生成AI(人工知能)の本格的なビジネス活用が進む中、データセンターの増設・新設が相次いでいる。国際物流会社の郵船ロジスティクス株式会社は培った豊富な実績とノウハウを生かし、国内外で拡大するデータセンターに関わるさまざまな物流ニーズに応えるため、社長直轄の全国横断プロジェクトチームを立ち上げ、調達から輸送・設置まで一貫して対応できる体制を整えた。データセンター向け高性能GPU(画像処理半導体)サーバーで世界をリードするSuper Micro Computer, Inc.(スーパーマイクロ)のゼネラルマネージャーである佐野晶氏を迎えて、原秀則社長がデータセンター物流の現状と課題、協業の可能性について意見を交換した。
原 今、世界のデータセンター市場は生成AIの普及やスマートシティ化の進展により、飛躍的な成長を遂げています。これらは膨大な計算能力を必要とし、その計算処理を担うGPUサーバーの需要が増加、それに伴うさまざまな変化が起きています。GPUサーバーで世界トップシェアを持つ御社では、拡大するデータセンター市場をどのようにとらえられていますか。
佐野 世界的にデータセンターニーズは爆発的な伸びを見せています。特に生成AI処理のためのIT基盤としてGPUサーバーの需要は急拡大しています。当社はAI、クラウド、エンタープライズ向けの高性能GPUサーバーやデータストレージ製品を開発・製造しています。昨今は水冷式の冷却システムを組み込んだラック単位のソリューション提供にも注力しています。自社開発のコンポーネントを柔軟に組み合わせる「ビルディングブロックソリューション」により、新技術にも素早く対応できるのが強みです。日本市場でもAIブームの追い風を受けてGPUサーバー出荷台数でトップクラスの実績を上げています。

スーパーマイクロ
ゼネラルマネージャー 佐野晶氏
原 当社も2025年、データセンター向け物流サービスの提供を開始しました。サーバーやストレージ機器の国際輸送から国内配送、さらにはデータセンター内での開梱・設置までをワンストップでサポートしています。国際貨物輸送で培った経験やノウハウを生かし、高品質かつ柔軟な物流ソリューションを提供することで、お客さまのデータセンターに関わる物流の支援をしています。
原 データセンター市場が拡大する中、サーバーメーカーとして直面している物流上の課題や、物流パートナーに求めるニーズについて教えていただけますか。
佐野 GPUサーバーの需要が伸びるのに比例して、サーバーの発熱問題への対応として大規模な冷却・空調設備の需要が高まっています。当社としては、高性能サーバーや大規模な冷却・空調設備を世界中のデータセンターへ遅滞なく届けることが大きな課題です。

郵船ロジスティクス
代表取締役社長 原秀則氏
原 GPUサーバーや水冷式の冷却装置などの関連設備は、非常に高額で精密なうえ、背の高いケースも多くあります。特に海外への航空輸送では、製品の特性に合わせた柔軟な対応が欠かせません。必要に応じて、防振パレットの使用や輸送中の温度・湿度管理、振動対策を行っています。これまで培ってきた半導体や医療機器輸送の豊富な実績と経験を生かし、最適な輸送方法をご提案しています。
佐野 業界では計画から納品までのリードタイム短縮が求められており、多数の機器を一括搭載したラック製品を工場からそのまま輸送・設置するケースも増えています。その分、輸送サイズや重量が大きく、特殊な取り扱いが必要になるため、物流パートナーには専門的な知見と柔軟な対応が不可欠です。
また、プロジェクトにはデータセンター事業者、設備メーカー、システムインテグレーター(SIer)など多くのステークホルダーが関わります。サプライヤーであるメーカーとして、物流パートナーが関係者と密に連携し、プロジェクト全体を俯瞰して調整してくれることを期待しています。
原 当社は、データセンター物流に精通した経験豊富なメンバーによる専任チームを編成し、プロジェクトの立ち上げから海外サプライヤーからの出荷、データセンターへの納入完了まで一括管理します。
データセンター物流では、サプライヤー様、データセンター事業者様、SIer様、ディストリビューター様など、多くのステークホルダーとの調整が不可欠です。当社は納期調整やコミュニケーションの円滑化を通じて、お客さまの業務負担を大幅に軽減し、プロジェクト全体がスムーズに進むようサポートします。
さらに、PRINCE2をベースにした独自のプロジェクト管理手法「YPMM(Yusen Logistics Project Management Method)」を活用し、運営管理を徹底していることも、当社ならではの大きな強みです。

スーパーマイクロ関係者とプロジェクトに携わる郵船ロジスティクス主要メンバー
佐野 物流会社である御社が、多数のステークホルダー間の調整やプロジェクト全体の進行管理を行ってくれるのは大変心強いです。複数企業にまたがる大規模プロジェクトのマネジメント力こそ、物流パートナーに求める重要なポイントです。密接なパートナーシップは大きなメリットも生み出します。例えば、製品開発段階から物流会社と協議することで、輸送しやすい製品設計や梱包方法を検討できます。また早い段階から協力することで、結果的に納入までのリードタイム短縮やコスト削減につながります。
原 データセンター物流では扱う情報や製品自体の機密性が非常に高いため、新製品のサーバー仕様や設置場所など、外部に漏れてはいけない情報も多いですね。機密情報の管理やセキュリティ確保について、どのような対応を求めますか。
佐野 データセンターは国家規模の重要インフラに関わることもあり、機密情報の管理は非常にシビアです。プロジェクトごとに厳格な情報アクセス権限の管理を行い、社内でも知る必要のあるメンバー以外は、詳細情報を共有しないよう徹底しています。物流会社を含むパートナーにはプロジェクト開始前に必ず秘密保持契約(NDA)の締結をお願いしています。また輸送経路や保管倉庫での監視体制、関係者以外立ち入り禁止の措置、万一に備えた保険なども欠かせません。
原 当社では、情報セキュリティを最優先に、複数の層で対策を講じています。全てのプロジェクトはNDAの締結を前提とし、当社および協力会社の関係者間のみで厳格な情報管理を徹底しています。
さらに、専用システムを活用し、セキュリティポリシーに基づいた多層防御を実現。これにより、機密情報の漏えいリスクを最小化し、安心・安全なプロジェクト管理をお約束します。

佐野 今日、いろいろとお話を伺って、お互いの強みを生かすことで、より付加価値の高いソリューションを提供できると感じました。御社と当社が連携することで、単なる輸送委託の枠を越えて、機器の製造から納品、設置、その後の保守部品供給、古くなった機器の回収まで建設フェーズから保守、リバースまでの広範囲のサービスの提供ができるのではないでしょうか。今後ますますデータセンター物流のニーズは拡大、多様化していくでしょう。このパートナーシップを通じて、協業の機会を多く作っていきましょう。
そうしたニーズに対して、具体的な協業の機会を見出していきたいですね。
原 ぜひ、より一層密に連携し、データセンターの成長を共に支えてまいりましょう。AIやIoTの発展で大型データセンター需要が伸びる一方、エッジコンピューティングの進展により地方分散や中・小規模のデータセンターの建設も増加しています。今後、全国各地への柔軟で高品質なデータセンター物流の需要が期待されます。当社としては、データセンター物流サービスを軌道に乗せ、国内外で蓄積したノウハウをさらに深化させていきます。ご期待ください。