信頼が生む新たな商機AI偽造時代を制す「Trustee」

ビジネスは「信頼」のもとに成立する。その根幹を揺るがすのが、生成AIによる偽造書類リスクの拡大だ。ファクタリング分野のパイオニア、三菱UFJファクターは、自社と取引先の「信頼」を守るため、ウイングアークのデジタルトラストサービス「Trustee(トラスティ)」を導入。1秒間に1000文書以上のタイムスタンプ付与という高速性で、AI時代の偽造対策に応える。同社の先進事例で見えてきたのは、守りだけではない。「信頼」がビジネスチャンスを生む。

電帳法をきっかけに請求書の真正性を
証明するタイムスタンプを導入

三菱UFJファクター株式会社
執行役員
事務システム本部 システム部長
和田 隆志 氏

生成AIによる領収書写真やPDFの偽造・改ざんが急増。その社会に与えたインパクトは大きい。請求書などの電子帳票の改ざんも世界中で発生している。「信頼・信用」を大切にし実践する三菱UFJファクターは、顧客との取引の証となる、請求書の正しさを徹底追及してきた。その姿勢はいまもこれからも変わらない。

日本初の本格的ファクタリング会社として1972年に設立された三菱UFJファクター。長年にわたり、MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)の信用力のもと、倒産が急増する時代において、単なる売上の未回収リスク回避だけではなく、企業の売上債権を保証するファクタリングと代金回収・でんさい一括ファクタリング業務の3本柱で事業を展開してきた。安心して販売先を拡大し成長戦略を実行できるように支援する同社の与信管理(信用リスク管理)の役割はますます大きくなっている。

従来、ファクタリング事業では、保証限度額を増減させる取引を実施した場合、印鑑を押した紙の書類を郵送していた。2018年に、Web上で請求書や通知書を発行し、保証の申し込みを完結できるファクタリングオンラインサービスを開始した。その背景について、三菱UFJファクター 執行役員 事務システム本部 システム部長 和田隆志氏は話す。

「同オンラインサービスは、当社とお客さまの請求書業務の効率化を図るものです。お客さまはWeb上で申し込み、請求書や通知書がPDFで発行されます。同サービスの実現に向けて課題となったのが、当社にはPDF化する仕組みがなかったことです。そこで、既存のSalesforceに連携し帳票の設計からPDF出力までを実現するSVFに対応したSVF Cloud for Salesforceを導入しました。コロナ禍で郵送された請求書の処理が困難となる中、同オンラインサービスを利用するお客さまが増えました」

同社の顧客には、営業担当者を通じて紙の書類やExcelで申し込みを行う。請求書は経理処理の観点から月初に早く知りたいためPDFでほしいという要望もある。これに応えるために、2020年に同社はウイングアークの帳票流通基盤SVF Transactを導入。PDFで確認し、電子受領か郵送かを選択できるサービスを開始した。

ファクタリング事業において、請求書のPDF化で大きな変化をもたらしたのが、2024年の電子帳簿保存法(電帳法)による電子取引データ保存の完全義務化だ。2022年に同社ではTransactと連携する外部タイムスタンプを導入した。その理由について三菱UFJファクター 事務システム本部 システム部 副部長 髙橋成和氏は説明する。

「タイムスタンプの付与は、電帳法対応の必要条件ではありません。ポイントは、請求書PDFを添付したメールが届くまでの間にデータが改ざんされても検知できないことです。当社にとって、発行する請求書が本物であること(真正性)の証明は、当社が掲げる『信頼・信用』の根幹にかかわることです。当社がお客さまに最もお届けしなければならないものは安心安全です。その信頼感があるからこそお取引いただいていると思っています」

1秒間に1000文書を超える
タイムスタンプを付与、事業拡大に対応

2025年に、同社はウイングアークからタイムスタンプの高速処理を実現するデジタルトラストサービス「Trustee(トラスティ)」の提案を受けた。「タイムスタンプを押すスピードに驚きました」と髙橋氏は率直に語り、こう続ける。

「タイムスタンプは1秒に1回押すというのが一般的です外部スタンプサービスもそうでした。Trusteeではスペック上、1秒間に1000文書を超えるタイムスタンプを付与できます。もう次元が違います。当社のお取引先数は約5000社です。1秒に1回のタイムスタンプでは処理完了までに80分以上かかりますがTrusteeなら大幅削減できます。ファクタリング事業が拡大しても余裕をもって対応できます。また、月初や決算月などでは1秒でも早く請求書がほしいというお客さまも多くいらっしゃいます。それに応えるうえでも有効だと思います」

