
アイリスオーヤマが挑むレガシー脱却による「帳票開発の民主化」
DXを進めるアイリスオーヤマでは、フルスクラッチで開発した受注・出荷システムが最後の重要領域として残っていた。汎用機ベースのため、 COBOL(コボル)を扱えるエンジニアが少なく、Javaへの移行に当たり、内製が難しい帳票印刷が課題となった。国内11工場で1日10万枚のラベルを印刷するパフォーマンスやスプール機能に加え、開発のしやすさ・利便性・コストを総合評価し、ウイングアークのデジタル帳票基盤SVFを採用。増え続けるラベル・帳票に、同社は生成AI活用への期待を寄せる。
受注・出荷システムを刷新
帳票印刷はパッケージ選定がカギ
生活者の不満を解消する「ユーザーイン発想」を軸に、アイリスオーヤマはビジネスモデルを展開している。コーポレートメッセージ「アイ ラブ アイデア」の下、年間1000アイテム以上の新商品を生み出す商品開発力に加え、メーカーと問屋の機能を併せ持つ「業態メーカーベンダー」という独自の仕組みで流通の無駄を省き、お客さま起点で新市場を創造する。商品領域は家電や食品・消耗品など日常を支えるものからBtoB分野まで多岐にわたり、事業面ではロボットなど新技術やサービスにも力を注ぐ。さらに、ユニークなビジネスモデルでグローバル事業を拡大し、世界中の「困りごと」解決に取り組んでいる。
アイリスオーヤマでは、時代の変化に応えるためにデータドリブン経営実現に向け、DXを積極的に進めている。最後の重要領域として残ったのが、フルスクラッチで開発し汎用機で動く受注・出荷システムだ。開発者の少ないCOBOL言語からの脱却が急務となり、レガシーマイグレーションに乗り出した。
アイリスオーヤマ株式会社
システム部 部長
阿部 弥孝 氏
「当社では、内製でシステムを開発・構築・運用しています。新受注・出荷システムは開発者の多いJava言語を採用しました。レガシーマイグレーションに向け、内製できなかったのが帳票印刷機能でした」と、同社 システム部 部長 阿部弥孝氏は振り返り、こう続ける。
「特に、印刷を管理するスプール機能が複雑で、開発もメンテナンスも多くの工数がかかります。システム部のリソースは限られており、帳票印刷機能はパッケージを採用することにしました」
アイリスオーヤマの受注・出荷における帳票印刷は、荷物に貼るラベル、送り状、指示書などだ。同社は商品数が豊富で、多くの企業と直接取引を行う。出荷業務がとどこおることは、自社のみならず取引先の事業に影響を及ぼす。2022年に、アイリスオーヤマでは、受注・出荷における帳票印刷システム製品の検討を開始した。製品選定では、汎用機を利用していた既存システムのパフォーマンスと、スプール機能を重視した。検討を重ねた結果、ウイングアークのデジタル帳票基盤SVFと他社製品の2つに絞り込んだ。
総合的な観点でSVFを採用
GUI操作で誰でも帳票開発
アイリスオーヤマでは、ウイングアークのSVFと他社製品のそれぞれでPoC(概念実証)を実施した。その結果について阿部氏は話す。
アイリスオーヤマ株式会社
システム部
小田 暖人 氏
「取引先に応じて多種多彩なラベルを印刷するため、印字などの特性から様々なプリンターを利用しています。SVFは、当社が利用している各プリンターをカバーしていたのに対し、他社製品は一部プリンターに対応していませんでした。またユーザーの操作性も優れており、開発のしやすさも魅力でした。さらに、国内11工場における1日10万枚ものラベル印刷ニーズへの対応に加え、午前中出荷という当社のニーズに応える、印刷スピードの速さも評価しました」
国内シェア7割※を占める帳票基盤ソフトウエアとしての実績と信頼はもとより、PoCで既存システムの機能を実現できることを確認したうえで、価格も含め総合的観点から2023年5月にSVFの採用を決定。導入プロセスにおいて、最初にして最大の山場となったのがラベル・帳票の開発だ。「既存システムの刷新に伴い、すべての帳票を新規作成する必要がありました。開発環境は、サーバーにSVFのソフトウエアをインストールするだけで容易に構築できたのですが、要件定義の際に棚卸しをしても開発するラベル・帳票数は500個に及びました」と、同社 システム部 小田暖人氏は話し、こう続ける。
※出典:デロイトトーマツミック経済研究所株式会社発刊ミックITリポート2025年12月号「帳票設計・運用製品の市場動向2025年度版」図表2-5 【運用】製品/サービスのベンダー別売上・シェア推移2024年度実績(https://mic-r.co.jp/micit/2025/)
