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関連システム数40超、最大1000人規模の開発をわずか1年半で完遂 柳 真治 氏 「Olive」を支えた日本総研の実装力とプロジェクトマネジメント

リリースから3年余りが経過し、キャッシュカードとクレジットカードの機能を一体化する画期的なサービスとして定着したSMBCグループの「Olive(オリーブ)」。日本総合研究所(以下、日本総研)はその企画構想の段階からプロジェクトに参画し、わずか1年半でサービスを支えるシステムを開発した。ITの技術力のみならず、金融知見も豊富な日本総研だからこそ実現できた「Olive」の開発秘話を同社取締役兼専務執行役員の柳真治氏に聞いた。

銀行・カード会社と対等な関係で参画した「Olive」プロジェクトに最強の布陣を投入

1枚のカードで、クレジットやデビット、ポイントでも支払いができる。そんな「フレキシブルペイ」を実現し、日本のペイメントサービスに革命を起こしたSMBCグループの「Olive」。

2023年3月のリリースから3年余りで800万口座以上が開設されるほどの人気を博し、その利便性に優れたサービスは、公益社団法人企業情報化協会(IT協会)による2023年度の「IT優秀賞」(オープンイノベーション領域)、同協会が優秀なSE(システムエンジニア)を表彰する「Super SE 100人衆」、公益財団法人日本デザイン振興会の2023年度の「グッドデザイン賞」など、数多くの表彰を受けている。

SMBCグループの個人向け総合金融デジタルサービス『Olive』

SMBCグループの個人向け総合金融デジタルサービスとして、2023年3月にリリースされた「Olive」。キャッシュカードとクレジットカードの機能を一体化し、様々な支払い方法を簡単に切り替えられる「フレキシブルペイ」と、モバイルアプリで銀行・証券・ファイナンス・保険など複数の「サービス」を利用できる機能を実装。Vポイントも活用することで、「便利、お得、安心・安全」の機能がパッケージ化されている

「銀行口座とクレジットカード、デビットカードのほか、ポイント払いも選択できるようにし、アプリを使えば支払い方法を簡単に切り替えられることが評価されました。リリース以降も、外部の家計・資産管理アプリやスマートフォン決済アプリなどのサービスと次々に連携するなど、利便性は年を追うごとに高まっています」

このように語るのは、「Olive」プロジェクトに企画構想の段階から参画し、システム開発とプロジェクトマネジメントを統括した、日本総研の取締役で専務執行役員の柳真治氏である。

柳 真治 氏

日本総合研究所取締役 兼 専務執行役員
三井住友フィナンシャルグループ常務執行役員グループCTO

柳 真治 氏

2018年に三井住友銀行のデータマネジメント部長、2021年に日本総研の執行役員 チャネルシステム本部長としてOliveのシステム開発を統括。常務執行役員 チャネルシステム本部長を経て、2023年に常務執行役員 チャネルシステム本部長兼技術統括部長を歴任。現在は、SMBCグループ全体の技術戦略を統括・推進するグループCTOと、グループの事業戦略をITで牽引する日本総研の専務執行役員を兼務している。

日本総研が三井住友銀行、三井住友カードと共に「Olive」の企画に着手したのは、2020年のこと。当時はコロナ禍の真っ最中で店頭での取引が減少し、キャッシュレスを含む非対面取引の需要、すなわちデジタル化のニーズが高まっていた。そうした時代の変化に対応し、銀行やカードなど、複数の金融機能を持つSMBCグループならではの強みを生かして、これまでにないキャッシュレスサービスを提供しようと考えたのが、プロジェクトの出発点だったという。

「国内の銀行口座開設でインターネット銀行のシェアが5割に迫っていたことも、アプリを使った新サービスを検討するきっかけの一つとなりました。三井住友銀行には実店舗を持つ強みがあるので、バーチャル店舗(アプリ)とのハイブリッド運用にすれば、ネット銀行にはない価値が提供できるはずだと考えたのです」と柳氏は明かす。

一般に新サービスの開発プロジェクトでは、システムを開発するベンダーやSIerは請負業者の立場となりがちだ。しかし、SMBCグループの一員として三井住友銀行や三井住友カードの基幹システムを長年にわたり開発・運用してきた日本総研は、両社と対等な関係でプロジェクトに参画した。銀行とカード会社がサービス内容などのビジネス面で設計を行い、日本総研は両社が目指すサービスを形にするため、必要なシステムの開発や統合、セキュリティ環境の構築などを担うという連携である。

「当社には三井住友銀行と三井住友カードのシステム開発に長く携わり、技術面だけでなく、両社の事業やサービスの内容も知り尽くした優秀なエンジニアが多数在籍しています。そんな経験豊富なエンジニアたちを結集して、最強の布陣を整えました」(柳氏)

