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「お金の話はするものではない」という時代は終わり、「お金とどう付き合うか」は、これから生きていく力のひとつです。「お金」で自分たちになにができるのか。それを理解するためには、子供の頃から少しずつお金について学ぶことが大切。そこで「親子の金融教育」を提案する「フィナンシェの会」の亀井茉莉さんに、家庭でできる金融教育について伺いました。

消費・貯蓄・投資・寄付から学ぶ「金融教育」

──「金融教育」といっても、何をしたらいいのかわからない、という人が多いと思います。具体的に金融教育とはどういうことなのでしょうか。

亀井 「フィナンシェの会」のフィナンシェは「金融家」という意味で、金融関係の仕事に携わるママたちが中心となって設立しました。親世代はお金について教育を受けてきていないので、子どもに何をどう教えたらいいのかわからない、という人が大多数です。そんな親子に向けて、家庭の中で楽しみながらできる金融教育を提案しています。

「金融教育」は大きく4つのカテゴリーに分けられます。

改めて考えると、どれも日常で自然にやっていることばかりだと思います。

お金には未来を変えるパワーがある

──「子どもとお金」というと、お小遣いやお年玉の使い方、お金の貯め方に目が奪われがちですが、使うことや寄付、投資までを教えるんですね。

亀井 フィナンシェの会でお話を伺った方々は、「貯める」ことより「使う」ことについて、どう教えるかを重視している人のほうが多いですね。それは「お金は世界を変えるツール」だと考えているからだと思います。

たとえば、私たちがコーヒー1杯を買うときに、フェアトレードの商品を選ぶかどうかで、遠い国の誰かの生活を変えることができます。貯蓄も投資も同じです。金融機関や投資先を選択するときに、持続可能なビジネスに投資して運用しているかどうかを基準に判断できます。寄付も、どこに寄付するかを選ぶことで、自分がつくりたい未来に貢献しています。

お金を計画的に使って貯めて生活を守るという、「お金を管理する力」を育てるのは大前提ですが、お金にはそれ以上に世界を変えるパワーがあります。よりよい未来をつくる手段としてお金を理解することは、子どもたちが持続可能な社会で、人生100年時代を幸せに生きるために必須の知識と言えるでしょう。

そのためにも、自分が使ったお金がどういうふうに巡って経済や世界を動かしているのか、子どもの頃から丁寧に伝えていきたいですね。

金融教育の入門は「絵本」から

──「金融教育」の大切さは理解していても、具体的に何から始めていいのかわからない、という人も多いと思いますが。

亀井 子どもは「小さいからわからないだろう」と思いがちですが、その年齢なりに理解しているもの。その子の性格によっても、お金に対する興味が違うので、いろいろなことを試してみるのが一番です。親子でお金について話すところから始めるには、絵本がぴったりですね。お金を通して世界がどうつながっているのか、子どもでもわかりやすい絵本がたくさんあります。

フィナンシェの会オススメの絵本

「もりにいちばができる」
五味太郎・作(1100円、玉川大学出版部)

きつねが、ぶどうをあげたら、たぬきは、おれいにりんごをくれました。きつねは、うれしいきもちになりました。経済の基本をわかりやすく説く、楽しみながら学べる。
(就学前〜小学校低学年向け)

「ポリぶくろ、1まい、すてた」
ミランダ・ポール・作、エリザベス・ズーノン・絵、藤田千枝・訳(1650円、さ・え・ら書房)

世界中で問題になっているポリ袋。アフリカのガンビアという国のアイサトという女の人が捨てた1枚のポリ袋が2枚、10枚、ついには100枚に。アイサトたちは自分たちでなんとかしようと仲間と立ち上がります。
(小学校低学年向け)

子どもの性格に合わせた「お小遣い」のやり方を

──亀井さんは二人のお子さんのママですが、家庭では具体的にどんなことをしているのでしょう。たとえば、子どもたちの「お小遣い」はどうしているんですか。

亀井 小学2年生の長女には、お年玉として1年分のお小遣いをまとめて渡しています。月1000円として1年間で1万2000円。自分がほしいものやお友だちとのイベントなどは、すべてこのお小遣いからまかなうのがルールです。

お正月にお年玉を渡すと、子どもと一緒に交通系電子マネーにすべてチャージします。お金を使うときは電子マネーで支払い、レシートや印字などで支出を確認します。

1年間の予想を立ててお小遣いを使うのですが、つい使いすぎてしまうこともあります。6000円もするゲームソフトを買ってしまったときは、しばらくお金が使えないと我慢していました。そういうときも、足りなくなったから親が援助してしまっては、意味がないので見守っています(笑)。

小さいうちに、たくさん失敗を重ねて経験を積むことが大事で、それが将来に生きてくると思います。

お金の流れを学べる教材を工作をしながら楽しむことも

──それはすごくユニークですね。親子で挑戦しがいがありそうです。お小遣いを報酬制にするケースもよく聞きますが。

亀井 それも子どもの性格次第ですね。お金を貯めるのが好きな子と、あまり関心がない子がいますから。

お小遣いの報酬制ではありませんが、現金が欲しくなった長女が「何かいいお仕事がないかな?」と相談してきたことがあります。そこで一緒に考えたのが、「おうちオフィスおやつ」です。

