少子高齢化による人手不足、物価高による原価高騰など、地方製造業を取り巻く環境は厳しさを増す。山積する経営課題の解決のために新潟食品製造会社の情報システム部門が集結。DXの課題やデータを活用した現場改革について、率直に語り合った。見えてきたのは、情報システム部門が、ITインフラを保守・運用・メンテナンスを行いながらも、経営課題解決の伴走者として現場と経営を繋ぐハブとしての役割を果たそうとしている姿だった。
―DX推進課題が山積する中でデータ活用・分析に着目した理由についてお聞かせください。
米倉 我々メーカーはこれまで商品の販売状況について、卸売会社を介してしか把握できなかったため、小売店の店頭にどれだけ商品が供給されたのか、卸売会社に在庫がどれだけ残っているのかなど、商品の需給バランスをリアルタイムに把握したいというニーズが元々ありました。
近年、当社においては、卸売会社の出荷データを活用できるようになってきており、こうしたニーズに応えるためにデータを迅速に収集・集計・分析できるデータ活用基盤としてウイングアークのDr.Sumを導入しました。加えて、BIダッシュボードMotionBoardの導入により、営業自身が必要なデータを可視化し、卸売会社の出荷情報から「どの小売チェーンに、どれだけ商品が流れているのか」、さらには「最終的にどこで売れているのか」まで把握できるようになりました。これにより、売上計画と実績の比較といった売上管理、費用管理への活用や、小売チェーンに対してデータに基づく提案が可能となり、販売促進にもつなげています。
星野 三幸では他社分析ツールを使っていましたが、売上分析に限られ、リアルタイムで在庫や生産まで把握できない点が課題でした。当社の商品は鮮度が重視されるため、在庫管理はコストと品質の両面に影響します。この課題を解決するため、在庫や生産状況をリアルタイムに分析して在庫適正化を図ることを目指してDr.Sumを導入しました。Dr.Sumを使って、今の在庫量と見込み数量を比較しリスト化して配信しています。また売上の前年対比、担当領域や特定得意先などに関して、営業自身でDr.Sumを操作し分析できるようになりました。現場からは「操作しやすい」との声も寄せられています。
関 岩塚製菓では20年前からDr.Sumを導入し活用しています。当初はDr.Sumを使って出荷伝票を検索する仕組みを構築し業務改善に貢献しました。その後、営業部門が売上データを可視化・分析するツールとしてMotionBoardを導入・展開しました。導入時は、情報システム部門でダッシュボードを作成していたのですが現在は現場部門が自らダッシュボードを作成し、活用するようになりました。データ活用は、活用する部門が自らの課題に基づいて現場視点で可視化できるようにすることが大事です。情報システム部門はその環境整備や伴走を支援することが現場に浸透させるポイントだと感じています。
―現場でMotionBoardの利用が拡大するきっかけはありましたか?
関 小さな成功が利用拡大につながったと感じています。最終工程(検査工程)で、1時間に1回テストピースを抽出し、包装と中身が一致しているかをチェックしているのですが、従来は証拠としてバーコードと日付のフィルムを切り抜いて紙の書類に貼りつけていました。今はハンディ端末でバーコードをチェックしデータ化したものを、MotionBoardで可視化し工場内のモニターに映しています。作業負荷の軽減とともに異常発生時における対処の迅速化が図れました。
その効果をきっかけに、工場の各担当者が様々な工程で、デジタル化したものをMotionBoardで見せる活動を広げています。例えば、後工程で不良によるロスを確認した場合、MotionBoardを使って前工程にフィードバックすることでロスの最小化に役立てています。製造部門において、MotionBoardによるダッシュボードを作成できる人財は5名です。今期、10名に育成することを目指しています。情報システム部門は、現場の自発的活動を支援する伴走者として、データが連携し上手く動いていることを常にウォッチしています。
青田 生産現場でデータを活用するためにMotionBoardを導入しました。当初は現場主導で、DX推進部はノータッチでした。しかし、利用がなかなか進まないため、DX推進部が手をかけている状況です。活用事例として、歩留りの可視化があります。歩留まりが落ちてきたら、前工程に問題がないか、点検に入ります。また、改善活動の効果を可視化しています。自分たちの取り組みによる成果を、データとして目で確認することで改善意識向上につながっていると、現場からも評価の声があがっています。
―情報システム部門に対し、経営課題であるDX推進を期待される中で、DXが進んでいる企業ほど内製化率が高い傾向がある点についてどうお考えですか?
