建設業の業務変革を左右する基幹システム刷新「Fit to Standard」を成功させた大日本土木の選択とは

建設業界では、人手不足や資材価格の高騰、働き方改革への対応など、事業環境の不確実性が高まっている。さらに長年使い続けてきた基幹システムが業務改革の足かせとなっている企業も多い。こうした中、NECは建設業向けSaaS型ERP「建設クラウド」を提供し、基幹システムの刷新と業務変革を支援している。ここでは、業務をシステムに合わせる「Fit to Standard」を前提とした取り組みと、50年稼働した基幹システムからノンカスタマイズで移行した大日本土木の事例を通じて、建設業における基幹刷新の考え方を探る。

建設業の生産性向上を阻むレガシーシステム

NEC
第二製造ソリューション統括部
ソリューション推進グループ
プロフェッショナル
川邉 理恵氏

 慢性的な人手不足という構造的な課題を抱えている建設業界。近年は、建設資材価格の高騰や働き方改革に伴う時間外労働規制の強化なども加わり、事業環境の不確実性が一段と高まっている。これらは単にコスト構造を押し上げるだけでなく、工事採算の見通しを立てにくくする要因ともなっている。

 こうした状況下において、建設業が事業を発展させていくためには、業務の進め方そのものを見直し、管理や間接業務も含めた生産性向上が不可欠となる。しかし、ここでも別の課題が浮かび上がる。長年使い続けてきた基幹システムの存在だ。

 従来、基幹システムは、業務要件に合わせて個別に改修を重ねることが一般的だった。その結果、システムは次第に複雑化、属人化しており、刷新には多額の工数やコストが必要となることから、老朽化していても「業務が回っているうちは」と更新が先送りされているケースが少なくない。「ビジネスや業務を取り巻く環境は大きく変化していますが、レガシーシステムに起因する課題から、働き方が限定されてしまい、それが生産性向上の足かせとなっています」とNECで建設業向けソリューションを担当する川邉 理恵氏は指摘する。

平均90%以上という業務適合率を誇る「建設クラウド」

 こうした課題に対し、NECが提案しているのが、建設業向け基幹システムサービス「建設クラウド」へのリプレースだ。

 建設クラウドは、原価管理、工事管理、会計といった建設業の基幹業務をクラウド上で一元的に管理するSaaS型ERP。大きな特長の1つが平均90%以上という業務適合率の高さだ。

 その背景には、建設クラウドの成り立ちがある。開発に当たっては、企業規模や建築と土木の割合といった事業の特性、業務慣行の異なる総合建設業4社とNECが共同で研究に取り組み、標準業務プロセスの設計を進めた。「特定の企業や手法に依存しない業務プロセスを定義することで、様々なお客様の多様な業務に適合できる仕組みを目指しました」と川邉氏は説明する。

 もっとも平均90%以上という業務適合率は、最初から実現できていたわけではない。市場投入後も、NECはユーザー企業の導入・運用を支援する中で、業務の捉え方を見直し、機能を磨くなどの改善を重ねてきた。

NEC
第二製造ソリューション統括部
ソリューション推進グループ
主任
後藤 文哉氏

 「例えば、原価や予算を管理する単位や粒度はお客様ごとに大きく異なります。工事単位で把握したいお客様もいれば、さらに細かい区分で管理したいお客様もおられます。建設クラウドは、カスタマイズを行わずとも、このような違いを柔軟に吸収できるようパラメータ設定で対応できる範囲を広げてきました。それも現在の業務適合率の高さにつながっています」と同社の後藤 文哉氏は説明する。

 この標準業務プロセスや柔軟なパラメータ設定によって、建設クラウドは大規模工事を担う総合建設業だけでなく、比較的規模の小さい工事や工事件数の多い業態にも対応している。

 この高い業務適合率を前提に、建設クラウドは業務をシステムに合わせる「Fit to Standard」を基本とした導入を行っている。その実現を支えているのが、建設業のビジネスや商習慣、業務に精通したNECのチームだ。

 具体的には、これまでの導入実績で培ってきたノウハウや標準業務プロセスを活用し、標準業務規定書や標準業務フローに基づいて検討を進める。さらに実機環境を用いた検証を繰り返し行いながら、要件や運用方法に関する認識のずれを早期にすり合わせていく。こうして追加対応や手戻りのリスクを抑え、導入コストや期間の最適化を実現している。