会社のオフィスに、よく有料のお菓子セットが常設されていると思うのですが、それのおうち版です。リモートワークをしている私やパパが、仕事の合間にオフィスおやつの代わりに、娘たちが用意したお菓子をお金を払って購入します。コンビニで100円で買ってきたお菓子を150円で売る仕組みで、お店屋さんごっこ感覚で、楽しみながらやっていました。お小遣いのやり方もいろいろなので、親子であれこれ試したり、組み合わせてみるといいですね。

亀井さんの長女がリモートワークの両親が利用できるようにつくった、「おうちオフィスおやつ」のコーナー

生活の中にある「投資」や「寄付」を考えるチャンス

──金融教育のカテゴリーのひとつの「投資」は、親世代でも苦手意識があったりします。子どもに投資をどういうふうに教えたらいいのですか。

亀井 確かに小学校低学年くらいまでは、なかなか投資のことを理解してもらうのは難しいかもしれません。投資は、自分たちが応援したいと思う会社をお金で応援すること。会社がそのお金を使って利益を上げれば、リターンとなって自分にも返ってくる仕組みです。私の場合、「会社は買うことができるんだよ。ママとパパは、この会社のやっていることを応援したいから、会社を買っている」という説明の仕方をしています。

これから成長を目指す会社にとって、環境や持続可能な社会への取り組みは、多くの人から投資を集める必須条件です。投資ではありませんが、普段のお買い物で、商品を買うことで会社を応援するということもできます。「小さいから話してもわからないだろう」と思わずに、機会がある度に繰り返し伝えることが大切だと思っています。

フィナンシェの会でお話を伺った方の中には、夫婦で投資をしてその運用益によって家族旅行の行き先を決めるという人もいます。利益が多ければ海外に行けるし、少なければ近場の温泉が行き先になります。投資のリターンが自分たちの生活にどう影響するか、実践的で子どもにもわかりやすい面白い方法ですよね。

──インターネットを使った寄付やクラウドファンディングなど、少しずつ寄付が身近になってきています。子どもと寄付をするとき、どんな会話をするといいでしょう。

亀井 パソコンを見ながら、どこに寄付をするかを子どもに考えてもらうのもいいですね。子どもの興味関心を知るいい機会にもなります。寄付の一部を子どもにも協力してもらうと、自分が誰かのために貢献できたという「自分ごと」にしやすいと思います。ヘアドネーションに親子で参加をするのも、楽しくできておすすめです。

学校で赤い羽根募金に参加する方法もあるのですが、学校によってはあまり詳しく説明をしてくれず、その意味を子どもがしっかり理解していないことも。そういうときは、その意義やどこに寄付がされるのかを家庭で一緒に調べてみると、子どもの意識も高まると思います。

2022年からは高校でも「金融教育」がスタート

──最近の金融教育のトレンドとして、どんなことがあるのでしょう。

亀井 2022年の学習指導要綱では、高校生の家庭科で投資教育の話が加わります。投資信託や民間の保険、資産形成について学び、人生プランを考えられる力を養います。また、最近普及しているキャッシュレスも指導要領の中に盛り込まれるようになりました。

キャッシュレスは、お金の価値を子どもが理解しにくいと懸念する人もいるかもしれません。ただ、子どもたちが成人する頃には、完全にキャッシュレス社会になっているはずです。現金であろうが、キャッシュレスであろうが、お金の役割と価値を理解し、上手に付き合うスキルが必要です。失敗を恐れて使わないままでは、大人になってから苦労することにもなりかねません。子どものうちから使うことでキャッシュレスのメリット・デメリットを体験することも大切だと思います。

──お話を聞いていると、家庭でできる金融教育もいろいろ機会がありそうですね。

亀井 親が難しく考えてしまうと、何を伝えればいいのかよくわからなくなってしまうものです。日常生活の中で、お金を使う機会を通して、世界のあり方や経済の仕組み、未来のつくり方をわかりやすく伝えることを意識すればいいと思います。

どこから始めていいかわからないときは、多くの金融機関が実施している子ども向け、親子向けの金融教育イベントに参加するのも方法です。フィナンシェの会でもnoteで情報発信をしているので、そういうものも上手に活用してみてください。

写真提供/亀井茉莉 取材・文/久遠秋生

亀井茉莉さん
フィナンシェの会・発起人

家庭で子どもにお金のことを教えるためのアイディアを情報発信する『フィナンシェの会』を運営。日経STOCKリーグへの参加をきっかけにESG投資に関心を持ち、慶應義塾大学総合政策学部で金融工学や社会起業などを専攻。卒業後、国内系運用会社の日本株アナリストとしてESG投資に携わる。出産や子どもの進学を機に、ヘルスケア関連企業への転職を経て、現在は株式会社i-Cueにて固い金融をやわらかく伝えるためのマーケティング支援に従事。小学2年生、保育園年長の二人の女の子のママ。

フィナンシェの会 https://financierparty.com/

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