9割を超える自治体システムの標準化を
期限内に完遂
全国の自治体では、少子高齢化の影響を受けた職員数の減少により、行政サービスの持続的な提供が困難になりつつある。この状況を打開すべく、国が進める大規模な行政DX施策の1つが、自治体情報システムの標準化・共通化である。
国が定めた標準仕様書に基づき、住民基本台帳や税、福祉、介護、戸籍といった基幹業務システムを共通化する。自治体ごとに個別最適化されてきた基幹業務システムを、標準仕様に準拠したシステムへ移行することで、制度改正への対応負荷の軽減や運用の効率化、住民サービス向上につなげる狙いがある。2025年度までにガバメントクラウドを活用した標準システムへ移行することが目標として掲げられた。
この取り組みにおいて、大きな存在感を示しているのが日立システムズである。
特筆すべきは取り組みの進捗だ。同社が支援を担う自治体は約540団体にのぼり、そのうち477団体の移行を2025年度末までに完了している。また、内訳を見てみると、移行対象とした約4500システム中の約4200システム、実に93%超の標準化を終えている。ガバメントクラウドへのリフト(移行)については、全体の98%を完了済みだ。残る自治体システムは、様々な外的要因により特定移行支援団体になったケースがほとんどであり、同社は自治体それぞれの判断・要望を尊重し、状況に応じた柔軟な対応を続けている。
強みは「ADWORLD」と
グループ・パートナー総力の顧客支援体制
全国で大規模な移行対応が進む中、なぜ同社はここまでスムーズな自治体システムの標準化を実現できたのか。
株式会社日立システムズ
公共情報サービス第一事業部
公共システム第一本部
ガバメントクラウド推進センタ
センタ長
松本 剛知氏
取り組みを支えたのは、同社が自治体向けに提供している基盤ソリューション「ADWORLD」である。住民基本台帳をはじめ税や福祉、介護、戸籍など、自治体の基幹業務を幅広くカバーする統合パッケージだ。
「ADWORLDの強みは導入形態の幅広さにあります。小さな町村から中核市クラスの大規模自治体まで、1つのパッケージで対応できます。すべての業務を一体的に、オールインワンで導入するケースだけでなく、必要な業務単位で導入することも可能です。今後の自治体共同利用モデルの運用も視野に入れながら、標準化後の運用最適化に向けた支援を強化していきたいと考えています」と同社の松本 剛知氏は説明する。
もっとも、今回の取り組みはシステム標準化が前提のため、パッケージの機能差で他社差別化を図ることは難しい。そこで同社が重視してきたのが「現場の声を素早く吸収する力」と「やり切る力」である。
株式会社日立システムズ
公共・社会統括本部
公共・社会事業推進本部
自治体システム標準化プロジェクト推進部
担当部長
糠 美知代氏
「当社の最大の強みは、行政の現場を支えるSE(システムエンジニア)の力にあります。それを最大化するために、標準化とクラウド化、それぞれの統括組織を早い段階で設置して、全体を俯瞰・サポートしながら進めました」と同社の糠 美知代氏は語る。
具体的には、様々な組織が連携することで、現行システムの状況整理や移行方針の検討、システム構築、運用支援までを一貫して支える体制を整えた。SEは社内だけでも400人以上、グループ会社やビジネスパートナーまで含めると約2700人をそろえ、多様な支援策を展開したという。
「特に大きな成果を生んだ施策が、業務ごとのファーストユーザー支援です」と糠氏は続ける。自治体システム標準化の対象となる20業務は、それぞれ業務特性や移行時の論点が異なる。そのためADWORLDでは、単に特定の団体を重点支援するのではなく、各業務において標準化対応に初めて取り組む顧客を“ファーストユーザー”と位置付け、稼働の3~4カ月前から連携し重点的に支援した。
支援に当たっては、自治体職員との窓口を担うフロントSEを中心に、開発部署やビジネスパートナーが密に連携。移行の過程で顕在化した懸案事項や課題、疑問点を丁寧に洗い出し、導入手順や支援ツールの改善につなげたという。こうした取り組みにより、ファーストユーザーで得られた知見を後続の移行団体へ展開し、標準化シフトおよびガバメントクラウドへのリフトをより円滑に進めることができた。
