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大阪教育大学 みらい教育共創フォーラム2026・教育とICTセミナー2026関西 AI次代を担う教員育成を通じて未来の教育を共創する 協賛講演

AI時代に学校に必要なのは
思考を支える学びの相棒

AIは教員に代わる学びの道具ではない。校務を効率化して「時間の余白」をつくり、その時間を子どもとの対話や深い学びの設計に振り向けるためのツールだ。AIを「使うか、使わないか」を議論する段階から、「どのように使うか」を考える段階へ移りつつある。学校が目指すべきはAIを使える子どもを育てることではない。使うべき時と、使わない時を判断できる子どもなのだ。

北浦 明人 氏
NTT ExC パートナー 営業本部
教育ICT 部 開発・サポート部門
兼 ビジネス部門、博士(工学)
元渋谷区教育委員会 指導主事

北浦 明人 氏

学校現場が抱えるAIの悩み
子どもたちは先に進んでいる

AIを授業でどのように使えばよいのか。校務はどこまでAIに任せるべきか。学校現場で、そんな問いを聞く機会が増えた。私自身は小学校の教員や教育委員会の指導主事という立場を経て、現在は全国の教育委員会や学校の生成AI活用、教育DXを支援するようになった。

子どもたちは日常的にAIを使っている。Google検索にはAIによる要約が組み込まれ、YouTubeはAIが動画を勧めるようになった。OpenAIの生成AIサービス「ChatGPT」や「Google Gemini」 、「Microsoft Copilot」に分からないことを尋ねる子どもも増えている。家庭や生活の中で、AIは「特別な最新技術」から「いつも使っている道具」へと変わりつつある。いま考えるべきは学校で単にAIの使い方を教えるのではなく、AI時代にどのような子どもたちを育てるかだ。

一方で学校現場において、子どもの学びを担う教員は慎重だ。「AIに個人情報を入力してよいのか」「無料版の生成AIでもセキュリティは十分なのか」「教育委員会のルールが分からない」「授業ではどのように使えばよいのか」。こうした声を何度となく聞いてきた。

日々を忙しく過ごしている教員にとって、従来のAIを使わない方法でも授業は成立する。そこへ新しい道具を持ち込むには、相応の理由と安心が必要になる。これは教員の意欲の問題ではない。AIを安全に使える環境、相談できる相手、実践を支える体制がまだ十分ではないからだ。

子どもたちは自然にAIを使う。一方で、教員は子どもの学びに責任を負う立場であるため、その利用には慎重にならざるを得ない。このギャップを放置したままにすれば、子どもの実態と学校教育の間にずれが広がる。必要なのは教員に対して「AIを使いましょう」と急かすことではない。安心して一歩を踏み出せる環境を整えることである。

AIは手段であり、人間中心を土台に、AIを適切に使い分ける経験を通して情報活用能力を育てていくことが、AI時代の学校教育に求められる方向性だ
▲AIは手段であり、人間中心を土台に、AIを適切に使い分ける経験を通して情報活用能力を育てていくことが、AI時代の学校教育に求められる方向性だ

「ただ使う」から一歩先へ
学びの目的で使い分ける

文部科学省は2024年12月に、学校現場における生成AIの適切な利活用を支援するため、「生成AIの利活用に関するガイドライン」をVer.2.0に改訂した。個人情報や著作権への配慮といった基本的な留意点に加え、授業や校務で生成AIをどのように活用するか、その際に何を大切にすべきかを示したものだ。現在はVer.2.1への改訂に向けた議論も進んでいる。

ガイドラインが示すことは明快だ。人間中心のAI活用、情報活用能力の育成、校務DXの推進、発達段階に応じた柔軟な活用である。AIを活用しても、最後に考えて判断し、その判断の責任をもつのは人だ。AI利用を一律に禁止したり義務化したりするためのものではない。

