
MotionBoard 生成AI搭載版が
現場の業務改革を実現
2025年11月11日と12日の両日、ウイングアークのプライベートイベント「UpdataNOW25」が、芝公園のザ・プリンス パークタワー東京で開催された。12日午後、同イベントの講演会場を埋めた200人超の聴衆の前で、ウイングアークの事業戦略本部DE事業戦略部 副部長 小林大悟氏は、生成AIとBI(ビジネスインテリジェンス)を組み合わせることで、データ分析を進化させることができるだけでなく、現場の業務効率化にも寄与できると強調した。
導入進む生成AI、
しかし現場浸透はこれから
2022年11月のChatGPTの登場以来、生成AIが話題に上らない日はまずない。だが業務での有効活用となるとどうだろうか。
「業務で生成AIを使っている方はどれくらい、いらっしゃいますか」壇上に立った小林氏は、来場者に向けこう質問する。“生成AIを使っている”と全体の半数以上が挙手した。一見、導入が進んでいるように思えるが、小林氏がさらに「会社の半分以上の人は、生成AIを使って業務していますっていう方って、どうでしょう」と問いかけると、挙手した人数は全体の30%程度にまで減った。
小林氏の問いかけで明らかになったのは、日本企業の生成AIの業務での本格利用、もっと言えば現場への浸透はまだこれからという事実だ。講演で小林氏が参照した総務省の「令和7年版情報通信白書」の調査でも、米国やドイツ、中国が業務での生成AI利用率がいずれも90%を超えているのに対して、日本は55.2%にとどまる。
生成AIとBIツール、
それぞれの得意不得意
ウイングアーク1st株式会社
事業戦略本部 DE事業戦略部
副部長
小林 大悟 氏
現場での生成AI利用拡大のカギになるのは何か。壇上で小林氏は「データ活用」だと指摘する。生成AIの特性を理解すれば、より効果的で効率的なデータ分析が可能になる。
ウイングアーク1st株式会社
事業戦略本部 DE事業戦略部
副部長
小林 大悟 氏
重要なのは、生成AI単体ではなく、既存のBIを組み合わせて利用することだ。「生成AIがあれば全てできるのかもしれないと思ったこともありましたが、詳しく調べると、両者の能力にはさまざまな違いがあることが分かってきました」と小林氏は語る。
実際、データ分析での活用方法を考えると、生成AIとBIにはそれぞれ得意・不得意がある。「対話型の生成AI、いわゆるAIチャットは自由分析向きで、継続的・定期的なモニタリングはBIツールが得意」(小林氏)
では、生成AIの得意分野とは何か。例えば社長から「なぜこれはこうなっているのか」と問われるような場合では、質問内容に応じて都度データを分析する必要がある。こうしたケースでは、自然言語で問い合わせできる生成AIのプロンプトを使った方が作業ははるかに容易だ。一方、BIツールでは使い方を理解した上で、マウス操作による設定を済ませなければ、求める結果にたどり着けない。
口コミなどの非構造化データの収集も生成AIの得意分野だ。従来であれば、口コミサイトを探し回って情報を集めるといった手間がかかり、手作業への依存も避けられなかった。しかし、指示の工夫次第で、こうした作業を生成AIが代替できるようになっている。単に非構造化データを収集するだけでなく、集めた情報を分析して、どのような傾向が見られるかを整理することも可能だ。「マルチモーダル」という言葉が示すように、生成AIが理解する対象はテキストにとどまらず、画像、音声、動画へと広がっている。
一方で、売上高や受注率といった構造化データの継続的・定期的なモニタリングはBIツールが得意とするところだ。生成AIは、同じ質問に対しても、問いかける度に異なる回答を返すことがあるため、定常的な分析レポートを求める用途には向かない。BIツールにはこのような問題は発生しない。
現状の生成AIは大量のデータ分析も得意ではない。「100万行や1000万行のCSVファイルを、生成AIで分析しようとして、途中で処理が固まったといった経験がある方もいらっしゃるのではないですか」と小林氏は話す。分割して時間をかければ可能かもしれないが、BIツールに比べて効率は劣る。
