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子どもも大人も歯科矯正をする人が増えています。とはいえ、歯科矯正は方法も多様で、高額、治療には数年単位かかります。子どものうちから歯科矯正をするべきなのか? するとしたらいつ、どんな方法を選べばいいのか? 成長期の子どもの歯に詳しい小児歯科専門医で桜堤あみの歯科院長の網野重人先生に、子どもの歯科矯正への疑問を伺ってみました。

Q1 子どもの歯科矯正って増えているの?

A1 マスク生活の影響もあり、歯科矯正をする人は子どもも大人も急増

ここ数年で歯科矯正をする子どもが急増しているというのは、歯科医院の現場で実感しています。子どもに限らず、大人になってから歯科矯正をする人も増えていて、これから歯科矯正をしたいというお母さんやお父さんも多くいます。

歯科矯正がこれほど注目される理由としては、「歯科矯正で子どもの歯並びをきれいにしたい」と考える親が増えているからでしょう。

そういうニーズに応えるために、歯科矯正をする歯科医院も増え、以前より歯科矯正が身近になっています。また、コロナ禍で日常的にマスクをする生活になってからは、「どうせ歯科矯正をするなら、マスク生活の今のうちに」と考える人も多くいるようです。

Q2 歯科矯正は子どものうちからやるのが正解?

A2 「早ければ早いほうがいい」と焦るのは禁物。その子に合わせた歯の成長を考えて

最近多いのが、「お友だちが歯科矯正を始めたので、うちの子も」というお母さんたちです。欧米では、永久歯が生えそろった10代後半から歯科矯正をするのが一般的ですが、日本の場合、「子どものうちから矯正をしたほうがいい」「矯正は早ければ早いほどいい」と思い込んでいる親が多くいます。

しかし、子どもの場合、アゴの成長や歯の生え変わり時期から総合的に判断することがとても大切です。「●歳になったから、歯科矯正を」と画一的に考えるのは、あまりおすすめできません。アゴが成長途中ということは、歯の土台が動くということ。適切なタイミングで適切な治療をしないと、結局、矯正に必要以上の年月がかかったり、歯並びがきれいにならなかった、ということにもなりかねません。

子どものうちから矯正をするメリットが大きいケースとしては、上アゴと下アゴの骨格のバランスが悪い(受け口)、歯並びが悪すぎてむし歯になるリスクが高い、などがあります。しかし、それ以外の場合は、個人的には子どもの矯正を急ぐメリットはあまりないと感じています。

周りの子どもが矯正を始めると、「うちの子も」と焦りがちですが、まずはしっかり情報収集をして、子どもの成長のスピードに合わせた治療をしてくれる、信頼できる矯正医と相談することが大切です。親が子どもの歯並びにあまり神経質にならないことが、成長に合わせたその子にとってベストな方法を見つけるポイントです。

Q3 具体的に矯正を考えるとしたら、どんな方法があるの?

A3 矯正には年齢に合わせて大きく3種類あります

見た目の歯並びをよくしたいという目的で矯正をする場合、次の3つの方法があります。最近は治療器具や技術もかなり進化しており、いずれの方法でも正しく治療すれば、きちんと歯並びが整います。

拡大装置(拡大床)

始める年齢 7〜8歳くらい
治療期間 2年
費用の目安 10万円〜40万円
ポイント ねじ式の器具を口の中に入れて、アゴの成長を利用してアゴを広げることで歯並びを矯正。食事や歯みがきなどでの付け外しが簡単。1日16時間以上(食事や、学校でも外す必要がないとき以外は装着しているのが理想)の装着が必要だが、子どもが自分で勝手に外してしまう、器具をなくしてしまうというトラブルも。拡大装置だけで矯正が完結するケースは少なく、アゴの成長が止まった段階で、ワイヤーブラケットの二次治療をすることが多い。

ワイヤーブラケット

始める年齢 永久歯が生えそろったら(女の子16歳、男の子18歳以降が目安)
治療期間 2年半(それより短くて終わるケースも増えている)
費用の目安 80万円〜100万円
ポイント 歯の1本1本にブラケットという器具を取り付け、ワイヤーで固定。細かな調整が可能で、細かな部分も調整して確実に矯正。ワイヤーを締め付けるときに痛みや違和感を感じたり、歯みがきがしにくいためむし歯になりやすい。前から見えないように歯の裏側にブラケットを取り付ける方法もあるが、費用は100万円以上と割高。前に装着するより治療期間も長くなりがち。

