SQL Server 2016/2017の延長サポートが、2026年以降に順次終了となる。最新のSQL Server 2025では、セキュリティー強化に加え、AI活用を見据えた機能拡張が進んでいる。延長サポートの終了を、AIやデータをどう活用し、どのような基盤で支えていくのかを見直す契機としたい。ただし、SQL Server 2016/2017からの移行は単純な作業ではない。ここでは、移行を難しくする要因と、「移行して大丈夫か」を判断するために押さえるべき論点(互換性・本番影響・検証ポイント)を整理し、その対応を支える技術チームの知見を紹介する。
BIによる可視化、AIによる予測分析、生成AIによる業務支援など、多くの企業がAIやデータの活用に取り組んでいる。業務システムのトランザクションデータに加え、ログ、センサーデータ、非構造化データなど、企業が扱うデータの種類と量は確実に増えている。
こうしたデータ活用やAI活用の取り組みでは、目的に応じて様々な技術が用いられるが、いずれの場合でも中核となるのがデータベースである。多くの企業が利用しているマイクロソフトのデータベースSQL Serverも、データ活用ニーズの高まりを受け、単にデータを格納する基盤から、データ活用を支える基盤へと進化している。
NECソリューションイノベータ株式会社昨今の SQL Server の機能強化のポイントとして、最新の SQL Server 2025 の1つ前のバージョンとなる SQL Server 2022 では、今のサイバー攻撃の悪質化を背景に改ざん防止を目的とした台帳機能を実装するなど、セキュリティー面の強化が図られた。そして、 SQL Server 2025 ではAI活用を見据えた機能強化が大きな特長だ。AI機能がデータベースにネイティブに統合され、例えば、データをベクトル化し、意味検索を行う処理をデータベース内で実行できる。
「ベクトルとは、言葉や文章の意味を反映した高次元の数値配列であり、意味の近さを距離として扱える表現形式です。これにより生成AIはキーワードの一致ではなく、意味の近さを基準に情報を扱い、人間の曖昧な指示に対しても意図をくみ取った応答を行っています。SQL Server 2025がベクトル検索にネイティブ対応したことで、RAG における検索・ナレッジ管理の基盤をデータベース内で完結でき、外部のベクトルDBや検索サービスへの依存を大きく減らせるようになりました」と企業のデータ活用を多く支援しているNECソリューションイノベータの平岡 迪子氏は話す。
また、SQL Server 2025 は AI モデルの呼び出し・管理にも対応している。例えば、過去の受注実績を基にした需要予測を AI モデルで実行し、その予測結果をテーブルとして保持するといった処理をSQL Server を中心に構成できる。これにより別の分析基盤やAIサービスを用いることなく、業務アプリケーションから直接、SQL Server内の予測結果を利用する構成を取ることが可能となる。
このようにSQL Server 2025は、多くの企業が取り組んでいるAI・データ活用を力強く支えることができる。AI・データ活用に取り組むなら、ぜひ有効活用したい。
特にSQL Server 2016/2017を利用している企業には切実な事情もある。あらためて言うまでもなく、これらのバージョンは2026年から2027年にかけて延長サポートが終了し、セキュリティー更新プログラムが提供されなくなる。仮に脆弱性が発見されても、マイクロソフトによる修正は行われず、リスクを抱えたまま運用を続けることになる。
「しばらくは大丈夫だろう」と様子見をしている間に、ハードウエアにトラブルが発生する可能性も否定できない。SQL Server 2016/2017を稼働させている環境では、ハードウエアの保守期限が迫っているケースも多いだろう。保守が受けられない状態で故障が発生すれば、データベースの移行そのものが困難になり、長年蓄積してきたデータを失うリスクもある。
SQL Server 2016/2017からSQL Server 2025への移行に当たっては注意も必要だ。一度、SQL Server 2019/2022に移行するという選択肢もあるが、いずれのバージョンを経由する場合でも、互換性や挙動の変化を踏まえた検証は欠かせない。同一製品のバージョンアップであるため、データをそのまま持っていけば動くはずだと考えていると思わぬ落とし穴にはまる可能性がある。SQL Server 2025には、非推奨機能や重大な仕様変更が存在するからだ。
