全固体電池の社会実装を支える存在にLeader Materialが独自技術で挑む安全革命

技術投資の判断を地政学が左右する時代に

 国際地政学がかつてないほど複雑化する現在、企業はもはや市場規模や価格競争力だけを基準に投資判断を下すことができなくなっている。サプライチェーンの分断リスク、国家間競争の力学、戦略物資の確保など、産業そのものが国際情勢の影響を直接受ける時代において、技術開発そのものが「地政学的な選択」へと変容しつつある。各企業が自らの技術的強みを見極め、どの領域に資源を集中し、どのポジションで産業に関与するのかを明確化することこそが、持続的な競争優位を確保するための核心となる。

 こうした環境の変化をもっとも象徴的に体現している技術領域の一つが、全固体電池である。全固体電池は、電解質を含むすべての構成要素が固体材料で形成され、液漏れがなく発火リスクも低い。電解液分解が起こらないため動作温度範囲が広く、電極材料の選択肢も拡大することから高いエネルギー密度を実現しやすい。これらの特徴は単なる二次電池の性能向上にとどまらず、エネルギー・モビリティ・素材産業にまたがるサプライチェーンそのものを再編しうる“地政学的インパクト”を内包している。

外装材

全固体電池はこれまでの電池のサプライチェーンを大きく変革する可能性がある。
写真は部材の中でも“カギ”を握ると言われている外装材

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産業秩序を再編する起点となる全固体電池

 とくに電気自動車(EV)領域では、全固体電池は次世代競争の中核技術として各国企業の戦略投資の焦点に位置づけられている。日本ではトヨタ自動車と出光興産が2027~2028年に量産開始を計画し、米国ではQuantumScapeがドイツVolkswagen傘下の電池メーカーと2026年の量産を視野に提携を進めている。新車販売で世界首位となった中国では、寧徳時代新能源科技(CATL)や比亜迪(BYD)が、「全固体電池はまだ成熟していない」と慎重な見方を示す一方で、政策による後押しのもとスタートアップが台頭し、将来の主導権確保に向けた布石を打ち続けている。

 全固体電池の普及時期には様々な見方があるが、その性能特性を踏まえれば、実用化とともに需要が急拡大する可能性は高い。かつてデジタルカメラの普及がフィルム産業の急速な衰退をもたらしたように、全固体電池の社会実装が電池産業のみならず関連産業のヒエラルキーを一気に塗り替えるシナリオも十分に想定される。全固体電池は単なる次世代技術ではなく、“地政学的競争と産業構造変化が交差する分岐点”として位置づけられるべき存在といえる。

勝敗を分けるのは内部材料ではなく外装材

Leader Material工場

Leader Materialの工場の全景

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 中国浙江省に本社を構える锂盾新能源材料(Leader Material)は、大きな市場が見込まれる全固体電池産業へ関与するべく、積極的に技術開発を進めている。Leader Materialは、リチウムイオン電池の外装材として使用されるアルミラミネートフィルムのトップクラスのメーカーだ。創業から10年と社歴は若いが、年間1億平方メートルのアルミラミネートフィルムを生産し、中国国内の電池メーカーに供給している。

 Leader Materialが手掛ける外装材は、全固体電池においては電解質と並ぶ重要な要素の一つである。固体同士である電解質と電極を安定して密着させるには、適度で均一な圧力を外側から掛けなくてはならない。充放電を繰り返すことによる電極の体積変化を、吸収する機能も備える必要がある。加えて重要なのは、全固体電池の電解質として有力な候補の一つである硫化物への対応だ。高いイオン伝導性などを特徴に硫化物系材料は電解質として有力だが、化学反応により性能劣化を置きやすいという点も考慮しなくてはならない。

最新の外装材

Leader Materialが全固体電池用に開発した最新の外装材

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 これらの要件をすべて満たす必要のある全固体電池の外装材は、もはや単なる「外箱」ではない。全固体電池の社会実装のカギを握る部材なのである。これまで、電池メーカーは電解質や電極材料の内部材料を中心に研究を進めてきた。一方で、固体電池が本格的に社会実装する段階では、勝敗を分けるカギは外装材となり、外装材にいち早く取り組んだメーカーが勝ち組となる可能性がある。

独自技術で安全性能を担保するLeader Material

 そのダークホースとして注目すべきがLeader Materialなのだ。アルミラミネートフィルムで多くの実績を持つLeader Materialは、ステンレス材料の活用や、二層構造の金属膜といった新たな外装材の開発をロードマップに描いており、全固体電池向けに供給すべく着々と開発を進めている。

「Microlayer」の原理

「Microlayer」の原理。マイクロ波を利用して複数の材料を強固に接合できるのが最大の特徴だ

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 そのベースとなるのは、「Microlayer」と呼ばれる独自の膜接合技術だ。外装材は、複数のフィルム系材料を重ねることで求められる要件を達成するが、それらの材料は強固に、かつ剥がれにくく接合することが求められる。Leader Materialはマイクロ波を利用した独自プロセスを開発し、従来技術と比べて大幅な接合強度の向上を実現した。このMicrolayer技術を進化させ、全固体電池向け外装材に要求される様々な要件に関しても適応させていくことを考えている。

 さらにLeader Materialは、外装材にとどまらず、電解質や電極といった内部材料市場への参入も視野に入れている。全固体電池において出力性能を確保するためには、電解質と電極の安定した接合が必要であり、この領域もLeader Materialが得意とする部分だ。内部に関しても材料選定から接合プロセスまでを確立できれば、外装材を含めて全固体電池に必要な主要材料を包括的に提供することが可能になる。

 このような一貫したプロセスは、もちろんLeader Materialが独自で確立するのは難しい。そこには、材料分野で多くのノウハウを持つ日本企業との協業も必要になってくるだろう。逆に言えば、日本企業は今後の全固体電池市場で、外装材に対して独自の技術を持つLeader Materialに着目すべきだともいえる。芽吹き始めた全固体電池市場にいち早く踏み出すためにも、同社の動向は注目に値する。

日中融合が拓く全固体電池の新局面
锂盾新能源材料(Leader Material)夏文進董事長に聞く

夏文進董事長

 中国は大規模な製造能力を背景にリチウムイオン電池市場で急成長してきた。一方、次世代の全固体電池では、より高度な技術革新が不可欠なのは明確だ。材料面、製造プロセス面で多くのイノベーションを生み出してきた日本との協業が、次の成長には欠かせない。

 これまで日本と中国では異なるルートで産業が成長してきた。応用市場の規模を起点とする「高速検証型ルート」を取る中国と、材料と製造体系の再設計を核とする「エンジニアリング閉環ルート」を取る日本だ。全固体電池ではこの二つを融合させ、単に試作品を出すのではなく、再現可能となる製品を供給することが求められる。

 産業の基盤が変わる際には、長年にわたって重要な工程を磨き上げてきたプレーヤーが台頭することがある。それは過去の歴史から見ても明らかだ。全固体電池市場において、そのプレーヤーになるべく多くの企業が切磋琢磨するであろう。そこに我々も日本企業と協業して参入したい。ただ、我々は自社技術を一方的に売り込みたいわけではない。大量生産の現場で蓄積してきた知見や課題を共有し、日本の企業と共に解決策を探りたいと考えている。

 全固体電池市場は、これから立ち上がっていく。日本企業と協力しながら製品開発を一刻も早く進め、良い製品ができれば速やかに量産体制を整えたい。将来的には、航空宇宙などのより先端領域にも一緒に進出していきたい。

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