マウスピース

始める年齢 永久歯が生えそろったら(女の子16歳、男の子18歳以降が目安)
治療期間 2年〜2年半
費用の目安 100万円
ポイント 透明のマウスピースを装着(24時間、食事と歯磨きの時以外)し、歯並びを整える。取り外しが簡単で、マウスピースをつけたままでも目立たないため、その手軽さから人気が高い。歯を動かす力が弱く、細かい微調整には不向き。きっちりと完璧に歯並びが整わなくても、全体的に整って見えればOKという人向き。長時間マウスピースを装着するため、唾液が歯に回りづらく、むし歯になりやすい。

Q4 矯正するときの注意点って、具体的にどんなことがあるの?

A4 子どもにとって物理的な負担のほかに、精神的なストレスも

矯正は口の中に器具を入れるため、子どもの負担はとても大きくなります。さらに長期間にわたる治療、高額な費用、定期的な通院など親子ともに物理的な負担もあります。また、矯正終了後も、歯が元の状態に戻るのを防ぐため、リテーナーというマウスピース型の装置を寝るときに装着する必要があります。リテーナーの装着期間は、矯正期間と同じくらいが目安といわれますが、欧米では一生装着するのが普通になっています。

本人のやる気や癖、生活習慣の改善が必要な場合も多く、幼い子どもの場合、意欲が続かない場合もあります。好き嫌いが増えたり、歯みがきがしっかりできない、さらには矯正が親子ゲンカの原因になることも珍しくありません。

子どもの成長や家族のコミュニケーションにも大きな影響を与えるので、矯正を考えるときは、それらのリスクと子どもの性格を総合的に考えてタイミングを見計らうといいでしょう。

矯正を始める前に知っておきたいこと

Q5 信頼できる矯正歯科を見つけるにはどうしたら?

A5 かかりつけ医やいろいろな矯正歯科の話を聞いて、納得できる治療をしてくれるところを選びましょう

日本の歯科医院では専門医でなくても、矯正歯科、小児矯正歯科を治療内容に掲げることができます。そのため、最近は専門的な知識や経験がないまま、矯正を手がける歯科医も少なくありません。

子どもの矯正の場合は、成長に合わせて治療方針を考えてくれる歯科医を見つけることが重要です。その点、小児歯科専門医の資格を持つ歯科医師は安心ですが、残念ながら全国に1200人ほどしかいないのが現状です。

近所に小児歯科専門医がいない場合は、かかりつけの歯科医に相談したり、矯正を行う歯科医院をいくつか回って話を聞いてみてください。ママ友や周囲の評判がよい、治療数が多いこともひとつの目安ではありますが、それが自分の子どもに最適とは限りません。口コミ情報を鵜呑みにせず、必ず自分の目で見て話を聞き、わが子に合うタイミングと方法を判断しましょう。

最後に

矯正にはいろいろな方法があり、歯科医の考え方もそれぞれです。大切なのは、自分の子どものお口の状態や成長具合、さらには性格や生活環境も考えて、親子で納得できる方法を見つけることです。友だちがよかった方法も、その子に合うとは限りません。矯正は一生にかかわる治療だけに、長い目で、子どもにとって一番よい方法を選択してあげましょう。

また、一生、健康な歯を保つことは、その人のクオリティ・オブ・ライフに通じます。矯正が、ていねいで正しい歯みがきや、定期的な歯のチェックを習慣づけるきっかけにできるといいですね。

網野重人先生
医療法人社団桜翔会桜堤あみの歯科院長
日本小児歯科学会認定小児歯科専門医

昭和大学大学院卒業後、同大学小児歯科学教室助手を経て同歯学部兼任講師、一般歯科医院院長、日本大学松戸歯学部兼任講師などに就任。2008年、東京都武蔵野市で桜堤あみの歯科を開院。患者とのコミュニケーションを重視し、子どもの成長や個性を考えた治療を行う。著書に「子どもの歯並びをよくする方法」(現代書林)ほか。

取材・文/久遠秋生 イラスト/まつむら あきひろ

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