同様にリアルタイム更新や異常検知、通知なども、生成AIにはハードルが高い。技術的な問題はクリアしつつあるものの、セキュリティなどの理由で、基幹システムとの接続を情報システム部門が許してない企業が多い点も、生成AIには不利に働く。BIツールならこれらの問題は発生しづらい。
生成AI×BIで業務改革を
実現する3つのポイント
生成AIとBIそれぞれの特性を踏まえながら、BIに生成AIを取り入れることで、データ分析と活用はこれまで以上に進化し得る。小林氏がそのポイントとして指摘するのは、「生成AIを業務で使える形で現場展開しよう」「現場の非構造化データも意思決定に活かそう」「ノウハウを言語化して、社員もAIも使える知恵にしよう」という3つの視点である。
ウイングアークでBIツール「MotionBoard」のプロダクト責任者を務める小林氏は、これら3つのポイントをより具体的に示すため、生成AIとBIを組み合わせることで何が可能になるかを、「MotionBoard 生成AI搭載版」のデモを交えて解説した。
MotionBoard 生成AI搭載版は、UI/UXを全面刷新し、より直感的でスムーズな操作性を実現。AI活用とフロー機能の連携により、自然言語によるダッシュボードやアプリ生成や、チャートや画像の自動分析などが可能にする
まず、「生成AIを業務で使える形で現場展開しよう」についてだ。データ入力が可能なMotionBoardは単なるデータ分析だけでなく、現場の業務効率化やDX推進を可能にする機能を備える。その中でも業務効率化に直結するのが、「フロー」と呼ばれるアプリ作成機能だ。フローは「データフローと業務フローをつなげるビジネスロジックを簡単、柔軟に作る仕組み」(小林氏)である。単にデータ分析に生成AIを使うのではなく、アプリを作り現場で活用してもらう点がポイントだ。AIウィジェットという生成AIを用いた機能により、アプリを自然言語で作成できるようになった。こうしてアプリやAIウィジェットを現場で使う中で、分析に有用なデータが自然と集まる仕組みが実現する。
次に、「現場の非構造化データも意思決定に活かそう」である。売上実績や予算の進捗率といった構造化データだけでなく、現場には人による日々の報告事項という非構造化データが存在する。生成AIを活用すれば、こうした報告事項から、ネガティブあるいはポジティブな傾向がすぐに分析できる。さらに製造業などでは、映像データを解析して生産ラインの異常を検知するといった応用も、生成AIで可能になる。
最後に、「ノウハウを言語化して、社員もAIも使える知恵にしよう」である。「生成AIは皆様の会社を知りません。会社には、業務を熟知した匠のような方がいらっしゃるものですが、こういった方のノウハウを文字に起こすと生成AIのプロンプトに組み込めるようになります。その結果、社員全員がノウハウを得られるだけでなく、AI自体も賢く使えるようになります」と小林氏は説明する。
さらに小林氏は、ノウハウ言語化の実例として、多品種生産における生産計画立案の省人化と技術継承で生成AIを活用したヤンマー建機のPoC(概念実証)の事例を公開した。生産計画は日次で立案する必要があるが、生産の制約や考慮すべき事項を踏まえて最適な生産順序を決める必要がある。一方、多品種生産での生産計画立案においては、細かな仕様違いや追加される品種への対応などに対して、すべてをルール化することが難しい。
多品種生産の同社では従来、生産計画のプロが手作業でExcelのセルを並べ替えて1日の生産順序を決めていた。このPoCでは、言語化された生産制約や考慮事項をもとに、生成AIが生産計画の素案を作成し、MotionBoard上のアプリでプロが生産計画を仕上げることで計画立案の工数を削減する。また、計画を仕上げる過程で気づいた考慮事項をプロンプトとして言語化することで、素案の品質が改善するだけでなく、ヤンマー建機での技術継承にもつながるという。
生成AI対応に加え、UI/UXのモダナイゼーション、フロー機能の強化、旧バージョンとの共用を可能にするClassic互換モードなどを実装したMotionBoard 生成AI搭載版が、このたびリリースされた。


