John Reed
マイクロソフト コーポレーション
マニュファクチャリング&モビリティ インダストリー
ジェネラル マネージャー アジア担当
ジョン リード 氏
ドイツのハノーバーで毎年開催される「ハノーバーメッセ」は世界最大級の産業見本市であり、マイクロソフトは昨年に続いて今年も出展する。人工知能(AI)やロボットへの注目が高まる中で何を示すのか。日本の製造業にとって、注目すべきポイントは何か。アジア市場の製造業と自動車を含むモビリティ領域のソリューション戦略と開拓を担うジョン・リード氏に、マイクロソフトの戦略やテクノロジーの最新動向、日本市場へのアプローチなどについて話を聞いた。
――昨年に続いて今年も「ハノーバーメッセ」に出展されますが、その狙いはどこにあるのでしょうか。またマイクロソフトにおいてハノーバーメッセの位置付けについてもお聞かせください。
ハノーバーメッセは世界最大級の製造業向けイベントであり、日本を含む世界各国の製造業が最新の情報を求めて来場します。マイクロソフトでは製造プロセス、サプライチェーン、さらには従業員の満足度向上などの最新のイノベーションを披露する重要なショーケースとして位置付けています。
そこではマイクロソフトの技術だけではなく、パートナー企業や顧客企業が達成した革新的な成果も紹介しています。今回も具体的な事例を通して、エンジニアリングプロセス、工場における生産ラインなどの戦略的な領域でどうイノベーションを生み出したのかを紹介します。

John Reed
マイクロソフト コーポレーション
マニュファクチャリング&モビリティ インダストリー
ジェネラル マネージャー アジア担当
ジョン リード 氏
――AIを活用した生産性向上やイノベーションの創出へとフェーズが変化しつつある中で、製造業にはどんな課題があるとお考えでしょうか。
大きく2つの課題があります。AIを信頼して活用する文化を醸成することと、ビジネスプロセスを深く理解した上でAIを的確に組み込むことです。マイクロソフトはこれらの課題解決のために、顧客に深く寄り添うことが不可欠だと考えています。顧客と一緒に課題を分析して共通理解を形成し、顧客ごとの個別のロードマップを共同で策定していきます。
――ハノーバーメッセでは製造業の未来像として「Becoming a Frontier Manufacturer」というコンセプトを打ち出します。これはどのような内容なのでしょうか。
製造プロセス、文化、テクノロジーを根本から変革し、事業全体を継続的に改善し続けることができる先進的な製造業になることです。トランスフォーメーションが数年後にもたらす事業への利益と価値を具体化するものです。
マイクロソフトはその実現のために2つの側面からアプローチしていきます。一つはプロセスの再設計やAIの組み込み、従業員とパートナーとの強固な連携など、製造業全体への高いレベルのビジョンの形成です。
もう一つがそのビジョンを達成するための顧客ごとのロードマップの策定です。「製品開発期間の短縮」「生産効率の向上」「サプライチェーンの改善」など顧客が優先したい領域に焦点を当てたものです。例えば、世界の17の工場で製造プロセスを革新したDMG森精機の事例では、Microsoft Azure上にTulipのコンポーザブルプラットフォームを導入し、大きな成果が得られたことが報告されています。
――マイクロソフトが製造業に提供するAIテクノロジーの特徴や優位性はどんなところにあるのでしょうか。
まずカスタム化が可能なオープンな設計であることです。高いカスタマイズ性とオープン性を有しており、多様なAIモデルを統合できる柔軟性を備えています。多くの領域のツールとシームレスに連動できると同時に、信頼性とセキュリティーも最大限に配慮されています。
この技術的な優位性をさらに強化するのが、広範にわたるエコシステムです。開発領域ではエヌビディアやアクセンチュア、サプライチェーン領域ではブルーヨンダーやo9ソリューションズ、営業・マーケティング領域ではアドビやサイトコアといった各分野のリーディングカンパニーと提携しています。
従業員はCopilotを通して既に投資してきた他社のシステムを活用することができ、オープンで柔軟なプラットフォーム上で迅速にイノベーションを推進できます。エンジニアリングやビジネスなどのあらゆる領域で、セキュリティーを担保しながら一貫した操作性を実現し、意思決定を支援して目標達成までの時間を大幅に短縮することができます。
ロードマップを策定する際にはビジネスプロセスを分析し、効果が上がると想定されるところにAIエージェントを組み込み、成果を確認しながら他の領域にも横展開していきます。さらに、AIエージェント同士が事前の権限設定の範囲内で自発的に連携を始めていくといった動きにも発展させることができます。
――どのような点で日本の製造業にベネフィットをもたらすことができるのでしょうか。
従業員をエンパワーすることで、日本の製造業がパイオニアであるリーンやカイゼンといった経営手法をさらに補強することができ、熟練技術者の持つ暗黙知を形式知として活用することができます。
それを実現するために重要なのが、インテリジェントレイヤーとアダプティブ クラウドという2つのアプローチです。インテリジェントレイヤーでは、メールやTeamsでのやり取りなどから人や組織の関係を基にしたコンテキストをベースにし、業務システムやSharePointなどナレッジやデータを統合することで、AIがユーザーのビジネスをより深く理解することを促します。
また、センサーやIoT(モノのインターネット)機器と連携するエッジデバイスとクラウドをハイブリッドな環境で運用し、エッジとクラウド上の業務システムのデータ活用を実現するアダプティブ クラウドによって、現場のデータと中央のデータの整合性を高め、現場の知恵を意思決定や製造プロセス改善に生かすことができます。なお、これまでもハノーバーメッセで多くのお客様におけるアダプティブ クラウド活用例を紹介してきましたが、本年も紹介を行う予定です。

――特に日本の製造業に伝えたいことはどんなことでしょうか。
マイクロソフトは常に顧客の成功に焦点を当てています。顧客の目標とニーズを実現するためにテクノロジーを提供することを使命とし、グローバルでの競争で勝ち抜くために必要なイノベーションの実現をパートナー企業と共に支援しています。
人口減少に直面する日本の製造業には大きな変革が求められていますが、これは大きなチャンスでもあります。人手不足の解消に貢献すると考えられるフィジカルAI※にしても、完全な自動化は不可能です。そこに日本の出番があります。
熟練者の魂ともいえる知見やおもてなしの精神とAIを融合させることで、単なる自動化を超えた価値を創造できる可能性があります。継続的に成長し続けるパイオニアになることで、日本の製造業はさらに発展できるはずですし、マイクロソフトはそのために貢献したいと考えています。
※センサーやカメラ、機械などの物理的デバイスを使ってタスクを遂行するAI