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大阪教育大学 みらい教育共創フォーラム2026・教育とICTセミナー2026関西 AI次代を担う教員育成を通じて未来の教育を共創する 協賛講演

AI が問いを返す学びをつくる
教員が子供と向き合う時間を取り戻す

AI が瞬時に答えを返す時代に、教育で問われるのは子供が「考える時間」をどう守るかだ。「Learning Skeleton AI」は、子供たちに「なぜそう考えたのか」と問い返し、個々に合う教材を用意する、答えではなく問いを返す AI を開発。指導案から教材、テストまでをワンタッチの簡単操作で自動生成しながら、教師と児童・生徒の思考を支えている。

北畠 謙太郎 氏
メディア・ファイブLSAI
代表取締役社長

北畠 謙太郎 氏

すぐに答えを出すのではなく
自ら問いを立て判断できるAIへ

AIを教育で使うとき、最も注意が必要なのは、AIが答えを早く出しすぎてしまうことだ。授業の中で子供たちが汎用AIサービスに質問を投げ掛ければ、もっともらしい答えがすぐに返ってくる。確かに便利ではあるが、そのままでは児童・生徒が自ら問いを立てて、根拠を探し、考えを見直す機会が減ってしまう。

教員にとっても同じことが言える。教材や指導案の作成を何も考えずにAIに任せてしまえば、授業を考える力まで弱くなりかねない。

子供たちの学びにAIなどICT環境が入り込んできたこと以外に、学校現場には別の課題もある。教員の日常は忙しい。授業準備に時間がかかって、教員が児童・生徒一人ひとりに合わせた対応を取るのは難しい。学習記録や指導計画の情報は学校内に分散し、AIを使っても確認や修正の作業が残る。

その一方で、自宅などでの学習で児童・生徒はAI で答えを検索することに慣れ、学校での探究学習も「調べて終わり」になりやすい。AIが普及したことで便利さは増したのに、教員の負担と学びの課題は残ったままだ。

当社が教育向けソフトを手がけて今年で33年になる。2000年代初頭から学校にも製品を導入してきたが、機能を増やせば使われるわけではなかった。現場では、チョーク一本で授業をする方が早いこともある。AI時代になって改めて考えた。必要なのは多機能な道具ではなく、迷わずに使えて、しかも教員と子供の思考を支える仕組みではないか。そうした発想から教育向けサービス「Learning Skeleton AI」を開発した。

Learning Skeleton AIの画面は、教師が迷わず使えるシンプルなワンタッチ設計。テストは自動採点され、単元別の正答率・回答時間・難度推移と誤答パターンを分析し、評価とフォロー教材への反映候補を提示する
▲Learning Skeleton AIの画面は、教師が迷わず使えるシンプルなワンタッチ設計。テストは自動採点され、単元別の正答率・回答時間・難度推移と誤答パターンを分析し、評価とフォロー教材への反映候補を提示する

ソクラテス式対話法により
答えではなく問いかけるAI

Learning Skeleton AIを開発する際に、中核に置いたのは答えではなく「問い」を返すAIだ。子供に対して「なぜそう考えたのか」「別の見方はあるか」「その根拠は何か」と問い返し、考える過程を一段ずつ深めていく。これはソクラテス型の対話(ソクラテス式対話法)と呼ばれ、教員が子供に答えを直接教えるのではなく、対話と連続した問いかけを通じて学習者自身に矛盾や無知を気づかせ、深い思考や真理の発見を促す教育手法だ。

教育において重要なのは、正解を早く出す競争ではなく、考え続ける力を育てることだ。対話の深さは学齢に合わせる。Learning Skeleton AI小学校版では4段階で子供の「問う習慣」を育て、中学校版は7段階で反証や前提を疑うところまで進める。高校版は自分の生き方や進路へと問いを広げ、大学版は研究の問いにも接続する。特別支援版は3段階とし、短い言葉や二択などで負担を抑える。全員に同じ深さの問いを投げるのではなく、その子が考え続けられる入口をつくる。

