小売現場の業務改革
組織に適合したデータ活用基盤

小売業にとって、顧客体験の質が競争力を左右するいま、店舗は「顧客視点」の最前線であり続けている。ザ・ノース・フェイスや自社ブランド「Goldwin」などを展開するゴールドウインは、販売拡大と顧客満足度向上を見据え、国内直営店の店舗運営を強化する。鍵となったのは、店頭で生じる膨大なデータの活用だ。ウイングアークのデータ分析基盤「Dr.Sum」とBIダッシュボード「MotionBoard」を導入し、リアルタイムでのデータ収集・可視化を実現。本部の店舗マネジメント強化、販売員一人ひとりの提案力・判断力の構造的な強化まで踏み込み、データドリブンによる店舗改革が本格的に動き出している。

販売員の誰もが使える
データ活用基盤を構築

株式会社ゴールドウイン
管理本部
システム部 基幹システム刷新東京2グループ
リテイルチーム
渡辺 勇人 氏

世界的アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」、社名を冠するオリジナルブランド「Goldwin」を主軸に展開するゴールドウイン。人と自然が共生する世界観が多くの人に愛されている。2024年5月、同社は「人を挑戦に導き、人と自然の可能性をひろげる」という新たなパーパスを掲げた。アウトドアの枠を超え、人と自然のあるべき姿をデザインし、社会への貢献姿勢をより明確にした。

パーパスの下で成長戦略を進める同社にとって、国内外160以上の直営店を運営する意義は大きい。現場で生じるデータを活用し、店舗改革を推進できるからだ。しかし、これまで国内直営店のデータを生かし切れていなかったという。この課題について、ゴールドウインの渡辺勇人氏は話す。

「売上分析などの新たなリポート開発のたびにベンダー依頼を要したため、開発中の要件変更に即応できず、開発物が陳腐化する課題がありました。個別開発の積み重ねで情報が散在し、共有や連携が滞るなど業務効率も低下していました」

直営店でも会員分析やインバウンド分析など複数ツールの導入が、検索負荷を高め、スキルによる情報格差も生じていた。「店舗でのデータ活用には、誰もが必要なデータにすぐアクセスできる環境が求められました」と同社の大庭良治氏は話す。

2023年、同社は直営店向けデータ活用基盤の選定に着手。ポイントは、「店舗の様々な情報を一元管理し、いかにシンプルで分かりやすく可視化できるか」だった。

BI×データ分析基盤
ワンセットが採用ポイントに

株式会社ゴールドウイン
販売本部
東日本販売部 販売1グループ
マネージャー
大庭 良治 氏

同社は複数製品を比較した結果、BIダッシュボード「MotionBoard」を採用した。選定理由を渡辺氏はこう説明する。「開発・利用の双方で直感的な“使いやすさ”が大きな強みでした。商圏分析機能を備え、Dr.Sumとの連携で国内直営店におけるPOSデータや会員、インバウンドなど多様なデータを一元管理・可視化できる点も、当社の課題を解決するものでした。高度な専門スキルを要さず、早い場合は1ボード3~4カ月程度で作成できる。入社2年目の私でも主戦力として構築できるのがMotionBoardの良さです」

2023年12月に採用を決定し、翌年5月に開発をスタート。当初、本部が作成したボードは販売部の実感と乖離(かいり)があったという。大庭氏は「会話を重ねてボードの見せ方や機能理解が深まり、意見交換がスムーズになりました」と振り返る。

全社データは一元管理されていたが、集計に時間がかかり、現場のアクセス権限も限定的だった。しかし直営店データをDr.Sumに取り込むことで、現場が必要な情報へ直接アクセスし、リアルタイムに活用できる環境が整った。

ダッシュボードを仕上げる段階では、エリアマネージャーが実際に触り改善点を反映するプロセスを繰り返した。2024年8月、MotionBoardによるダッシュボードをリリース。ウイングアークの伴走支援も不可欠だった。「レスポンスが早く、メールだけでなくオンラインでも手厚く支援してくれます。ユーザー会にも積極的に参加し、知見が広がりました」と渡辺氏は語る。

ダッシュボードで確認・判断
業務のルーティンに組み込む

現在、同社は消化実績、販売実績、商圏分析、免税実績の4つのダッシュボードをリリース。国内全直営店における3年分のPOSレジ明細データを分析・可視化している。本部はリアルタイムに多角的な分析を行い、店舗側も権限に応じて同一のボードを参照可能だ。店舗での活用について、大庭氏は次のように話す。

「既存のレジシステムから直接MotionBoardにアクセスできます。免税実績の前年対比や会員ランク変化に加え、仮説に基づいた対策の実行や値下げ効果の確認など、次のアクションに活かせるようになりました。週次報告書の作成にもデータを活用できるようになり、今後は自動化も検討しています。ポイントは、データの確認と判断を業務のルーティンに組み込むこと。販売員が意識せずデータを活用し、提案力や販売力を高めていくことだと考えています」

導入により本部と店舗が共通指標で課題を共有できるようになった。今後の展望について渡辺氏は語る。「自店と他店を比較する機能やお客様の声といった定性的データ、外的要因、在庫・客層分析にも取り組んでいきます。提案スピード向上や日報自動化など、現場からはAI活用への期待も高い。今回のデータ活用はスタートラインに立った段階です。これからはデータドリブンな販売促進・マーケティングを推進し、売上成長と顧客価値の最大化を実現します」

ダッシュボードを活用した店舗改革は、ゴールドウインのさらなる成長を加速させる原動力となるだろう。

顧客構成比・インバウンド需要・売上構成・男女別売上を可視化。データ活用を業務ルーティンに組み込むことで提案力や販売力を高めていく