学校現場が抱えるAIの悩み
子どもたちは先に進んでいる
AIを授業でどのように使えばよいのか。校務はどこまでAIに任せるべきか。学校現場で、そんな問いを聞く機会が増えた。私自身は小学校の教員や教育委員会の指導主事という立場を経て、現在は全国の教育委員会や学校の生成AI活用、教育DXを支援するようになった。
子どもたちは日常的にAIを使っている。Google検索にはAIによる要約が組み込まれ、YouTubeはAIが動画を勧めるようになった。OpenAIの生成AIサービス「ChatGPT」や「Google Gemini」 、「Microsoft Copilot」に分からないことを尋ねる子どもも増えている。家庭や生活の中で、AIは「特別な最新技術」から「いつも使っている道具」へと変わりつつある。いま考えるべきは学校で単にAIの使い方を教えるのではなく、AI時代にどのような子どもたちを育てるかだ。
一方で学校現場において、子どもの学びを担う教員は慎重だ。「AIに個人情報を入力してよいのか」「無料版の生成AIでもセキュリティは十分なのか」「教育委員会のルールが分からない」「授業ではどのように使えばよいのか」。こうした声を何度となく聞いてきた。
日々を忙しく過ごしている教員にとって、従来のAIを使わない方法でも授業は成立する。そこへ新しい道具を持ち込むには、相応の理由と安心が必要になる。これは教員の意欲の問題ではない。AIを安全に使える環境、相談できる相手、実践を支える体制がまだ十分ではないからだ。
子どもたちは自然にAIを使う。一方で、教員は子どもの学びに責任を負う立場であるため、その利用には慎重にならざるを得ない。このギャップを放置したままにすれば、子どもの実態と学校教育の間にずれが広がる。必要なのは教員に対して「AIを使いましょう」と急かすことではない。安心して一歩を踏み出せる環境を整えることである。
