「2025年の崖」が叫ばれてから数年。多くの製造業がERP(基幹システム)の刷新を経て、今新たなDXのステージへと踏み出そうとしている。次の焦点は、設計情報を中心とした間接業務の最適化、すなわちPLM(製品ライフサイクル管理)である。この領域で確かな実績を重ねるのがパーソルクロステクノロジー株式会社(以下、パーソルクロステクノロジー)だ。同社のPLM支援が、なぜ多くの製造業から支持を集めるのか。その理由を、同社コンサルティング本部製造・物流DXグループマネージャーの青山泰三氏に聞いた。
DXの次なる焦点は
「PLM」

パーソルクロステクノロジー株式会社
コンサルティング本部
DXコンサルティング部 製造・物流DXグループ
マネージャー
青山 泰三 氏
パーソルクロステクノロジーは、ものづくり、IT、セキュリティの3領域を軸に、多様な技術課題の解決に取り組むテクノロジーソリューション企業である。各領域に精通したエンジニアが、顧客企業の現場に密着し、設計・開発から運用まで幅広い技術支援を提供している。
Slerとして27年間、数多くのシステム構築を手がけてきた青山氏は、こうした領域に関する知見を有するコンサルタントの一人であり、製造業DXやPLM導入の支援にも深く関わっている。
「2018年頃に“2025年の崖”が話題となり、多くの企業がERPの再構築を急ぎました。しかし当時、PLMを本格的に検討する企業はさほど多くはありませんでした。今ようやくERPの更新が一巡し、設計・製造領域へと焦点が移り始めています」と青山氏は語る。
“2025年の崖”とは、老朽化した基幹システムが経営の足かせとなり、事業継続に深刻な影響を及ぼすと経済産業省が警鐘を鳴らした構造的リスクである。
ERPの再構築によって生産・販売のデータ基盤を整備した今、企業の関心は設計や製造工程の最適化へと移り、PLMの重要性が一段と高まっている。その背景には二つの潮流がある。一つは、ERP更新を終えた企業が、設計・製造領域の情報を統合する「次の投資対象」としてPLMに踏み出していること。もう一つは、PLMの費用対効果が明確に示され始め、経営層の注目が高まっていることだ。
青山氏は「設計情報を正しく整備し、原価や品質までを“つなぐ”基盤を持てるかどうかが、これからの競争力を左右します」と語る。
パーソルクロステクノロジーでは実際に、部門ごとに分断されていたデータを統合する事例が増えている。ある企業では、設計部門が図面を管理し、製造部門は別のレガシーシステムで部品表を運用していた。そこにパーソルクロステクノロジーはPLMを導入し、CADデータから部品表、計画コスト、実績コストまでを一元化。入力作業の削減と品質向上を両立させた。
こうしたデータ基盤の整備は、AI活用の前提条件でもある。青山氏は「AIを活用するにも、まずデータの蓄積と整備が欠かせません。製造業でその役割を果たすのがPLMであり、これが競争力を左右する基盤になると確信しています」と強調する。
現場に寄り添う
「伴走型DX」
パーソルクロステクノロジーの最大の特長は、理想論に終わらない“現場伴走型”の支援スタイルにある点だ。青山氏はこれを、経営層・プロジェクトマネージャー、リーダー層(以下プロジェクトマネージャー層)・現場層の三層それぞれに寄り添うアプローチだと説明する。
まず経営層には、過度な期待を抱かせない計画コントロールを行う。「何十%削減」といった数値目標が独り歩きするリスクを防ぎ、短期間の成果目標と実現可能な業務範囲をすり合わせ、現実的なロードマップを設計する。次にプロジェクトマネージャー層には、机上論でシステム要件を行わないように、帳票や業務の流れ、手を動かしている現場の理解が得やすいレベルにまで落とし込む。そして現場層には、使いやすさや画面の見やすさといった“手触り感”にまで踏み込む。
「特に工場現場ではベテランの方も多く、UIのわずかな違いが作業効率に直結します。現場の納得なしにDXは進まないのです」(青山氏)
工程管理など複雑な仕組みを最初からすべて導入しても、現場がついてこられないことも多い。そのため、まずはCADデータや部品表の整備といった上流を固め、工程・原価管理へと段階的に広げていく。顧客の成熟度に合わせてステップアップできる計画を描きながら、現場の合意形成を重ねていくのがパーソルクロステクノロジーの流儀だ。
「我々は常に現場とともに最適解を探ります。現場の言葉を理解するエンジニア出身者が多いからこそ、本音を引き出しながら、理想と現実の両立を図れるのです」と青山氏。
そんなパーソルクロステクノロジーの挑戦は、AIとPLMを掛け合わせた自動設計領域にも及ぶ。かつての自動設計は図面の作図や寸法変更が中心だったが、現在は「150%BOM」や「マトリクス部品表」など、条件に応じて複数の部品やユニットを組み合わせる仕組みが主流になりつつある。伸縮部品を生成する技術、解析結果で設計の妥当性を判断する技術、これまでシステムで省力化を実現してきたものはAIで学習をすることが可能だ。「AIが設計を補助するのではなく、AIが設計した結果を技術者が評価する未来」は、想像より早く訪れるだろう。そのためにも、部品や図面データをPLMに蓄積しておくことが不可欠だ。
同社のもう一つの強みは、システム構築にとどまらず、その後の“人の運用”まで見据えて支援できることだ。自社に1万人以上のエンジニアが在籍している特性を生かし、3D化の立ち上げや過去図面のデータ化支援、旧システムからのデータ移行など、導入後の課題にも即応する。こうした人と技術の両面からの支援が、企業のDX定着を後押ししている。
製造業の未来に
“変革の足場”を
青山氏は、日本の製造業が直面する最大の課題を「開発力の低下」だと指摘する。「多くの企業が、旧図面の修正や設計変更に人員を割かれ、新しい開発に人を回せていません。労働力で補う時代は終わり、ITの力でカバーするしかないのです」(青山氏)
その背景には、日本特有の構造的な事情がある。「海外では早期にデジタル化が進みましたが、日本は安易に道具に頼ることをよしとせず、知恵や努力で解決することを美徳としてきた歴史があります。その結果、IT基盤の整備が後回しになり、その遅れは、2022年の労働生産性がOECD加盟38カ国中31位、主要先進7カ国では例年最下位という形で顕在化しているのです」と青山氏。パーソルクロステクノロジーが目指すのは、こうした構造的課題の解消だ。
「PLMは高額な仕組みと思われがちですが、まずはCADデータ管理からでも始められます。小さく始め、横展開しながら、自立自走に向けた“最後の伴走者”になるのが私たちの役割です」と青山氏は力を込めた。
パーソルクロステクノロジーでは、レガシーを知り、現場課題に精通したコンサルタントを中心に、経営層と現場をつなぎながら実効性あるDXを進めている。その中核を担う青山氏は、PLMを起点に“変革の足場”を築き、製造業の進化を支える伴走者として、日本のものづくりに新たな力を与えている。


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