安中 DX人材は、エンジニアとしてのスキルや知識に加え、プロジェクトを円滑に進めるための業務理解が必要です。しかし、エンジニアの採用は難しく、限られた人員で全てを担うのは現実的ではありません。こうした背景から、ローコード開発を活用し、現場が自らデータ活用を進められるような体制づくりを進めています。岩塚製菓さんでは、ローコード開発を通じて現場が主体的にデータ活用を進めていると伺い、私たちの方向性は間違っていないと確信できました。一方で、課題は、自走する現場を情報システム部門がすべてフォローできないということです。そこで、システム開発部で他部門の人材をDX人材として受け入れ育成し、再び部門に戻すことで、全社的な取り組みへと広げていきたいと考えています。
関 岩塚製菓では、情報システム部門にはITスキルを持つ専門人財が集まっています。一方、DX推進室は、製造や営業など現場経験を持つ人財が参加し、現場視点を活かした取り組みを進めています。そのため、情報システム部門の人財も現場の業務を理解するべきだと思い、現場へ赴いて現場を学ぶ取り組みを積極的に行っています。
青田 これまで情報システム部門は、ユーザー部門に頼まれると、それに応えて開発してきました。そのことが、ユーザー部門のITリテラシーが育たない下地になっていると感じています。DX推進の観点では、情報システム部門とユーザー部門の人材育成を合わせて取り組む必要があると思っています。
星野 三幸は、情報システム担当の人員が少ないので、現場が主体的にローコード開発を利用しデータ活用の裾野を広げていくかたちを考えています。
―DX推進において情報システム部門は中心的役割を担うことを期待されていますが、今後に向けて考えていることや抱負があればお聞かせください。
関 岩塚製菓の中期経営計画(2025-2027年度)においてDX推進は重点テーマの1つに掲げています。その中で、「社員全員でデジタル・データ活用し、意思決定が行える会社」を目指しています。現状では、活用するデータの整備を進めている段階ですが、会社全体を俯瞰してDXを推進できるのは、経営と現場の双方と会話ができる情報システム部門だけだと自負しているので、旗振り役を担っていきたいと考えています。
青田 一正蒲鉾もデータ整備が課題です。各部署で様々なシステムが動いていてデータはあるのですが、連携がとれていません。また、生産部門、営業部門、マーケティング部門でデータを活用しているのはごく一部の従業員です。データの民主化に向け、Dr.SumやMotionBoardをもっと活用するために、DX推進部がデータ連携や、使い方のレクチャーなど現場を引っ張っていかなければならないと思っています。
星野 三幸は、トップの意思のもと2025年にDX委員会を設立し、各部から代表者を選出し活動を開始しました。意見交換する中で、各部においてDXが進んでいない現状を再認識しました。現状を変えるためには、情報システム担当の人材が業務に入り込むことが必要です。当社は規模が小さいゆえに、情報システム担当と各部の壁を取り払い、コミュニケーションを深くとりやすいと考えています。情報システム担当が主導し、DX委員会、各部と連携しDXを進めていきたいと思います。
米倉 情報システム部門は、現場に近いところで仕事をしながら、小さな成果を積み上げていくことが大切になると考えています。現場との信頼関係をより強固にすることで、DX推進を加速させるとともに、情報システム部門の存在価値を高めていければと思います。
安中 システムを導入しただけで課題が解決するわけではありません。そのシステムをどのように使い、価値を生み出すか。経営層、現場とよく議論したうえで道具を入れることが重要だと思います。また、ROI(投資利益率)の観点から集中と選択を行うために、時には現場に対し嫌われ役になることも必要だと思っています。
関 今回のユーザー座談会は、課題を共有し本音で語り合う貴重な時間となりました。1社だけでは解決が難しいこともあります。新潟のDXレベル向上を図ることで、各社のDXも進むと確信しました。
星野 ウイングアークのユーザーコミュニティnestに参加しなければ、みなさんと知り合いになることはなかったと思います。企業の垣根を超えて、情報共有はもとより同じ志を持つ仲間ができたことは、DX推進に本格的に取り組むうえで心強いです。
―みなさんのお話をお聞きし、情報システム部門がDX推進の要になると改めて認識しました。インフラ運用から、経営課題解決まで幅広い社内ニーズへの対応が求められる情報システム部門の皆様の情熱が新潟から全国へ広がっていけたら素晴らしいと感じました。本日は、ありがとうございました。
会社概要
一正蒲鉾
1965年創業。カニ風味かまぼこ「サラダスティック」で圧倒的なメーカーシェアを持ち、小売店向けに水産練製品を中心に製造・販売を展開している。全国生産・販売体制を構築し、一正ブランドの拡大・浸透を果たしている。
岩塚製菓
1947年創業。原材料へのこだわりを貫き、お米と対話しながら米菓づくりを続けてきた企業。黒豆せんべい、田舎のおかき、味しらべ、新潟ぬれせんべいなど、日本の伝統的食文化である米菓を通じて顧客に美味しい笑顔を広げている。
亀田製菓
1946年創業。亀田の柿の種、ハッピーターンなどのロングセラーブランドをはじめ、「亀田のあられ・おせんべい」は多くのお客様に愛されている。今後は、お米の恵みを美味しさ・健康・感動という価値に磨き上げ、健やかなライフスタイルに貢献していく。
三幸
1937年創業。三幸の理念は「山の幸、野の幸、海の幸で食品を製造し、社会に貢献する」。黄金ままかり、サーモン塩辛など、新潟ならではの自然の恵みを生かした美味しい逸品を作り出し、ギフト・お土産・毎日の食卓へ届けている。



