鹿島建設の現場コミュニケーション改革 人と人のコミュニケーションを構築、「窓」の導入が生産性向上を推進

DXによる業務効率化が進む建設現場。一方で、現場の規模は拡大し、拠点も広域に広がっている。その結果顕在化したのが、情報伝達の複雑化だ。そこで鹿島建設は、MUSVIのテレプレゼンスシステム「窓」を導入。遠隔でも自然な意思疎通を図っている。現場の活用を両社に聞いた。

コミュニケーション課題解決へ
現場に「窓」を導入

鹿島建設では、建設現場の生産性向上を目的として、積極的に現場でのデジタル活用や遠隔管理など、さまざまな取り組みを行ってきた。生産性向上と並んで、コロナ禍以降に重要なポイントになったのが「人と人のコミュニケーション」である。鹿島建設 デジタル推進室の國近京輔氏は「ネット会議の増加で対面でのやり取りが減少し、細かいニュアンスなどが伝わりにくくなりました」と課題を語る。「現場も強い危機感を感じています」と同意するのは、同社 羽田アクセス線シールド工事事務所所長の柴田佳彦氏だ。「現場の規模拡大と働き手の減少、人材育成など、課題が複合化する中で、コミュニケーションの重要性はより増しています」と続ける。そのような課題感から導入されたのがMUSVIのテレプレゼンスシステム「窓」である。國近氏には、印象に残っている出来事がある。社内イベントで北海道支店と「窓」を接続したとき、実際に体験した社長から「これは素晴らしい」と声をかけられた。社長だけでなく、伝える、伝わるといった感覚を持つベテラン層ほど評価が高いそうだ。

この「窓」を導入している現場の一つが、羽田アクセス線シールド工事事務所だ。メインオフィスに加え、現場にはサテライトオフィスが3カ所あり、メインとサテライトの移動は車で往復約30分かかる。時間外労働時間の上限規制や働き方改革によって、サテライトオフィスへの直行直帰が定着する中で、対面でのコミュニケーションが難しくなっていた。「当初は誰もが自由に使える場所に『窓』を設置して、1対1のコミュニケーションを気軽に取ることを想定していたのですが、なかなかうまくいかず」と柴田氏。試行錯誤する中で、多人数同士が話す場面が多い建設業界特有の会議のあり方に着目し、中でも重要な作業間連絡調整会議での活用が定着した。

テレプレゼンスシステム「窓」

テレプレゼンスシステム「窓」

作業間連絡調整会議で
「窓」を活用

作業間連絡調整会議は、毎日1回、約30分間実施され、工事の進捗や安全管理、翌日の工程などを確認し、作業間の調整を行う重要な会議だ。現場から参加するのは、鹿島建設の職員をはじめ、協力会社の職長やグループ長など30人ほど。「窓」導入前は全員がメインオフィスに集まっていたが、現在は「約30人×オフィス往復約30分の人時」が効率化されている。柴田氏は「窓」での会議とパソコンでのリモート会議の違いをこう語る。

「『窓』では、話している人以外の行動も含め、30人全員の目線や反応が分かります。私がとくに重視するのは、職長とのコミュニケーション。職長は協力会社のまとめ役で、現場の安全ルールや注意点を技能者に伝える重要な役割を担っています。職長の顔色が優れなければ、大丈夫か、と声をかける。目をそらしているのも分かるし、理解してうなずいているのか上の空なのかも判別できます。逆に、サテライトオフィスのみんなも、私の表情や態度から読み取っている部分があるでしょう。ここにほど良い緊張感が生まれます」

作業間連絡調整会議に「窓」を導入、
月に約300時間移動時間を削減し生産性を向上

図2
対面同等のリアリティを実現する「窓」を、メインオフィス、サテライトオフィスに導入。約30人が1日1回、車で往復約30分かかっていた移動時間の削減を可能にした。
※約30人×約30分×20日=約300時間

独自の技術で
空気感を伝える「窓」

MUSVI代表取締役 の阪井祐介氏は「真剣に聞いているかどうか、信頼関係ができているかどうか。そうした空気感を伝えてディスカッションを深めるのが『窓』の得意分野です」と応じる。その「空気感」を生み出しているのが、阪井氏が前職のソニー時代から約20年かけて培ってきた独自技術だ。一般的なリモート会議は、発言者以外のマイクを自動でオフにする。エコー(反響)を抑えて発言を正しく伝えるためには効率的だが、相づちやかぶせた発言ができず、結果として空気感が伝わらない。一方、「窓」はソニーが持つ「ステレオエコーキャンセル技術」を使い、エコーだけを除去。相づちやかぶせた発言もできる双方向の同時通話を実現した。実際に利用している柴田氏は、「画面の先にいる30人全員の表情や仕草が見える高画質も助かります」と評価。阪井氏は「4K画質ながら帯域を上下5Mbps程度に圧縮しており、スマホのテザリングや衛星通信でも運用可能です」と説明する。さらに、現場からのフィードバックを受けて、さらなる開発と改良を重ねているという。「柴田所長からは、画面分割で、1つは全体を俯瞰、1つは少人数での会話ができると便利という声をいただき、試作も進めています」(阪井氏)。

人手不足や働き方改革、少子高齢化による技術伝承など、より顕在化する建設業界の課題に対してDXを推し進める鹿島建設。國近氏は「省力化はかなり進んだ」とした上で、「今後はさらにコミュニケーションのDXが重要になります。ここを怠ると会社が弱くなる。生産性向上を目標に省力化とコミュニケーションの2軸で進めていきます。『窓』の導入による効果として期待しているのは技能伝承。言葉だけでなく表情によって重要なポイントや、何より熱量を伝えることができます」と力を込める。鹿島建設をはじめ、建設業界全体のコミュニケーションに新たな価値を提供しようと尽力するMUSVI。阪井氏は、最後にこう決意を述べた。「今までは対面かリモート会議かの二者択一でした。しかし、我々はソニー時代から20年以上、離れていても信頼関係を持ってつながれる技術を開発してきました。そこから生まれた『窓』を通して、今後も現場に学びながら建設業界に貢献していきたいと思います」。

建設業界で「窓」はどのように活用されているのか詳細をチェック