

小型モーターの総合メーカーとして、機械化・自動化を長年支えてきたオリエンタルモーターが、19年ぶりにACサーボモーターの新製品「KXRシリーズ」を投入した。高速・高トルク領域を補完することで、人の代替となる自動化に必要なモーター・ギヤを1社で揃え、選定から導入、サポートまでを一気通貫で素早く提供。装置開発の効率化と自動化の加速を後押しする。
製造現場や各種設備において、人が担ってきた作業を機械で代替する動きが広がっている。こうした自動化を支える要素として、ますます重要性を増しているのが、装置の動力源となるモーターの役割だ。
オリエンタルモーターは、ACモーター、ブラシレスモーター、ステッピングモーター、アクチュエータなど、低・中出力帯を中心とした小型モーターを幅広くラインアップしてきた。同社製品は現在、半導体製造装置を筆頭に、工場に置かれる搬送装置、医療機器、身近な場所では自動改札やETCバーまで、産業・社会を支えるさまざまな機器に採用されている。
特に高精度位置決めを得意とするステッピングモーターでは高いシェアで業界をリードしてきた。評価されてきたのは製品性能だけではない。品質の安定性、短納期での供給、相談しやすいサポート体制まで含めた総合力によって、装置メーカーやFAの現場から信頼を集めてきた。
これまでの小型モーターのラインアップでも、自動化を幅広く支えてきた同社だが、自動化の高度化・範囲が拡大する中で、高速かつ高出力が求められる領域については、既存の製品群だけでは対応が難しい場面も見え始めていたという。
「人手不足が進むことで、今後は“人の代替”としての自動化のニーズが加速していきます。そこで重要な役割を担うのが、当社の強みである小型モーターです。その上で、より多くの現場のニーズに応えるためには、1kWクラスの出力までのモーターを取り揃えるべきだと考えました」と語るのは、KXRシリーズの開発を統括した大野智義氏だ。
こうした背景から同社は、既存の小型モーター群に高速・高トルクのサーボモーターを加え、装置開発に必要な駆動要素を1社で完結できる体制づくりに踏み出した。
2026年4月に市場投入されたACサーボモーター「KXRシリーズ」は、オリエンタルモーターにとって19年ぶりとなる本格的なサーボモーターの新展開である。最高回転速度7000rpm、速度周波数応答3.5kHz以上、26ビット分解能、全固体電池搭載多回転アブソセンサーなど、現場で求められる基本性能を備えている。
その上で同社が重視したのは、サーボモーター単体の性能ではなく、「総合的に使いやすいか」という視点だ。
特長の一つがモーターとギヤを1社で提供できる点である。同社ではギヤを内製しているため、サーボモーターとギヤヘッド、中空ロータリーアクチュエータを組み合わせた仕様を評価・保証する。
「選定や評価にかかる負担を抑えられるだけでなく、国内では最短5日でモーターとギヤをセットで出荷できるため、調達リードタイムの短縮にもつながります」(大野氏)
安全面でも、FA機器から半導体製造装置、ロボットまで、多目的に使われるモーターとして、ワークや装置を守る機能の充実化を図る。停止中の誤作動を防ぐSTO機能に加え、モーター減速後、電力供給を遮断するSS1-t機能を用意している。これらは2026年9月に予定しているアップデートにより、全モデルで標準搭載される計画だ。
設定や調整のしやすさにも配慮した。ゲインチューニングなどの煩雑な作業を極力減らし、立ち上げの負担を抑えている。保持ブレーキの自動制御機能を備え、ブレーキ制御の設計やプログラミングが不要となる点も特長だ。
これらは、ステッピングモーター「AZシリーズ」などで評価されてきた、シンプルで分かりやすい使い勝手をサーボにも広げたものである。
「高速・高トルクのサーボモーターが加わったことで、オリエンタルモーターのラインアップはより広い領域まで、自動化のニーズに応えられるように拡張されました。お客様は個別のメーカーからモーターやギヤを調達する必要がなくなり、選定から導入、サポートまでをオリエンタルモーターに一気通貫で任せられる点が大きな価値です」と大野氏は話す。近年は、有償サポートによる設定代行や自動化相談、装置製作支援なども強化している。
「私たちは、モーションを総合的に提供したい」と大野氏は話す。自動化を素早く、確実に進めるには、モーター単体だけでなく、“動き”にまつわるシステム全体の革新が不可欠。同社が近年、カスタマイズ性の高い軽量・小型な産業用ロボット「OVR」やロボットコントローラまで手掛けるのもその一環である。こうした同社の姿勢をより一層推し進めるのが、今回のKXRシリーズの投入だ。