建設クラウド「Fit to Standard」型の導入手法

建設クラウド「Fit to Standard」型の導入手法

想定する業務を試行環境で構築し、実機を操作しながら業務検証を行う。検証結果に応じてパラメータを変更し、再度検証を行う。このような評価と検証を繰り返し、業務を標準プロセスに合わせていく

 「Fit to Standardという考え方は、単にカスタマイズをしないという意味ではありません。どこまでを標準機能で吸収し、どこから業務側で運用を見直すのかを、お客様と一緒に考えることが重要だと考えています。建設業は商習慣や業務の進め方に幅がありますが、業務の背景や意図を丁寧に整理することで、標準機能の中でも十分に対応できるケースは多い。そうした検討を重ねながら、導入後も使い続けられる基盤を整えることを重視しています」と同社の山口 文瑠氏は話す。

 また、ユーザー自身の活発な活動も建設クラウドの特徴だ。導入企業同士が定期的に情報交換を行う場としてユーザー会を運営しており、運用上の工夫や課題、法改正への対応などについて活発な意見交換が行われている。そこで確認できたニーズを、さらなる機能拡充に向けた検討に生かし、高い業務適合率を保っている。

50年利用してきた基幹システムからノンカスタマイズでSaaSへ移行

NEC
第二製造ソリューション統括部
ソリューション推進グループ
山口 文瑠氏

 建設クラウドを基幹システムとして採用した企業の1つが大日本土木である。

 長年積み重ねてきた技術力と実績を基盤に、ダム、トンネル、橋梁などの社会インフラ整備や商業施設、マンション、官公庁施設などの都市開発に貢献している同社の基幹システムは、稼働して50年が経過していた。部分最適を図ってきたプログラムはブラックボックス化が進んでいたため「今後の環境変化には対応できない」と判断し、刷新を決めた。

 刷新に当たっては、非効率的な業務フローを見直し、全社的な業務の標準化を図ることにした。同社は全国に多くの支店を持っているが、支店ごとに少しずつやり方が違い、転勤すれば戸惑うこともあった。

 業務プロセス改革の実現性や基幹システムとしての安定性に加え、支店別の業績管理が行えること、情報システム部門の運用負荷を削減できること、データの二重管理の解消、法改正へのスピーディーな対応などを要件としてRFP(提案依頼書)を提示し、複数の提案を比較した結果、同社が選定したのが建設クラウドだった。

 NECは、導入前の上流コンサルティングにおいて、大日本土木の課題や運用の違いを詳細にヒアリングしながら、現場ユーザーと業務観点での要件を一緒に検討し、課題を明確化することで、建設クラウドのノンカスタマイズ導入へとつなげた。

 例えば、同社は進行基準において他社とは異なる会計手法を使っており、預り消費税の扱い方も独特だった。当初は、システムの標準仕様に合わせるのは困難と思われたが、NECの提案によってそれをクリアした。

 既に建設クラウドは、同社の新たな基幹システムとして稼働を開始している。従来はできなかった支店別のリアルタイムな会計処理、実績管理が実現し、各情報をクラウド上で即時共有できることで、収支予測の精度が向上し、経営環境の可視化もスピーディーに行えるようになったという。

 またJV工事における原価管理も容易になり、決算処理にかかる工数も50%削減。以前の環境では、原価管理システムやグループウエアから出力されたデータの手動処理や、帳票を介した二重作業が大きな手間となっていたが、これらが解消されたことで業務効率は確実に向上している。なにより、同社は新たな基幹システムをノンカスタマイズで導入できたことを高く評価している。

 このようにNECの建設クラウドは、建設業特有の業務や商習慣を踏まえた標準設計と導入支援によって建設業の業務変革を支えている。

 「法改正や制度変更など、建設業を取り巻く環境は今後も変化し続けます。NECは、お客様と一緒に建設クラウドの機能を磨き続けながら、そうした変化に対応していきます。また、基幹システムに蓄積されるデータは、企業にとって重要な資産です。NECのAIやデータ活用を担当するチームとも連携し、その活用まで含めて支援していきたいと考えています」(川邉氏)

 建設業を取り巻く環境が大きく変化する中、基幹システムの刷新は単なるシステム更新ではなく、企業が将来に向けて競争力を高めるための重要な経営判断となる。Fit to Standardを核とした取り組みは、建設業の新たな成長を支えるカギとなるだろう。

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日本電気株式会社 第二製造ソリューション統括部
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