ガイドラインに沿ってAIを授業や校務で活用し、その成果や課題を検証する文部科学省指定の生成AIパイロット校も広がっている。2023年度の66校・25自治体から、2026年度には478校・149自治体まで拡大し、教育利用、校務利用、教材実証で実践が蓄積されている。

注目したいのは数だけではない。教員の活用の中身が変わってきたことだ。生成AIパイロット校の事例報告書(※1)によれば、生成AIパイロット校指定から2年間で、問題作成の利用は8.9%から3.6%へ減る一方、アイデア出しは2.7%から6.7%、データの整理・分析は5.0%から11.6%へと増えた。AIに答えを作らせる使い方から、発想や思考を支える使い方へ重心が移っているのだ。

生成AIパイロット校の実践事例において、東京都の千代田区立九段中等教育学校では、校務で独自のエージェントAIを活用する一方、中学生が英語でプロンプトを書き、より良い回答を得るために問いを練っている。大切なのは、AIに正解を出してもらうことではない。どう問いを立て、出てきた答えをどう評価し、自分で判断するか。その過程に学びがある。

だからこそ、授業ではAIを使う場面と、あえて使わない場面の両方を設計する必要がある。アイデアを広げる、情報を比較・整理する、文章を推敲する。こうした場面ではAIが力を発揮する。一方、最初の問いを考える、観察や実験をする、自分の考えの初稿を書く、友達と対話する、最後の判断を下すのは子ども自身が担うべき場面だ。

学校が育てるべきなのは「AIを使える子ども」ではない。「今はAIを使うべきか、それとも自分で考えるべきか」を判断できる子どもだ。AIに頼り過ぎれば、考える行為そのものを外部に委ねる「認知的オフロード(Cognitive Offloading)」が進みかねない。何のために学ぶのかを見失わず、AIを使い分ける力が情報活用能力の中核になる。

AIは「使うか使わないか」ではなく、学びの目的に応じて使い分けることが重要
▲AIは「使うか使わないか」ではなく、学びの目的に応じて使い分けることが重要

AIが生む時間の余白を増やし
教員にしかできない仕事に使う

AI活用は、教員にも大きな価値をもたらす。最も期待しているのは「教師の時間の余白」を生み出すことだ。ただし、時間短縮そのものが目的ではない。生まれた時間を、子どもとの対話、一人ひとりの見取り、深い学びのデザイン、学習活動への価値付けや励ましに振り向けることに意味がある。AIは学びにおいて教員を置き換える存在ではない。教員にしかできない仕事の時間を戻すためのパートナーなのだ。

AI活用を定着させるには、製品を導入して終わりでは不十分だ。安全な利用環境を整え、教員研修などを通じて実際に使ってみる。教員の授業や校務での実践をICT支援員やeラーニングコンテンツで継続的に支えることも重要だ。

私たちNTT ExCパートナーは、単なる製品やサービスの提供にとどまらず、学校の持続的なAI活用環境づくりを教育委員会や学校と共に実現していきたいと考えている。学校ごとの課題や教員の困りごとに応じて、3つの支援を組み合わせながら伴走していくのが役割だ。

1つ目は方針策定支援だ。教育委員会や学校と共に課題を整理し、AIをどう活用していくか方向性や進め方を考える。2つ目は知識習得支援だ。教員研修を通して「知る」だけではなく、「実際に使ってみる」ことを重視し、教員が安心して活用できるよう支援する。3つ目は活用定着支援だ。ICT支援員やeラーニングコンテンツを活用しながら、授業や校務での実践を継続的にサポートし、学校全体への定着につなげる。

この3つを学校の状況に合わせて組み合わせることで、「まずはやってみよう」「困ったら相談できる」と安心して挑戦できる学びの場を、教育委員会や学校と共につくっていきたい。

NTT ExCパートナーは、学校現場でAI活用を進めるための「方針策定支援」「知識習得支援」「活用定着支援」という3つの専門的な支援を提供する
▲NTT ExCパートナーは、学校現場でAI活用を進めるための「方針策定支援」「知識習得支援」「活用定着支援」という3つの専門的な支援を提供する