「担当者数名で1年をかけ、膨大な数のラベル・帳票開発を完遂できたのは、SVFの高い開発生産性によるところが大きいと感じています。従来の帳票開発はコマンド入力を主体とした専門性の高い作業でしたが、SVFではGUIによる視覚的な設計が可能なため、作業効率が大きく向上しました。従来は帳票開発が特定の担当者に依存しがちでしたが、SVF導入後はより多くのメンバーが帳票作成に関われるようになり、開発の効率化と属人化の解消につながりました。バーコードをはじめとする帳票要素の配置も直感的に行え、品質を維持しながら短期間での開発を実現しています。加えて、SVFのマニュアルやスタートアップ動画も分かりやすく、教育やノウハウの共有も円滑に進めることができました。専門知識に依存せず、多くの人が帳票作成に携われる点は、SVFならではの強みだと感じています」
開発体制を数名から数十名に拡大
生成AIによる帳票開発にも期待
2025年2月、SVFの本番開発環境で総合テストを実施した。また、SVFへと切り替わることでラベルなどの印刷の仕方が変わるため、同社システム部では各工場でプレリリースというかたちで勉強会を開催した。「従来は専用端末を経由しなければ印刷できず、運用面で制約がありました。SVFのスプーラーでは、ユーザーが自席のPCからブラウザー経由で印刷を実行できるため、操作性が大きく向上しています。工場内のプリンターも効率よく共有できるようになり、現場の利便性向上につながっています」(阿部氏)
2025年9月に、SVFによる帳票印刷システムは本稼働し安定稼働を続けている。導入効果について、SVFのスプーラーによりユーザーの利便性が向上したと小田氏は説明する。「従来のスプーラーはコマンドベースだったため、帳票の確認や操作に手間がかかることがありました。今はブラウザー上の画面で利用できるようになり、工場ごとの出荷指示書やラベルなども直感的に分類して確認できるようになっています。また、これまでは過去の帳票を出力するためにシステム部への依頼が必要でしたが、SVFのスプーラーでは過去の帳票を自動的に探してくれます。ユーザーとシステム部の両方にメリットがあります」
アイリスオーヤマでは、SVFを中核に業務アプリケーションと帳票出力を連携。工場各拠点でのスピードを担保したラベル印刷ニーズに応えている
SVFによりCOBOLからJavaへと開発言語が変わったことでコストの抑制はもとより、開発スピードもラベルで1.5倍、帳票で1.2倍向上した。また帳票開発メンバーもCOBOLからの脱却により数名から数十名体制に拡大した。「現在、月数十件ほど新規の取引先が増えています。新受注・出荷システムは、グループ会社のアイリスフーズも共同利用しており、今後新規取引先のさらなる増加を見込んでいます。誰でも帳票開発できる環境の構築により、今後急増する出荷ラベル数にも柔軟かつ迅速に対応できると思います」(阿部氏)
SVFへの移行による運用面での効果について阿部氏は語る。「SVFの連携オプションUCX(Universal Connect/X)のメール配信機能により、SVFで作成した帳票(出荷情報)を、外部の倉庫に自動配信・送信を行っています。従来は別のシステムを使い、バッチファイルやメールサーバなどと組み合わせて運用していました。それをSVFで完結できるようになったことで、効率化が図れました」
ウイングアークのサポートについて小田氏は言及する。「今回、AWS上で冗長化した際に、ホットスタンバイ構成の仕方などをウイングアークに相談し実現できました。また、日々の開発の中で生じた疑問を問い合わせした際の迅速な回答により、開発をスムーズに進められたと思っています。さらに24時間保守により大きな安心の下で運用を行っています」
今後の展望について阿部氏は述べる。「今回は緊急性の高いCOBOLからJavaへの切り替えを優先しましたが、他の古い言語への対応も残っており、SVFへの統合を進めています。国内グループ会社やグローバル拠点への展開、電子帳簿保存法への対応も検討中です。また、お客さまからいただいた帳票サンプルを基に生成AIがレイアウトを組みあげてくれるといったAI活用にも期待しています。増え続けるラベルや帳票の開発・印刷を効率化することは、当社の成長を支えるものであり、今後もウイングアークのサポートとSVFの機能拡張に期待しています」
アイデアの力を信じ、より良い社会づくりに貢献するアイリスオーヤマ。これからもウイングアークのSVFと共に挑戦と成長を続けていく。
※掲載情報は2026年8月時点のものです