落とし穴を避けるには、現行環境の把握や影響範囲の洗い出しを行い、業務処理を想定した十分な検証を重ねながら移行を進める必要がある。しかし、そのノウハウを社内に持つ企業は多くないだろう。SQL Server 2016/2017の導入時に担当者が既におらず、設定内容を把握すること自体が難しいケースも少なくない。
そのような難易度の高い移行プロジェクトを数多く支援しているのがNECグループである。中心となるのは、先にSQL Server 2025の強化ポイントを解説してくれた平岡氏も所属するNECソリューションイノベータのSQL Server技術チームである。「設計・構築・アセスメント・移行・性能チューニング・トラブルシューティングなど、データベースに関わるプロフェッショナルサービスを一貫して提供しています。契約単位で千件を超える課題解決に対応してきた実績があります」と平岡氏は紹介する。
SQL Server プロフェッショナルサービスの支援メニュー

企画・提案から運用・保守まで、SQL Serverに関する様々な依頼に対応している。特に移行プロジェクトにおいては、「DB 移行診断」と「SQL 移行診断」の2つのメニューで、移行難易度やツール活用による移行効率を見える化した上で、安全かつ確実な移行を支援する
SQL Server 2016/2017の移行においても豊富な実績を持つSQL Server技術チーム。その技術力を示す一例がSQL Server 2025の自習書である。これは、最新機能を実践的に学ぶためにマイクロソフトが公式に提供している学習コンテンツだが、SQL Server 2019版以降の自習書は、NECソリューションイノベータのSQL Server技術チームが単独で制作を担っている。公式コンテンツの制作を任せるほど、製品開発元であるマイクロソフトが同チームの知見や技術力を評価しているわけだ。
自習書は無償で公開されており、最新機能をハンズオン形式で学べる内容になっている。「単なる機能紹介にとどめず、実際の運用を強く意識しています。例えば、専門用語を可能な限り噛み砕き、なぜその手順が必要なのかも説明することで、理解しやすく、実際の業務に役立つ自習書を目指しました」と平岡氏は話す。現在公開されているSQL Server 2025の自習書はパート1で、続編となるパート2も順次公開予定だ。
SQL Server 2016/2017から2025への移行支援にあたっては、同チームは、まず現行環境の把握から着手する。独自の情報採取ツールやログ分析を用いて、設定内容や利用機能を洗い出し、互換性や性能への影響を整理する。
「例えば、リンクサーバーやレプリケーションでは、通信の暗号化がデフォルトとなり、証明書の事前設定が必要になるケースがあります。こうした変更を把握せずに移行を進めると、接続エラーや更新失敗といった問題に直面しかねません。また、内部処理の改善により、実行計画が旧バージョンと変わることもあります。多くの場合は性能向上につながりますが、クエリの書き方によっては性能が悪化するケースもゼロではありません」と平岡氏は言う。
同チームは、このような注意すべきポイントや検証方法を明確にし、顧客の担当者と共有しながら移行計画を立て、実際に移行支援も行う。ただし、移行支援全体をパッケージ化しているわけではない。SQL Server技術チームがアドバイザーを務め移行作業は顧客企業が担う。あるいは、SQL Server技術チームが計画立案から移行実行までを一括で担うなど、顧客企業の体制や意向に柔軟に対応している。
「数十のデータベースを複数環境で移行するプロジェクトや、短時間での切り替えが求められるプロジェクトなど、難易度の高い移行案件を数多く経験してきました。こうした経験の中で、様々な課題に対する解決策を蓄積してきました。それらを生かし、お客様のデータベース移行プロジェクトを安全に導きます」(平岡氏)
SQL Server 2016/2017の延長サポート終了は、単なるバージョンアップのタイミングではない。AIやデータを活用していく上で、どのような基盤を、どのように運用していくのかを見直す重要な機会と捉えるべきだ。セキュリティーや運用性、そして、AI活用を支援する各種機能を考えると、SQL Server 2025は、これからのAI活用基盤の有力な候補といえる。
移行においては、現行環境を正しく把握し、影響を見極めながら進めることが移行後の安定運用につながる。NECソリューションイノベータのSQL Server技術チームは、高い製品理解と豊富な移行経験を通じて得た知見を生かし、計画立案から実行までを支援してきた。AIやデータの価値を引き出すために、こうした知見を活用することも1つの選択肢となるだろう。
