部分導入でも効果は得られる!

デジタルツイン、最初の一歩の踏み出し方と継続的に価値を生む自走化への道筋

製造DXを支えるものとして「デジタルツイン」が注目されている。現実世界と仮想空間を連動させることで、分析やシミュレーション、テストを容易に実行できるようにする。一方、全社/全工場を対象としたデジタルツイン環境は簡単に構築できるものではないため、「自社には無関係」だと感じている企業は多いだろう。これは果たして真実なのか。実は1工場/1ライン/1プロセスのデジタルツイン導入でも効果は得られる。多くのものづくり企業を支援してきたテクノプロに、そのポイントを聞いた。

特定プロセスに絞った
デジタルツインでも
価値は得られる

 デジタルツインへの期待が高まっている。設計データや設備データを基に、仮想空間上へ生産現場の状態を3Dモデルとして複製。さらにカメラ、センサーなどのIoT機器や制御端末などから収集した実世界のデータをリアルタイムに3Dモデルへ反映することで、現実状態をエミュレーションする。これにより、容易に実行できない作業や検証、テストなどを実施しやすくする。

 例えば、工場内の生産ラインの配置をデジタル空間上で試して、検討できることはその効果の代表例だ。現実世界で行うことが難しい、複数の配置パターンを容易に試せるようになる。また、デジタル空間で製品を動かして得た使用データを、設計にフィードバックすることもできる。ほかにも生産ボトルネックの解析による歩留まりや品質の向上、自動化のシミュレーション、予測シミュレーションによる設備や機器の予知保全など、メリットは多種多様だ。

 「また、蓄積したデータは知見として再利用できます。再テストにかかるコストや期間を抑制できるほか、ベテランの持つ暗黙知の継承にもつなげることができるでしょう」とテクノプロ コンサルティング・パートナーズ社の児玉 峰章氏は説明する。
現実の情報を基に仮想空間を動かすこと
株式会社テクノプロ コンサルティング・パートナーズ社 モビリティ事業本部 モビリティ統括部 シミュレーションソリューションセンター リーダー 児玉 峰章氏
児玉 峰章
株式会社テクノプロ
コンサルティング・パートナーズ社
モビリティ事業本部
モビリティ統括部
シミュレーションソリューションセンター リーダー
 国内でも大手企業を中心にデジタルツインの導入が進み、成功例も増えつつある。ただ一方で、大手がつくるデジタルツイン環境は、グローバルの工場全体を仮想空間に再現するといった大規模なものが多い。このような仕組みは、ヒト・モノ・カネに余裕のある一部の企業にしか実現できないだろう。

 「日本の製造業は99%以上が中小企業です。それらの企業が、『自社には無理だから』とデジタルツインを諦めてしまうのは、非常に大きな損失だと思います。私たちは、何も全社規模の大がかりな環境だけがデジタルツインではないと考えています。例えば、特定の製品をモデル化し、その性質や挙動を予測するシミュレーション環境も、デジタルツインと呼んでいいのです。全社導入か部分導入かに関係なく、『どのような価値を得られるか』が大事なのです」と話すのはテクノプロ・ホールディングスの伯田 誠氏だ(図1)。
テクノプロ・ホールディングス株式会社 テクノロジー&ソリューション戦略室 シニアコンサルタント 伯田 誠氏
伯田 誠
テクノプロ・ホールディングス株式会社
テクノロジー&ソリューション戦略室
シニアコンサルタント

ITとOT、
両方に強いパートナーと
取り組むことが肝心

 では具体的に、ものづくりに新たな価値をもたらすデジタルツイン環境は、どのように構築すべきなのか。

 まず、データ収集のためのIoTやネットワーク、データを整理・統合する基盤、3Dモデル化、分析・解析のためのAI活用など、多様な技術を組み合わせてシステム化するためにはITの知見が不可欠だ。

 IT系のベンダー/コンサルティングファームはこれらの領域をカバーするソリューションを有しているが、ことデジタルツインの構築に関しては、それをそのまま採用・導入しても成果が上がるとは限らない。「なぜなら、その生産現場特有のOT(Operational Technology:工場設備などの物理的な設備やシステムを最適に監視・制御・運用するための技術)との融合と最適化が、効果を上げる上で重要だからです」と伯田氏は指摘する。

 一口に工場設備といっても、扱う品物や稼働率、歩留まりなどはそれぞれ異なる。となれば当然、各設備から得られるデータの内容や粒度、品質を1つの尺度で図ることは難しい。この前提を理解しないままシステムを構築しても、現場の状態を正しくデジタル空間に再現することは困難だ。