また、クラウド移行のフェーズでは、フロントSEやパートナーが安心して取り組めるよう、統括組織が前面に立つ新たな支援策を用意。全体を俯瞰しながら、最適なバランスで推進体制を整えた。「日立システムズおよびグループ会社、ビジネスパートナーが組織をまたいで1つのチームとして連携した体制を構築できたことが、期限内にほとんどのお客様システムの標準化と移行を完遂できた最大の理由だと考えています」と糠氏は強調する(図)。
標準化したその先で、
どのような価値を生むかが重要
また、自治体システムは標準化やクラウド化それ自体が「ゴール」ではない。その先でどのような価値を生むかが重要であり、日立システムズはそこに向けた伴走支援も行っている。
先行事例の1つが奈良市との取り組みだ。AWS(アマゾン ウェブ サービス)と共同で自治体三層分離(境界防御型)の一番内側に位置する個人番号利用事務系領域の業務における生成AI活用を推進している。
「奈良市様は、少子高齢化に伴う深刻な働き手不足を背景に、AIによる業務改革を不可避の課題と位置付けています。従来は主にインターネット系システムでAIを活用することで業務効率化を図ってきましたが、より機密性の高い情報を扱う個人番号利用事務系システムは、外部と遮断された環境ゆえにAIを利用できない“空白地帯”となっていました」(松本氏)
そこで奈良市は日立システムズ、AWSと共に、機密情報をセキュアに扱うAI活用の仕組みを構築し、検証を開始した。例えば特定保健指導では、面談記録の文字起こしや報告書の作成を自動化することで、面談記録作成における有用性と将来的な効率化を確認した。
さらに今後、日立システムズは、ガバメントクラウド上に生成AI環境を構築して他自治体へ提案していくことを構想している。仮に奈良市などの先行事例をベースにした仕組みを横展開できれば、各自治体のAI活用のハードルを大きく下げられるだろう。ADWORLDが保有する様々な行政データとAIを接続し、分析・活用できるようになれば、より大きな付加価値を生むことが可能になるはずだ。
「生成AIの行政利用をめぐる国の方針やガイドラインの動向を踏まえながら、自治体が安心して活用できるソリューションとして具体化していきたいと考えています」と松本氏は述べる。
共同BPOで
自治体DXの次章を切り拓く
一方、自治体情報システムの標準化・共通化においては多くの自治体が想定外の課題に苦慮している。それがコスト増だ。
前述した通り、自治体システム標準化の取り組みでは運用コスト適性化を目標としていたが、ほとんどの自治体にとって、この目標の実現はなお継続的な課題となっている。「標準化・ガバメントクラウド移行が進むにつれ、移行後に発生するガバメントクラウド利用料を含めた運用コストの負担が、自治体の大きな課題として浮かび上がっています」と松本氏は話す。
そうした中、日立システムズは、ガバメントクラウド利用料(CSP※利用料)の最適化に向けた支援を進めている。利用状況や構成情報を分析し、国が示すコスト最適化ガイドなどの観点も踏まえながら、リソース構成や設定内容の見直し余地を整理。必要に応じて構成変更まで支援することで、利用料の最適化を具体的に進めるという。
こうした取り組みに加え、さらなるコスト最適化施策として注目しているのが「自治体共同利用モデル」への移行である。システムが標準化されたとはいえ、実際の業務運用は自治体ごとに異なる。そこでシステムの運用形態や人口規模が比較的近い自治体をグループ化し、業務プロセスの標準化を進めることで、共同BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の実現を図る。「自治体共同利用モデルによって、お客様が継続的に直面する運用コストの課題解決にも貢献できると考えています」と松本氏は言う。
自治体システムの標準化・共通化は、それぞれの課題を1つずつ解決しながら、地道に継続する必要がある取り組みといえる。システムを「標準化して終わり」「クラウドに移行して終わり」ではなく、データやAIを駆使したより効率的な行政運営、便利で手厚い住民サービスなどを実現することが、あらゆる自治体に求められるだろう。
多くの自治体の標準化を期限内に完遂した日立システムズは、その「実行力」を大きな強みとして、これからも自治体DXに伴走していく構えだ。
※ CSP(Cloud Service Provider):クラウドサービス事業者
株式会社日立システムズ
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