【第3回】
既存建築物ZEBと
真空ガラス

【第3回】 既存建築物ZEBと真空ガラス
~「居ながら改修」の現場から~

ZEB株式会社 代表取締役 山口 卓勇 氏

既存建築物こそZEBの主戦場

 最終回となる今回は、既存建築物の改修についてお話しします。

 ZEBというと新築ビルをイメージしがちですが、これからの社会で重要なのは、今ある建物をいかに活用するかです。建物の大規模修繕のタイミングはもちろん、空調設備の更新時期に合わせてZEB化を行うケースも増えています。

 弊社(ZEB株式会社)が手掛ける案件でも、建物を利用しながら(テナント様が入居したまま)工事を行う「居ながら改修」の需要が急速に高まっています。

既存ZEB改修の選択肢と
メリット・デメリット

 弊社では、既存建物をZEB化する際、快適性を高めるために必ずと言っていいほど開口部の断熱改修をご提案します。その手法は大きく3つあります。


  1. 内窓設置(今ある窓の内側に新しい窓をつける)

    ●断熱・防音効果は高いですが、設置スペースが必要で、窓際の棚や机をすべて片付ける手間が入居者様の大きな負担になります。


  2. サッシごと更新(枠ごと取り替えるカバー工法等)

    ●新品同様になりますが、既存枠の撤去などで大きな騒音・粉塵が発生し、工期も長く、コストも高くなります。


  3. ガラス更新(ガラスのみ入れ替える)

    ●既存のサッシ枠を使い、ガラスだけを高性能なものに変えます。



なぜ「真空ガラス」が
選ばれるのか

 この中で、私たちが既存建築物のZEB改修、特に「居ながら改修」で最も多く採用し、推奨しているのが「真空ガラスによるガラス更新」です。

 その理由は、圧倒的な「性能」と「施工性」のバランスにあります。

 まず性能面では、熱貫流率が0.65~1.4 W/(m²·K)程度と、一般的な一枚ガラスの約4~10倍、一般的な複層ガラスと比べても2倍以上の断熱性能を誇ります。さらに、日射遮蔽性能に優れたタイプを選べば、夏の暑さ対策も万全です。

 そして何より、既存改修で最大の武器になるのが「施工性の良さ」です。

 執務と並行して行う改修工事では、室内への影響を最小限に抑えることが求められます。内窓設置のように荷物を大移動させる必要も、サッシ交換のように大きな騒音を立てることもありません。

 真空ガラスへの更新なら、ガラスを入れ替えるだけなので短時間で終わります。引違い窓など、外部から窓が外せる構造であれば、室内では業務を行いながら、外部からガラスだけを変えることも可能です。

 土日の工事確保が難しくなっている建設業界において、平日の業務時間中でも静かに施工できる点は、施主様にとっても施工者にとっても極めて大きなメリットとなっています。

真空ガラスの耐久性について

 導入にあたり、お客様から「真空層の寿命」を気にされる方がいらっしゃいます。メーカー保証が一般的に10年とされているため、「10年を過ぎると真空が抜けて性能が落ちるのでは?」という懸念です。

 しかし、これは私の実務経験に基づいた実感ですが、私がこれまでに手掛けた真空ガラス導入物件で、10年を超えて真空が切れた(性能が失われた)ケースは一度もありません。メーカー側からも、計算上、真空層は半永久的に保持されると聞いています。

 真空ガラスが登場してから既に長い年月が経過しており、実地でのデータも十分に蓄積されています。実態として、その性能は10年を大きく超えて維持されると考えて差し支えないでしょう。今後はこうした長期的な実証データが広く認知されることで、より安心して選んでいただけるようになると考えています。

おわりに

 全3回にわたり、ZEBと窓ガラスの関係についてお話ししました。

 ZEBは単なる省エネ建築ではありません。そこで働く人、学ぶ人が、快適に、健康に過ごせる空間であって初めて、真の価値を発揮します。

 その中心には、常に「高性能な窓」がある。そう確信して、私たちはこれからもZEBの普及に取り組んでまいります。

【注釈】

  • 居ながら改修: 建物を使用中止にせず、入居者が業務や生活を継続したまま行う改修工事のこと。
  • 外部からガラスだけを変える: 高層・足場・安全管理・外装取り合い・防火区画・落下防止等の条件により、 事前確認が必要です。
  • 熱貫流率(U値): 熱の伝えやすさを表す数値。単位はW/(m²·K)。数値が小さいほど断熱性能が高い。

ZEB株式会社

代表取締役

山口 卓勇 氏

<略歴>
2002年 – デラウェア州立大学院 公共政策学部環境エネルギー政策 卒業
2003-2005年 – 株式会社住環境計画研究所 研究員
2006年-2023年 – 備前グリーンエネルギー株式会社 執行役員
2024年 – ZEB株式会社 代表取締役

<保有資格>
エネルギー管理士 / 第2種電気主任技術者 / 建築設備士 / 第二種電気工事士 / CxPE(性能検証技術者)

記事中の肩書きやデータは公開時点の情報です

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