ビジネスにおけるAIの役割は、ますます大きくなっている。レノボは「ハイブリッドAI」を掲げ、AIを活用して多種多様なデータを統合・分析し、意思決定に至る一連のプロセスをサポートしている。スポーツテックで磨いた技術とノウハウは、レノボの大きな強み。また、先進的な水冷サーバーは、データセンターの低消費電力化に寄与する。加えて、IT投資のCAPEXからOPEXへのシフトを支援するサービスも用意している。
――近年、レノボはスポーツテックに注力しています。どのような狙いからでしょうか。
モータースポーツやサッカーなどの国際的な大会に、テクノロジーパートナーとして参画しています。モータースポーツを例にとると、走行中のマシンからエンジンやタイヤの状態を示す多様なデータを刻々と収集し、自動分析して課題や改善点などを見つける必要があります。そして、ピットに入るタイミング、交換タイヤの種類などを検討します。瞬時の判断が求められることも多く、現場は埃の舞う過酷な環境です。猛暑のときもあれば、酷寒のレースもあります。このような場所にIT機器などを持ち込んで、レースチームをサポートしています。
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社
インフラストラクチャー・ソリューションズ・グループ
代表取締役社長
張 磊(ちょう・らい)氏
――現地にオンプレミス環境を構築するのですか。
ロンドンにあるクラウドも使いますが、極度のリアルタイム性が求められる用途では、オンプレミスのAIサーバーなどを活用します。クラウドとオンプレミスのハイブリッド環境です。スポーツテックでの経験は現状の課題を明らかにし、技術の進化をもたらすとともに、新たなユースケースを見出すためのヒントも得られます。現場で磨いた技術やノウハウは、防塵性や防振性などを含め製品の信頼性・性能を着実に高めています。
――レース中に送られてくる大量のデータを、いかに統合・分析し適切な意思決定につなげるか。多くの企業が同じ課題に直面しています。
企業はクラウド、オンプレミスの環境を使い分けています。また、業務アプリケーションの数も多い。ただ、システム統合は必ずしも必要ではなく、重要なのはデータ統合です。統合されたデータを生かして、いかに競争力を高めるか。企業には、そのための戦略が求められます。その戦略において、AIは重要な役割を担います。
――レノボは「ハイブリッドAI」という考え方を掲げています。
レノボはスマホやPC、サーバー、ストレージなど多様な製品群とサービス群を揃えています。また、企業の中では他社の機器類も動いています。こうしたIT環境全体にAIが組み込まれ、ビジネスをドライブする時代になりました。複雑なIT環境から生成される多様なデータを統合し、AIの分析により有益な知見を得る、そしてビジネスの成長を加速する。それが、私たちの提案するハイブリッドAIです。そこには、企業システムを担う「エンタープライズAI」、スマホやPCなどに組み込まれる「パーソナルAI」などが含まれます。
AI活用は「オンプレミスでの推論」へ
AIコンピューティングの進化に伴い、企業ではオンプレミス環境でAI推論を実行するニーズが高まっている
――クラウドとオンプレミスはハイブリッドAIの一側面ですが、最近の傾向などがあれば教えてください。
オンプレミスでAIを活用するお客様が非常に増えています。設計情報や顧客情報などの重要データをAIで分析するニーズが高まっており、セキュリティの観点から多くの企業でオンプレミスが選ばれています。また、クラウドを実際に使ってみると意外と高コストで、オンプレミスに回帰するケースもあります。
――企業がハイブリッドAI環境を構築する上で、注意すべきポイントはありますか。
従来のITエコシステムでは存在感の薄かったプレイヤーの役割が、ハイブリッドAI環境では大きくなります。例えば、優れた技術を持つAIスタートアップなどです。私たちは次世代を担うプレイヤーを見出し、連携強化を図っています。
――今後、ハイブリッドAIが浸透する中で、企業のCIOには何が求められるでしょうか。
CIOの役割はますます重要になります。従来、多くの企業においてIT部門はコストセンターと見られていましたが、AI時代には価値創出のエンジンになるでしょう。私たちはその際、CIOが「オーケストレーター」の役割を担うと考えています。企業がAIを上手に活用するためには、ビジネス目標や技術、ガバナンス、人材などを整合させ、全体として調和させる必要があります。そのリーダーがCIOです。AIによって、これまで以上に大きな価値を実現できる時代、CIOのビジネス貢献度は大きくなり、その領域も広がることでしょう。
――AIモデルでは「学習」が注目されがちですが、「推論」の重要性についてはどのように見ていますか。
学習は今後とも重要です。学習がなければ、推論もできません。ただ、学習の価値を上回るペースで、推論の価値が高まっていると感じます。これまで推論があまり重視されていなかったのは、そもそも学習という「土台」が十分に形成されていなかったからです。一定の土台が整いつつある中で、企業の関心が推論に集まるのは自然な流れでしょう。
AI推論時代に求められるCIOの役割
AI推論の利用拡大により、企業では分散型インフラへの対応が重要になっている。CIOには全体を統括する役割が求められる
――オンプレミスのAI活用が増えているとのことですが、企業の具体的なニーズについてお聞きします。
特に目立つのは工場などの現場にAIサーバーを設置する動きです。クリーンな環境といえませんし、冷房能力も十分ではない。そんな場所でも十分に機能するAIサーバーを提供することで、当社はお客様のビジネスをサポートしています。
――レノボは長年、水冷技術にも取り組んでいます。
データセンターの運用において、冷却コストは4割前後を占めるとされます。しかも、先進国の中でも日本の電気代は高いです。CPUとGPUの発熱量が増大する中で、冷却エネルギーの抑制は大きな課題です。当社は12年以上前から、水冷技術の研究開発を続けています。その成果が「Lenovo Neptune®」で、CPU/GPUだけでなく、メモリーやボード、電源なども水で冷やす完全水冷のサーバーを実現しているのはレノボだけです。また、化学的に合成した液体ではなく、真水を冷却材として用いるので、排水をそのまま下水に流すことができます。データセンターの低消費電力化が求められる時代ですので、冷却技術は当社の大きな強みです。
AI時代に高まるデータセンターの電力課題
AI活用の拡大に伴い、データセンターの電力需要は増加している。中でも冷却は大きな電力消費要因であり、省電力化が重要になっている
「Lenovo Neptune®」水冷サーバー
レノボ独自の液冷技術「Lenovo Neptune®」を採用した水冷サーバー。ファンレス設計や常温水冷に対応し、AIやHPCなど高負荷な処理環境での運用を支援する
――AIへの取り組みが求められる中で、企業のIT投資は増えそうです。
投資負担を懸念する経営者もいると思います。特に、CAPEXです。そこで、当社はCAPEXからOPEXへのシフトを支援しています。それが「Lenovo TruScale Everything as a Service (XaaS)」です。当社製品のみならず、他社製品を含めすべてのIT機能をサービスとして提供。固定料金なので予算を立てやすく、導入しやすいサービスです。
――最後に、経営者やビジネスパーソンへのメッセージをお願いします。
今後、AI活用の巧拙は企業の将来を左右するでしょう。私たちは日本企業のAIエコシステムづくりを強力に支援するとともに、日本社会におけるAI活用の推進に貢献したい。都市部だけでなく、工場立地の多い地方においても意義のある役割を担いたいと考えています。