 「製造DXには、ITとOT両方の知見・分析力・技術力が必要です。その点、テクノプロは長年にわたり製造業の現場改革を支援してきました。ITとOTを融合し、お客様のニーズに合った製造DXをご支援することが可能です」と児玉氏は言う。

 特定のベンダーに依存しなくて済むことも強みだ。顧客のデジタル化の進展状況や直面する課題に合わせて、ベスト・オブ・ブリードによる製品選定、環境構築を推進する。

 また、ニーズの高い製品やテクノロジーもいち早くキャッチアップしている。例えば「ROCKWELL Emulate3D」や「NVIDIA Omniverse」など業界を代表するデジタルツインプラットフォームの技術習得に努めるとともに、両社とも密な協業関係を構築。培ったスキルやノウハウを生かし、顧客環境の構築を支援する(図2)。

段階的な活用高度化、
横展開などの
プロセスにも伴走する

 もちろん、最初の一歩を踏み出したあとのその先の取り組みにも伴走することが可能だ。顧客が目指す価値の創出に向けて、デジタルツインの段階的な活用拡大を提案していくという。

 「例えば、あるプロセスで成果が出た仕組みをほかのプロセスへ横展開することで、効果を増幅できます。また、設備データや稼働データを収集・分析する仕組みを生産ライン全体に拡張すれば、より大きな価値創出が可能になるでしょう。横展開は、お客様が単独で進めることが難しいことの1つですが、段階的なステップアップで高度なデジタルツインの実現をサポートします」(伯田氏)

 なお、同社によれば、デジタルツインの効果を引き出す上では「データ取得」「データ生成」「データ活用」という3つのフェーズに注目することがポイントだという。

 まずデータ取得ではデータの網羅性と正確性を追求する。データの質が低いと、実用に値する3Dモデルをつくることが難しくなるからだ。データ生成では、取得したデータの分類、整理、加工を行った上でモデル化し「使えるデータ」に変えていく。そしてデータ活用では、いよいよデジタルツイン環境を構築し、シミュレーションやテストなどを繰り返し実行する。同時に、諸々のAIを応用して傾向分析や予兆診断を行いながらデータを活用していく。

 テクノプロは、グループ企業やパートナーとの連携に基づき、この3つのフェーズをワンストップで支援する。例えば、ドローンなどを用いた点群測量により、正確かつ網羅的なデータ取得を実現するのがテクノプロ・コンストラクションだ。画像/点群データや2Dデータの3Dモデル化やシミュレーションは、テクノプロ コンサルティング・パートナーズ社が担当するほか、AI関係・ツールベンダーなどとも適宜連携を図る。そして、現場に則した運用をデザインし、価値創出の最大化をサポートしていくという。

 「また、リソースやスキル不足という課題を持つお客様には、高度なスキルを持つエンジニア人財を派遣して、現場の運用自走化と人財育成を共に進めることが可能です」と児玉氏は付け加える。

デジタルツインは
顧客主体で進めることが
継続的な価値創出のカギ

 特に効果創出に向けて重要なのがデータ活用フェーズといえるだろう。どんなに優れた仕組みも、生産プロセスに正規に組み込まれ、使われ続けなければ価値を生み出すことはないからだ。これについてテクノプロは、システムの恒久運用・保守など、まさにOTの要となる部分は顧客が主導して取り組むことを提唱している。

 「もちろん、我々はデータの取得・生成から環境構築、運用・改善までのライフサイクル全体に伴走しますし、現場改善コンサルや技術者派遣によって最初の一歩を後押しすることもできます。ただ、最終的にはお客様組織内にデジタルツインの活用を主導する部署や人をつくり、そこが主導して取り組むことが、継続的な価値創出のカギを握ります」と伯田氏は語る。共に取り組む過程で、そのためのスキルトランスファーも随時行っていくという。

 既に多くの企業が、テクノプロとの取り組みによって成果を上げている。ある大手自動車メーカーは、当初IT系のコンサルティングファームと共にデジタルツインの実現を目指したが、思うような成果が得られなかった。自動車の生産ラインやOTエンジニアリングの知識・経験が不足していたからだ。そこでテクノプロが入り、グループ/パートナー6社の連携によってデジタルツイン環境を構築。それまで実車で行っていたテストを設計・開発段階でシミュレートしたり、不具合を仮想空間で再現できるようにしたりした結果、生産性と製品の品質が大幅に向上したという。

 新興国企業の躍進や人財不足の慢性化など、日本の製造業を取り巻く環境は厳しさを増している。競争力を維持・強化するためには、デジタルツインをはじめとしたテクノロジーの活用によって、生産プロセスの変革を図ることが不可欠だ。テクノプログループは、パートナー各社も含めた総合力を武器に、日本企業の製造DXを強力に支援していく。