三菱UFJファクター株式会社
事務システム本部 システム部 副部長
髙橋 成和 氏

Trusteeでは、外部スタンプサービスではなく、総務大臣の認定を受けた「ウイングアークタイムスタンプサービス(Trusteeタイムスタンプ)」を利用。現在、国内の認定タイムスタンプ事業者は6社ある。そのうちの1社がウイングアークだ。ウイングアークは、国内企業の事業に欠かせない帳票業務を長年支えてきた。その責任のもと、これまで培った技術と知見を駆使したTrusteeはAI時代の情報流通に「信頼」を提供する。

2025年に、三菱UFJファクターではTrusteeの採用を決定。「既存外部タイムスタンプからTrusteeタイムスタンプへの移行は、契約を切り替えるだけで対応できることから2026年4月から利用を開始しました」(髙橋氏)

同社ファクタリングオンラインサービスでは、申込は、オンラインと紙・Excelの2つから選択できる。仕組みとしては、SVF Cloud for Salesforceで請求書をPDF化してTransactに送り、そこでTrusteeと連携しタイムスタンプを押し、その後、電子受領か郵送かにわかれる。「オンラインサービスは申込から配信まで自動化されるため営業や事務職員が介在する必要はありません。請求書Web配信サービスもPDF化から配信、郵送サービスまで自動化されます。当社の請求書業務の大幅な効率化が図れ、本来業務に集中する時間を創出できました」(髙橋氏)

請求書は企業間取引のベースとなる。それだけに運用を支えるサポートは頼りになる存在だ。「ウイングアークの製品は国内で自社開発されているため、問い合わせにもスピーディかつ丁寧に対応してもらっています。また、ウイングアークの担当者と顔を見て話ができる安心感も心強いです」

タイムスタンプは存在と
改ざんされていないことを証明

当初、三菱UFJファクターのタイムスタンプ導入は、AI偽造書類への対応ではなかった。「信頼・信用」重視の価値観のもと、自社とお客さま間の「信頼」を守るためだった。その企業姿勢や考え方が、AI時代の偽造書類リスク回避の解決策につながった。

生成AIによる帳票偽造対策としてのタイムスタンプについて髙橋氏は解説する。「タイムスタンプは、『その時刻に作成されたものであること(存在証明)』と、『その時刻以降に改ざんされていないこと』を証明します。外部に出る前に付与することが重要なポイントです。また、元データとの一致・不一致を調べることができるハッシュ値をかけているため、改ざんしたらすぐにわかります。ハッシュ値の壁を乗り越えるのは非常に難易度が高いです。それをできたとしても、タイムスタンプ付きの原本によって改ざんを立証できます」

タイムスタンプに関して、同社とお客さまの捉え方を髙橋氏は明かす。「お客さまにはタイムスタンプの意義についてご説明しています。当社としては、すべてのお客さまに対し安心安全にお取引いただくために、その役割と責任を果たす一環としてタイムスタンプを位置付けています。生成AIによる偽造文書増加が社会課題としてとりあげられる中、お客さまの認識も変わってきたと感じています」

ファクタリングオンラインサービスはスタート当初50社から2000社に拡大した。Transactを活用したサービスもスタート当初10社から600社以上に急増している。「タイムスタンプを高速処理できるTrusteeの導入により、ファクタリング事業拡大を支えるインフラを整備できました」と、髙橋氏はビジネス面の効果に言及する。

今後の展望について和田氏は語る。「従来は、ファクタリング、代金回収などサービスごとに独立した組織体でしたが、2026年に統合的価値を提供するためにサービスを一体的に運営していく体制に刷新しました。それに伴い、システム部がITを全社統括することになりました。『信頼・信用』を掲げる当社ブランドの価値向上に向けて、ファクタリング事業で培ったタイムスタンプの仕組みの横展開も検討しています」

AI進化など時代が変化しても、三菱Uファクターの「信頼・信用」を大切にする企業姿勢は変わらない。ウイングアークのTrusteeという確かな基盤を得た同社は、これからも顧客との信頼関係を軸に、事業の成長を追求していく。