問いはその場では終わらせない。1日、1週間、1カ月、1年、さらに長期へと積み重ね、以前の問いにもう一度向き合う構想だ。年齢や経験が変われば、同じ問いへの答えも変わる。大切なのは、その変化を「正誤」ではなく思考の成長として残すことだ。最終的に目指すのは、AIに答えを求め続けることではなく、AIを使いながら自分で考えられる力を伸ばすことである。

この考え方は、2011年から続けてきた大学との研究もつながっている。大妻女子大学では、学習指導案をAIで作成する授業を通じて、学生から操作性について多くの意見を得た。そこから、複雑な操作を覚えるのではなく、必要な条件を選べば授業づくりが進む形へと設計を変えてきた。

Learning Skeleton AIで目指したのは、正解を早く出すことではなく、「問い」を返して考えを深めるプロセスを支援するAI
▲Learning Skeleton AIで目指したのは、正解を早く出すことではなく、「問い」を返して考えを深めるプロセスを支援するAI

AIが教材を下準備
教員は判断に集中する

Learning Skeleton AIの授業設計機能は、学年、教科、教科書、単元などを選び、ボタンを押すだけで指導案が生成される。そこから学習シート、授業活用シート、オンラインテスト、予習プリント、振り返りへと連鎖する。オンラインテストは受験用URLを発行し、自動採点もできる。生成した内容は教員が編集できる。AIが完成品を押しつけるのではなく、AIが下準備して教員が仕上げる役割分担だ。

さらに、生徒のプロフィールや興味・関心などの静的な情報に、理解度、学習履歴、その日の状態などの動的な情報を組み合わせる。教材の難易度や問い、声かけを一人ひとりの「今日」に合わせるためだ。特に同じ学年でも理解の仕方や必要な支援が大きく異なる特別支援教育では、とりわけ有効性を確かめたいと考えている。

機能は単発では終わらせない。アセスメントで特性や学習状況を捉え、計画を作り、教材を生成し、学習の変化を記録する。その結果から次の支援や教師への改善提案につなげる。授業、記録、振り返り、改善、次の授業という循環を回し、児童生徒だけでなく教師の指導も育てる考え方である。

例えば児童・生徒アセスメントでは、教員のチェック、本人アンケート、能力テストという複数の視点をAIが統合する設計としている。ただし、AIの評価候補をそのまま確定はしない。教員が確認し、必要なら修正して最終判断する。学校では学習履歴だけでなく、健康状態や配慮事項なども扱う。だからこそ、人が判断する仕組みを外してはならない。

情報教育や技術教育、教材開発を専門とする大妻女子大学社会情報学部情報デザイン専攻の山本利一教授との研究では、指導案作成に関する18項目について、教員の「難しさ」の実感を5段階で調査した。Learning Skeleton AIを活用したところ、難しさの平均は3.9から3.1へと約0.8ポイント下がった。一方、教員の発問や声かけはほぼ変わらなかった。AIでは埋めにくい、教員の経験が生きる領域が残るという結果だ。

当社が目指しているのは、大手IT企業と「速く答えるAI」に関して競争することではない。教育においては、すぐ答えを出さないことにも価値がある。AIが授業をするのではなく、問いを返し、教材を準備し、記録を整理する。その分、教員は子供たちの様子を見て、対話し、指導を改善する。AIは教師を置き換えることはない。Learning Skeleton AIは教員が子供と向き合う時間を取り戻すためのAIサービスなのである。

AIが授業をするのではなく、問いを返し、教材を準備し、記録を整理する。その分、教員は子供たちの様子を見て、対話し、指導を改善する時間を確保できるようにする
▲AIが授業をするのではなく、問いを返し、教材を準備し、記録を整理する。その分、教員は子供たちの様子を見て、対話し、指導を改善する時間を確保できるようにする