「ADB」を活用して、チャットボットによる社内資料検索サービスの精度を向上させる試みは、PoCからスタートした。2025年夏ごろに導入し、わずか3ヵ月ほどでPoCを完了させている。その後、技術面や運用面でのブラッシュアップを重ね、2026年5月にサービスをリリースした。
PoCを行っても、思うように実装に結び付かない“PoC倒れ”は、多くの企業が経験するものだが、「オカムラがこれまでに実施した20~30のプロジェクトで、“PoC倒れ”になったケースは極めて少ない」と池田氏は明かす。
なぜ、それが可能なのか? 池田氏がポイントとして挙げるのは「事業部門横断で、エンタープライズ規模での検索の統合を見据えた課題解決にある」という。
ワーク&ライフクリエイション事業では、営業、設計、提案、レイアウト生成、商品選定など、一連の業務で連携し、AIを活用することで自社製品の特徴が際立った提案作成が効率よくできる仕組みが求められる。個別の業務で閉じていてはうまくいかないからだ。
「一連の業務で連携しつつ、個々の業務課題に柔軟に対応し、新たな技術も取り込んで解決に生かすことが求められています。それらに対応していくためには、限定されたアーキテクチャではなく、疎結合によって柔軟に機能を拡張できるSOA(Service Oriented Architecture、サービス指向アーキテクチャ)を採用すべきです」と梅田氏は語る。
オカムラが「ADB」を選んだのは、そうしたSOAの思想にかなう柔軟性と最新技術に対応するデータベースであることも大きな理由だった。
さらに、「オール・イン・ワンで、他のソリューションに比べてコスト面で有利だったことも、オラクルを選定した大きな理由の一つです」と池田氏は語る。
「幸い、当社がこれまで実施したPoCで実装に至らなかったものは極めて少ないですが、仮に“PoC倒れ”で終わったら、導入に費やした多額の費用が無駄になってしまいます。費用対効果をしっかり考えながら導入を検討することも、PoCを成功させるための重要なポイントだと言えます」(池田氏)
非構造化データであっても、チャットボットに問いかければ、精度高く検索してくれるサービスを目指して始まったこのプロジェクトは現在も進行中だが、業務に関する問い合わせに答える仕組みには一定の目処が立っている。
まず、「ADB」の導入によって、非構造化データの検索精度が55%から82%へと格段に向上。それに伴い、チャットボットの回答精度も大きく改善したという。
池田氏は、「精度が格段に上がったことで、現場で実際に使えるレベルに到達したと感じています。『AIは使えない』と思っていた社員にも活用が広がることで二極化が解消され、8割以上の社員がAIを使いこなせるようになることを目指しています」と目標を語る。
今後は、社員によるサービス利用を拡大するため、検索できる資料の件数を増やしていくことが課題だ。そのためには、非構造化されたままの図面やグラフといった資料を構造化し、検索しやすいように分類するという膨大な作業をこなす必要がある。
「これまでは手作業で行っていましたが、AIのために人が貴重な時間を奪われてしまうのは本末転倒です。我々が目指しているのは、言うまでもなく『人がAIを使いこなす』ヒューマンオリエンテッドな社会。その実現のため、『ADB』が備えているグラフデータベースの特性を生かし、データ同士の関係性を捉えながらAIが自動でカテゴリ分類し、検索品質の向上につなげる仕組みの構築を進めています。まさに、資料のラベルやタグ付けが自動でなされる感じです」と梅田氏は説明する。
さらにオカムラは、これまで活用してきた社内ナレッジに加え、マスタデータなど基幹系システムに蓄積されたデータを用いてナレッジグラフを構築する取り組みを進めている。その実現に向けて、ユーザーの自然言語による問い合わせをSQL(Structured Query Language)に変換するオラクルのSELECT AIの活用を検討している。構造化データをより柔軟に検索・活用できるようにすることで、チャットボット検索サービスの適用範囲を一段と広げていく考えだ。
また、池田氏と梅田氏は、製品自体だけでなく、「ADB」を活用したPoCに対して、きめ細かな伴走支援を行ったオラクルのカスタマーサクセスサービスによるコンサルティング支援も高く評価している。
「“PoC倒れ”をなくすには、明確なゴール設定が必要です。オラクルのコンサルタントには、オカムラが目指す姿やコンセプトを深く理解してもらった上で、AIやデータベースに関する製品技術のエキスパートとして、実装を見据えた提案を積極的に行ってもらいました。同じゴールを共有し、実現に向けて伴走してもらえたことが、成功につながったと思っています」と梅田氏は語る。
最後に池田氏は、「『ADB』が支えるチャットサービスは、業務の中にAIが組み込まれ、人はより創造的で生産的な業務に専念できる時代の始まりだと捉えています。当社は2026年を『AI元年』と位置付け、より本格的なAI活用に取り組んでいきます」と宣言した。