限られた時間で40超のシステムを横断的に開発した高度なプロジェクトマネジメント

3社によるプロジェクトチームは、「Olive」の企画構想において「SMBCグループ各社のサービスをデジタルでつなげ、顧客により一層快適な金融体験を提供する」というコンセプトを掲げた。

サービスのシームレスな連携を図る上で不可欠となるのは、銀行口座とカードで分かれているIDの統合である。これを実現するため、1つのアプリにログインすれば両方の残高や利用履歴などが確認できる「共通ID」の運用システムを新規で開発した。さらに、銀行とカード会社の垣根を越えたサービスを提供するには、厳重なセキュリティ環境が求められる。ここでも、両社のセキュリティ環境の構築・運用に長年携わってきた日本総研のカバレッジの広さと、エンジニアが持つ豊富な金融ドメイン知識が生かされた。

「サービスのリリースまで時間が限られていたので、コストを抑えながらスピーディーに開発できるクラウドをフル活用しました。日本総研にはクラウド構築のノウハウを持つ人材がそろっています。また、経験が浅いエンジニアにも実践的なリスキリングの機会を提供するため開発にアサインしました。社員の経験やスキルを底上げする良い機会になったと思っています」と柳氏は評価する。

日本総研は「Olive」プロジェクトにおいて、技術面で貢献するだけでなく、システム開発のための組織体制づくりやプロジェクトマネジメントでも大きな役割を果たしている。

「『Olive』プロジェクトに与えられた時間は、企画構想からリリースまでで約2年半。そのうちシステム開発は、要件定義から試行期間も含めて1年半と非常に短いものでした。関連するシステムは40を超え、それらを短期間で横断的に開発するためには複雑で高度なマネジメントが要求されました」と柳氏は振り返る。

とくに苦労したのが、要件の変化に対応しながら開発体制を調整する工程であったという。一般にシステム開発のプロジェクトでは、事前に体制を固めてから作業を進める。しかし、「Olive」に関しては、開発途中で「より良いサービスを追加したい」という要望が出され、意見を整理する中で新たなサブプロジェクトが立ち上がることもあった。

「新しい担当者をアサインする必要があり、人材の割り振りには非常に苦労しました。サブプロジェクトは開発規模がまちまちなので、すべてのプロジェクトを一体で進めていくことも難しかったですね。事務局メンバーが全体にしっかり目配りし、情報共有しながら進捗をコントロールするとともに、開発現場のモチベーションアップも図りました」と柳氏は明かす。

ピーク時には、事業会社を含めて90部署、1000人を超える規模のメンバーがアサインされたというから、その管理の難しさは並大抵ではなかったはずだ。

しかし、「1つのサブプロジェクトが遅れている場合は、他のメンバーが自発的に応援するといったように、当社には持ち場を越えてエンジニア同士が協力し合うカルチャーが根付いています。彼らが自律的に動いてくれたおかげで、限られた時間の中でも高い品質を保ちながら開発をやり遂げることができました。これこそが、日本総研の実装力だと思います」と、柳氏は誇りを込めて語る。

「Olive」プロジェクトでは、個の力を最大限に発揮させるため、スタッフに裁量を持たせ、自由度を高くする環境づくりやチームづくりにも取り組んだという。そうしたマネジメントの配慮も、1年半という短い期間でプロジェクトを完遂させる力を生んだのだろう。

「Olive」で培った経験を次世代へつなぐ人材育成の取り組み

数多くのシステム開発を手掛けてきた日本総研にとっても、「Olive」は難易度の高い大規模開発プロジェクトであった。それでも実装を遂げられたのは、若手のころから金融やITの知見を蓄え、システム開発の技術力やプロジェクトマネジメントの経験を積み上げた人材がそろっているからだ。

柳氏は次のように語る。「『Olive』プロジェクトでは、自分たちでシステムを開発する内製経験も積むことができ、社員のスキルや能力を高める良い機会になりました。当社は、ものづくりの経験とスキルを身に付けた人材の育成を目指して、2023年に『エンジニアリングセンター』という社内の教育機関を立ち上げています。今後も同センターでの実践などを通じて、『Olive』プロジェクトで活躍した先輩たちのような開発リーダーやプロジェクトマネジャーとなれる人材を輩出していきたいですね」。

「Olive」の成功は、SMBCグループの総合力は言うまでもなく、日本総研の技術力や大規模開発プロジェクトをマネジメントするスキル、さらには、金融ドメイン知識の広さや深さといった実力を証明する機会となった。

「今後も激変する金融ITやフィンテックのトレンドを捉えながら、AI駆動開発などの技術実装にも注力し、SMBCグループの中核IT企業として『金融×IT』の未来をデジタルで切り拓いていきます。ぜひご期待ください」(柳氏)

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