIが主導して業務を管理し、人間は監督・承認に専念する」という役割の逆転を目指す。複数のAIエージェントが情報を集約し、人間が判断できる形で提示してくれる世界だ。

村澤賢一氏

 「センサーデータの異常をAIが検知して、過去の対応事例を提示してくれる。熟練者がいなくても、昔の知恵がAIを通じて引き出せる。人手不足と技術継承という二つの課題を同時に解決できる可能性がある」と村澤氏は言う。ただし、それを実現するための前提として、「必要にして十分なデータをいかに効率よく集めるか」が問われる。AIファーストの未来へ向かうプロセスをどう設計するか——それがセミナーで語られる内容の核心になる。

 IBMが掲げるもう一つのキーワードが「オープンテクノロジー」だ。自社仕様への囲い込みではなく、異業種・同業他社とも連携しながら下水道保全管理のプラットフォームをともに構築していく。「競争とオープン、その両立の中で社会を良くしていく」——村澤氏が今回のスペシャルセミナーで参加者との交流に期待するのも、そういう思いがあるからだ。

村澤賢一氏

下水道展’26東京 スペシャルセミナー

「インフラDXが拓く下水道の未来」

日時:
8月5日(水) 14:30-15:30(予定)
会場:
東京ビッグサイト 会議棟 レセプションホールB
登壇者:
インフロニア・ホールディングス株式会社 執行役付(総合インフラサービス担当) 兼 水ing株式会社 代表取締役副社長 大塚淳氏
燈(あかり)株式会社 取締役COO 石川斉彬氏
日本アイ・ビー・エム株式会社 執行役員 テクノロジー事業本部 エコシステム共創本部長 村澤賢一氏
モデレーター:
日経BP 総合研究所 上席研究員 野中賢

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